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海外不動産・預貯金にかかる相続税や遺産税

2019/06/12

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海外不動産・預貯金にかかる相続税や遺産税

1 はじめに

日本に住んでいる日本人の所有する財産というのは、必ずしも日本国内にあるものだけとは限りません。海外に不動産を所有していたり、海外の銀行に預貯金を所有していたりすることもあります。このような海外財産を所有する人が亡くなった場合、海外の不動産や預貯金についても日本の相続税の対象となります。また、海外においても課税対象となることがあります。例えば、米国に不動産や預貯金があった場合、米国には、遺産税という制度があり、米国内の不動産や預貯金を残して亡くなった場合、米国の遺産税の課税対象となることがあります。これらについて、以下に、簡単に説明いたします。

2 日本の相続税

(1)課税対象

日本に住んでいる日本人が亡くなった場合、その亡くなった人(被相続人)の全世界の財産が日本の相続税の課税対象となります。
よって、被相続人の財産が、米国の不動産や預貯金である場合であっても、日本の相続税の課税対象となります。

(2)海外財産の評価方法

相続税の課税対象となる財産の評価方法は、「財産評価基本通達」に規定されています。
これによると、海外財産の評価方法についても、国内財産と同じく、原則として、財産評価基本通達に従うこととなっています。
ただし、財産評価基本通達により評価できない海外財産については、
「当該財産評価基本通達に定める評価方法に準じて、又は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価」することになります(財産評価基本通達5-2)。

《具体例1》

〇日本に住んでいる日本人が、米国に所有する不動産を賃貸していたケースで、当該日本人が亡くなった場合に、本件賃貸用不動産をいかに評価するか。

米国の賃貸用不動産について、日本で言うところの路線価は当てはまらないため、財産評価基本通達の評価方法を適用することはできません。
また、国内の不動産であれば適用される貸家や貸家建付地の評価減についても、海外不動産について適用することはできません。というのも、貸家や貸家建付地の評価減は、日本法である借地借家法を前提としているからです。
よって、米国の賃貸用不動産の評価については、財産評価基本通達に準じた評価方法又は精通者意見を参酌することになります。そこで、実務では、現地の不動産鑑定士の鑑定により対応することが多いようです。

《具体例2》

〇日本に住んでいる日本人が、米国銀行口座に預金を有していたケースで、当該日本人が亡くなった場合に、本件預金をいかに評価するか。

海外の預金については、日本国内の預金と同じく、相続開始時の口座残高を評価額とします。
口座残高については、取引明細書等を銀行に発行してもらうことで確認できます。

(3)海外財産の為替換算(財産評価基本通達4-3)

〇原則形態……納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期の最終為替相場(財産についてはTTB・電信買相場)での円換算(財産評価基本通達4-3・邦貨換算)

〇課税時期の為替相場が存在しない場合……その直前のTTBによる円換算
(ただし、先物外国為替契約を締結している場合には、その契約により確定している為替相場での円換算)

(4)海外不動産への小規模宅地等特例の適用可否

〇海外不動産についても、小規模宅地等特例の適用は可能
小規模宅地等の特例について、国内不動産でなければならないという規定がないため。

3 米国の遺産税

(1)米国遺産税の納税義務者

米国遺産税の納税義務者 = 被相続人
(参考:日本の相続税の納税義務者 = 相続人 )

(2)米国遺産税の課税財産の範囲

〇被相続人が米国居住者又は米国市民(米国籍保有者)の場合
  →被相続人が有する全世界財産が米国遺産税の対象
〇被相続人が米国非居住者(米国籍保有者を除く)の場合
   →米国内に所在する財産についてのみ米国遺産税の対象

(3)米国遺産税の基礎控除

〇被相続人(納税義務者)が米国市民や米国居住者の場合
   →1,140万米ドル(2019年)
   (1ドル=108円と仮定した場合、約12.3億円)

〇被相続人(納税義務者)が米国非居住者で米国籍を有しない場合
   →6万米ドル
   (1ドル=108円と仮定した場合、約648万円)

