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相続土地国庫帰属制度とは?メリット・デメリット・手続き方法や、相続放棄との違いを解説

相続土地国庫帰属法とは

土地が相続されると聞けば、嬉しいことだと思われるかもしれません。しかし、特に地方部において、利用価値の低い土地を相続して、管理の手間やコストばかりがかさみ、しかも売るに売れなくて困るというケースが近年増えています。土地はモノと違って「捨てる」ことができません。これまでは、相続した土地が売れなければ、自分で管理を続けるしかなかったのです。

その問題に対応するため新たに制定されたのが、相続土地国家帰属法に基づく「相続土地国庫帰属制度」です。これは一言でいえば、相続によって取得した遺産にいらない土地があった場合は、条件によってその土地を国に引き取ってもらえるという制度です。

なお、相続土地国庫帰属制度の開始は、令和5年4月27日からです。ここでは、記事執筆時点である令和5年1月現在までに判明している情報をまとめて解説します。

動画でも分かりやすく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください ▼

この記事の目次 [非表示]

1.相続土地国庫帰属法により、相続した土地を手放すことが可能になる

令和3年、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下、本記事では「相続土地国庫帰属法」と呼びます)が制定されました。同法は、令和5年4月27日に施行される予定です。

この法律に基づいて新しく生まれた制度が、「相続土地国庫帰属制度」です。

1-1.相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、一言でいえば、いらない土地を国に「あげる」ことができる制度です。

相続によって所得された土地が一定の条件に当てはまる場合に、その土地を取得した相続人が国に対してこの制度の申請をして承認されれば、一定の費用を支払い、「いらない土地」を国に引き取ってもらえます。

1-2.相続土地国庫帰属制度が制定された背景

では、なぜこのような制度が創設されたのでしょうか? その理由や背景を確認しておきましょう。

1-2-1.土地に対する需要が減っている

相続土地国庫帰属制度が制定された大きな背景としては、人口減少を背景として、国全体として土地に対する需要(ニーズ)が減少しているという問題があります。これは、都市部に住んでいる人には、イメージしにくいかもしれません。

大都市部やその近郊で利便性の高い土地であれば、需要は必ずありますが、国土全体の面積からすれば、そのような地域はわずかであることが実態です。日本の国土のうち、約3分の2は森林であり、平地のほうがずっと少ないのです。

人口が減り続けている地方都市や郊外、農村の宅地や農地、また国土の多くを占める森林などは売ることもできず、寄附などにより贈与しようと思っても、「利用価値がないからタダでもいらない」といわれることになります。

1-2-2.土地は持っているだけで費用がかかる

なぜ「タダでもいらない」のかといえば、土地は、所有をしていればそれだけで管理に手間や費用がかかり続けるためです。

まず、固定資産税がかかります。さらに、近隣に住人がいる地域であれば、定期的な草刈りなどの手入れもしなければなりません。更地ではなく、土地に建物が建っていれば、防犯、防災の観点から、取り壊す必要もあり、それにもお金がかかります。さらに、万一、使われていない土地が原因で、近隣住民に被害が生じるような事件、事故があれば、所有者が損害賠償責任を負わされる可能性もあります。

1-2-3.土地は捨てることができない

いらないモノであれば廃棄できますが、いらない土地は捨てる(放棄する)ことができません。民法には、土地の放棄に関する規定自体がないのです。したがって、いらない土地を処分するには、他者に所有権を移転するしかありません。その方法は、「売る」か「あげる(寄附などを含む)」かしかないのです。

そして、利用価値のない土地は、当然買い取る人はいませんし、自治体への寄附なども受けつけてもらえません。

最近では、そのような使えない土地について、「土地所有者がお金を払えばいらない土地を引き取る」というサービスを提供している事業者もいます。産業廃棄物の処理などと同様に、土地を譲り渡す人のほうが、お金を支払って引き取ってもらうのです。しかし、そのような事業者も、どんな土地でも必ず引き取ってくれるわけではありません。

