チェスターNEWS
「地積規模の大きな宅地」の評価につき裁決事例が公表されました
2024/11/15
関連キーワード: 土地評価 地積規模の大きな宅地 市街化調整区域
国税不服審判所は、令和6年9月25日、令和6年1月から3月までの裁決事例を国税不服審判所HPにて公表しました。
公表された「地積規模の大きな宅地」の評価事例については、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとしたものです。
裁決事例要旨
市街化調整区域内に所在する宅地について、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとした事例(令和2年8月相続開始に係る相続税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却)
《ポイント》
本事例は、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとしたものである。《要旨》
請求人らは、相続により取得した各土地(本件各土地)は、市街化調整区域のうち都市計画法第34条第12号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域(12号区域)に所在しており、宅地の分割分譲が可能であって、分割分譲に伴う減価が発生する土地であるため、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》(本件通達)に定める「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる旨主張する。
しかしながら、本件通達に定める「地積規模の大きな宅地」は、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲をもって定められているところ、都市計画法第34条第12号に相当する開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから、同号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする当該範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当である。したがって、当該範囲に含まれるとする市街化調整区域のうち都市計画法第34条第10号及び第11号の各規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する宅地と当該範囲に含まれないとする12号区域に所在する宅地とで本件通達上異なる取扱いを定めていることは合理的なものであって、本件各土地を「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできない。《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達20-2
引用:国税不服審判所「採決事例要旨」
「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)
平成29年9月20日付課評2-46ほか2課共同「財産評価基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)及び平成29年9月29日付課評2-48ほか2課共同「『相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について』の一部改正について」(法令解釈通達)により、地積規模の大きな宅地の評価について定めるほか、取引相場のない株式等の評価等について所要の改正を行ったところであるが、そのあらましは別添のとおりであるので、参考のため送付する。
引用:国税庁「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)」
ロ 「地積規模の大きな宅地」の意義(抜粋)
① 市街化調整区域(都市計画法第 34 条第 10 号又は第 11 号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地
市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」(都市計画法7③)であり、原則として宅地開発を行うことができない地域である(都市計画法 29、33、34)。このことからすると、市街化調整区域内に所在する宅地については、戸建住宅用地としての分割分譲に伴う減価が発生する余地がないことから、原則として、「地積規模の大きな宅地」に該当しないものとした。
しかしながら、市街化調整区域であっても、都市計画法第 34 条第 10 号の規定により、同法第 12 条の4第1項第1号に規定する地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域に限る。)内又は集落地域整備法第5条第1項の規定による集落地区計画の区域(集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内においては、当該地区計画又は集落地区計画に適合する開発行為を行うことができることとされている。また、都市計画法第 34 条第 11 号の規定により、いわゆる条例指定区域内においても、同様に開発行為を行うことができることとされている。
これらのことを踏まえると、市街化調整区域であっても、都市計画法第 34 条第10 号又は第 11 号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域については、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であることから、これらの区域内に所在する宅地について、地積規模を満たす場合には「地積規模の大きな宅地」に該当するものとした (注)。(注)都市計画法第 34 条第 10 号又は第 11 号の規定に基づき開発許可の対象とされる建築物の用途等は、地区計画、集落地区計画又は条例により定められるため、それぞれの地域によってその内容が異なることになる。したがって、地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内、及び条例指定区域内に所在する宅地であっても、例えば、一定規模以上の店舗等の開発は認められるが、宅地分譲に係る開発は認められていないような場合には、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象とならないことに留意する必要がある。
出典:国税庁「地積規模の大きな宅地の評価」
◎ チェスターの視点
本件裁決は、都市計画法第34条第12号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、財産評価基本通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に定める「地積規模の大きな宅地」の適用対象とはなり得ないため、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとしたもので、今後、取扱いに注意が必要と思われます。
※本記事は記事投稿時点(2024年11月15日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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