上記のように、被相続人が米国市民や米国居住者の遺産税基礎控除額は、2019年において1,140万米ドルとなっており、被相続人が米国非居住者で米国籍を有しない場合に比べて、大幅な基礎控除額が認められています。
また、被相続人が米国市民や米国居住者の遺産税基礎控除額は、ここ数年は毎年引き上げられてきています。具体的には、2012年512万米ドル、2013年525万米ドル、2014年534万米ドル、2015年543万米ドル、2016年545万米ドル、2017年549万米ドル、2018年1,118万米ドル、2019年1,140万米ドルと年々引き上げられています。他方、被相続人が米国非居住者で米国籍を有しない場合の遺産税の基礎控除額については、6万米ドルと低額であり、ここ数年は特に変更されていません。

(4)日米相続税租税条約の適用及びそのメリット

日本と米国は、相続税・贈与税に関する租税条約を締結しています。
租税条約の適用を受ける場合、米国非居住者で米国籍を有しない場合の基礎控除額(6万米ドル)に代えて、米国市民・米国居住者に認められている基礎控除額に一定割合を剰余して算出した金額を基礎控除額とします。これにより、非居住者で米国籍を有しない場合の基礎控除額が6万米ドルより大きくなる可能性があります。

租税条約適用による基礎控除額
=米国市民・米国居住者の基礎控除額×米国遺産税課税対象財産額/全世界遺産総額

《具体例》

日本に居住する日本人が、日本国内に6億円、米国内に2億円の資産を残して、2018年に死亡したとします(被相続人=納税義務者は、米国非居住者で米国籍無し)。
この場合に、租税条約適用による米国遺産税基礎控除額は、次のような計算になります。

2018年に相続が発生しているため、2018年の「米国市民・米国居住者の基礎控除額」は1,118万米ドルです。
米国遺産税課税対象財産額は、米国内の2億円の資産
全世界遺産総額は、日本国内の資産6億円と米国内の資産2億円を合わせた8億円
これらを上記の計算式に当てはめると

租税条約適用による基礎控除額=1,118万米ドル×2億円/8億円
              =279.5万米ドル
              (1ドル=108円と仮定した場合、3億186万円)

租税条約の適用を受けない場合、米国非居住者で米国籍無しの納税義務者に認められている基礎控除額は6万米ドル(1ドル=108円と仮定した場合、648万円)のみであることから、米国内にある2億円の資産について、納税額が発生することが考えられます。
他方、租税条約の適用を受ける場合には、上記のような計算の結果、基礎控除額が3億186万円に上ることから、米国内にある2億円の資産について、納税額をゼロにすることができることとなります。

(5)租税条約適用によるデメリット

上記のように、租税条約適用によって納税額がゼロになったとしても、申告期間内(9ケ月)に遺産税申告書をIRS(米国内国歳入庁)に提出する必要があります。この際に、計算の根拠として、被相続人の米国財産のみならず全世界財産についても米国IRSに開示し、日本の相続税申告書や分割協議書なども提出する必要があります。

米国財産に比べて、全世界財産が莫大な金額に上る場合、全世界財産の情報を米国IRSに開示することを回避したいと考える方もいらっしゃるかと思います。その場合には、あえて租税条約を適用しないということも考えられます。

(6)米国の州遺産税の存在

米国では、国税である連邦遺産税の他に、州によっては州遺産税が存在することもあります。よって、米国内の財産がどの州に所在しているのかについて、注意する必要があります。

4 日米双方に相続税・遺産税を申告する際の注意点

(1)申告書の提出期限

〇日本の相続税申告書提出期限……相続開始日から10ケ月

〇米国の遺産税申告書提出期限……死亡日から9ケ月
  →9ケ月の期限内に延長申請すれば、6ケ月間延長可能
  →ただし、概算納税額を計算の上、9ケ月以内に予め予定納税の必要あり

〇日米双方に申告する場合には、申告書提出期間の短い米国に併せて準備を進めるように注意する必要があります。

(2)外国税額控除

米国に所在する財産について、日本と米国とで相続税・遺産税が課税された場合、国際的な二重課税を排除するための外国税額控除という制度があります。

(3)外国税額控除の適用順位

日本において、外国税額控除の適用順位は最下位です。よって、日本において相続税の申告をした際に、他の税額控除を受けたことにより、外国税額控除適用の前にすでに納税額がゼロになった場合において、外国税額控除の適用を受けることはできません。この場合、外国で支払った税金を日本で還付されることは無いということになります。

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