相続税の税率は何%なの?控除額とは?計算手順や早見表も解説

相続税の税率は、10%~55%の超過累進課税が採用されています。
そのため「遺産が1億円だから相続税の税率は30%?!3,000万円も相続税がかかるの?!」と誤解をされる方が多いです。
しかし、遺産の評価額(土地・不動産・現金の合計額)に対して、相続税の税率をかけるのは間違いです。
実際には「法定相続分に応ずる取得金額」に対して相続税の税率が決まるため、正しい手順に沿って計算をしてみると、実際はもっと少ない相続税額となるので安心してください。
この記事では、相続税の税率や控除額といった基礎知識はもちろん、相続税の税額計算の手順や早見表について、相続専門の税理士が解説します。
YouTube動画でもわかりやすく解説しているので、併せてご覧ください。
この記事の目次
1.相続税の税率表(速算表)!税率は10~55%の超過累進課税
以下は平成27年1月1日以降に発生した相続における、相続税の税率表(速算表)です(令和4年7月現在まで税率の変更はありません)。
法定相続分に応ずる
取得金額税率 控除額 1,000万円以下 10% ― 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円
ご覧の通り、税率は10%~55%まで段階的に増えていく、「超過累進課税」が採用されています。
1-1.相続税の税率についてよくある誤解
相続税額を計算する際、「遺産総額」や「相続した遺産の評価額」をそのまま相続税の税率表に当てはめてはいけません。
相続税の税率についてよく、以下のように理解されることがありますが、これらの考え方は間違いです。
×遺産総額が7億円だから税率は55%
×配偶者は遺産を5億円相続したから税率は50%
×兄弟で遺産を8,000万円ずつ相続したから税率は30%ずつ
この理由は、相続税の税率は「法定相続分に応ずる取得金額」で決まるためです。
正しい手順に沿って相続税額の計算をすれば、実際に納税する相続税額は少なくなります(詳しい計算方法は次章で解説します)。
1-2.相続税の税率表の「法定相続分に応ずる取得金額」とは
相続税の税率表(速算表)の左枠にある「法定相続分に応ずる取得金額」とは、相続人全員で取得した「正味の遺産総額」から「基礎控除額」を差し引いた「相続税の課税対象額」を、一旦「法定相続分」で分割した金額のことです。
だからこそ、遺産総額などを、そのまま相続税の税率表に当てはめてはいけないのです。
相続税の税率を知るまでには、少し複雑な計算プロセスが必要…と覚えておいてください。
1-3.相続税の税率表の「控除額」とは
相続税の税率表(速算表)の右枠にある「控除額」とは、相続税の計算を簡単にするためのもの、と考えてください。
相続税の税率は、遺産のうち低額の部分の税率は低く、高額の部分の税率は高い超過累進課税です。
しかし、遺産を税率の段階ごとに区切って税率をかけると、計算が複雑になってしまいます(下図参照)。
そこで実際の相続税の計算では、相続した遺産に一度高い税率をかけて、低い税率を適用する部分について差額を控除する方法をとります(下図参照)。
この差額の部分が、相続税の税率表の「控除額」です。
遺産総額が1億円で基礎控除額を3,600万円(相続人は1人)と仮定したとき、遺産総額から基礎控除額を控除した6,400万円が課税の対象になります。
6,400万円に税率表の「1億円以下」の税率30%をかけた金額(1,920万円)から、控除額700万円を差し引くことで、相続税は1,220万円と算出されます。
1-4.最大税率55%が適用される場合とは
相続税の最大税率55%が強調されることもあり、相続した遺産の半分以上を相続税として納めるのかと心配する人もいるでしょう。
しかし、実際に最大税率55%が適用されるのは、一部の資産家のみです。
これまでにご紹介した通り、相続税の税率は「法定相続分に応ずる取得金額」に対して決まる上に、基礎控除額や特例なども設けられています。
逆算していくと、以下のようなケースであれば最高税率55%が適用される可能性があると言えます。
- 相続人1人…正味の遺産総額が6億3,600万円以上
