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事業用資産の買い換え特例の分りやすい解説【個人・譲渡所得】
2016/03/08
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個人が事業用の資産を買い換えた場合に、一定の要件を満たせば譲渡益の一部を将来に繰り延べることができます。つまり、いま払う譲渡所得税を節税することが可能となります。この特例を、「事業用資産の買い換え特例」と言い、法人税にも同様の特例がありますが、ここでは個人の所得税に関する特例を解説します。
1.事業用資産の買い換え特例を適用するための要件
1-1.譲渡資産と買い換え資産はともに事業用であること
事業用資産の買い換え特例を適用するためには、売る資産と買い換える資産が両方とも、事業用に使用される必要があります。自己利用や親族に無償で貸しているなどの場合には事業用には該当します。
一般的に想定される事業用とは、「不動産の貸付」です。第三者に賃貸していれば、それが事業用とみなされますので、さほどハードルは高くありません。
なお、事業用資産の範囲について詳しくは、「国税庁タックスアンサー No.3402 事業用の資産の範囲」を参照してください。
1-2.譲渡資産と買い換え資産が一定の組み合わせに当てはまること
この判定が一番むずかしい部分で、その組み合わせは10通りもあります。
ただしほとんどの組み合わせが、一般的な方には関係のないものばかりですべてを解説するとかえって話が複雑になりますので、ここではもっとも使い勝手の良いもの1つのみを紹介します。これをいわゆる9号特例と呼びます。
売る資産の条件 | 買い換える資産の条件 |
---|---|
売った年の1月1日において所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物 | 国内にある土地等、建物又は構築物ただし、土地の場合には原則建物の敷地で300㎡以上 |
この9号特例については、平成29年3月31日までに譲渡したものについて適用があります。
1-3.買い換える資産が土地の場合には、売る資産の土地の面積の5倍以内であること
買い換える資産が土地の場合には、その土地の面積が売る資産の土地の面積の5倍以内であることが必要です。
ただ、5倍を超えたからといって特例が一切使えないということではなく5倍を超えた部分の面積に相当する金額分だけ特例の計算から除外されるということになります。
1-4.買い換え資産を翌年前に購入すること
資産を売った年の前年かその年か、さらにその翌年のいずれかに買い換え資産を購入する必要があります。
前年に購入した場合には、取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署に提出をしておくことが必要となり、また翌年に買い換え資産を購入する予定の場合には、買換(代替)資産の明細書を税務署に提出する必要があります。
1-5.買い換えた資産を買い換えた日から1年以内に事業に使うこと
買い換えた資産をその資産の取得費から1年以内に事業に使う必要があります。
なお、主な要件は以上となりますが、他にも要件があるため、詳しく知りたい方は、「国税庁タックスアンサー No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」を参照してください。
2.どれくらい節税できるのか!?
2-1.売った金額(譲渡価格)<買い換えた金額(取得価格)の場合
・売った金額×20% = 収入金額・(売った資産の取得費+譲渡費用)×20% = 必要経費 |
上記の計算式で求めた収入金額から必要経費を差し引いて譲渡所得を計算します。
つまり、繰り延べられる譲渡益は本来のものの80%部分ということになります。例えばこの特例を使わなければ、1,000万円の利益がでてそこに税金がかかるはずだったものが、その80%の800万円が将来に繰り越されて、20%部分の200万円にのみ税金がかかることになります。
2-2.売った金額(譲渡価格)>買い換えた金額(取得価格)の場合
上記の計算式で求めた収入金額から必要経費を差し引いて譲渡所得を計算します。
買い換える資産の金額が小さければ小さいほど、繰り延べられる譲渡益の金額は小さくなりますので注意が必要です。
この場合には、買い換えた金額の80%を上限として、譲渡益が繰り延べされることとなります。
ただし、上記の1-1の場合も同様ですが、繰り延べされる割合については地方から都心の物件に買い換えを行う場合には、この繰り延べられる割合が75%だったり70%に引き下げれていますので注意が必要です。
どういった場合にこの割合が変わるのかについて詳しくは、「国税庁タックスアンサー No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」を参照してください。
3.事業用資産の買い換え特例の適用事例ケーススタディ
3-1.賃貸アパートを売却し、ワンルームマンションを購入する
売却する賃貸アパートを10年以上保有しており、購入したワンルームマンションを賃貸に出すのであれば適用可能です。ただし、ワンルームマンションの持ち分に相当する敷地が300㎡以上になることは想定されにくいため、特例の適用ができるのは買い換え資産の建物部分についてのみとなることが想定されます。
3-2.駐車場を売却して賃貸アパートを購入する
売却する資産については、土地のみでもOKなため、駐車場を売却し賃貸アパートを買い換えることも可能です。ただし、売却する資産の所有期間が10年超でかつ、買い換える賃貸アパートの敷地面積が300㎡以上である必要があります。
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4.事業用資産の買い換え特例の申告手続き
事業用資産の買い換え特例を適用するためには、必ず確定申告が必要となります。
資産を売却した翌年の3月15日までに所得税の確定申告を行う必要があります。
4-1.添付書類について
1.譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用] 2.買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類 3.譲渡資産及び買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書 など (注)買換資産を取得する見込みで、この特例の適用を受けた場合には、上記の(2)の登記事項証明書などは、買換資産を取得した日から4か月以内に提出しなければなりません。 |
原則、上記の3つの添付書類が必要となります。
なお、この記事で説明した事例で3に該当するケースは稀であるため、通常は1と2の書類のみが必要となります。
4-2.申告時に買い換え資産が決まっていない場合
確定申告をする3月15日までに買い換える資産が決まっていない場合には、買換資産の「取得価額の見積額」で確定申告を行うことになります。その後、買い換え資産が決まって取得した後に、買換資産の「取得価額の見積額」より「実際の取得価額」の方が多かった場合には、 買換資産を取得した日から4か月以内に「更正の請求書」を提出して所得税の還付を受けます。またその逆の場合には、修正申告を行い、差額分の所得税を納税する必要があります。
5.事業用資産の買い換え特例を適用する場合の留意点
事業用資産の買い換え特例を適用する場合の留意点を解説します。
5-1.毎年計上する減価償却費が小さくなる
この買い換えた資産の取得原価は、売った資産の取得費を用いて計算する必要があり、通常、買い換え資産の購入金額よりも小さくなってしまいます。
そのため、事業用として今後、減価償却を行う際に、減価償却費として毎年経費計上できる金額が少なくなってしまうことに注意が必要です。
なお、計算方法は、「国税庁タックスアンサー No.3426 事業用資産の買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算」を参照してください。
せっかく買い換え特例を適用し、税金で得をした気分になっていても実は毎年払う所得税が高くなっているということも考えられます。
事業用資産の買い換え特例の適用を受ける場合には慎重な判断が必要となります。
6.まとめ
事業用資産の買い換え特例は、要件が複雑で、かつ使用したほうが有利かどうかの検討シミュレーションも必須です。素人判断で適用を受けるのはとても危険なので、適用を考える際には必ず税理士に相談されることをお勧めいたします。
※本記事は記事投稿時点(2016年3月8日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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