チェスターNEWS
【平成29年税制改正】タワーマンションの固定資産税額を階層で補正
2017/01/17
関連キーワード: タワマン節税
現行のタワーマンション固定資産税額の計算方法
現行のタワーマンションの一室に係る固定資産税額は、
① そのタワーマンション全体の固定資産税額を算出し
② ①の税額を各部屋の床面積で按分する
といった方法で算定されます。
この方法ですと、床面積が同じであれば高層階の部屋と低層階の部屋の固定資産税額は同額となります。
しかし実際の時価(売買価額)については高層階の方が高いのが現状です。
時価が高い高層階と時価が低い低層階で固定資産税額が同額というのは、納税者の不公平感を生みます。
平成29年度税制改正の大綱による見直し
平成29年度税制改正の大綱では、タワーマンションの階層の差異による実際の時価の違いを考慮し、高層階の部屋ほど固定資産税額の負担を増やす見直しが公表されました。
具体的には、
・高さが60mを超える超高層建築物のうち、
・複数の階に住戸が所在しているもの(いわゆるタワーマンション)については、
・1棟のタワーマンションに係る固定資産税額を按分する基準となる各専有部分の床面積を
・階層別専有床面積補正率により補正する
という見直しが行われました。
階層別専有床面積補正率とは、階層が1階上がると税額の按分の基となる床面積が約0.26%大きくなるように設定された補正率を言います。
つまり、高層階ほど按分の基準となる床面積が増え固定資産税額も増額することになります。
この見直しにより、階層の差による固定資産税額の負担の不公平感は解消されるかもしれません。
なお、固定資産税額の按分についての見直しであり固定資産税評価額については見直しはないことからタワーマンションに係る財産評価については特に影響はありません。
この改正は平成30年度から新たに課税されることとなるタワーマンションに適用されることになります。
タワーマンション節税
タワーマンションを巡っては、実際の販売価格と固定資産税評価額との乖離を利用した、タワマン節税が問題となっています。
タワマン節税とは、手持ちの金融資産をタワーマンションに組み替えることにより、相続税評価額を下げ、相続税の負担を減少させることを指します。
タワーマンションの1室の評価については固定資産税評価額を基に財産評価がされます。一般的に固定資産税評価額は実際の時価より低く設定されているため、相続税評価額も実際の時価よりも低い価額となります。
またタワーマンションが相続財産にある場合には、その所有する部屋の持分に対応する土地(敷地権※といいます)の評価をすることとなります。
各部屋の持分は一般的にマンションの敷地全体を各部屋の床面積で按分して決まることが多く、階数が高いマンションほど部屋数が増えるため持分は小さくなり、それに伴い相続税評価額も低い価額となります。
※敷地権の評価については「マンション用地の土地評価について」をご参照ください。
タワーマンションの購入は上記のように、実際の時価より相続税評価額を下げることができることから相続税の節税対策となります。
ただしこの節税には注意が必要です。
例えば上記方法により節税をするため、相続開始直前にタワーマンションを購入し、被相続人が亡くなった直後に売却したらどうでしょう。
タワーマンションの実際の時価はそれほど変動しないため売却したとしても損失リスクは少なく、かつ、相続税の節税にもなります。
このように明らかに節税をするために行われた行為は税務署から否認される可能性があります。
国税不服審判所:平成23年7月1日に以下のような裁決がされています。
概要 ・平成19年8月にタワーマンションを2億9300万円で購入 ・平成19年9月に被相続人死亡 ・平成20年7月にタワーマンションを相続した相続人が2億8500万円で売却 ・タワーマンションの購入時と売却時の時価はほぼ同等である納税者の主張 相続人は相続したタワーマンションにつき財産評価基本通達に基づき財産評価をし、 土地建物合わせて5800万円を相続財産として申告した。国税当局の主張 財産評価基本通達で評価した5800万円ではなく、タワーマンションの購入価額である 2億9300万円で申告すべきであると主張した。 裁決 |
裁決の理由をまとめますと、
財産評価基本通達はあくまでも財産を評価する際の形式的な基準であり、この通達による評価が妥当ではない場合には他の合理的な方法により評価することができるということです。
上記事例ですと、
仮にタワーマンションを購入せず購入資金がそのまま相続財産となった場合には、その購入資金2億9300万円がそのまま相続財産として申告されることとなります。
この購入資金をタワーマンションに充てることで財産評価額を2億3500万円減らしましたが、相続開始後短期的にタワーマンションを売却したことを踏まえると、相続税を節税するためにタワーマンションを購入したものと考えられます。
したがって、短期的かつ一時的に財産の所有形態がタワーマンションになったに過ぎないものについて財産評価基本通達により評価することは、この通達による評価が妥当でない場合と認められます。
この場合には、他の合理的な方法により評価されることとなりますが、
・タワーマンションの取得日と相続開始日が近いこと
・購入時と売却時の時価はほぼ同等である
ことを踏まえると取得時の時価2億9300万円で評価することが相当であるといえます。
「相続開始直前に購入した投資用不動産の相続税評価について」でも相続開始直前に購入した不動産の相続税評価について記事を掲載していますのでご参照ください。
※本記事は記事投稿時点(2017年1月17日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
「相続対策」も「相続税申告」もチェスターにおまかせ。
「相続税の納税額が大きくなりそう」・「将来相続することになる配偶者や子どもたちが困ることが出てきたらどうしよう」という不安な思いを抱えていませんか?
相続専門の税理士法人だからこそできる相続税の対策があります。
そしてすでに相続が起きてしまい、何から始めていいか分からない方もどうぞご安心ください。
様々な状況をご納得いく形で提案してきた相続のプロフェッショナル集団がお客様にとっての最善策をご提案致します。
DVDとガイドブックの無料資料請求はこちらへ
各種サービスをチェック!
\ご相談をされたい方はこちら!/
【次の記事】:相続税・贈与税の課税財産の範囲が拡大される?
【前の記事】:財産評価 総則6項の運用体制