- 相続人2人…正味の遺産総額が12億4,200万円以上
- 相続人3人…正味の遺産総額が18億4,800万円以上
なお、法定相続分は属性によって異なる上、評価額を計算する際の各種特例もあるため、必ずしも上記例に当てはまるとは限りません。
しかし相続税の最高税率55%の税率が適用されるのは、ごく一部の資産家のみです。
詳しくは「相続税の税率は55%!?相続税の税率表の見方」でもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。
2.相続税の税額計算の手順
相続税の税額計算の手順は以下の流れとなり、相続税の税率や控除額を当てはめるタイミングは「ステップ5」の段階となります。
相続税の計算が複雑になる理由は、取得金額から求めた相続税額は、法定相続分より多くの遺産を相続した人にとっては軽く、少ない遺産しか相続していない人にとっては重くなってしまうためです。
そのため過去からの相続制度の変遷や制定当時の社会状況を背景に、「法定相続分課税方式」と呼ばれる計算方式により、法定相続分という客観的な比率に基づいて相続税額を計算します。
相続税の税額計算の際にはいくつか注意点もありますので、この章でしっかり確認しておきましょう。
①法定相続人を確定
まずは法定相続人を確定、つまり相続する権利を有する人が「誰なのか」「何人いるのか」を確定してください。
被相続人の配偶者は常に法定相続人となりますが、他の法定相続人には順位が定められており、各ご家庭の家族構成によって異なります。
例えば、父親・母親・長男・次男の家族構成で、父親が亡くなった場合、法定相続人は「母親(配偶者)」「長男」「次男」の合計3人となります。
「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」を取り寄せれば、法定相続人を確定できます(婚外子などの有無等を確認します)。
法定相続人の考え方について、詳しくは「相続人は誰?相続人の優先順位と相続分をケース別に詳しく解説!」をご覧ください。
②正味の遺産総額を把握
相続税は、被相続人の遺産(相続財産)全てに課税される税金ではありません。
そのため、相続税の計算の大元となる、「正味の遺産総額」を把握する必要があります。
具体的には、相続時精算課税制度による贈与財産に、プラスの財産(土地などの不動産・現金・預貯金など)を足し、マイナスの財産(非課税財産・葬儀費用・債務など)を差し引き、さらに相続開始前3年以内に行われた贈与財産を足し戻す必要があります。
財産の相続税評価額の計算を間違えてしまうと、相続税の税率まで間違えてしまうこととなるため、このプロセスは慎重に行ってください。
不動産については、土地は路線価方式や倍率方式によって相続税評価額を計算し、建物部分は固定資産税評価額によって相続税評価額を計算する必要があります。
仮に不動産の土地部分に「小規模宅地等の特例」が適用できるのであれば、特例を適用させた後の相続税評価額を算入してください。
また、遺産の中に生命保険金や死亡退職金が含まれていれば、非課税上限額(500万円×法定相続人の人数)を非課税財産として計上します。
正味の遺産総額の考え方について、詳しくは「相続財産とは何か?~民法と税法では範囲が異なる~」をご覧ください。
③正味の遺産総額から基礎控除額を引く
正味の遺産総額の把握ができたら、次は「基礎控除額」を差し引いて「相続税の課税対象額」を計算します。
この基礎控除額は相続税が課税されないボーダーラインのようなもので、相続税の税率表にあった「控除額」とは違う種類の控除となりますので、混同されないようご注意ください。
相続税の基礎控除額の計算方法は以下となりますので、参考にしてください。
▼基礎控除額の計算方法
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
例えば、法定相続人が3人(配偶者・長男・次男)で、正味の遺産総額が1億円であるとしましょう。
この場合、基礎控除額は4,800万円【3,000万円+(600万円×3人)】です。
そして正味の遺産総額1億円から基礎控除額4,800万円を差し引き、課税対象額は5,200万円と計算できます。

