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外貨建取引の為替差益は雑所得(東京地裁判決で納税者敗訴)

2025/05/15

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外貨建取引の為替差益は雑所得(東京地裁判決で納税者敗訴)

居住者である原告が、平成29年から平成30年にかけて、米国に所在する不動産をドル建てで購入した際、複数の預金口座において保有していた外国通貨(米国ドル及びユーロ)による複数の外貨建取引を行いました。

それに対し、所轄税務署長が、それらの外貨建取引につき為替差益が生じており、当該為替差益が雑所得に該当するとして、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことの適法性が争われていた事件について、東京地裁民事第3部(篠田賢治裁判長)は、令和7年2月5日、国が行った課税処分を「適法」とする判決を言い渡しました。

1.事件の概要

(1) 前提事実

前提事実

(2) 争点

  • イ 本件の不動産取引によって原告に為替差益に係る所得が発生し、実現したといえるか
  • ロ 為替差益の額を算定する際の取得時の円換算額の算定方法

(3) 裁判所の判断

争点1

為替差益は「収入すべき金額」に該当

【理由】
外貨を用いて不動産等の資産を購入した場合、当該資産の取得等のために払い出された外貨の払出時における円換算額から当該外貨の取得時の円換算額を控除した額が正である場合には、当該外貨が当該資産に置き換わったことにより、当該為替差益に相当する経済的価値が確定し、所得として実現したといえる。

争点2

為替差益に係る外貨一単位当たりの取得時の円換算額の算定においては、総平均法に準ずる方法によることが相当

【理由】
外貨も、有価証券と同様、種類の異なるものが 一定数存在するものの、物理的な劣化による価値の減少が想定されない上、同一種類の外貨は 代替性を有し、取得費等が異なっても一単位ごとに認められる権利や性質、価値などは基本的に変わらないと認められ、有価証券の上記の性質と同様の性質を有するといえるから、2回以上にわたって取得した同一種類の外貨について、為替差益の額を算定する際の取得時の円換算額の算定においては、有価証券と同様に、単価を平均する総平均法に準ずる方法を適用するのが最も合理的である。

◎ チェスターの視点

原告は、主張の根拠の一つとして、所得税法基本通達57の3-2の注書きの4を根拠として、当初から資産の購入を予定して借入れを行い、借入れ後に資産を購入する場合には、同一通貨ベースでの連続した一つの取引と考えることができるから、当該取引による為替差益に係る所得は実現していないことを挙げました。
つまり、米国に所在する不動産(4物件)の取得は、当初から想定されていた取引にすぎず、当該不動産の取得のタイミングでドルからドル建て資産に転換しただけであるから、為替差益に係る所得の実現性が高まったとはいえないと主張されました。

不動産など高額資産の取得に際しては、外貨と邦貨の交換が通達や裁判所が想定するような「直前・直後」の関係に必ずしも当てはまらない場合があります。

この点に関して、所得税法基本通達57の3-2の注書きの4では、以下のように定められています。

本邦通貨により外国通貨を購入し直ちに資産を取得し若しくは発生させる場合の当該資産、又は外国通貨による借入金に係る当該外国通貨を直ちに売却して本邦通貨を受け入れる場合の当該借入金については、現にその支出し、又は受け入れた本邦通貨の額をその円換算額とすることができる。

引用:国税庁「法第57条の3《外貨建取引の換算》関係
※下線は税理士法人チェスターによる

不動産など高額の資産を取得する場合の外貨と邦貨との交換は、上記通達や裁判所が想定するような「直前・直後」というよりも、ある程度時間に余裕をもって行われるようにも思えます。

この場合、「直ちに・・・」とするよりも、認容される期間が具体的に分かるように改正していただくことが、納税者の予見可能性向上につながるように思えます。

なお、原告(納税者)が、不動産の取得のために用いることが義務付けられていた借入金についても、他の外貨預金口座と共に総平均法に準ずる方法で為替差益を算出していることについては、若干の疑義があります。

参考

裁判所の判断

争点1. 本件の不動産取引によって原告に為替差益に係る所得が発生し、実現したといえるか

為替差益につき、「収入すべき金額」(所得税法36①)に該当するためには、当該為替差益に係る経済的利得が何らかの形で実現することが必要である。例えば、単に外貨を保有し続けている状況において、為替レートの変動により当該外貨につき為替差益が生じたとしても、そのことだけでは、当該為替差益は所有資産の価値の増加(評価差額)にすぎず、未実現の利得であって、「収入すべき金額」に該当しない。

