滅失登記とは?自分で申請可能!必要書類や取得場所、費用を一覧表で解説
自分で滅失登記をおこなうと、専門家に依頼するよりも費用負担を軽減できます。家の所有者が亡くなっている場合、相続人も滅失登記が可能です。解体する家を管轄する法務局に問い合わせると詳しく教えてもらえます。
しかし、滅失登記は家の解体後1ヵ月以内に申請する必要があるため、法務局へ足を運んだり問い合わせたりする手間はできるだけはぶきたいところです。本記事で、滅失登記に必要な書類や入手方法を網羅的にチェックしていきましょう。
この記事の目次 [表示]
1.滅失登記は自分でもできる手続
滅失登記は、取り壊した家の所有者が自分1人でできる手続です。また状況に応じて、以下のとおり家の所有者以外も滅失登記できます。
家の所有者以外で滅失登記ができる人
状況 | 滅失登記できる人物 | 備考 |
---|---|---|
家の所有者が自分で手続できない場合 | 委任状に記載の第3者 | 家の所有者が委任状を作成する必要あり |
家の所有者が亡くなっている場合 | 相続人 (誰か1人で問題なし) | 相続人同士で話し合う必要あり |
家が複数人で共有の場合 | 持ち主 (誰か1人で問題なし) | 持ち主同士で話し合う必要あり |
このように、滅失登記は家の持ち主以外でも手続可能です。相続人や持ち主が複数いる場合は、誰かが単独で手続しても問題ありません。ただしこの場合、相続人や持ち主同士でトラブルが起きないよう、滅失登記することはしっかりと話し合っておきましょう。
なお、滅失登記は土地家屋調査士に代理人を依頼しても問題ありません。依頼費用はかかりますが、自分で手間をかける必要がなくスムーズに手続できます。
2.滅失登記に必要な書類・その取得場所を一覧表で確認
滅失登記に必要な書類と、それぞれの取得場所は以下のとおりです。
滅失登記に必要な書類と取得場所・費用
必要書類 | 取得場所 | 費用 |
---|---|---|
解体した建物を証明する各種書類 (登記簿謄本・公図・地積測量図・建物図面) | 最寄りの法務局または法務局公式サイトから取得 | 窓口での料金 登記事項証明書:600円 地図・図面証明書:450円 合計1050円 インターネットでの料金 |
建物滅失証明書 | 解体業者から取得 または自身でひな形を作成し、解体業者に署名・押印を依頼 | 業者により異なる ※基本的に無料 |
解体業者を証明する書類 (解体業者の代表者事項証明書・解体業者の印鑑証明書) | 解体業者から取り寄せる | 業者により異なる ※基本的に無料 |
建物滅失登記の申請書 | 法務局の公式サイトにテンプレートあり 自身で記入し、作成 | 無料 |
その他 (委任状・解体した建物の地図や写真) | 自身で作成 | 無料 |
自身で作成する書類は、建物滅失登記の申請書や委任状のみです。ほかの書類は基本的に法務局や解体業者に申請すると取得できます。なおかかる費用は、必要書類を取得するための実費のみです。1000円ほどと見積もっておけば、問題ありません。
2-1.解体した建物を証明する各種書類-手持ちの書類を確認
まずは解体した建物を証明するため、以下の書類を集めましょう。すでに手元に書類がある人は、新規に取得する必要はありません。
解体した建物を証明する各種書類
- 登記簿謄本
- 公図
- 地積測量図
- 建物図面
上記書類を取得するには、以下の方法があります。
建物の証明書類の取得方法
- インターネットで取得する
- 建物所在地の最寄り法務局へ行く
インターネットで取得したほうが足を運ぶ手間がないうえ、1通あたりの手数料を100円以上安く抑えられます。下記のサイトにアクセスし、初めての場合は利用者登録をしてから書類を請求しましょう。
登記情報提供サービスの詳しい使い方は、『かんたん証明書請求ガイド』に記載があるためぜひご覧ください。請求画面では以下の項目すべてにチェックを付けましょう。
請求画面でチェックする項目
- 登記事項証明書
- 地図証明書
- 図面証明書
受け取りはオンライン上か郵送、窓口のいずれかから好きなものを選べます。オンライン上で受け取る方法が安くおすすめです。手数料は現金のほか、クレジットカードで支払えます。
一方法務局へ直接行く場合は、建物のある住所を管轄する法務局へ行きましょう。窓口で「滅失登記に必要な書類が欲しいです」と伝えれば、必要書類を請求できます。
2-2.建物滅失証明書-解体業者から取得
建物滅失証明書は、解体業者から取得しましょう。建物滅失証明書は『建物取壊証明書』や『取り壊し証明書』とも呼ばれます。どのような段取りで発行されるかは業者によって異なるため、事前に発行してもらえるか聞いておくと安心です。なかにはこちらから特に請求しなくても、解体工事完了と同時に建物滅失証明書を発行する業者もあります。
また解体業者によっては発行に時間がかかる場合もあります。建物滅失証明書の請求は、できるだけ早めにおこなっておきましょう。
2-2-1.取り壊し証明書がない場合の対処法