相続税の基礎控除について、詳しくは「【相続税の基礎控除と特例】基礎控除の計算方法と申告要否判断の注意点も解説」をご覧ください。
④法定相続分で相続したと仮定して、各相続人へ分配
相続税の課税対象額が計算できたら、一旦法定相続分で相続したと仮定して、各相続人へ遺産を分配します。
法定相続人ごとの法定相続分は、以下の通りとなります。

法定相続分について、詳しくは「法定相続分は相続人の家族構成でこんなに変わる!【ケース別で解説】」をご覧ください。
⑤相続税の税率と控除額を当てはめて、相続税の総額を計算
正味の遺産総額を法定相続分で相続したと仮定して各相続人へ分配した金額、つまり「法定相続分に応ずる取得金額」に、相続税の税率と控除額を当てはめて、相続人全員で納める「相続税の総額」を計算します。
仮に法定相続人が配偶者・長男・次男であった場合、以下のような計算式となります。
相続税の税率表をもう一度ご覧になりたい方は、コチラをクリックしていただければご確認いただけます。
⑥相続税の総額を、実際の相続割合で分配
相続人全員で納める「相続税の総額」が計算できたら、実際に各相続人が相続する「相続割合」に応じて分割し、相続税の負担を調整します。
なお、実際の相続割合は、相続人による「遺産分割協議」や、故人が書き残した「遺言書」によって自由に分配できます(遺留分に配慮が必要です)。
⑦税額控除や相続税の2割加算を適用
各相続人の実際の納税額を計算するためには、さらに「相続税の税額控除」や「相続税の2割加算」を適用させる必要があります。
税額控除とは「各相続人が納める税額の計算時に適用できる控除」のことで、配偶者控除・未成年控除・障害者控除・贈与税額控除・相次相続控除・外国税額控除の6種類があります(税率表の控除額や基礎控除額とは異なります)。

税額控除について、詳しくは「税額軽減の要因は6つ!相続税の税額控除とは?」をご覧ください。
配偶者控除
相続税の配偶者控除とは、配偶者が相続した遺産のうち課税対象となるものの額が「1億6,000万円(もしくは法定相続分まで)」であれば、配偶者に相続税が課税されない税額控除のことです。

配偶者控除を適用できれば、配偶者は相続税が無税になるケースがほとんどですが、相続税申告が必要となりますので失念しないようご注意ください。
相続税の配偶者控除について、詳しくは「相続税の配偶者控除とは?配偶者は1億6千万円相続しても無税になる?」をご覧ください。
未成年者控除
相続税の未成年控除とは、相続等によって財産を取得した相続人が未成年者である場合、その未成年者の納税額から一定金額を控除できる税額控除のことです。
未成年者控除額の計算方法は以下の通りで、使いきれなかった未成年者控除額は、扶養義務者である他の相続人と分けることができます。

相続税の未成年者控除について、詳しくは「相続人が未成年の場合の注意点と未成年者控除について」をご覧ください。
障害者控除
相続税の障害者控除とは、相続等によって財産を取得した相続人が障害をもつ方である場合、その方の納税額から一定金額を控除できる税額控除のことです。
障害者控除額の計算方法は、その症状や程度によって「一般障害者」と「特別障害者」によって異なります。

なお、使いきれなかった障害者控除額は、扶養義務者である他の相続人と分けることができます。
相続税の障害者控除について、詳しくは「相続税の障害者控除とは?利用する要件や控除額計算方法をご紹介」をご覧ください。
贈与税額控除
贈与税額控除とは、相続開始前3年以内に被相続人から相続人に対して行われた贈与において贈与税を納税していた場合、すでに納税した贈与税を相続税から差し引くことができる税額控除のことです。
相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続財産として相続税の課税対象となりますが、すでに贈与税を納税している場合は、贈与税と相続税が二重に課税されてしまいます。

そのため、贈与税額控除を適用させ、すでに納税した贈与税額を相続税額から控除する必要があるのです。
贈与税額控除について、詳しくは「贈与税額控除とは」をご覧ください。
相次相続控除
相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)とは、一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合、一定の要件を満たせば、二次相続に納税する相続税額から、一次相続の相続税の一部を差し引くことができる税額控除のことです。

