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相続税のAI調査始まる

2025/07/24

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相続税のAI調査始まる

以前、「令和7年の夏から相続税の税務調査にAIが導入される」旨の記事を目にしました。税務署は、今年の7月以降、実際にAIを使って相続税の税務調査を行うのでしょうか。
(出典:2025年3月17日 日本経済新聞

税務署が、実際にAIを使って相続税の税務調査を行うことはありません。

国税庁は、令和7年7月から、AIを使って全国の相続税申告データを前提に、過去の調査事績等の分析結果から申告漏れリスクを分析、分析結果をスコア化(簡単にいえば点数化)したものを各国税局に提供する模様です。

それを受けて、各国税局・税務署は、分析結果(申告漏れリスク(点数)の高いもの)を前提に、実際に調査を行う対象を選ぶことになります。

【イメージ図】

調査選定のイメージ

(参考:2025年3月14日 日本経済新聞

1.相続税の調査選定

相続税の調査選定の流れは、大まかに調査対象を絞り込む一次分析(「ふるいにかける」ための粗々な選定)、綿密に調査対象を絞り込む二次分析を経て、国税局や税務署の調査実施部署が、実際に調査を行う対象を選ぶことになります。

令和7年7月以降に調査が行われるのは、令和5年に相続が開始した方の相続税申告書が中心になると見込まれます。

該当する相続税申告書は、全国で約15万6千件提出されており、1年間に行われる相続税の実地調査の件数が約8,500件前後ですので、実地調査が行われるのは申告件数のうちの約5~6%となります。

今後、AI導入による一次分析の精度が向上するにつれ、実際に調査を行う対象の選定精度も向上していくことになりますので、注意が必要です。

参考:令和5年分 相続税の申告事績の概要
参考:令和5事務年度における相続税の調査等の状況

2.AIは、どこまで精緻な分析が可能か

令和7年7月から開始されるAIによる一次分析が、どのようなレベルで行われるか不明ですが、将来的には、AIで次のような分析を行うことが可能と考えます。

(1)不動産

被相続人が不動産賃貸業を営んでいた場合、過去の不動産の賃貸収入や不動産の売却益が、有価証券、預金、生命保険契約、金等の申告漏れにつながる可能性があります。

したがって、被相続人の遺産における財産の種類別の構成割合や、過去の不動産所得や譲渡所得の申告状況等を前提に、申告漏れリスクの高低を判定され得ると考えます。

また、相続開始直前に多額の不動産収入と多額の借入金が生じた方は、相続税の節税スキーム等を行っている可能性が高いため、申告漏れリスクが高いと判定され得ると考えます。

(2)預貯金、有価証券、生命保険契約、金等

被相続人の過去の収入状況からみて、相続税申告書に計上された預貯金、有価証券、生命保険契約、金などの計上が少ないと見込まれた場合、それらの申告漏れリスクが高いと判定され得ると考えます。

(3)非上場会社のオーナー

相続開始直前に主宰する非上場会社が組織再編を行っていた場合や、多額の借入金で賃貸不動産を購入していた場合には、非上場会社の株価を引き下げるための節税スキーム等を行っているリスクが高いと判定され得ると考えます。

3.AI対策は必要?

AIが行うとされている「大まかに調査対象を絞り込む一次分析(「ふるいにかける」ための粗々な選定)」は、従来、国税局や税務署の調査担当者の目で行われてきた作業です。

したがって、AIが行う一次分析は、新たな選定手法の導入という訳ではありませんので、AI対策は現状必要ないと考えます。

しかしながら、AIが行う一次分析は、学習効果が発揮されることによる精度向上、国税局や税務署の調査担当者の事務の効率化に間違いなくつながると思われますので、中長期的にみれば、調査件数の増加につながっていくと考えられます。

これについては、今後、国税庁が、毎年12月に公表する「相続税の調査等の状況」(報道発表資料)を分析し、検証して参りたいと考えます。

◎ チェスターの視点

AIの導入如何を問わず、適正な相続税申告を行うためには、お亡くなりになった方等の財産確認を丁寧に行うことが大切と考えます。

税理士法人チェスターは、財産確認を丁寧に行い、すべての申告において税務調査軽減につなげる目的で書面添付制度を導入するなど、税務調査リスク回避に努めております。

相続税申告等についてご心配な方は、税理士法人チェスターにご相談ください

※本記事は記事投稿時点(2025年7月24日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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