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お盆に家族で話しておきたいことー贈与ではなく”感謝”を伝える制度とは?
2025/08/07
関連キーワード: 特別寄与料

旧盆を迎え、家族が集まり故人を偲ぶ中、自然と遺産分割や相続に関する話題が上ることも少なくありません。
あるご家庭では、故人の妻がこんな一言を口にしました。
「私が高齢で動けなくなってからは、爺ちゃんの妹がずっと世話をしてくれて、本当に助かった。何かお礼がしたいのだけど…」
このようなケースでは、相続人以外の親族に遺産の一部を渡そうとすると、贈与税の課税リスクが懸念されます。
実際、この場にいた長男も「遺産を分けると高い贈与税がかかってしまうのでは?」と不安を口にしました。
こうした場面で検討したいのが、「特別寄与料」という制度です。
今回は、相続人以外の親族が被相続人の介護や療養看護などに貢献した場合に、正当な対価として財産を受け取ることができる「特別寄与料」について解説します。
1.特別寄与料とは
相続人ではない被相続人の親族で、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者、相続人の欠格事由(民法891条の規定)に該当する方及び廃除によってその相続権を失った方は除かれます。以下「特別寄与者」)は、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭(以下「特別寄与料」)の支払を請求することができます(民法1050)(※)。
なお、特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月を経過したとき,又は相続開始の時から1年を経過したときはすることができないとされています。
(※)令和元年7月1日より前に開始した相続については、特別寄与料の支払いを請求することはできません。
(法務省HP:相続に関するルールが大きく変わります)
2.特別寄与料制度が導入された背景
被相続人が死亡した場合、相続人は、被相続人の介護を全く行っていなかったとしても、相続財産を取得することができます。
例えば、今回の御家族の場合、お爺さんの妹さんが、お爺さんの介護に尽くしてくれていました。ただ、お爺さんの相続人は奥さんと、息子さんです。お爺さんの妹さんは相続人ではないため、相続財産の分配を受けることができませんでした。
そこで、民法が改正され、相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行っていた場合、一定の要件のもとで、相続人に対して特別寄与料を請求することを可能とし、介護等の貢献に報いることが可能とされました。
(法務省HP:相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別の寄与))
一同は、税理士の説明を聞いて、
「これはいい、うちの話にピッタリだ!これなら、爺ちゃんの妹に恩返しができる。でも、どのように手続きすれば良いのでしょう?」
税理士は説明を続けます。
「特別寄与料の請求方法は……」
3.特別寄与料の請求方法
特別寄与料の請求は、特別寄与者が、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することになります。
なお、特別寄与料の支払について、当事者間で協議が調わない又は協議をすることができない場合は、家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます。
(裁判所HP:特別の寄与に関する処分調停)
一同は納得しつつ、
「この場合の税金はどうなるのでしょう?」
税理士は更に説明を続けます。
「特別寄与料が支払われた場合の相続税の課税関係は……」
4.特別寄与料が支払われた場合の相続税の課税関係
特別寄与料の支払の請求が行われ、まだ、その額が確定していない段階では、特別寄与料に関して相続税の課税関係は生じません。
ただしその後、その額が確定した場合には、特別寄与者が、特別寄与料の額に相当する金額を、被相続人から遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります(相法4②)。
また、当該特別寄与料を支払うべき相続人の相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額によることになります(相法13④)。
なお、支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合において、特別寄与者が、相続税の申告書を提出すべき要件に該当した場合には、その確定したことを知った日の翌日から 10 か月以内に納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません(相法 29①)。
また、支払うべき特別寄与料の額が確定した場合において、相続税について申告書を提出した者又は決定を受けた者の当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、その確定したことを知った日の翌日から4か月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、更正の請求をすることができます(相法 32①七)。
(国税庁HP(資料58頁):相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例(民法(相続法)改正関係)について(情報))
疑問が解消され、一同は「お盆に集まって話せて、本当によかったね」と口々に語りました。
故人の面影を胸に、お世話になった方への敬意を形にする一つの方法として、手続きを進めることとなりました。
◎ チェスターの視点
お盆で親族がお集まりになった際、ご遺族様の中からこういうお話が出るかもしれません。
特別寄与料の制度は、比較的新しい制度ですので、世の中に定着したとまでは言えないように思えますが、この制度を用いれば、高い贈与税を支払わずに故人のお世話をしてくれた親族のご苦労に報いることができます。
お世話をしてくださった親族に報いるためにも、色々な検討をしていただくことは良いことだと思います。
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※本記事は記事投稿時点(2025年8月7日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
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