一次相続と二次相続が相次いで発生した場合、同じ財産に対して相続税が課税されてしまいます。
そのため、相次相続控除を適用することで、二次相続における相続人の相続税の納税負担を軽減することができます。
相次相続控除について、詳しくは「相次相続控除とは?申告要件・計算方法・添付書類・注意点を解説」をご覧ください。
外国税額控除
外国税額控除とは、すでに海外で相続税のような税金を納税している場合、日本における相続税から海外にある財産部分を差し引くことができる税額控除のことです。
相続税の外国税額控除額は、以下のいずれか少ない方の価額が適用されます。

外国税額控除について、詳しくは「外国税額控除を知らないと相続税が二重に!?海外と日本に財産がある場合の相続税について解説」をご覧ください。
相続税の2割加算の適用
遺産を取得するのが「配偶差や一親等の血族および代襲相続人以外の人」である場合、相続税の2割加算が適用されます。
具体的には、被相続人の兄弟姉妹・甥姪・遺言書によって遺産を取得する受遺者(内縁の妻や孫や子の配偶者など)が相続財産を取得した場合が該当します。

相続税の2割加算について、詳しくは「相続税2割加算の対象者は誰?加算額の計算方法となぜ2割加算されるかも解説」をご覧ください。
3.相続税を簡単に計算できる税額シミュレーション
これまでにご紹介した通り、相続税は「遺産総額×税率」で求められるほど簡単なものではありません。
しかし、相続人全員で納税する「相続税の総額」の概算であれば、計算シミュレーションツールを使えば簡単に計算できます。
相続税専門の税理士法人チェスターでは、相続税の計算シミュレーションツールを無料でご提供しています。
税理士法人チェスターの計算シミュレーションツールは、遺産総額や法定相続人の情報を入力するだけで、相続税の総額の目安を算出できますのでご利用ください。
>>【無料】税理士法人チェスター「相続税計算シミュレーション」
なお、正確な相続税額の計算は、必ず専門家である税理士に依頼しましょう。
4.相続税の早見表も活用しよう
相続税の税率表や計算シミュレーションツール以外にも、相続税の早見表を使って相続人全員に対する、大まかな相続税の総額をチェックする方法もあります。
法定相続人が「配偶者と子供」「子供のみ」を想定した、相続税の早見表をご紹介するのでご活用ください。
4-1.相続税額の早見表(配偶者と子供の場合)
配偶者と子が相続人の場合 | ||||
---|---|---|---|---|
遺産総額 | 配偶者 | 配偶者 | 配偶者 | 配偶者 |
子供1人 | 子供2人 | 子供3人 | 子供4人 | |
5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0円 | 0円 |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 | 0円 |
7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 80万円 | 50万円 |
8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 | 100万円 |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 | 163万円 |
1億円 | 385万円 | 315万円 | 262万円 | 225万円 |
1.5億円 | 920万円 | 747万円 | 665万円 | 587万円 |
2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,217万円 | 1,125万円 |
2.5億円 | 2,460万円 | 1,985万円 | 1,800万円 | 1,687万円 |
3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 | 2,350万円 |
5億円 | 7,605万円 | 6,555万円 | 5,962万円 | 5,500万円 |
10億円 | 1億9,750万円 | 1億7,810万円 | 1億6,635万円 | 1億5,650万円 |
20億円 | 4億6,645万円 | 4億3,440万円 | 4億1,182万円 | 3億9,500万円 |
30億円 | 7億4,145万円 | 7億380万円 | 6億7,432万円 | 6億5,175万円 |
50億円 | 12億9,145万円 | 12億5,380万円 | 12億1,615万円 | 11億7,850万円 |
上記の早見表は配偶者が法定相続分を相続したと仮定し、「配偶者控除」を適用させた後の相続税額を記載しています。
記載されている相続税額は、「子供全員に対する相続税の総額(配偶者は0円)」となるためご注意ください。
子供1人あたりの相続税額を知るためには、早見表に記載されている相続税額を「実際の分割割合」で按分する必要があります。
4-2.相続税額の早見表(子供のみの場合)
遺産総額 | 子だけが相続人の場合 | |||
---|---|---|---|---|
子供1人 | 子供2人 | 子供3人 | 子供4人 | |
5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 | 0円 |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 | 60万円 |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 | 160万円 |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 | 260万円 |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 | 360万円 |
