生活保護を受給している親族の葬儀、費用はどうなる?香典や戒名も併せて解説
生活保護を受けている親族が亡くなった場合、葬儀費用はどうすれば良いのでしょうか?
基本的に親族が葬儀費用を出せる際には親族が支払いますが、費用を払えない場合には「葬祭扶助」を申請できます。
葬祭扶助とは一体どのような制度なのでしょうか?生活保護の受給者が亡くなった時の手続きとは?
本記事では、生活保護受給者の葬儀費用について、葬祭扶助の概要と要件、生活保護受給者が亡くなった時の手続きについて解説していきます。
この記事の目次 [表示]
1.生活保護受給者の葬儀費用は親族が負担する?
生活保護を受けていた親族が亡くなった場合、葬儀費用は①親族で出す②葬祭扶助を申請するという2つの方法があります。
厚生労働省・法務省が2021年に公表した「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引」を参考に、身寄りのないかたが亡くなった時の流れを見ていきましょう。
基本的に葬祭扶助は、身寄りのないかたで葬祭人(葬儀を執行する親族など)がいる、葬祭人が「葬儀の費用が支払えない」ことが前提となります。
葬祭人がいない場合には、地方自治体が火葬・埋葬を行います。
よって親族で葬儀費用が捻出できる際には、葬祭扶助を申請することはできません。親族が葬儀費用を出すことになります。
「親族が葬儀費用を出せるが、できるだけ費用をおさえて葬儀をしたい」という場合は、家族葬・火葬(直葬)といった小規模な葬儀で費用をおさえられることがあります。
また、葬祭扶助だけではなく健康保険組合から葬祭費・埋葬費が支給されることがあります。
国民健康保険の葬祭費は東京都23区では7万 円 です。地域によって支給額が異なりますので、管轄の役所に確認しましょう。申請の期限は葬儀の日の翌日から2年以内です。
火葬料の補助制度がある地方自治体では補助金が支給されますので、併せて確認することをおすすめします。
参考:
亡くなられたとき(葬祭費)|板橋区
葬祭費(国民健康保険)|北区
国民健康保険の葬祭費について教えてください。|中央区
「親族で葬儀費用を出せない」というかたは、以下の葬祭扶助の要件をチェックしてみましょう。
2.葬祭扶助とは?要件をチェックしてみよう
葬祭扶助とは生活保護法に基づき、葬儀費用が払えない人を対象に最低限の葬儀費用を支給する制度です。
金額は地方自治体がそれぞれ上限額を定めており、実際に葬儀にかかった費用に対して限度額の範囲内で葬儀社に支払われます。上限額はおおよそ20万円 前後に設定されています。
葬祭扶助は生活保護法第18条で以下のとおり定められています。
2項では葬祭扶助の要件として「被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき」「死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき」と記載されています。
- 葬儀を執り行う者(扶養義務者)が経済的に困窮しており、葬祭費の支払いができない
- 故人が生活保護受給者で身寄りがなく、遺産で葬祭費用を支払うことができない
1・2のいずれかを満たしたときに葬祭扶助が支給されます。
ちなみに親族(遺族)が生活保護を受けており、故人は受けていなかった場合には故人の遺した遺留金で葬儀ができない場合に限り葬祭扶助が適用されます。
一方で故人が生活保護者でも親族に葬儀費用が出せる資産があるときには、葬祭扶助の対象外です。故人が生活保護者=葬祭扶助が申請できるという訳ではありません。
社会福祉法人東京福祉会のホームページによると、「葬祭扶助の内訳は死亡の確認(検案)・故人の移動費用・火葬費用・納骨費用となります。セレモニー(通夜・葬儀式等)は行われず、火葬のみのいわゆる「直葬」となります」と記載されています。
参考:生活保護葬について|社会福祉法人東京福祉会
火葬(直葬)はお通夜・告別式をせずに火葬のみを行うもので、参列者は親族やごく親しい人に限られています。葬祭扶助は財源が公費 で賄われていますので、最低限の葬儀費用であることをおさえておきましょう。
参考:生活保護制度の現状等について|厚生労働省
3.生活保護受給者が亡くなった時の流れ・手続きとは