そもそも、事業者にお金を払って土地を引き取ってもらうくらいであれば、最初から土地を相続しないほうがいいのではないでしょうか? つまり、相続放棄です。

1-2-4.土地だけを相続放棄することはできない

相続は放棄することもできます。しかし、相続放棄をすれば、使えない土地だけではなく、預貯金などの他の財産、他の土地なども一切相続できなくなってしまいます。「いらない土地」だけをピンポイントで相続しない、ということはできないのです。

このような理由により、使えない土地の相続は、相続人にとって非常に頭の痛い問題でした。

1-2-5.使えない土地が増えることは国や自治体も困る

「使えない土地」の問題は、相続人だけの問題にとどまりません。こういった土地が相続された後は、往々にして、所有者の移転登記もされず、故人の名義のまま放置状態にされてしまいます。それが、3代、4代と相続されていくと、誰がその所有者なのかわからなくなってしまいます。

国や自治体が、公共的な目的(道路建設など)でそのような土地を利用したい際に、所有者を調べるのに時間と手間が非常にかかったり、最終的に所有者が不明であれば、利活用に支障が生じたりします。現在、そういう事例は決して少なくないのです。

そこで、使えない土地を相続して困る相続人から、国が土地を引き取って管理することで、相続人の負担を減らすとともに、将来の公共的な利活用にも備えられるようにするために制定されたのが、相続土地国庫帰属制度なのです。

2.相続土地国庫帰属の対象となる土地は、どんな土地か?

上述のように、相続土地国庫帰属制度には、国が土地を所有、管理することにより、将来の公共的な利活用に備えるという意図も含まれています。そのため、どのような土地であっても無条件に引き受けてもらえるわけではありません。

具体的には、相続土地国庫帰属制度の対象となる土地の考え方は、次のとおりです。

2-1.相続土地国庫帰属の対象となる土地の条件

相続人が、相続土地国庫帰属制度の申請できる要件は、次のとおりです(相続土地国庫帰属法2条)。

①相続や相続人への遺贈で取得した土地であること
②土地が共有であるときは、共有者全員が共同して行うこと
③一定の却下事由に該当する土地ではないこと(次で解説)

①の要件から、たとえば、自分で買った土地や、親などから生前贈与で譲り受けた土地の場合には、相続土地国庫帰属制度を申請することはできません。

また、①の要件における「遺贈」とは、遺言によって遺産を渡すことです。遺贈は、相手に制限がなく、相続人ではない人(孫など)に遺贈をすることも可能です。

ただし、相続土地国庫帰属制度が利用できる「遺贈」は相続人に対する遺贈に限られており、相続人ではない人が遺贈を受けた土地については相続土地国庫帰属制度を適用することができません。

2-2.相続土地国庫帰属の対象とならない土地

次の土地は、相続土地国庫帰属制度の対象とはなりません。

2-2-1.申請をすることができないケース

申請できない土地

上記要件③「一定の却下事由に該当する土地ではないこと」の、却下事由は、次のとおりです(相続土地国庫帰属法2条3項相続土地国庫帰属法施行令2条)。

①建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地(現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地、墓地、境内地)
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地

申請したいのがこれらの事由に該当する土地であるなら、該当しなくなるように、事前に対応をしておく必要があります。たとえば、(1)のように建物が建つ土地なら、相続土地国庫帰属制度を申請する前に、取り壊して更地にしておくということです。

また、②から⑤に該当する土地も、そのままでは申請をすることはできないため、たとえば②に該当するなら抵当権を外しておく、④に該当するなら汚染を除去しておく、⑤に該当するなら、境界を画定しておくといった事前準備が必要です。

2-2-2.申請しても原則として承認されないケース

承認されない土地

次の土地は、相続土地国庫帰属制度の申請をすること自体は可能です。ただし、申請をしても、原則として承認されません(相続土地国庫帰属法5条1項相続土地国庫帰属法施行令3条)。

①崖(勾配が30度以上であり、かつ、その高さが5メートル以上)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
②土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両、樹木などの有体物が地上に存する土地
③除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
④隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの(隣接所有者等によって通行が現に妨害されている土地など)
⑤前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

このうち⑤「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの」としては、次のものが挙げられています(相続土地国庫帰属法施行令3条3項)。

  • 土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く)
  • 鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く)
  • 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
  • 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
  • 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

要するに、普通に利用することができないような土地です。

このような土地は、相続土地国庫帰属制度の利用を申請しても、承認を受けることができないので、これらに当てはまらないかどうか、申請前によく確認する必要があります。

3.相続土地国庫帰属を申請できる人

相続土地国庫帰属制度の利用を申請できる人は、相続によりその土地を取得した人です。では、次のような場合は、制度の利用を申請することができるのでしょうか。

3-1.制度のスタート前に土地を相続した人も申請可能か?