1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 | 490万円 |
1.5億円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 | 1,240万円 |
2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 | 2,120万円 |
2.5億円 | 6,930万円 | 4,920万円 | 3,960万円 | 3,120万円 |
3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 | 4,580万円 |
5億円 | 1億9,000万円 | 1億5,210万円 | 1億2,980万円 | 1億1,040万円 |
10億円 | 4億5,820万円 | 3億9,500万円 | 3億5,000万円 | 3億1,770万円 |
20億円 | 10億820万円 | 9億3,290万円 | 8億5,760万円 | 8億500万円 |
30億円 | 15億5,820万円 | 14億8,290万円 | 14億760万円 | 13億3,230万円 |
50億円 | 26億5,820万円 | 25億8,290万円 | 25億759万円 | 24億3,230万円 |
上記の早見表に記載されている相続税額は、「子供全員に対する相続税の総額」となります。
各相続人の相続税額を知るためには、早見表に記載されている相続税額を実際の分割割合で按分する必要があります。
なお、故人に配偶者がおらず、第二順位である両親だけが法定相続人になる場合や、第三順位である兄弟姉妹だけが法定相続人になる場合も、上記の早見表をご利用いただけます。
5.相続税対策では「税率表の税率」より「実効税率」を参考に
相続税の税率の考え方には、記事の冒頭でご紹介した「相続税の税率表(速算表)」のほかにも、遺産の額に対する相続税の割合を示す「実効税率(負担率)」もあります。
贈与税の実効税率表
遺産総額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
相続税額 | 実効税率 | 相続税額 | 実行税率 | 相続税額 | 実効税率 | |
5,000万円 | 160万円 | 3.20% | 80万円 | 1.60% | 20万円 | 0.40% |
7,000万円 | 480万円 | 6.80% | 320万円 | 4.50% | 220万円 | 3.10% |
1億円 | 1,220万円 | 12.20% | 770万円 | 7.70% | 630万円 | 6.30% |
2億円 | 4,860万円 | 24.30% | 3,340万円 | 16.70% | 2,460万円 | 12.30% |
3億円 | 9,180万円 | 30.60% | 6,920万円 | 23.00% | 5,460万円 | 18.20% |
※遺産総額は基礎控除前の金額・配偶者はいない前提・平成27年1月1日以降発生の相続
相続税の実効税率は「遺産のうち何%が相続税になるか」という実感に近い割合を示していて、生前に相続税対策を考えるときに役に立ちます。
5-1.相続税対策シミュレーション①
相続税と贈与税の実効税率で比較することで、遺産として相続させるか生前贈与するかの検討ができ相続税対策になります。
例えば、子1人で2億円の遺産を相続する予定の場合、相続税対策をしないで遺産を相続すると相続税の実効税率は24.30%となります。
この場合は、贈与税の実効税率が24.30%を下回る範囲であれば、生前に贈与税を負担してでも生前贈与をする方が有利になると考えられます。
贈与税の実効税率表
贈与する金額 | 贈与税額 | 実行税率 |
---|---|---|
100万円 | 0円 | 0.00% |
300万円 | 19万円 | 6.30% |
500万円 | 49万円 | 9.80% |
1,000万円 | 177万円 | 17.70% |
2,000万円 | 586万円 | 29.30% |
※暦年贈与・20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合・平成27年1月1日以降の贈与
5-2.相続税対策シミュレーション②
「相続税の限界税率」と「贈与税の実効税率」を比較する考え方もあります。
相続税の限界税率とは、財産の増減に対する相続税の増減割合のことです。
生前贈与による財産の減少分に見合った相続税の税率(限界税率)と、贈与税の税率(実効税率)を比較します。
相続税と贈与税の税率を実効税率で比較するよりも、多くの金額を贈与することができます。
ただし、贈与の額が多くなると、贈与税の増加分が相続税の減少分を上回り、贈与税と相続税の合計額が高くなっていくことに注意が必要です。
相続税の限界税率について、詳しくは「相続税の限界税率とは?相続税対策に必要な税率の考え方」をご覧ください。
6.万が一相続税を追加で払う場合の税率
相続税が課税される場合は、定められた期限(相続発生の翌日から10ヶ月以内)に、「申告」と「納税」をする義務があります。
しかし、何らかの事情で相続税申告や納付が遅れた場合は、「加算税」と「延滞税」の二重のペナルティが課せられます。

