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相続等で取得した暗号資産の税務~売却時に取得費加算の特例は適用できない~

2024/04/22

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1.はじめに

相続や遺贈(以下、相続等)で取得した暗号資産(仮想通貨)は、相続税の課税対象となる財産です。

そして、暗号資産を売却した際に利益(損益)が発生すると、雑所得として所得税が課税されます。

しかし、相続等で取得した暗号資産を相続人や受遺者(以下、相続人等)が売却した際に、所得税の負担を軽減する「取得費加算の特例」は適用できません(令和6年3月現在)。

本稿では、相続等で暗号資産を取得した相続人等に課せられる、税務の留意点についてご案内します。

 

2.相続等で取得した暗号資産(仮想通貨)は相続税が課税される

相続等で取得した暗号資産(仮想通貨)は、相続税の課税対象となる財産です。

国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報) 」においても、暗号資産は相続税の課税対象であると明記されています。

そのため、相続等で暗号資産を取得した相続人等は、相続税評価額を計算しなくてはなりません。

2-1.相続等で取得した暗号資産の評価方法

相続等で取得した暗号資産は、財産評価基本通達において具体的な評価方法が定められていないため、財産評価基本通達5(評価方法の定めのない財産の評価) の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。

具体的には、財産評価基本通達4-3(邦貨換算) を用いて、以下のように暗号資産の相続税評価額を計算します。

相続等で取得した暗号資産は、原則として「相続開始日(被相続人が亡くなったことを知った日)の時価」で評価をすることとなります。

相続税の計算方法は複雑なので解説は割愛しますが、相続税は超過累進課税が適用されており、最高税率は55%となります。

相続税について、詳しくは「相続税の税率は何%か。控除額とは?計算手順や早見表も解説 」をご覧ください。

 

3.暗号資産(仮想通貨)を売却した場合は所得税が課税される

相続等で取得した暗号資産(仮想通貨)を相続人等が売却する場合、その売却価額と取得価額の差額である利益(損益)には、原則「雑所得」として所得税が課税されます。

相続等で取得した暗号資産を売却する場合は、以下のようにして利益(損益)を考えます。

暗号資産の取得価額は、その取得の方法に応じて定められており、相続等で取得した暗号資産を売却する際の取得価額は、相続時の時価(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)とされます。

なお、所得税も超過累進課税が適用されており、最高税率は45%となります(この他にも住民税や復興特別所得税が課税されます)。

3-1.相続等で取得した暗号資産の売却時に「取得費加算の特例」は適用できない

取得費加算の特例とは、相続税の申告期限の翌日から3年以内に、相続等で取得した不動産や有価証券等の「譲渡所得」に該当する資産を譲渡した場合、その損益計算において、納税した相続税額を取得費に加算できる特例のことです(租税特別措置法第39条第1項 )。

取得費加算の特例が適用できれば、譲渡益から納税した相続税額の一部を差し引くことができるため、所得税の負担を軽減できます。

しかし、相続等で取得した暗号資産を売却した際に、取得費加算の特例は適用できません。

この理由は、取得費加算の特例は「譲渡所得」に限られた特例であり、暗号資産の売却に伴う所得は「雑所得」として扱われるためです。

取得費加算の特例について、詳しくは「取得費加算の特例で節税!計算方法や注意点、併用可能な特例をわかりやすく解説 」をご覧ください。

 

4.相続等で取得した暗号資産を売却した場合の税額シミュレーション

少しイメージしづらいかと思いますので、シミュレーション例を元に、これまでの流れを整理してみましょう。

なお、解説を簡潔化するため、被相続人の財産は暗号資産AX(保有数は2,000万AX)のみであり、相続人は子ども1人のみ、相続人である子どもは納税資金の確保のために、全ての暗号資産AXを売却したと仮定します。

4-1.相続税と所得税の納税額の計算

シミュレーションモデルにおける相続税と所得税の納税額は、以下のように計算します。

このシミュレーション例において、相続で暗号資産AXを取得した後に売却をした場合、相続人の相続税と所得税の納税負担は合計30億340万円となります。

さらに住民税や復興特別所得税も課税されるため、その税負担は更に重くなってしまうのが現状です。

 

5.まとめ

相続等で取得した暗号資産を売却した場合の、相続人の相続税・所得税の負担についてご紹介しました。

記事内でご紹介したシミュレーションモデルのように、相続開始後に暗号資産のレートが上がった場合、所得税の納税負担が大きく異なります。

暗号資産を保有されている方は、相続発生後に相続人等に重い税負担がかかることを知った上で、専門家と共に適切な対策を考えておくことが重要といえるでしょう。

※本記事は記事投稿時点(2024年4月22日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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