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今後の相続税実務の留意点~配偶者居住権~

2019/12/13

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今後の相続税実務の留意点~配偶者居住権~

1 はじめに

この度の民法改正により創設された「配偶者居住権」が、令和2年4月より施行されます。
「配偶者居住権」とは、被相続人の死後、残された高齢な配偶者の生活を安定させるため、配偶者が自宅に住み続けることができる権利を法定化したものです。

配偶者居住権の対象となった建物と土地の相続税評価額については、「配偶者居住権の評価額」と「配偶者居住権の負担が付いた土地建物の評価額」に配分することになります。
そして、注意すべきは、配偶者居住権は建物の使用権限にすぎませんが、その制約を受けている土地についても評価額の按分が必要となる点です。

もっとも、「建物の按分計算」と「土地の按分計算」は、必ずしも同様ではありません。
というのも、建物については、減価償却により評価額が減少し続けますが、他方、土地についてはそういったことがないからです。
そこで、「建物の按分計算」については、配偶者の平均余命や建物の残存耐用年数を考慮して計算されますが、「土地の按分計算」については、そこまで複雑な計算にはなりません。

2 配偶者居住権の具体的な計算方法(相続税法23条の2)

配偶者居住権の具体的な計算方法は、次のようになります。
まず、前提として、建物の固定資産税評価額が、残存耐用年数の経過に従って定額法的に減価していくと考えます。そして、配偶者居住権が消滅した時点での建物価額を、複利現価で割り戻した価額が建物の所有者に帰属する相続財産の価額となります。

例えば、配偶者の平均余命が15年だとしましょう。この場合、15年が経過した時点で配偶者居住権が消滅すると考えて(つまり、配偶者が平均余命である15年で死亡すると想定しています。)、15年経過した時点での残存価額を求めます。そして、その15年経過時の残存価額について法定利率年3%による複利現価方法で現在価値を求めます。これが配偶者居住権の設定された建物の評価額となります。また、配偶者の平均余命である15年よりも前に建物の残存耐用年数が尽きてしまった場合の建物の評価額はゼロになります。
そして、上記のようにして計算した建物評価額と、現時点での固定資産税評価額との差額が、配偶者居住権の建物部分についての評価額になります。

土地についても、同様の計算となります(ただし、土地の評価は路線価を参考)。
また、土地の計算では、建物のように減価償却を考慮しません。

上記のような計算方法では配偶者が平均余命で死亡すると想定して計算していますが、実際に配偶者が平均余命で死亡するかどうかは分かりませんし、建物の固定資産税評価額が定額法的に減価し、残存期間の経過で建物の評価額がゼロになるかどうかも分かりません。また、土地の価額が将来に亘って変化しないとは限りません。要するに、上記の計算方法の中にある「平均余命」「残存耐用年数」「将来の地価」などの計算要素については、あくまでも仮のものであるということに注意して下さい。

3 配偶者居住権の目的外利用~受益者連続信託に代わる利用方法について~

配偶者居住権の目的外利用の1つに、「受益者連続信託に代わる利用」が考えられます。
ここで、受益者連続信託とは、簡単に言うと、受益者の死亡により、順次他の者が受益権を取得する旨の定めのある信託のことです。例えば、夫Aは、自分が死亡後、自宅を妻Bに相続させたいが、妻Bが死亡した後には、その家をAの先妻の子であるCに承継させたいような場合に利用することができます。ただし、この事例で言うと、妻Bが相続した時点で相続税が課税され、さらに、Aの先妻の子Cが承継した時点でも相続税が課税されてしまいます。具体的には、第一次相続では妻Bへの相続となることから、配偶者の相続税額の減少や小規模宅地の特例等で相続税が生じないと思われます。他方、第二次相続ではAの先妻の子Cへの承継となることから、1親等の血族以外への遺贈となり、相続税が2割加算となります。

そこで、このような場合に配偶者居住権を利用することで相続税の負担が半減するというメリットがあります。
上記の事例の第一次相続の段階では、相続財産が「配偶者居住権」と「配偶者居住権の負担が付いた土地建物」に按分されます。第二次相続の段階では、妻Bが死亡したことで配偶者居住権が消滅しますが、この場合、Aの先妻の子Cに対して相続税の課税がありません(相基通9-13の2)。要するに、相続は最初の1度であり、相続税の負担額が半減するというメリットがあります。

上記のような、「第一次相続が後妻、第二次相続が先妻の子」という場合だけではなく、「第一次相続が妻、第二次相続がその妻の子」のような場合であっても、第一次相続の段階で妻に配偶者居住権を取得させれば、土地建物を相続した子が負担する相続税額は半減することになります。仮に母と子が同居している場合には、敷地部分についても小規模居住用宅地の評価減が使える場合があります。また、この場合は、母が死亡した段階で子に相続税の課税がないことから、母が受けた「配偶者の相続税額の軽減」を、実質的に子が利用したような形になります。
なお、母が死亡することで配偶者居住権が消滅し、所有権が復活しますが、その利益は、特別受益には含まれません。

4 その他の留意点

妻が配偶者居住権を放棄した場合はどうなるのでしょうか。
妻Dが配偶者居住権を放棄した時点での配偶者居住権の評価額について、その子Eに贈与税が課税されます。
他方、妻Dが平均余命よりも早く死亡した場合は、その子Eに課税関係が生じないこととの比較で注意しましょう。

土地建物を第三者Fに売却する必要が生じた場合であっても、その際に、妻Dが配偶者居住権を放棄すれば、その子Eに贈与税が課税されることにも注意して下さい。この贈与については、相続時精算課税を利用することを検討する必要があります。

妻Dが配偶者居住権を放棄した時点で、その子Eが配偶者居住権の評価額相当の対価を母(妻)Dに支払った場合には、課税関係はどうなるのでしょうか。この場合、対価を受けたDに所得税が課税されます。

妻Dが介護施設に入所した場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、配偶者居住権を放棄しなければ課税関係は生じません。仮に、Dが施設入所に伴い配偶者居住権を放棄するという場合、子Eに贈与税が課税されますが、相続時精算課税を利用することも考えられます。また、子Eが配偶者居住権評価額相当の対価を支払うのであれば、子Eに贈与税が課税されることはありませんが、対価を取得した妻Dに所得税が課税されることになります。

5 おわりに

従来は、夫(妻)が死亡した時に、その自宅については、その配偶者、子などが所有権を相続するという形になるのが一般的でした。それが、この度の民法大改正により「配偶者居住権」が創設され、相続税法によってその計算方法についても定められた今後については、「従来のように自宅の土地建物の所有権を相続するのか」、それとも「配偶者居住権を利用した形での相続にするのか」、いずれを選ぶのかによって、課税関係が異なることとなりました。今後は、第一次相続だけでなく、第二次相続までを見据えて、どのような方法を選択するのかを検討していく必要があるでしょう。

※本記事は記事投稿時点(2019年12月13日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

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