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教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置~各省庁Q&Aの更新~
1.はじめに
令和3年度税制改正において、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の2年延長(令和5年3月31日まで)が決定し、本制度の一部が見直されました。
これを受けて国税庁と文部科学省は、各省庁の公式ホームページに掲載されている、本制度に関するQ&Aを更新しました。
各省庁のQ&Aが更新されたのは、以下の4つの改正事項です。
①~③については令和3年4月9日に国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A 」で、④については令和3年4月1日に文部科学省「Q&A(「教育資金」及び「学校等の範囲等」)令和3年4月1日現在 」で更新されています。
本稿では、上記4つの改正事項について解説をします。
本制度の概要について、税理士法人チェスター公式「教育資金を贈与するなら、普通の贈与?教育資金の一括贈与? 」で解説をしているのでご覧ください。
なお令和3年度税制改正について、詳しくは「【令和3年度税制改正】教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得等資金の非課税措置 」でもお伝えしています。
2.贈与者死亡時の一定の管理残額は相続財産に加算
令和3年の税制改正により、令和3年4月1日以降の教育資金の一括贈与において、受贈者が23歳以上 (在学中等を除く)である場合には、契約から贈与者の死亡までの年数に関わらず、一定の管理残額は相続財産へ加算されることとなりました(相続税の課税対象となる)。
今回の国税庁ホームページの更新では、拠出時期に応じた管理残額の計算の設例が示されています(国税庁Q4-3)。
ただし、令和3年3月31日までに本制度を利用して贈与した財産については、拠出時期によって贈与者死亡時の相続税課税の取り扱いが異なります。
国税庁ホームページ更新では、「拠出時期による贈与者死亡時の相続税課税の比較イメージ」が追加されています(国税庁Q4-1)。
なお、贈与者の死亡によって管理残額が相続財産に加算されるケースでも、受贈者が以下のいずれかの条件に当てはまれば、管理残額は相続財産に加算されません。
3.孫などへの贈与に係る管理残額の一定部分は「相続税額の2割加算」
令和3年の税制改正により、令和3年4月1日以降の教育資金の一括贈与については、受贈者が「孫(贈与者は祖父母)」や「ひ孫(贈与者は曾祖父母)」などの場合で、管理残額が相続財産に加算されるときには、贈与者死亡時の管理残額に対する相続税額は2割加算の対象となります(国税庁Q4-2)。
また前章でご紹介した「管理残額の相続財産への加算」と同様、令和3年3月31日までの契約に関しては、拠出時期によって贈与者死亡時の相続税課税の取り扱いが異なるため注意が必要です(国税庁Q4-1)。
これに伴い、国税庁ホームページの更新では「管理残額のうち拠出時期によって2割加算の対象とならない部分の計算」などが示されています(国税庁Q4-5)。
4.教育資金非課税申告書などの電磁的方法による提出が可能に
教育資金の一括贈与の特例の適用を受けるためには、取り扱い金融機関の営業所等を経由して、以下の「教育資金非課税申告書」などを提出する必要があります(税務署に提出するのは金融機関)。
【国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A 」より抜粋】
これまでは金融機関の営業所等での対応となっていましたが、令和3年の税制改正によって「電磁的方法による提供」が可能となりました。
ただし本制度を取り扱っている金融機関が対応していることが前提となるため、国税庁ホームページには「事前に取り扱い金融機関に対応の有無を確認」するよう示されています(国税庁Q2-1)。
5.教育資金の範囲に「一定の認可外保育施設へ支払う保育料など」が追加
教育資金の一括贈与において贈与税が非課税となる「教育資金」とは、以下のような金銭のことです。
・学校等に入学金や授業料などとして直接支払われる金銭
・学校等以外の学習塾やそろばんなどの教育に直接支払われる金銭
・学校等以外のピアノや水泳などの習い事に直接支払われる金銭
学校等に支払われる教育資金は最大1,500万円まで、学校等以外の習い事などに支払われる教育資金は最大500万円まで、贈与税が非課税となります。
今回の文部科学省ホームページの更新では、教育資金の範囲に「一定の認可外保育施設へ支払う保育料など」が追加されました(文部科学省Q2-1-3)。
具体的には、都道府県知事などから証明書の交付を受けている、1日5人以下の乳幼児を保育する施設も、本制度の対象になると更新されています。
6.さいごに
令和3年の税制改正によって、令和3年4月1日以降に「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を利用する際は、受贈者の年齢や学校等への在学状況、贈与者との続柄(子、孫、ひ孫等)、取扱金融機関の電子申告対応の有無を事前に考慮する必要があると言えます。
また令和3年3月31日までに契約完了したものは、改正前の旧制度が適用されますので、拠出時期により適用される税制が異なることとなり、今後は本制度の利用者自身が「いつの時点の税制であったか」を把握する必要があり、相続税の課税関係が本改正により複雑になりました。
これから本制度を利用される方も、これまでに本制度を利用していて贈与者の相続が発生した方も、相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
※本記事は記事投稿時点(2021年6月7日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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