相続土地国庫帰属制度がスタートするのは、令和5年4月27日からですが、それ以前に、相続により土地を取得していた人も、申請することは可能です。

3-2.土地が共有の場合も、申請可能か?

例えば、兄弟姉妹などで1筆の土地を相続して共有している場合もあるでしょう。このような共有土地でも、相続土地国庫帰属制度の利用は可能です。ただし、共有者全員が同意して全員で共同して申請を行わなければなりません。

また、共有者のうちに1人でも相続でその土地を取得している人がいれば、他の共有者に売買で土地を取得した人がいても、申請することができます。

【設例】

  • 父と母が、一定金額を出し合って共同で土地Aを購入し、2分の1ずつの持分を所有。
  • 父が死亡して、父の持分を長男が相続。
  • 相続後は、母と長男が2分の1ずつの持分で、土地Aを共有。
土地が共有の場合も、申請可能か?

この設例の場合には、土地Aを「売買で取得した母」と、「相続で取得した長男」の共有となっています。

このようなケースでも、長男はこの土地を相続で取得しているため、母の持分も含めた土地全体に対して相続土地国庫帰属制度を申請することができるということです。

4.相続土地国庫帰属の申請手続きの手順

制度開始後、相続土地国庫帰属制度を申請し、利用する流れは次のとおりとされています。

(引用:法務省ホームページ相続土地国庫帰属制度の概要

以下で、手順を1つずつ確認していきましょう。

4-1.承認申請

まず、申請対象となる土地の所有者が、承認申請を行うことからスタートします。

その際には、あわせて審査手数料を支払います。申請に必要な書類や審査手数料の詳細は、記事作成時点で未定ですが、決まり次第随時、法務省ホームページなどで公表されていくはずです。

また、申請書の提出先は、最終的には決まっていないものの、その土地を管轄する法務局、地方法務局とすることが予定されています。

4-2.法務局の書面審査

申請後は、まず法務局にて書面審査がなされます。

書面審査で、たとえば土地に抵当権がついているなど、申請要件を満たしていないことが判明すれば、申請は却下されます。

4-3.現地調査

次に、法務担当官による実地調査が行われます。

現地調査の結果、申請要件や承認要件を満たしていないと判断されれば、却下や不承認がなされます。

4-4.審査結果の通知

現地調査の結果を踏まえて、審査結果が通知されます。

国庫帰属が承認された場合には、承認通知とあわせて、負担金についても通知されます。

4-5.負担金の納付

負担金の通知にしたがって、負担金を納付します。負担金の納付期限は通知を受けた日から30日以内です。期限を超過すると、せっかくされた承認の効果が消滅しますので、期限内に納付しましょう(相続土地国庫帰属法10条3項)。

なお、負担金の額については、後ほど解説します。

4-6.国庫帰属

負担金の納付と同時に、申請対象とした土地が国庫に帰属します。以後は、国がその土地の所有者となります。

4-7.処分の取消しと損害賠償責任に注意

相続土地国庫帰属制度について虚偽申請を行ったことが判明した場合には、いったん承認がされた後であっても、承認が取り消される可能性があります(相続土地国庫帰属法13条)。

また、本来であれば却下や不承認とされるべき事情がある土地であるにもかかわらず、そのことを隠して申請したことで国庫帰属が承認されてしまった場合には、国に対して損害賠償責任を負うこととなります(相続土地国庫帰属法14条)。

虚偽申請や重要な事項を隠しての申請などは、絶対に行わないよう注意しましょう。

5.相続土地国庫帰属を申請する時にかかる費用、負担金

審査の際には審査手数料が必要です。

また、相続土地国庫帰属制度を利用に際して必要となる費用は、審査を受ける際の「審査手数料」および、国に土地を引き取ってもらう際の「負担金」です。負担金は、宅地の場合で20万円など、少額ではありませんのでよく確認しておきましょう。