生活保護を受給していたかたが亡くなった際には、役所への届け出が必要となります。
身近な人が亡くなった時の流れに関して詳細は以下の記事をご参照ください。
死亡後の手続きチェックリストと内容解説。期限のあるものに要注意
今回は上記に加え、生活保護受給者が亡くなった場合に必要となる手続きを解説していきます。
- 役所に連絡・葬祭扶助の申請
- 葬儀社に依頼
- 葬儀
3-1.役所に連絡・葬祭扶助の申請
生活保護を受給していたかたが亡くなった場合、役所に受給者証の返納 が必要となります。
役所に亡くなったことを伝え、受給者証を返納します。
死亡に伴う各種手続きのご案内について|名取市
葬祭扶助は「葬儀を行う前」に申請しなければいけません。
役所の保護課もしくは地域の福祉事務所に相談し、申請の手続きを行います。葬祭扶助が適用されるかどうかを確認してから、葬儀社に葬儀を依頼します。
葬儀社に依頼する前に親族同士でも葬儀の内容について確認しておきましょう。
3-2.葬儀社に依頼
葬祭扶助を受ける場合は生活保護葬を取り扱っている葬儀社に連絡し、葬儀を依頼します。生活保護葬を受け付けていない葬儀社もありますので、あらかじめ葬儀社に確認しておきましょう。
事前に葬祭扶助が適用される旨を伝えます。
葬祭扶助を利用しない際には、葬儀社・葬儀プランを比較・検討し、連絡します。
葬儀社の担当者と火葬日時・火葬場・葬儀プランなどの打ち合わせを行います。
3-3.葬儀
生活保護葬の場合は火葬のみとなります。火葬に立ち会いを希望する親族は、指定の日時に火葬場に集まります。
なお待ち時間に発生する費用(椅子代・部屋代など)は 、自己負担となります。
葬祭扶助が適用される場合は葬儀社が福祉事務所に支払いを請求し、福祉事務所が葬祭扶助として葬儀費用を支払います。
3-4.生活保護葬の疑問:香典、戒名…どうすれば良い?
葬祭扶助を受けて葬儀をする際に、香典は受け取ってよいのでしょうか?
基本的に香典は収入とはみなされませんので、受け取っても問題はありません。
また、葬祭扶助の中に戒名に対するお布施の料金は含まれていません。よって戒名を付ける費用は親族が負担します。
4.生活保護受給者が亡くなった場合の遺品整理・相続
生活保護を受給しているかたが亡くなった際の遺品整理と相続についてお伝えしていきます。
4-1.遺品整理はどうすれば良い?
遺品整理は基本的に親族が行います。
生活保護は亡くなった時点で支給停止となりますので、生活保護費を充てることはできません。
遺品整理が何らかの事情でできない場合、役所やケースワーカーに相談してみましょう。
なお遺品整理で売却などを行うと相続で「単純承認をした(相続することに同意した)」とみなされる可能性があります。
限定承認・相続放棄をするかたは、単純承認とみなされる行為にならないように管理をする必要があります。
参考:実家の片付けで遺品整理で重要なこと-相続財産や重要書類の見極めかた
4-2.相続
相続には単純承認・限定承認・相続放棄という3つの選択肢があります。
単純承認は亡くなった人(被相続人)の遺産を受け継ぐことで、手続きは必要ありません。
限定承認と は、相続人が相続によって得た財産の範囲内で被相続人の債務の負担を受け継ぐ手続きで相続人の債務の額が不明であるときに申請されることが多いです。
相続人が被相続人の遺産・権利をすべて放棄することを相続放棄と呼びます。
限定承認は相続人全員が共同で申し出る必要がありますが、相続放棄は単独でも手続きが可能です。
相続を放棄しても、民法940条の規定により遺産の管理義務がありますので注意しましょう。
限定承認・相続放棄を希望するかたは、被相続人が亡くなってから(又は亡くなったことを知ってから)3ヶ月以内に被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申請します。
なお全員が相続放棄をした場合、家庭裁判所が申し立てにより相続財産の管理人(相続財産管理人)を選任 します。
相続に関しては以下の記事もご参照ください。
生活保護受給者死亡時における相続財産の取り扱いと保護費の返還義務
単純承認とは?相続の種類と単純承認になるケースを実例で紹介
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