なお、申告が遅れた場合のペナルティである加算税は、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税の3種類あり、どのような事由で申告が遅れたのかによって、適用される加算税の種類が異なります。
6-1.過少申告加算税
過少申告加算税とは、本来の税額よりも少なく相続税申告をしたことに対するペナルティです。
期限までに相続税申告をしたものの、自ら期限後に修正申告をする際や、税務調査で更正処分等をされた際に課税されます。
過少申告加算税の税率は、どのタイミングで修正申告をしたのかによって変動します。
過少申告加算税の税率(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)
追加で納める税額のうち | 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに修正申告した場合 | 税務調査を受けてから修正申告した場合または更正を受けた場合 |
---|---|---|---|
当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分 | なし | 5% | 10% |
当初の納税額と50万円のいずれか多い方を超える部分 | 10% | 15% |
6-2.無申告加算税
無申告加算税とは、申告期限までに相続税申告をしなかったことに対するペナルティです。
自ら期限後申告をする際や、税務調査で無申告を指摘されて更正処分等をされた際に課税されます。
無申告加算税の税率も、どのタイミグで期限後申告をするのかによって変動します。
無申告加算税の税率(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)
相続税額のうち | 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合 | 税務調査を受けてから申告した場合(※) |
---|---|---|---|
50万円以下の部分 | 5% | 10% | 15% |
50万円を超える部分 | 15% | 20% | |
(※)過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は税率が10%加算され、50万円以下の部分は25%、50万円を超える部分は30%となります。 |
6-3.重加算税
重加算税とは、税務調査によって「仮装・隠蔽があった(悪意があった)」と認めれた際に課せられるペナルティです。
重加算税の税率は、期限までに申告書を提出していたか否かによって変動します。
重加算税の税率
申告書提出の有無 | 税率 |
---|---|
申告書を提出していた場合(過少申告) | 35% |
申告書を提出していなかった場合(無申告) | 40% |
6-4.延滞税
延滞税とは、期限までに相続税を納税しなかったことに対するペナルティです。
延滞税の税率は、法定納期限の翌日から2ヶ月後を境に2段階に分かれており、原則として「2ヶ月を経過する日までは年7.3%」「2ヶ月を経過した日以降は年14.6%」です。

しかし超低金利の影響により、平成12年以降は上記とは異なる基準で税率が定められており、毎年変動します。
具体的な延滞税の税率について、詳しくは「相続税の延滞税・加算税はどのようなときに何%の税率で課税されるか徹底解説」をご覧ください。
7.相続税がかからなくても申告が必要なケースもある

「正味の遺産総額」や「基礎控除額」を下回る場合は、相続税の申告・納税義務がありません。
しかし、特例や控除を適用した結果相続税が0円である場合、以下のケースであれば相続税申告が必要となります。
この理由は、配偶者控除と小規模宅地等の特例には、「相続税申告書の提出」が適用要件とされているためです。
なお、未成年者控除・障害者控除・相次相続控除に申告要件は設けられていませんので、これらの税額控除を適用して相続税額が0円になる場合は、相続税申告をする必要はありません。
「相続税が0円だから申告不要」と考えると、先述した通り加算税や延滞税が課税される可能性もあります。
「相続税申告が不要な場合とは?相続税0円でも申告が必要なときも?!」で詳しくご紹介しておりますので、併せてご覧ください。
8.相続税の税率に関する専門家向け情報
最後に、相続税の税率に関して少し専門的な内容として、相続税の税率の推移と各国の相続税の税率についてご紹介します。
8-1.相続税の税率の推移
相続税は明治38年に創設され、時代の移り変わりとともに税率が改定されてきました。
明治時代から戦前までは長男がすべての遺産を相続する家督相続が基本とされていて、相続の制度も現在とは大きく異なっていました。
終戦後には民法や税法が大幅に改正され、相続税の税率のしくみも現在のものに近い形に改められました。
昭和63年から平成15年までは、バブル経済による地価の上昇やその後のバブル崩壊などを背景に税率の緩和が続きました。
しかし、平成27年の改正では基礎控除の引き下げとともに税率の引き上げが行われました。
今後は、一定の時期ごとに少しずつ税率が引き上げられるなど、課税が強化されていくと予想されます。