5-1.審査手数料

相続土地国庫帰属制度を申請する際には、審査手数料の負担が必要です。審査手数料は審査にかかる手数料であるため、たとえ不承認となっても返還されません。

なお、審査手数料の金額は、記事作成時点で未定ですが、決まり次第法務省のホームページで公表される見込みです。

5-2.負担金

相続土地の国庫帰属が承認された時点で、負担金の納付が必要となります。負担金の額は土地の種類によって異なっており、それぞれ次のとおりです。

土地の種別負担金額
宅地原則:面積にかかわらず、20万円。
例外:都市計画法の市街化区域、または用途地域が指定されている地域内の宅地については、面積に応じて算定。
→下記算定式の(1)。
田、畑原則:面積にかかわらず、20万円。
例外:都市計画法の市街化区域、または用途地域が指定されている地域内の農地、農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地、土地改良事業の施行区域内の農地などは、面積に応じて算定。
→下記算定式の(2)。
森林面積に応じて算定。
→下記算定式の(3)。
その他面積にかかわらず、20万円。

(※1)市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます

(※2)用途地域とは、都市計画法における地域地区の一つであり、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用が定められている地域をいいます

(※3)農用地区域とは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域として指定された区域をいいます

このうち、算定式の(1)から(3)は、それぞれ次のとおりです。

(引用:法務省ホームページより相続土地国庫帰属制度の負担金

 

5-2-1.複数の土地をまとめて申請する場合

複数の土地についてまとめて申請する場合であっても、負担金は原則として1筆の土地ごとに算定します。

ただし、「同じ種目である隣接する2筆以上の土地」については、まとめて国庫帰属の申請をする場合にはこれらを1つの土地であるとみなし、1筆分の負担金で国庫帰属させることが可能です。

6.相続土地国庫帰属制度の開始日、利用や申請の期限

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日からスタートします。これ以後であれば、相続土地国庫帰属制度を利用することが可能です。

また、相続土地国庫帰属制度の利用や申請に、特に期限はありません。そのため、たとえば10年以上前に相続した土地であっても、相続土地国庫帰属制度の利用を申請することが可能です。

ただし、いったん申請をして承認がなされたら、その後30日以内に負担金を納付しなければなりません。土地によっては、負担金が高額になる場合もあるため、あらかじめ負担金の額を試算し金額を想定した上で、申請タイミングを検討しましょう。

7.相続土地国庫帰属制度のメリット

相続土地国庫帰属制度の利用には一定の手続き必要であり、また負担金もかかります。それでも、制度を利用するメリットには、なにがあるのでしょうか?

7-1.いらない土地だけを手放すことができる

いらない土地だけを手放すことができる

相続土地国庫帰属制度を利用する最大のメリットは、いらない土地だけを手放すことができる点です。

すでに説明したとおり、これまでは、相続した特定の土地だけをピンポイントで手放す制度はありませんでした。相続放棄の制度は従来から存在するものの、相続放棄をすると他の遺産も一切相続することができなくなります。そのため、仮にその土地がいらなくても他に相続したい財産があれば、いらない土地も含めて相続せざるを得ませんでした。その結果、しぶしぶ引き受けた土地に対して、管理に手間やコストが生じていた状況があります。

相続土地国庫帰属制度を利用すれば、こういった状況から解放されます。

7-2.引き受け手を自分で探す必要がない

引き受け手を自分で探す必要がない

まったく利用価値がない土地は別として、利用価値は低くても、引取り手が見つかる可能性のある土地を相続する場合もあるでしょう。しかし、そういった場合、通常の不動産業者に依頼してもなかなか引取り手を見つけることができません。

当然ながら、いらない土地を誰かに無理やり押し付けることはできないため、つてをたどって「もらってくれる人」を探してきたりするもの大変です。

そのため、土地を誰かに引き取ってもらおうにも引き受け手を見つけることができず、諦めていた人も少なくないでしょう。

相続土地国庫帰属制度では、上で紹介をした要件を満たす以上、国は国庫への帰属を承認しなければなりません。そのため、この制度を活用すれば、土地の引き受け手を自分で探す必要はなくなります。

