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確定申告で多い間違いとその具体例

2019/03/25

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1.はじめに

確定申告で間違いがあった場合でも、その間違いを訂正することはできます。
申告期限内であれば「訂正申告」、申告期限後であれば「更正の請求」又は「修正申告」となります。
とはいえ、最初から間違いが無いに越したことはありません。
そこで、以下において、確定申告での間違いが多い事例を具体的に説明いたします。

2.確定申告で多い間違いの具体例

(1)申告不要の配当等を一度申告した後に、申告しなかったとする更正請求は不可

確定申告の必要がない少額の配当等について、配当控除(10%)等を受けるために確定申告した場合、その後に、配当控除を受けても税額が不利になると分かったからと言って、その申告をしないものとする更正の請求はできません。また、申告した配当所得等が実際の配当額より少なかったとしても、修正申告をすることもできません。
というのは、確定申告の必要がない少額の配当等を申告したということは、更正の請求事由や修正申告事由に該当しないからです(租税特別措置法8の5第1号、租税特別措置法関係通達8の5-1、国税通則法19条、23条)。

(2)申告分離課税から総合課税への変更は不可

上場株式等の配当等について申告分離課税を選択して確定申告した後に、損益通算との関係などから総合課税で確定申告をした方が税額有利になると分かったからといって、更正の請求又は修正申告により申告分離課税から総合課税に変更することはできません。
なぜなら、上場株式等の配当等を申告分離課税で申告したことは、更正の請求事由や修正申告事由に該当しないからです。
ただし、確定申告期限内であれば、総合課税にして再度確定申告をすれば、変更することはできます(租税特別措置法8の4第1号、租税特別措置法関係通達8の4-1、国税通則法19条、23条)。

(3)繰越損失額を控除するためには、繰越損失額を連続して確定申告することが必要

繰越損失額を控除するためには、その損失が生じた年から毎年、繰越損失額を確定申告する必要があります。例えば、平成28年にFX取引等で生じた損失額(平成28年分の確定申告済)を、平成29年分の確定申告で繰越損失額として記載していなかった場合、この平成28年分の繰越損失額を平成30年分の所得税から控除することはできないことになります。

なお、平成29年に生じた損失額について、平成29年分の確定申告で損失を繰り越す旨を申告していなかった場合でも、平成30年分の確定申告をする前であれば、平成29年分の損失についてはその損失を繰り越すものとして更正の請求をすることはできます(租税特別措置法41の15第3号、租税特別措置法関係通達41の15-1、41の15-2等)。

(4)開業2ケ月以内の青色申告の承認申請~既に別の事業を営んでいた場合~

青色申告を始めるためには青色申告の承認申請が必要となります。そして、青色申告を始めたい年の3月15日までに税務署に青色申告の承認申請書を提出する必要があるのですが、その年の1月16日以後新たに事業を開始した場合には、事業開始から2ケ月以内に申請書を提出すれば、事業を開始した年から青色申告することができます。

ただし、例えば、既に小売業を営んでいたが白色申告だったところ、平成30年4月以降に別の事業(事業所得が生じる事業)を始めた場合に、別の事業を始めてから2ケ月以内に青色申告の承認申請書を提出したとしても、平成30年分の所得税から青色申告にはなりません。平成30年分は従来通り白色申告で、平成31年分の所得税から青色申告となります。
この場合は、既に小売業を営んでいるため、平成30年4月以降に別の事業を始めたとしても、それは新たに事業を開始した場合には該当しないためです(所得税法144条等)。

(5)妻の年金から天引きされた社会保険料は夫の所得から控除不可

社会保険料控除の対象配偶者である妻の年金から天引きされている介護保険料や後期高齢者医療保険料について、夫の社会保険料控除の対象とすることはできません。
もっとも、妻の年金からの天引きではなく、実際に夫が妻の社会保険料を支払っているのであれば、夫の社会保険料控除の対象となります(所得税法74条)。

(6)国民年金の一括支給の場合も、対応する年分ごとに区分して収入計上

年金の収入計上時期は、その支給の基礎となった法令等で定められた支給日です。
それゆえ、国民年金の計算誤りによって数年分の年金を一括して支給を受けた場合であっても、一括支給を受けた年に全額を収入として計上するのではなく、対応する年分ごとの所得としてそれぞれ計上することになります。

(7)住宅取得等資金贈与の特例と住宅ローン控除を併用した場合の注意点

まず、住宅取得等資金贈与の特例とは、平成27年(2015年)1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額まで、贈与税が非課税となる特例のことです。(国税庁HP)

他方、住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、平成33年(2021年)12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。(国税庁HP)

上記2つの制度は併用可能ですが、これらを併用した場合は、住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けた受贈額については、住宅ローン控除額の計算の基礎となる家屋の取得価額等から差し引く必要があります。

また、マイホームの新築、購入等をして、入居した年とその年の前後2年ずつの合計5年の間に、居住用財産の3,000万円の特別控除や買換・交換の特例といった居住用財産の譲渡益に関する特例を受けていた場合には、住宅ローン控除を受けることはできません(租税特別措置法31の3、41)。

(8)配偶者控除及び配偶者特別控除のポイント

配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度のことです。他方、配偶者特別控除とは、配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合がある制度のことです(なお、配偶者特別控除は夫婦の間で互いに受けることはできません。)。

配偶者控除については、平成29年度税制改正で、本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者の合計所得金額に関わらず、配偶者控除を適用できなくなりました。他方、配偶者特別控除に関しては、従前から、本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。

また、配偶者特別控除に関して、改正前は配偶者の合計所得金額が76万円未満であることが適用要件でしたが、改正後は123万円以下まで認められることになりました(所得税法83、83の2)

※本記事は記事投稿時点(2019年3月25日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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