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【令和6年能登半島地震】国税庁が路線価等の「調整率」を設定
1.はじめに
令和6年能登半島地震が「特定非常災害」に指定されたことから、被災者生活再建支援法 の規定に基づき、石川県・富山県・新潟県の全域は「特定地域」に該当することとなります(令和6年3月25日現在)。
これに伴い、国税庁は「特定地域」にある土地等(以下、特定土地等)について、災害による地価下落の状況を反映するための「調整率」を設定しました(令和6年7月1日に公表)。
具体的には、以下のいずれかの要件を満たす特定土地等を、令和6年1月1日において所有していた場合、「取得時の価額」ではなく「特定非常災害の発生直後の価額」を評価額とすることができます(租税特別措置法第69条の6、第69条の7 )。
①令和5年2月28日から令和5年12月31日までの間に「相続や遺贈」により取得
②令和5年1月1日から令和5年12月31日までの間に「贈与」により取得
本稿では、対象時期に特定土地等を相続や遺贈(以下、相続等)や贈与で取得した場合に用いる、評価方法や調整率についてご案内します。
国税庁「令和6年能登半島地震により被害を受けられた方へ 」もあわせてご覧ください。
2.特定非常災害の発生直後の価額とは
特定非常災害の発生直後の価額とは、一定の要件を満たす特定土地等を相続等や贈与で取得した際に用いる、租税特別措置法に基づく特例評価額のことです。
具体的には、令和6年分の路線価及び評価倍率に、「調整率」を乗じることによって評価額を計算できます。
なお、令和6年中に特定土地等を相続等や贈与で取得した場合も、令和6年分の路線価等に調整率を乗じて評価額を計算できます(法令解釈通達 )。
詳細は、国税庁「令和6年能登半島地震における土地等の評価の特例等(相続税・贈与税関係)~「調整率」等について~ 」でご確認いただけます。
2-1.調整率とは
調整率とは、特定非常災害による地価下落の状況を反映する補正率のことです。
「①直接的要因(被害の程度に応じた減価)」や「②社会インフラ要因(インフラの被害に応じた減価)」や「③経済的要因(経済活動が縮小することによる減価)」などを基に、町(丁目)または大字単位ごとに設定されています。
令和6年能登半島地震の特定地域における、県別・地目別の調整率は以下の通りです。
令和6年能登半島地震に係る、地域別の具体的な調整率は、国税庁「令和6年能登半島地震に係る調整率表 」からご確認いただけます。
3.「特定非常災害の発生直後の価額」の計算シミュレーション
特定土地等を相続等や贈与で取得した場合に適用できる、「特定非常災害の発生直後の価額」の具体的な計算方法についてシミュレーションしてみましょう。
なお、「路線価地域」と「倍率地域」では、評価額の計算方法が異なりますのでご留意ください。
3-1.路線価地域の場合
特定土地等が路線価地域にある場合、令和6年分の路線価に調整率を乗じて、評価額を計算することとなります。
なお、調整率適用後の路線価を基として、土地の奥行・形状・接道状況等に合わせた「画地調整率」を乗ずることとなります。
つまり、「自用地」で「画地調整率」を適用する場合、特定土地等の評価額は以下のような計算式になります 。
路線価方式の評価額の計算方法について、詳しくは「相続税路線価とは?調べ方や評価額の計算方法、固定資産税路線価との違いを解説 」をご覧ください。
3-2.倍率地域の場合
特定土地等が倍率地域にある場合、令和6年分の評価倍率に調整率を乗じて、評価額を計算することとなります。
なお、調整率適用後の評価倍率を基として、固定資産税評価額を乗ずることとなります。
つまり、特定土地等の評価額は、以下のような計算式となります。
倍率法域の評価額の計算方法について、詳しくは「倍率地域の宅地を4ステップで評価|評価額を減額する方法 」をご覧ください。
4.特定非常災害発生前に相続等や贈与で財産を取得した際によくある質問
特定非常災害発生前に相続等や贈与で特定土地等を取得した場合の、よくある質問をまとめました。
4-1.分譲マンションの敷地利用権にも調整率を適用できる?
特定土地等に係る「特定非常災害の発生直後の価額(特例評価額)」の計算は、居住用の分譲マンション(区分所有財産)に係る、敷地利用権(土地等)の評価額にも適用できます。
ただし、令和6年分に適用される評価通達等に基づいて評価を行うこととなるため、新たな区分所有財産の評価方法(区分所有補正率を乗ずる等)により、評価額を計算する必要があります。
詳しくは「マンションに係る財産評価基本通達が公表!令和6年1月1日以降の取り扱い 」をご覧ください。
4-2.特定非常災害発生前に取得した家屋の評価方法は?
特定非常災害発生日前(令和5年中)に、相続等や贈与により取得した家屋の価額は、令和5年度の固定資産税評価額に基づいて評価額を計算します。
家屋の評価方法について、詳しくは「家屋(建物)の相続税評価額の計算方法!調べ方や節税対策も解説 」をご覧ください。
4-3.特定非常災害発生前に取得した財産が災害による被害を受けた場合は?
特定非常災害発生前に相続等や贈与によって取得した財産が災害により被害を受け、以下の①②のいずれかに該当するときは、「災害減免措置」の適用により相続税または贈与税が減免されます。
①相続税等の課税価格の計算の基礎となった財産の価額のうち、被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上である
②相続税等の課税価格の計算の基礎となった動産等の価額のうち、当該動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上である
詳しくは、国税庁「相続税又は贈与税の災害減免措置について(令和6年能登半島地震用) 」をご覧ください。
4-4.相続税や贈与税の申告期限は延長される?
特定非常災害発生日前に、特定土地等を相続等や贈与で取得した方は、相続税や贈与税の申告期限が延長されます。
令和5年2月28日~令和5年12月31日までの間に、特定土地等を相続等で取得した場合、相続税の申告期限は令和6年11月1日となります。
なお、相続人の中の誰かが特定土地等を取得し、なおかつ「特定非常災害の発生直後の価額」を適用できる場合は、その相続に係る相続人等の全員の申告期限が延長されます。
令和5年1月1日~令和5年12月31日までの間に、特定土地等を贈与で取得した場合、贈与税の申告期限は令和6年11月1日となります。
詳しくは、「【令和6年能登半島地震】相続税の申告・納付等の期限延長の取扱い 」や、国税庁「令和年6年能登半島地震に関するお知らせ 」をご覧ください。
5.さいごに
特定非常災害発生前に特定土地等を相続等や贈与で取得した場合、取得時の価額ではなく、「特定非常災害の発生直後の価額」を評価額とできます。
しかし、令和6年分の路線価等に調整率を乗じる必要がある上に、災害により被害を受けた場合は「災害減免措置」が適用される可能性もあります。
特定土地等を相続等や遺贈で取得された方は、必ず専門家である税理士に相談した上で、適切な税務処理を行いましょう。
※本記事は記事投稿時点(2024年9月2日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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