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同性カップルの相続税申告はどうなるの?

2024/12/27

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同性カップルの相続税申告はどうなるの?

報道によれば、香港終審法院(日本の最高裁に当たります)は、2024年11月26日、海外で結婚した同性カップルに対し、相続や公営住宅への入居などで異性カップルと同様の権利を認める判断を示されたとのことです。

なお、同法院は、昨年9月、日本の憲法に当たる「香港基本法」では、結婚の自由は異性婚に限定されているとして、同性婚を認めなかったものの、同性カップルが社会生活を送る上で必要な法的保護を別の方法で提供する必要があると指摘されていたそうです。
(出典:ニューズウィーク日本版

日本での相続税申告

例えば、こちらのカップルが、日本に移住され、不幸にもいずれか一方のパートナーに相続が発生した場合、日本での相続税申告はどうなるのでしょう?

国際相続があった場合、日本では、法の適用に関する通則法に基づき、「相続は、被相続人の本国法による」ことになります(同法36)。

 また、被相続人や相続人の国籍は、納税義務者の判定(相法1の3)、課税財産の範囲(相法2)、債務控除(相法13)、障害者控除(相法19の4)、未分割遺産に対する課税(相法55)等にも関係してきます。

報道されたカップルは、香港基本法上の同性婚が認められませんでしたが、香港終審法院の判決により相続権が認められました。

そうすると、不幸にもいずれか一方のパートナーに相続が発生した場合、残されたパートナーには相続権が発生することになると思われます。

しかしながら、残されたパートナーは、法律上の配偶者としては認められておりません。

その場合の相続税申告はどうなるのでしょうか?

仮に、遺産が未分割であった場合、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》は、「当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。」と規定しています。

外国籍の方が被相続人である場合、同条に規定されている「民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合」は、日本の民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従いなさいということでしょうか?

これについて、国税庁は、「法の適用に関する通則法第36条により『相続』は被相続人の本国法によることとされていますから、被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算することとなります。」と明確に回答されています。
(出典:国税庁HP

相続税の総額計算

それでは、相続税の総額計算(相法16、以下の【参考】を参照)はどうなるのでしょう?

これについて、相続税法第16条《相続税の総額》の解説(税務会計データベースDHC Premiumコンメンタール相続税法)は、「被相続人が外国人である場合には,相続についてはその被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法36条,38条)こととされているが,その場合でも,相続税の総額は,その被相続人の本国法の定めとは関係なく,民法の規定による相続人及び相続分を基として計算する」と解説しています。

これによれば、相続税の総額計算は、国籍(準拠法)によって税額計算が変わらないよう、日本の民法の規定に基づいて計算することとされていることになります。

【参考】

法の適用に関する通則法(抄)

(相続)
第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

(遺言)
第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
 2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

(反致)
第四十一条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。

相続税法(抄)

(相続税の総額)
第十六条 相続税の総額は、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に相当する金額の合計額からその遺産に係る基礎控除額を控除した残額を当該被相続人の前条第二項に規定する相続人の数に応じた相続人が民法第九百条(法定相続分)及び第九百一条(代襲相続人の相続分)の規定による相続分に応じて取得したものとした場合におけるその各取得金額(当該相続人が、一人である場合又はない場合には、当該控除した残額)につきそれぞれその金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額とする。
(以下省略)

(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

(出典:「法の適用に関する通則法」「相続税法」)

◎ チェスターの視点

今回の同性カップルの相続権については、明確な答えは見出せませんでしたが、今回のテーマを通じて、国際相続があった場合の相続税申告においては、注意すべき点が多く含まれることが理解できました。

なお、税理士法人チェスターには国際相続部が設置されています。

税理士法人チェスターは、海外が絡む相続税申告をサポートしますので、国際相続に関して不安がある方は、是非ご相談ください。

※本記事は記事投稿時点(2024年12月27日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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