少子化対策の財源として相続税の増税案が浮上
衛藤晟一少子化対策担当大臣は、少子化対策を推進する財源として相続税の増税を検討すべきとの考えを示しました。
2020年8月21日の記者会見で明らかにしたもので、今後の議論のゆくえが注目されます。
8-2.相続税税率の改正前と改正後の変更内容
冒頭でご紹介した相続税の税率表は、平成27年1月1日以降に発生した相続において適用される税率と控除額です。
平成27年に相続税法が改正され、取得金額2億円以上の税率の引き上げが行われています。

法定相続分に応ずる取得金額が2億円以下であれば税率の改正はなく、影響を受けるのは一部の富裕層に限定されます。
ただし、平成27年の相続税法の改正において、基礎控除額や税額控除の改正も行われているため注意が必要です。
平成26年12月31日までに発生した相続における相続税の税率や計算方法について、詳しくは「相続税法の税率が変更!平成27年に改正された相続税の税率とは?」をご覧ください。
8-3.各国の相続税の税率
海外には相続税がない国や廃止された国もありますが、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどでは相続税が課税されています。(国によっては遺産税と呼ぶこともありますが、ここでは統一して相続税と呼びます。)
各国の相続税の税率は以下のとおりです。
税率がいくつかの段階に分かれる国が多いなか、イギリスでは一律40%と定められています。
各国の相続税の税率の比較(2018年1月現在)
国名 | 最低税率 | 最高税率 | 税率の段階 |
---|---|---|---|
日本 | 10% | 55% | 8段階 |
アメリカ | 18% | 40% | 12段階 |
イギリス | 40% | 40% | 一律 |
ドイツ | 7% | 30% | 7段階 |
フランス | 5% | 45% | 7段階 |
(参考:内閣府「2018年度第18回税制調査会説明資料 財務省説明資料(資産課税(相続税・贈与税)について(2/2))」)
これらの国において、相続税が課税される最低限の金額は日本円に換算して約1,000万円~1億円であることがほとんどです。
ただしアメリカはおよそ12億円であり、いわゆる超富裕層でなければ相続税は課税されません。
9.まとめ
相続税の税率は10%~55%の超過累進課税で、「法定相続分に応ずる取得金額」に応じて税率や控除額が変動します。
大まかな相続税額の計算はシミュレーションツールや早見表を利用していただけますが、正確な相続税額の計算は税理士に相談されることをおすすめします。
この理由は、相続税額の計算の大元となる正味の遺産総額を知るためには、土地や建物の相続税評価額を正確に計算して、さらに各種控除が適用できるか否かを検討する必要があるためです。
また、相続税額が判明したら、忘れずに相続税の申告書の作成も進めていきましょう。
相続税申告をご自身でされる方は、「【相続税申告を自分でする方へ】手続きに必要な準備や書類を徹底解説」をご覧ください。
9-1.相続専門の「税理士法人チェスター」にご相談を
「相続税の計算ならどの税理士でもできるでしょう?」と考えられる方が多いです。
しかし、医者に外科や内科といった専門分野があるように、税理士にも法人税や相続税といった専門分野があります。
法人税に強い税理士に相続税の相談をするということは、内科の医師に外科手術の相談をしているようなものです。
相続税には様々な控除や節税ポイントがあるため、相続税に強い税理士に相談をすれば、大幅節税を実現できるかもしれません。
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