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節税保険の封じ込め!金融庁と国税庁が連携強化

2022/11/07

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1.はじめに

令和4年7月14日、金融庁は「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応における国税庁との更なる連携強化について 」を公表しました。

これまで金融庁は保険会社に度々注意喚起を行ってきたものの、節税保険(租税回避を主たる目的として販売されている保険商品)の開発・販売が行われてきました。

そこで金融庁は国税庁との更なる連携を強化し、保険商品の「商品審査段階」や「モニタリング段階」において、両庁で情報共有や情報収集を行い、一層の保険契約者保護を進めていくこととなります。

本稿では、金融庁と国税庁の連携が強化された背景や、今後行われる連携強化の内容についてご案内します。

 

2.金融庁と国税庁の連携が強化された背景

近年、法人向け生命保険に係る税制改正が相次いでおり、節税保険における一定の節税メリットが封じられました。

例えば、令和元年6月の法人税基本通達の一部改正 や、令和3年6月の所得税基本通達の一部改正 などです。

令和元年2月に保険業界に衝撃を与えた「バレンタインショック」の後も、金融庁は保険会社に対して度々注意喚起を行ってきました。

しかし依然として、保険本来の趣旨ではなく、主たる目的が節税である商品開発や募集活動が確認されており、保険契約者保護の観点で問題が生じてきました。

2-1.法人税基本通達の一部改正【令和元年6月】

令和元年6月、国税庁は法人税基本通達9-3-5の2 の一部改正を行い、過剰な解約返戻率を設定した定期保険等の販売に歯止めがかけられました。

具体的には、全損タイプのプラチナ型保険(逓増定期保険や長期平準定期保険など)について、ピーク時の解約返戻率(最高解約返戻率)が50%超の定期保険等については、原則、支払い保険料の一部を資産計上することとなりました。

 

 

また同年10月には、金融庁が「保険会社向けの総合的な監督指針 」の一部改正を行ました。

金融庁の同改正では「法人等向け保険商品の設計上の留意点」が新設され、「法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」と、節税を訴求した商品開発や販売活動を防止するための指針を明確化しました。

2-2.所得税基本通達の一部改正【令和3年6月】

令和3年6月、国税庁は所得税基本通達36-37 の一部改正を行い、低解約返戻金型保険(通称:名義変更プラン)の販売に歯止めがかけられました。

名義変更プランとは
低解約返戻金型定期保険等を活用し、法人から個人(役員等)に名義変更(資産移転)を行うことで、法人と個人の税負担の軽減が可能となる点に着目し、保険期間当初の低解約返戻期間中に法人から個人に名義変更を行い、当該期間経過後に解約することを前提とした保険加入を推奨する手法
【引用:金融庁「マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について 」】

本改正により、支給時解約返戻金の額が、支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る)を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価することとなります。

 

3.「商品審査段階」や「モニタリング段階」で両庁が情報共有・収集

保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動への対応として、金融庁と国税庁の連携が強化されます。

具体的には、商品の審査段階での税務上の見解を情報共有し、販売実態等のモニタリング段階で節税(租税回避)スキームの情報収集が行われます。

3-1.商品の審査段階で「税務上の見解」を情報共有

 

 

【出典:金融庁「国税庁との更なる連携強化について 」】

今後は「商品の審査段階」において、金融等と国税庁が「税務上の見解」の情報共有を行います。

具体的には、①金融庁から保険会社に対して、国税庁へ税務上の見解を事前照会することを慫慂(しょうよう)します。

そして保険会社から同意を得た上で必要に応じて、②金融庁から国税庁に税務上の見解について事前照会を実施します。

金融庁が国税庁への事前照会によって得られた税務上の見解を、③商品審査において「参考情報」として活用する、といった連携が図られます。

3-2.モニタリング段階で「節税(租税回避)スキーム」の情報収集

 

 

【出典:金融庁「国税庁との更なる連携強化について 」】

販売実態等の「モニタリング段階」において、金融庁と国税庁が「節税(租税回避)スキームの情報収集」を行います。

具体的には、金融庁と国税庁の定期的な意見交換を通じて、①国税庁から金融庁に保険商品に関する節税(租税回避)スキームの情報提供を行います。

そして国税庁から得た情報や独自情報を活用し、金融庁において保険会社や保険代理店における、②募集管理体勢の整備状況や販売実態等のモニタリング等を実施します。

また金融庁が国税庁に対して、③商品の開発や募集現場で利用される節税(租税回避)スキームの情報提供を行う、といった連携が図られます。

 

4.さいごに

金融庁と国税庁の連携が強化され、今後は商品審査段階で情報共有が行われ、モニタリング段階で情報収集が行われます。

保険商品の本来の目的は「日常生活で起こる様々なリスクへの備え」であるため、税負担の軽減だけを重視するのではなく、各種保険の特徴を踏まえ、保険契約を上手に活用していくことが大切と言えるでしょう。

※本記事は記事投稿時点(2022年11月7日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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