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1軒家が建っている宅地は小規模宅地等の特例をどう適用するのか?
一般家庭で代表的な相続のパターンは「1軒家が建っている宅地」の相続でしょう。この場合に小規模宅地等の特例をどう適用するかについてお伝えします。
宅地を相続したらやるべきことを大きく分けると3ステップになります。
1.判定(宅地に小規模宅地等の特例が使えるか判断)
2.計算(宅地の価額・いくら減額されるか・相続人の人数を考慮)
3.申告書に記載・提出
宅地を複数持っている場合、被相続人や親族がどのようにして住んでいたか、生計はどうしていたかによって、変わります。
しかし、1軒家だけを相続した場合は比較的、小規模宅地等の特例の適用の判断は容易です。
さっそくあなたが相続した1軒家が小規模宅地等の特例を使えるのか判断していきましょう。
1. 小規模宅地の特例を特定居住用宅地等として適用するには
居住用の宅地に対する小規模宅地等の特例は、亡くなった人が住んでいた自宅を相続した場合、その敷地評価額が減額されるものです。
1軒家で小規模宅地等の特例を適用するためには、確認しておかなければならない事項がいくつかあります。順を追ってみていきましょう。
(1) 相続した1軒家の宅地面積は?
小規模宅地等の特例では、相続した家の敷地のすべてが減額の対象になるわけではありません。
「小規模」というからには面積に限度があって、330㎡を超える部分は減額の対象になりません。
330㎡までの部分について、宅地の評価額が80%減額、つまり20%になります。
【例1】相続した宅地の面積が300㎡で、宅地評価額が3,000万円の場合
相続した宅地のすべてが減額の対象になり、宅地の課税価格は下記の計算によって600万円になります。
3,000万円-3,000万円×80%=600万円
【例2】相続した宅地の面積が400㎡で、評価額が4,000万円の場合
相続した宅地のうち330㎡だけが減額の対象になります。宅地の課税価格は下記の計算によって1,360万円になります。
4,000万円-4,000万円×330㎡÷400㎡×80%=1,360万円
なお、評価減の金額についての上限はありません。いくら地価が高くても、330㎡までの部分は評価額が80%減額されます。
(2) 誰が宅地を相続するか?
小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告期限まで(通常は相続開始があったことを知った日の翌日より10ヶ月以内)に遺産分割を確定させなければなりません。
ただし申告期限内に遺産の分割ができなくとも、相続税の申告期限から3年以内であれば、更正の請求により税額計算をやり直して特例を適用することができます。但し、この場合には申告期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を提出しておく必要があります。
この遺産分割とは、亡くなった人の遺産を誰にどれだけ分配するか決めることをいいます。
亡くなった人が残した遺言があればそれに従うほか、遺言があっても相続人全員が協議して決めることもあります。
遺産分割の結果、誰が宅地を相続するかによって、特例を適用するための要件が異なります。ケースごとに要件を確認しましょう。
① 配偶者が相続した場合
配偶者は宅地を相続すれば適用できます。ほかに要件はありません。相続税申告が完了した後に売却したり賃貸に出したりしても取り消されることはありません。
② 同居の親族が相続した場合
相続した宅地を相続税の申告期限まで保有し、かつそこに居住していれば適用できます。
③ その他の親族が相続した場合
従来は、次のすべてに該当すれば、いわゆる「家なき子」特例が適用できました。
(イ)亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
(ロ)宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」の持ち家に住んだことがない
(ハ)相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する
しかし、平成30年度の税制改正で要件が追加され、次の全てに該当しなければ適用できなくなりました。
(イ)亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
(ロ)宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」「3親等以内の親族」「特別の関係がある法人」の持ち家に住んだことがない
(ハ)相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する
(ニ)相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない
ただし、納税者に不利な改正であることを考慮し、平成30年3月31日現在において平成30年度改正前の「家なき子」特例の要件を満たしている場合には、平成32年3月31日までに発生した相続に限り、改正前の要件をもって「家なき子」特例が認められます。
2. 小規模宅地等の特例の計算方法
具体的にどのように計算するかは、「小規模宅地等の特例の計算方法と具体例。宅地別にみる減額計算。」でまとめていますので、参照してください。
3. 特例を適用するための手続
特例を適用するための要件にあてはまることが確認できれば、適用のための手続きに移ります。
小規模宅地等の特例を適用するためには、この特例を受けようとすることを記載した相続税の申告書と、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を税務署に提出します。
▼参考記事
ステップを追うだけ。第11・11の2表の付表1の書き方【小規模宅地等についての課税価格の計算明細書】
小規模宅地等の特例の添付書類まとめ。申告書と一緒に提出するべき書類とは。
なお、特例を適用した結果、宅地以外の財産も含めた相続財産の課税価格の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を下回って、税額がゼロになる場合があります。
そのような場合でも、申告書を提出する必要があります。申告書を提出しなければ、小規模宅地等の特例を適用しなかった(適用しないという意思表示をした)とみなされます。特例を適用したことで税額がゼロになった場合でも、申告書の提出を忘れないようにしましょう。
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