建物滅失証明書(取り壊し証明書)を紛失してしまった場合や、解体から時間が経過している場合もあるでしょう。こうした場合は、解体業者に建物滅失証明書の発行を依頼してもすぐに対応してもらえない場合があります。そこで自身で建物滅失証明書のひな形を作り、解体業者に送って署名と押印を依頼しましょう。ひな形のサンプルは、以下のとおりです。
▲建物滅失証明書のひな形(サンプル)
建物の表示は、法務局から取得した登記事項証明書を参照し、間違いのないように記載しましょう。署名押印を依頼する際は、電話または別途送付書を添付して「過去に解体した家の建物滅失証明書が欲しい」と伝えましょう。送り返してもらう際に使う返信用封筒も同封しておくと親切です。
2-3.解体業者を証明する書類-解体業者から取得
滅失登記には、建物を解体した業者を証明する書類も必要です。建物滅失証明書と同時に、以下の書類も解体業者から取得しましょう。
解体業者を証明する書類
- 代表者事項証明書または履歴事項証明書
- 印鑑証明書(必要に応じて)
代表者事項証明書と履歴事項証明書は、どちらか1通で問題ありません。上記の書類は、解体業者が正規の資格を取得している業者であることを証明するためのものです。『資格証明書』や『全部事項証明書』と呼ばれるケースもあります。
印鑑証明書は、解体業者と解体した家の管轄法務局が同じ場合は提出しなくても問題ありません。ただし一部提出を省略できない法務局があることと、解体業者の支店が多くある場合は管轄法務局がわかりにくいため、印鑑証明書もセットで取得しておくと安心です。
解体業者からは、上記2通の書類と、建物滅失証明書の合計3通を取得することになります。
2-4.建物滅失登記の申請書-法務局の公式サイトで取得
滅失登記には、指定の書式で申請書を提出する必要があります。申請書のひな型は法務局のホームページからダウンロードしましょう。
参照:登記申請書|法務局
ひな形はプリンターで印刷し、必要事項を記入しましょう。記入したあとはコピーを取り、控えとして保管しておくと安心です。なお申請に別途手数料は必要ありません。
2-4-1.申請書の記入方法
申請書は、以下の見本にならって記入しましょう。
▲登記申請書の見本
申請人の名前は『登記事項証明書の所有権に関する事項』欄に記載されているとおりに記入しましょう。登記事項証明書に該当の欄がない場合は、表題部の末尾に記録されている所有者の住所と氏名を記載します。また、氏名のあとには認印を忘れずに押しましょう。
なお登記事項証明書に記載されている所有者の住所が現在の住所と一致していない場合は、登記上の住所から現在までの異動の経過がわかる住民票の写しや、戸籍の附票の写しなどを添付する必要があります。
このほか建物の表示部分も、登記事項証明書や建物滅失証明書と同じように記載しましょう。添付書類と記載内容の整合性が取れない場合、申請書が受理されない可能性があります。
記入方法が不安な場合は、何枚か申請書を印刷のうえ法務局の窓口で職員に聞きながら記入してもよいでしょう。
2-5.状況により必要となる書類
滅失登記する際は、状況により以下の書類が必要となります。
状況により必要となる書類
- 解体した建物の地図や写真
- 委任状
解体した建物の地図や写真は必須ではありませんが、法務局へ提出する参考資料として用意しておくと便利です。委任状は、家の所有者以外が手続する際に用意しましょう。
2-5-1.解体した建物の地図や写真-自分で用意
解体した建物の所在地がわかる地図や、解体した様子を撮影した写真があると便利です。法務局側が、建物の状況を把握しやすくなります。提出は必須ではないものの、必要書類を提出したあとで法務局から建物の場所や解体状況を尋ねられることもあります。
こうした場合に地図や写真があると、説明しやすく便利です。地図は簡単な手書きのものでも、Googleマップを印刷して印をつけたものでも問題ありません。また現地に行ける場合は、解体現場の写真も撮っておきましょう。地図や写真が用意できたら、ほかの必要書類とあわせて提出します。
2-5-2.委任状-必要事項を記入し自分で用意
家の所有者以外の人が手続する場合は、委任状が必要です。以下のひな形に沿って、委任状を作成しましょう。
▲委任状の見本
なおすでに家の所有者が亡くなっており、相続したあとであれば委任状は不要です。相続人の代表者が滅失登記できます。委任状の書き方を詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
参考:相続手続き(戸籍取得・相続登記など)に必要な委任状のひな型と書き方|税理士法人チェスター
3.必要書類を揃えたあとの手続方法
必要書類が揃ったら、あとは提出して手続の完了を待つだけです。提出する前には今一度、以下の確認をしましょう。
提出前の確認事項
- 必要書類はすべて揃っているか
- 登記事項証明書や建物滅失証明書の記載どおりに、申請書が記入されているか
- 申請書に記入漏れはないか
- 申請書の押印を忘れていないか
- 申請書の控えは取ったか
- (郵送の場合)法務局の宛先は合っているか
不備があると修正に時間がかかるため、提出前の確認はしっかりとおこないましょう。
3-1.滅失登記の必要書類を法務局へ提出
