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“老老相続”時代に備える!相続時精算課税の新たな活用策

2025/10/15

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相続時精算課税の新たな活用策

物価高対策が社会的な課題となっています。
(出典:2025年10月07日 JIJI.com

物価高対策の1つとしては、消費意欲の高い若年世代への早期の資産移転が考えられますが、わが国では、経済のストック化と高齢化の進行により相続による資産移転の時期がより高齢期にシフトしています。
いわゆる「老老相続」が増加した結果、消費意欲の高い若年世代への資産の移転が進みにくい状況にあります。

相続時精算課税は、もともと高齢者から若年世代への資産の移転を促進させるとともに、資産の有効活用を図るというのが創設時の趣旨ですので、資産の世代間移転を促進するためには、相続時精算課税の活用を検討する必要があるといわれています。
(参考:日税連「資産移転の時期の選択に中立的な 相続税・贈与税のあり方について 」)

相続時精算課税は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。
(参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」)

この制度は、居住用の住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の資金贈与を受ける場合や富裕層の生前対策で用いるものと思われがちですが、同制度は資産の世代間移転のために大変有効な制度といえます。

今回は、資産の世代間移転のための相続時精算課税の新たな活用策についてご説明したいと思います。

1.相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に一定の書類を添付した「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

なお、この制度は贈与者(父母または祖父母)ごとに選択できますが、一度選択すると、その選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)から贈与を受ける財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税(注)へ変更することはできません。

(注)その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
(参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」)

2.相続時精算課税の計算

相続時精算課税適用財産については、その選択をした年分以後、特定贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

その贈与税の額は、特定贈与者ごとに、1年間に贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額の合計額(課税価格)から、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除し、特別控除額(限度額2,500万円。前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
(参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」)

3.相続時精算課税の特定贈与者が亡くなった場合の相続税の計算

特定贈与者である父母または祖父母が亡くなった場合、相続税の計算は、相続財産の価額に相続時精算課税適用財産の贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額)を加算して相続税額を計算することになります。
(参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」)

4.新たな活用策

(1) 前提

相続時精算課税制度の活用例

(2) 相続時精算課税の新たな活用策

上記の前提条件においては、資産の世代間移転を促進するために、次のような生前対策が有効といえます。 

例えば、妻から孫に対し、相続時精算課税を適用して1,500万円の生前贈与を行います。

この場合、贈与財産の価額は1,500万円ですので、相続時精算課税の基礎控除(110万円)と相続時精算課税の特別控除(2,500万円)の合計額の範囲内ということになりますので、孫に対する贈与税はかかりません。

次に、夫が亡くなり(一次相続発生)、妻は夫から約2,000万円の遺産を相続したとします。

妻には配偶者の税額軽減の特例(注)が適用されますので、要件を満たせば、配偶者に相続税はかかりません。

そして、妻が亡くなった場合(二次相続発生)、妻の相続税の課税対象となる資産は、固有資産500万円、夫から相続した遺産2,000万円、孫への相続時精算課税の加算1,500万円、合計4,000万円となりますので、基礎控除(子2名=4,200万円)を下回り、二次相続でも相続税はかかりません。

これにより、孫に対する1,500万円は、三次相続(子の相続)まで待つことなく、無税で、資産の世代間移転ができたことになります。

〔イメージ〕

相続時精算課税制度の活用例

(注)配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です(相法19の2)。

  • (1)1億6千万円
  • (2)配偶者の法定相続分相当額

この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。
したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
(参考:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」)

◎チェスターの視点

今回のご提案は、一次相続(夫)のみならず、二次相続(妻)、三次相続(子)までを考慮した「資産の世代間移転」を見据えた生前対策となります。

税理士法人チェスターは、最適な生前対策のご提案に努めておりますので、これから生前対策を検討しようとお考えの方は、是非、税理士法人チェスターにご相談ください。

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※本記事は記事投稿時点(2025年10月15日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
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