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税務手続きでの押印、多数が廃止の方向へ

1 はじめに

政府は、行政手続きのデジタル化を進めるにあたり、行政手続きにおける多数の押印を廃止する方向で進んでいます。
2020年11月13日の報道において、「河野規制改革担当大臣は、閣議のあと記者団に対し、およそ1万5,000種類ある行政手続きで求められる押印のうち、印鑑証明などが必要な83の手続きを除いて廃止される方向となり、いわゆる《認め印》は、すべて廃止される見通しになった」と明らかにしました。

このような押印廃止については、税務申告等の手続きも例外ではありません。
税務申告等の手続きにおいても、多数の押印が廃止の方向で検討されているようです。

2 契約書に押印なくても効力に影響なし

2020年6月には、契約書に押印をしていなかったとしても、契約の効力については原則として影響が生じないとことが示されました。
押印に関するQ&A (METI/経済産業省))
そもそも、契約というのは、当事者の意思の合致により成立するものであるから、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とされないことを示しました。そして、このような特段の定めがある場合を除いて、契約にあたっては、押印をしなくても、契約の効力には影響しないということを明言しました。

3 税務申告等の手続きでも押印廃止の方向へ

税務申告等の手続きについては、国税通則法124条第2項において、押印を求める旨の規定があります。これについても、押印が廃止される方向で検討が進んでいます。

税務申告等の手続きでの押印廃止については、次のような報道がありました。
2020年10月19日「加藤官房長官は、『国税関係書類については、国税通則法124条2項及びその他の税法により、税務署への提出時等の押印が規定されている。政府全体として、不要な押印は廃止するという方向で検討を進めている中で、国税関係手続きにおける押印についても納税者の利便性向上の観点に鑑み、財務省においても見直しの検討が行われていると承知している。具体的には来年度税制改正に向けた税制改正プロセスにおいて検討が進められるものと考えている』と述べた」と報道されました。

また、2020年10月20日には、「麻生財務大臣も、実印と印鑑証明書を必要としない税務書類の手続きについて、原則として押印廃止の方向を示した」と報道されました。

また、税理士が税務者に代わり所得税等の申告をした際の税理士の押印なども、廃止検討の方向で議論されるようです。

4 本人証明が厳格に求められる書類については押印存置の方向

実印を押印して印鑑証明書の添付が必要となる手続きについては、本人証明性が厳格に求められるため、押印廃止とならず、押印存置となる方向のようです。

例えば、各種納税猶予制度などの担保を提供する手続きの場合や、相続税申告で遺産分割協議書を提出する場合です。これらの場合には、担保提供の承諾書や遺産分割協議書に実印を押印し、その印鑑について印鑑証明書の添付が必要とされています。

5 電子証明書の取扱い

所得税等の電子申告においては、電子証明書を利用することが必要とされています。
電子証明書では、本人性を担保すべく、マイナンバーカード等を利用することが前提となっています。

書面への押印は廃止となったとしても、電子申告においては、従前どおり、電子証明書の取得が求められると考えられますが、これについては、今後の動向に注目したいところです。

6 終わりに

以上のように、税務手続きにおいても、「所得税の申告等」「法人税の申告等」「消費税の申告等」「相続税や贈与税等の申告等」「届出等」大多数の手続きにおいて、押印が廃止となる見込みです。そして、押印が廃止されることにより新たに何か対応を求められるということも特にないようです。
他方、「各種納税猶予制度などの担保を提供する手続き」「相続税申告の遺産分割協議書」など、本人証明性を厳格にすべく、印鑑証明書の添付が必要とされる手続きについては、今後も押印が存置される見込みです。

基本的には、上記のような方向で検討が進むようですが、今後の動向にも注目していきたいところです。

※本記事は記事投稿時点(2020年12月21日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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