もっとも、当該外貨につき為替差益が生じている状態において当該外貨を用いて不動産等の資産を購入した場合、すなわち、当該資産の取得等のために払い出された外貨の払出時における円換算額から当該外貨の取得時の円換算額を控除した差額が正である場合には、当該外貨が当該資産に置き換わったことにより、当該為替差益に相当する経済的価値が確定し、所得として実現したといえる。仮に当該資産の購入時に当該外貨を新たに取得して(すなわち、その時点で円を当該外貨に両替して)当該資産を購入する場合には、当該為替差益を含む金額の円が必要となるのであり、当該外貨は当該為替差益分を含む経済的価値を有し、その価値によって当該資産を購入したと認められることからも、上記のように、当該為替差益に相当する経済的価値が確定し、所得として実現したということができる。

したがって、当該為替差益は、「収入すべき金額」に該当する。

争点2. 為替差益の額を算定する際の取得時の円換算額の算定方法

所得税法は、2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券で雑所得又は譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合に係る有価証券の取得費等の計算に関して、総平均法に準ずる方法を採用しているところ(所令118①)、これは、有価証券はその種類や銘柄の異なるものが一定数存在するものの、一般的な動産である商品や製品とは異なり、物理的な劣化による価値の減少が想定されない上、同一銘柄の有価証券は代替性を有し、その取得時期や取得費等が異なっても一単位ごとに認められる権利や性質、価値などは基本的に変わらないと考えられるので、これらを等価とみて単価を平均する評価方法を適用することとしたものと解される。

そして、外貨も、有価証券と同様、種類の異なるものが一定数存在するものの、物理的な劣化による価値の減少が想定されない上、同一種類の外貨は代替性を有し、取得費等が異なっても一単位ごとに認められる権利や性質、価値などは基本的に変わらないと認められ、有価証券の上記の性質と同様の性質を有するといえるから、2回以上にわたって取得した同一種類の外貨について、為替差益の額を算定する際の取得時の円換算額の算定においては、有価証券と同様に、単価を平均する総平均法に準ずる方法を適用するのが最も合理的である。

したがって、本件為替差益に係る外貨一単位当たりの取得時の円換算額の算定においても、総平均法に準ずる方法によることが相当である。

参考:東京地裁令和7年2月5日判決

所得税法基本通達(抄)

(外貨建取引の円換算)
57の3-2 法第57条の3第1項((外貨建取引の換算))の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下この項において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下57の3-7までにおいて「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下57の3-7までにおいて「電信買相場」という。)の仲値(以下57の3-7までにおいて「電信売買相場の仲値」という。)による。
ただし、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額(以下57の3-3までにおいて「不動産所得等の金額」という。)の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費(原価及び損失を含む。以下57の3-4までにおいて同じ。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。

(注)

  1. 電信売相場、電信買相場及び電信売買相場の仲値については、原則として、その者の主たる取引金融機関のものによることとするが、合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める。
  2. 不動産所得等の金額の計算においては、継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる次のような外国為替の売買相場(以下57の3-7までにおいて「為替相場」という。)も使用することができる。
    • (1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値
    • (2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値
  3. 円換算に係る当該日(為替相場の算出の基礎とする日をいう。以下この(注)3において同じ。)の為替相場については、次に掲げる場合には、それぞれ次によるものとする。以下57の3-7までにおいて同じ。
    • (1) 当該日に為替相場がない場合には、同日前の最も近い日の為替相場による。
    • (2) 当該日に為替相場が2以上ある場合には、その当該日の最終の相場(当該日が取引日である場合には、取引発生時の相場)による。ただし、取引日の相場については、取引日の最終の相場によっているときもこれを認める。
  4.  本邦通貨により外国通貨を購入し直ちに資産を取得し若しくは発生させる場合の当該資産、又は外国通貨による借入金に係る当該外国通貨を直ちに売却して本邦通貨を受け入れる場合の当該借入金については、現にその支出し、又は受け入れた本邦通貨の額をその円換算額とすることができる。
  5.  いわゆる外貨建て円払いの取引は、当該取引の円換算額を外貨建取引の円換算の例に準じて見積もるものとする。この場合、その見積額と当該取引に係る債権債務の実際の決済額との間に差額が生じたときは、その差額は当該債権債務の決済をした日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。

※下線は税理士法人チェスターによる

※本記事は記事投稿時点(2025年5月15日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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