7-3.引き取り後の管理も安心できる

引き取り後の管理も安心できる

仮に引き受け手が見つかるとしても、素性もよくわからない相手に土地を渡してしまった場合、いわゆる「原野商法」などの反社会的、詐欺的な商法に、土地が使われてしまう可能性もあります。

それは極端だとしても、きちんと管理をしてくれない相手に土地を譲ってしまえば、近隣に迷惑がかかる可能性があります。もともと親の実家が建っていた場所などであれば、その地域の人たちと顔なじみであれば、なおさら、迷惑をかけるような人には、譲りたくないと考えるでしょう。

相続土地国庫帰属制度を利用すれば、その土地の所有者は国となり、以後は国が管理します。その点で安心できます。

8.相続土地国庫帰属制度のデメリット

相続土地国庫帰属制度の利用には、デメリットも存在します。主なデメリットは、次のとおりです。

8-1.利用できる土地が限られる

利用できる土地が限られる

相続土地国庫帰属制度は、上で解説をしたとおり、どのような土地でも利用できるわけではありません。

たとえば、土地上に家や物置など建物が建っていることは多く、相続土地国庫帰属制度を利用するためにはまず建物を取り壊す必要が生じます。建物の取り壊しや廃材の処分には、数十万円から、場合によっては100万円以上の費用がかかることもあります。

また、ほとんど訪れたこともないような山林の土地を相続してしまい困っているケースも少なくありませんが、「適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林」に該当すると判断されれば、制度利用を申請しても不承認となるでしょう。

実際には、「何らかの問題がある土地だからこそ手放したい」と考えている人も多いと思われますが、問題のある土地は、制度利用の要件を満たさずに、引き取ってもらえないという点に注意が必要です。

8-2.手続き利用に費用がかかる

手続き利用に費用がかかる

相続土地国庫帰属制度を利用自体に、審査費用と負担金の支払いが生じます。

8-3.申請、国の審査時、引継ぎに手間や時間がかかる

申請、国の審査時、引継ぎに手間や時間がかかる

相続土地国庫帰属制度を利用して最終的に国に土地を引き継ぐまでには、相当の期間がかかる可能性があります。

具体的にどの程度の期間がかかるのかについては、記事作成時点では、制度が未施行であるため実例がなく、法務省のホームページなどでも公表されていません。ただし、現地調査が必要なことなどを考慮すれば、最低でも数か月、場合によっては1年以上を要する可能性もあるのではないかと推測されます。

9.相続放棄、売却などの他の方法と、相続土地国庫帰属制度との違い

相続土地国庫帰属制度は、それ以外の土地を手放す方法とどう違うのでしょうか?

まず、これまでも行われていた、相続土地国庫帰属制度以外の方法について確認します。

9-1.遺産分割協議により他の相続人に相続してもらう

1つ目の方法は、遺産分割協議によって他の相続人に相続してもらうことです。「遺産分割協議」とは、相続が起きた後で行う、遺産分けの話し合いのことです。相続人全員が合意するのであれば、原則としてどのように遺産をわけても構いません。

たとえば、相続人が誰もA土地を引き継ぎたくないと考えているとします。この場合には、A土地を引き継ぐ人が、あわせて預貯金も多く相続することとするなどとして、交渉をまとめるといったことが考えられます。

9-2.相続後、第三者に売却、または贈与(寄附など)する

2つ目の方法は、いったん土地を相続した上で、第三者に売却したり寄付をしたりすることです。

ただし、上でも解説をしたとおり、誰も欲しくない土地を無理やり押し付けることはできません。可能であれば、相続の発生前に、その土地に買い取りなどの需要がありそうかどうかを、不動産業者に見積もってもらうとよいでしょう。

また、贈与の場合は、不動産業者は仲介してくれないので、自分でもらってくれる相手を探してこなければなりません。

9-3.相続放棄する

3つ目の方法は、相続放棄をすることです。相続放棄とは、相続開始後に家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人ではなかったこととみなす制度です(民法938条939条)。

