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土地の相続税評価・鑑定評価書の問題点を指摘し、鑑定評価額認めず

2018/10/09

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土地の相続税評価・鑑定評価書の問題点を指摘し、鑑定評価額認めず

1.はじめに

相続税における財産評価の中で、その中心となるのが、「土地の評価」です。
相続税の対象となる土地の評価方法としては、「財産評価基本通達による評価」がありますが、一定の場合には、「不動産鑑定士による評価」も認められています。
先日、土地の相続税評価が争いになった訴訟において、東京地方裁判所は、不動産鑑定士による鑑定評価書の問題点を指摘し、不動産鑑定士による評価額ではなく、財産評価基本通達による評価額を採用しました(東京地裁平成30年3月13日判決)。

2.財産評価基本通達による不動産の評価

財産評価基本通達による宅地の評価は、「路線価方式」と「倍率方式」の2つの評価方式が
あります。
路線価が定められている地域にある土地については路線価方式により評価し、その他の地域にある土地については倍率方式により評価します。よって、これらの方式は自由に選択できるものではありません。
路線価及び評価倍率は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%により評価されています。

(1)路線価方式

路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の相続税評価方法です。
路線価とは、道路(=路線)ごとに国税局長が決定した土地の「単価」のことです。

路線価方式では、評価対象地が接する路線の路線価に、必要な画地調整率(評価対象地の形状(奥行距離、不整形の度合い、角地など)に基づき、価額を補正する率)及び地積を乗じて評価額を算出します。路線価は、土地の価額がおおむね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに評価した1平方メートル当たりの価額です。

(2)倍率方式

倍率方式では、固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに定めた評価倍率を乗じて評価額を算出します。

3.不動産鑑定士による不動産の評価

不動産鑑定士が不動産の鑑定評価をする場合の方法としては、主に次の3つの鑑定方法が挙げられます。
ⅰ)取引事例比較法
ⅱ)収益還元法
ⅲ)原価法

では、それぞれについて、以下で簡単に説明します。

(1)取引事例比較法

取引事例比較法については、不動産鑑定評価基準に、次のように定義されています。

「取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。(この手法による試算価格を比準価格という。)
取引事例比較法は、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行われている場合又は同一需給圏内の代替競争不動産の取引が行われている場合に有効である。(以上、不動産鑑定評価基準第7章第1節Ⅲ取引事例比較法1.意義)」

上記のように、取引事例比較法というのは、対象不動産と同じような条件の不動産の取引事例の価格と比較をしながら、他の取引事例の価格をベースに、市場全体の動向や取引の時期などを踏まえて調整を行った上で、対象不動産の評価額を算出する方法です。不動産の評価方法としては、最も基本的な方法として使われています。

(2)収益還元法

収益還元法については、不動産鑑定評価基準に、次のように定義されています。

「収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。
収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を 求める場合に特に有効である。また、不動産の価格は、一般に当該不動産の収益性を反映して形成されるものであり、収益は、不動産の経済価値の本質を形成するものである。したがって、この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。なお、市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、取引価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、この手法が活用されるべきである。(以上、不動産鑑定評価基準第7章第1節Ⅳ収益還元法1.意義)」

上記のように、収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すと予測される純利益と現在利益を総合し(収益価格)、評価額を算定する方法です。
この方法は、投資不動産の評価額を算定する場合に多く使われています。

収益価格を求める方法には、
➀直接還元法と➁DCF方法という2つの方法があります。

➀直接還元法とは、通常1年間における純利益を還元利回り(表面利回り)で割って、収益価格を求める方法です。
②DSF方法「Discounted Cash-Flow」の略で、次の2つの価値の合計を求める方法です。
 〇対象となる不動産が所有期間中に得られる純利益を現在価値へと換算したもの
 〇所有期間終了時に売却できるであろう価格を現在価値に割り戻したもの

(3)原価法

原価法については、不動産鑑定評価基準に、次のように定義されています。

「原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価 について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法 による試算価格を積算価格という。)。
原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調 達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり、対象不 動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができる ときはこの手法を適用することができる。(以上、不動産鑑定評価基準第7章第1節Ⅱ原価法1.意義)」

上記のように、原価法とは、対象不動産を仮にもう一度調達した場合の原価を求めた後に、建築年数による低下した価値を減価修正し、現時点の価値を推定する方法です。
この方法は、建物や一戸建ての評価額を算出する場合に多く使われています。

4.具体例

東京地裁平成30年3月13日判決では、納税者側が主張した不動産鑑定士による鑑定評価額を相続税法22条の時価として採用できるかどうかが問題となりました。
以下の判決からも分かるとおり、財産評価基本通達による評価額よりも不動産鑑定士による鑑定評価額が低いからといって、安易に鑑定評価額を採用して申告した場合、その評価額が否認される可能性があります。鑑定評価額を採用して申告する際は、評価通達では適切に評価できない特別の事情があるかどうかを慎重に検討する必要があります。

※相続税法22条「この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」

【原告(納税者側)の主張】

〇本件鑑定評価書における本件各土地の鑑定評価額を基に算出した価額をもって、本件各土地の相続税評価額(相続税22条「時価」)と考えると主張しました。
〇本件鑑定評価書は、取引事例比較法による比準価格により標準的画地の価格を求めた上で、対象不動産の個別格差率を乗じて本件各土地の鑑定評価額が決定されています。
具体的には、適切な取引事例を選択し、取引価格に事情補正、時点修正、標準化補正を施した後に、地域要因の比較を行い、個別的要因による減額をした上で、本件1土地(宅地)は4,000万円、本件2土地(雑種地)は3,600万円と評価しました。

【被告(課税当局)の主張】

〇評価通達による評価額をもって、本件各土地の相続税評価額と考えるのが相当であると反論しました。
〇具体的には、本件1土地は5,621万円、本件2土地は5,695万円が相当と反論しました。

【裁判所の判断(東京地裁平成30年3月13日判決)】

〇本件各土地に関する評価通達の定めはいずれも合理的であるといえるから、その評価方法によっては適切に評価することができない特別の事情の存しない限り、これによってその土地を評価することには合理性があるというべきである。
〇本件鑑定評価書の評価額については、本件1土地の近隣に存在する基準地の評価価格に比べて、本件1土地に係る本件鑑定評価書で参照された取引事例4件の価額は著しく低廉であるといえる。
〇本件鑑定評価額で参照された事例の1件は売り急ぎの事例であることが認められるにもかかわらず、その売り急ぎによる事情補正がされていないし、その点に関する合理的な説明もされていない。
〇以上から、本件鑑定評価書には問題点を指摘することができることから、本件鑑定評価額が時価であるとか本件鑑定評価額をもって評価通達では適切に評価できない特別の事情があるとは認められないと判断した上で、訴えを棄却する判決を下しました。

 

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