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相続土地国庫帰属制度スタート!山林や森林への適用可否
2023/10/16
関連キーワード: 土地 相続 相続土地国庫帰属制度
1.はじめに
令和5年4月27日から「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 」が施行され、相続土地国庫帰属制度が導入されました。
相続等によって土地を取得したものの、売却が難しい・所有し続けるにも固定資産税や管理費用がかかるという理由で、土地を手放したい相続人の選択肢の1つとなります。
【出典:法務省ホームページ 】
しかし、山林や森林は境界が明白でないことも多く、当該制度を適用できないのでは…と考えられる相続人の方も一定数いらっしゃいます。
結論から申し上げると、当該制度の要件を満たした上で負担金を納付すれば、相続した山林や森林を国庫へ帰属させることは可能です。
本稿では、相続土地国庫帰属制度における、山林や森林への適用可否についてご案内します。
2.相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続等によって土地の所有権を取得したものの、管理等に負担がかかる等の理由で不要になった土地を、一定の負担金を納付することで、土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度のことです。
相続した不要な土地を、国が引き取ってくれる制度…と考えていただけると分かりやすいですね。
相続土地国庫帰属制度の申請の流れは以下の通りで、承認申請をした後に法務局による審査を経て、申請者が負担金を納付することで土地が国庫に帰属されます。
【出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要 」】
相続土地国庫帰属制度は誰もが利用できる制度ではなく、申請できる人や申請が認められる土地について、細かな要件が設けられています。
相続土地国庫帰属制度について、詳しくは法務省「相続土地国庫帰属制度の概要 」や、「相続土地国庫帰属制度とは?メリット・デメリット・手続き方法や、相続放棄との違いを解説 」をご覧ください。
2-1.申請できる人の要件(申請権者)
相続土地国庫帰属制度の申請ができるのは、以下の要件をすべて満たした人です(施行日前に発生した相続でも適用可能)。
遺言書による遺贈で土地を取得していても、相続人でない限りは相続土地国庫帰属制度を利用できません。
ただし例外的に、相続人以外の受遺者や法人であったとしても、相続人と共同であれば当該制度を利用できます。
なお、土地が共有持分である場合は、共有者全員で申請を行う必要があります。
2-2.申請が認められる土地の要件
相続土地国庫帰属制度の申請が認められる土地は、以下の「却下事由」や「不承認事由」に該当しないことが要件となります(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第2条第3項、第5条第1項等 )。
所有している土地に当該制度が適用できるか否かを確認したい方は、法務省「相談したい土地の状況について(チェックシート) 」をご利用ください。
3.相続土地国庫帰属制度は山林や森林も申請可能
相続土地国庫帰属制度は、宅地や田畑のみならず、境界が不明であることが多い山林や森林にも適用できます。
1970~80年代に被害が多発した原野商法によって被相続人が取得した土地であっても、当該制度の要件を満たしていれば承認申請が可能です。
しかし、山林や森林であれば、どのような状態であっても一律に引き取ってもらえる訳ではありません。
当該制度を山林や森林に適用させるためには、帰属の承認ができない山林や森林に該当しないこと、さらに申請時に境界を明らかにする必要があります。
3-1.帰属の承認が得られない山林や森林
相続土地国庫帰属制度を適用するためには、「却下事由」や「不承認事由」に該当しないことという要件が定められていると前章でご紹介しました。
この不承認事由である「E)その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地」において、山林や森林は「適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林」に該当する場合は、帰属の承認が得られないとされています。
例えば、間伐の実施を確認することができない人工林や、一定の生育段階に到達するまで更新補助作業が生じる可能性がある標準伐期齢に達していない天然林は、当該制度の承認を得ることができません。
3-2.山林や森林の境界の判断方法
相続土地国庫帰属制度を山林や森林に適用させるためには、境界を明確にしなくてはなりません。
しかし、高度な測量を実施して境界確定図を申請時に提出する必要はなく、以下の2点を確認して判断されます。
①については、登記簿事項証明書や地図証明書などで確認したうえで、帰属させたい土地の範囲に目印(紅白ポールやプレート)を設置すれば良いこととなります。
設置方法については土地家屋調査士に依頼する、もしくは自分で設置も可能です。
当該制度の申請時に、この目印を境界線として撮影した写真を添付することとなります(「境界確認書等」がある場合は申請時に添付が推奨されます)。
②については、隣接する土地の所有者から異議が出たとしても、その後当事者間で調整して争いがなくなれば、帰属が承認されることが考えられます。
4.相続土地国庫帰属制度は審査手数料や負担金が発生する
相続土地国庫帰属制度には、「審査手数料」や「管理費相当額の負担金」が発生します。
なお、当該制度は負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転することとなります。
負担金が期限内(負担金の通知が到達した翌日から30日以内)に納付されない場合は、国庫帰属の承認が失効しますのでご注意ください。
4-1.審査手数料
相続土地国庫帰属制度の審査手数料として、土地一筆あたり14,000円が必要です。
申請する際に提出する申請書に、審査手数料相当額の収入印紙を貼って納付します。
なお、申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認になった場合も、審査手数料は返還されません。
4-2.管理費相当額の負担金
管理費相当額の負担金とは、承認された土地の性質に応じて、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の、標準的な土地管理費用相当額のことです。
管理費相当額の負担金は、宅地・田・畑の場合は、面積に関わらず原則20万円(一部の地域内にある場合は面積に応じて算定)です。
しかし山林・森林の場合は、面積区分に応じて管理費相当額の負担金が算定されます。
申請承認後には、法務局から申請者に対して納入告知書が送付されます。この納入告知書に記載されている負担金額を、納入告知書を添えて期限までに指定の銀行に納付します。
負担金の詳細について、詳しくは法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金 」をご覧ください。
5.さいごに
境界が明白ではない山林や森林だからといって、相続土地国庫帰属制度の適用を諦める必要はありません。
要件をすべて満たすことはもちろん、帰属の承認ができない山林や森林に該当しないこと、そして申請時に境界を明らかにすることができれば、山林や森林にも当該制度を適用できます。
国庫に帰属されるまでのハードルは決して低くはありませんが、不要な山林や森林を手放すための選択肢にはなります。
ご不明点がある方は、相続問題に強い司法書士や弁護士に相談されることをおすすめします。
※本記事は記事投稿時点(2023年10月16日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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