相続放棄をするとはじめから相続人ではなかったこととなりますので、特定の土地を相続せずに済むのみならず、預貯金など他の財産も一切相続することができなくなります。そのため、土地以外に預貯金などの遺産がある場合、相続放棄という選択肢は現実的ではないでしょう。

9-4.相続土地国庫帰属制度と他の制度の比較まとめ

相続土地国庫帰属制度、相続後の売却、相続放棄の3つの方法を比較すると、以下のようにまとめられます。まったく別の制度であるため単純な比較は困難ですが、相続土地国庫帰属制度は、今後は有力な選択肢となるでしょう。

 相続土地国庫帰属制度相続後の売却・贈与相続放棄
期限なしなし相続開始を知ってから3か月以内
手続き先法務局または地方法務局家庭裁判所
他の遺産の相続に影響するか影響しない影響しない影響する
お金の動きお金(負担金と審査手数料)を支払うお金(売却対価)を受け取る
可否の重要な要素相続土地国庫帰属法の要件を満たすか相手の意思民法の要件を満たすか

9-5.相続土地国庫帰属制度を利用したほういい場合と、他の方法を利用したほうがいい場合

土地を手放す方法を検討する順番は、一般的には、売却、贈与(寄附も含む)、相続土地国庫帰属制度となるでしょう。

まず、不動産業者に査定依頼をして、価格がついて買い手が現れると思われる土地であれば、売却するのがよいでしょう。ただし、すぐに買い手が現れるとは限らないので、ある程度時間がかかることは覚悟する必要があります。

また、寄附も含めた贈与の場合、不動産業者などの仲介が受けられないため、もらってくれる相手を探すのに、売却と比べてさらに手間や時間がかかります。

それらの方法で土地を手放せる可能性がなければ、最後の手段として相続土地国庫帰属制度の利用が検討されることになるでしょう。

10.相続土地国庫帰属制度について相談できる専門家

相続土地国庫帰属制度に関しての相談などができる専門家は、以下の通りです。一部の専門家には申請書類の作成代行も依頼できます。

10-1.弁護士

土地の相続について、相続人間や受贈者などとの間で、法的な争いが生じている場合には、弁護士へ相談しましょう。例えば、複数の相続人が同じ土地を相続したいと主張している場合や、相続人同士でいらない土地を押し付け合っており埒が明かない場合などです。また、また、弁護士は、相続土地国庫帰属制度の利用や相続放棄に必要な書類の作成を代行することも可能です。

10-2.司法書士

土地の登記手続きついては、司法書士へ相談しましょう。

相続による土地の名義変更(相続登記)は、司法書士の独占業務であり、他の者へ依頼することはできません。司法書士も、相続土地国庫帰属制度の利用や相続放棄に必要な書類の作成を代行することが可能です。

10-3.行政書士

特に争いが生じていない場合で、遺産分割協議書などの書類を作成したい場合、行政書士に依頼することもできます。相続土地国庫帰属制度の利用に必要な申請書等の作成代行も可能です。(土地の登記申請は、行政書士にはできません)。

一般的に、行政書士の報酬は、弁護士や行政書士よりも安価となる点がメリットです。

10-4.税理士

土地を相続した場合、その土地の相続税評価や、相続税の計算・申告、あるいは土地を売却した場合の確定申告など、土地に関連した税金の困りごとがある場合は、税理士へ相談しましょう。

11.まとめ:土地の相続準備は早めに行うのがポイント

相続土地国庫帰属法は、新しい法律であり、同制度はこれから運用が始まります。そのため、実際の運用の際には、申請のコツや注意点などが生じる可能性もあります。もともと、土地の価値評価や、登記などは、複雑な面が多く、専門家の力を借りることは欠かせません。特に、相続税が関係する場合は、土地を手放すにしても、いつ手放すのがいいのかといったタイミングの問題もあります。

可能であれば、相続が発生する前に、相続専門の税理士に相談して、土地をどう扱うのがよいのか、プランを立てておければ相続人が困ることも減るでしょう。

土地の相続に関して多くの経験を持つ税理士法人チェスターに、お気軽にご相談ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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