必要書類がそろったら、解体した家の住所地を管轄する法務局へ提出しましょう。提出先は、最寄りの法務局ではなく解体した家の住所地を管轄する法務局です。間違いがないように注意しましょう。
また郵送でも提出は可能ですが、窓口に行ってその場で確認してもらったほうが早く書類の不備に気付けます。管轄の法務局が遠く窓口へ行けない事情がある場合は、簡易書留で必要書類を郵送しましょう。個人情報を含む大切な書類を送る必要があるため、法務局の受け取りが確認できる簡易書留での郵送がおすすめです。
3-1-1.不備がある場合は修正して再提出
窓口で不備が見つかった場合、訂正用の印鑑を持っておくとその場で修正して再提出できるケースがあるため便利です。提出後に不備が見つかった場合は、申請書に記載した電話番号に電話がかかってきます。窓口へ行って訂正するか、郵送で書類の再提出または追加で郵送するか選びましょう。
提出した書類が一度返送され、修正後に再度送り直すケースもあります。
3-2.登記完了証を受け取り滅失登記完了
問題なく建物滅失登記の申請が受領され、滅失登記が完了したら法務局から1~2週間程度で『登記完了証』が発行されます。この証明書の受け取りをもって、手続は完了です。郵送での受け取りを選択した場合は、2~3週間で自宅に登記完了証が届きます。
ただし法務局の混雑具合によっては、上記よりも時間がかかる場合もあるでしょう。登記完了の連絡がなく不安な場合は、滅失登記を申請した法務局に問い合わせてみることをおすすめします。
4.自分で滅失登記する際によくあるQ&A
自分で滅失登記する際、以下のような疑問を持つ人は多くいます。
自分で滅失登記する際によくあるQ&A
- 滅失登記を自分でした場合の費用はいくら?
- 自分で滅失登記しない場合は誰がやる?
- 建物滅失登記を忘れるとどうなる?
- 相続した建物を解体する場合は相続登記が必要?
あらかじめよくある質問の回答をチェックしておくことで、安心して滅失登記を申請できるでしょう。
4-1.滅失登記を自分でした場合の費用はいくら?
滅失登記にかかる費用の違い
自分で申請した場合の費用 | 外部に委託した場合の費用 |
---|---|
800~1000円 | 4~5万円 |
滅失登記を自分でする場合、かかる費用は800~1000円です。多くても1500円見積もっておけば問題ないでしょう。この費用は、登記事項証明書や図面などの書類の取得にかかる手数料です。このほか郵送で申請書を提出する場合は切手代がかかりますが、1500円以内には収まるでしょう。滅失登記の申請に、実費以外の費用はかかりません。
一方、土地家屋調査士に滅失登記の代理人を依頼した場合かかる費用は4万~5万円です。高いと感じるかもしれませんが、自分で必要書類を集めたり申請書を書いたりする手間が省けることを考えると依頼する価値はあるでしょう。なお土地家屋調査士に依頼する場合は、念のため事前に見積もりを取っておくと安心です。
解体業者から土地家屋調査士を紹介された場合、通常の相場に加えて、仲介料が上乗せされている可能性があります。相場よりもはるかに高い金額を請求されることがないよう、見積もりを確認しましょう。
4-2.自分で滅失登記しない場合は誰がやる?
家の所有者が滅失登記しない、またはできない場合、以下の方法が考えられます。
家の所有者以外の人が滅失登記する方法
- 家屋調査士に依頼して滅失登記する
- 第三者に委任状を書いて滅失登記を依頼する
上記のどちらかで手続しない限り、滅失登記は自動的におこなわれるものではありません。
4-3.建物滅失登記を忘れるとどうなる?
滅失登記は以下のとおり、建物解体から1ヵ月以内に申請する必要があります。
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
申請が遅れると、解体したはずの建物に固定資産税がかかり続けるだけでなく、10万円以下の過料が課せられる可能性もあります。さらに滅失登記していない土地は、登記上建物が建っているとされているため新たに家を建てたり売買したりできません。このように滅失登記を済ませないとあらゆるデメリットが生じるため、忘れず申請しましょう。
参考:不動産登記法第百六十四条
4-4.相続した建物を解体する場合は相続登記が必要?
相続した建物を解体する場合、相続登記は必要ありません。相続登記の手続を飛ばし、はじめから滅失登記の申請ができます。相続登記については、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:相続登記の手続きを自分一人で行うことができる完全ガイド|税理士法人チェスター
5.滅失登記を自分でおこなうのが難しい場合はチェスターへ
滅失登記を自分でおこなうと、費用の削減になります。しかし数多くの書類を揃えたり申請書を不備なく記入したりと、手間がかかるのも事実です。自分で滅失登記するのは難しいと感じる人は、司法書士法人チェスターへお問い合わせください。実績豊富な司法書士が滅失登記の手続をわかりやすくサポートいたします。
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