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借入金で賃貸物件購入の相続税の節税対策が税務署に否認

2018/01/23

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今回のチェスターNEWSでは、昨年の12月に公開された裁決事例から次の事案を紹介します。

1.事案の概要

被相続人は、銀行より調達した借入金で1棟の土地付賃貸マンションを2件購入(以下、『本件不動産』)した。

この借り入れの際に被相続人は銀行から不動産を取得した場合の相続税の試算及び相続税の圧縮効果について説明を受けたうえで、銀行との間で相続税の負担軽減を目的とした不動産の購入資金との共通認識のもと、本件不動産の調達資金の借り入れを行っていた。

相続人は、本件不動産について財産評価基本通達(以下、『評価通達』)に基づいて評価(取得価額及び不動産鑑定評価額の30%にも満たない金額であった)する一方で、当該借入金を債務として計上することで他の相続財産からも控除することで相続税額の圧縮を行い相続税の申告書を提出していました。

これに対し、原処分庁は本件不動産を評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして、財産評価基本通達第1章総則6項(以下、『総則6項』)により不動産鑑定評価額により評価した価額による相続税の更正処分等を行い、これを不服とした相続人が審判所に対して審査請求を行った。

審判所は評価通達の形式適用を認めず、総則6項により不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当であるとして相続人の主張を斥けました。

2.原処分庁の主張

原処分庁は以下のように主張しました。

総則6項は、評価通達に定める評価方法を画一的に適用した場合には、適正な時価が求められず客観的な交換価値からかけ離れて不適当なものとなり、著しく課税の公平を欠く場合も生じることが考えられることから、そのような場合には、客観的交換価値を個別に評価し、適正な時価評価を行うことができるようにする趣旨で定められたものであり、その射程には、通達評価額が時価を上回る場合だけでなく、下回る場合も含まれる。

本件各不動産の取得から借入までの一連の行為は、相続財産の価額を減少させ、併せて、債務を増加させたものであり、ほかの多額の財産を保有せず同様の方法を採った場合にも結果としてほかの相続財産の課税価格の大幅な圧縮による相続税の負担の軽減という効果を享受する余地のない納税者との間で租税負担の公平を著しく害し、また、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の機能に反する著しく不相当な結果をもたらしている。

3.審判所の判断

審判所は、被相続人による本件不動産の取得から借入までの一連の行為について、主たる目的は相続税の負担を免れることにあり、被相続人が多額の借入金により不動産を取得することで本来負担すべき相続税を免れる結果となることを認識したうえで、本件不動産を取得したものと認定しました。

また、相続税の負担を免れる目的以外にほかの合理的な目的が併存していたとしても、本件不動産について評価通達に定める評価方法を適用すれば相続税の目的に反し、実質的な租税負担の公平を著しく害することに変わりはなく、被相続人の一連の行為は租税の公平を著しく害し、相続税の目的に反するものであるから、総則6項により評価通達によらないことが相当と認められる特別な事情があると認められるとして、本件不動産はほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当であると判断しました。

今後、相続税の節税対策を目的として銀行から借入をして不動産を購入する場合において、取得価額等と相続税評価額に著しい価額の乖離(本事例においては取得価額等の30%未満)があるときには、評価通達による評価が否認される可能性があるので否認リスク等十分注意する必要があります。

ただし不動産を購入した相続税の節税対策は広く行われており、この裁決によってただちに大きな影響が出るとは考えられませんが、「相続税の節税」に主眼を置いた不動産の購入対策を行う際には、税理士と納税者双方が否認リスクを認識共有の上で、対策方法を工夫していくことが重要でしょう。

※本記事は記事投稿時点(2018年1月23日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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