死亡した人の確定申告は「準確定申告」。準備から提出まで手順を解説
確定申告は基本的に本人が行いますが、申告者が亡くなってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。この場合『準確定申告』を行うことになります。準確定申告と通常の確定申告との違いを把握しましょう。異なる点や記入方法について解説します。
この記事の目次 [表示]
1.亡くなった際の手続き『準確定申告』とは
確定申告を行う申告者が亡くなってしまった場合、相続人には代わりに『準確定申告』を行う義務が生じます。準確定申告の基本的な情報や条件について、まずは見ていきましょう。
1-1.所得税を故人に代わって申告すること
フリーランスの人や賃貸物件のオーナーなど、会社からの給与所得以外に収入が一定額以上ある場合は、毎年確定申告を行わなければなりません。
しかし、仮に確定申告を行う前に亡くなってしまった場合、本人が確定申告を行うのは不可能です。そこで確定申告予定者の資産を引き継ぐ相続人が、本人に代わって確定申告を行うことになります。この場合の確定申告を『準確定申告』と呼びます。
準確定申告は、相続人全員が共同で申告書を作成する、申告は亡くった人の居住地を管轄する税務署に届け出るなど、通常の確定申告といくつか異なる点があります。
1-2.家賃収入や医療費控除がある場合などに行う
準確定申告は、生前に確定申告の義務があった場合に、代わりに確定申告を行うものです。そのため給与所得が2,000万円以下の場合や、収入が所得控除の範囲内で確定申告が必要ない場合については、準確定申告の義務はありません。
準確定申告が必要なのは、自営業者や副業を営んでいた会社員、また400万円以上の年金受給があった人が亡くなった場合です。加えて以下のようなケースでは、還付金が返ってくる可能性があるので、行った方がよいでしょう。
- 年末調整を行っていない場合
- 生前に多額の医療費がかかっていた場合(医療費控除の可能性)
- 配偶者控除や扶養控除など、特定の控除を受ける場合
控除については、以下の記事も参考にしてください。
被相続人の医療費、準確定申告で控除済のものをさらに控除できる?|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
1-3.4カ月以内に申告しないとペナルティも
確定申告との大きな違いは申告期間です。
通常、確定申告は翌年の2月半ばから3月半ばのおよそ1カ月の間に行います。準確定申告の場合、『相続が発生してから4カ月以内』の申告が義務づけられています。
この期間に申告を行わなかった場合、加算税や延滞税などが課せられる可能性があるので注意しましょう。
2.故人の所得税の申告書を作るには
準確定申告書の作成方法について確認していきましょう。方法は通常の確定申告と変わりませんが、作成者が異なります。
2-1.基本的には相続人代表を決めて作成する
準確定申告を行う義務があるのは、故人の遺産を相続する人全員です。通常は連署(同じ書面にならべて署名すること)で作成しますが、各個人で作成することもできます。
ただし、個人で作成する場合は、ほかの相続人に申告した内容を通知しなければなりません。
連署で作成する場合、代表者を1人決めて、税務署からの書類の受領や問い合わせ対応を行うことになります。
2-2.収入の証明や領収書などを集める
通常の確定申告と同様に、確定申告には収入の証明、経費を申請する場合は領収書などが必要です。それらの書類を故人の代わりに集めなければなりません。
源泉徴収票や支払調書については、勤務先や取引先に連絡して発行してもらいます。年金受給者の源泉徴収票は、死亡届を出せば日本年金機構から交付されます。
そのほかにも、株式投資などを行っていた場合は年間取引報告書を証券会社から取り寄せる必要があります。医療費控除がある場合は、病院から領収書を取得し、保険については保険会社への連絡が必要です。
源泉徴収票や支払調書については、作成に時間がかかる場合もあります。準確定申告は4カ月という期限があるので、早い段階から動くようにしましょう。
2-3.手書きまたはe-Taxソフトで作成する
相続人代表が決まり、収入の証明や領収書が集まった後は、申告書を作成します。
申告書は、国税庁のホームページからダウンロードしてプリントアウトするほか、税務署に直接足を運んでもらう方法もあります。書類を手書きで作成することも可能です。
2020年分以降の準確定申告は、税制改正によって電子申告もできるようになりました。e-Taxによってパソコンやスマホで申告書を作成することも可能です。
3.準確定申告書の記入方法
書類を作成するにあたっては、記入方法についても知っておきましょう。主に通常の確定申告と異なる部分の記載について解説します。
3-1.第一表に死亡日、被相続人名、相続人名などを記入
通常の確定申告書と同様に第一表と第二表があるので、第一表の書き方を見ていきましょう。
確定申告書に記載する場合、欄外上部の『確定申告書』の前に『準』の文字を追記します。
また、付表を提出しない場合は、住所と氏名の欄については『相続人』と『被相続人』の両方の情報を記載します。相続人の情報は下段、被相続人の情報は上段です。
具体的には、以下のように記載します。
氏名 | 被相続人 ○○ 太郎 相続人 ○○ 花子 |
---|---|
住所 | 被相続人 ○○県○○市○○ ×-××-× 相続人 ○○県○○町○○ ×-××-× |
印鑑を押す場合、相続人代表の印鑑を使います。
死亡した日にちによって税金が異なる点は注意しましょう。1月1日以前に亡くなった場合、死亡日が属する年の翌年度に関して住民税の支払いは必要ありません。しかし1月2日以降に亡くなった場合、前年の所得に対して税金がかかります。
これらの税金は相続人が納めなければならず、支払った場合は忘れずに記載しましょう。
3-2.第二表に所得の内訳や医療費控除の内容などを記入
第二表についても、通常の確定申告と比べて大きな差はありません。表題の『確定申告書』に『準』を追記し、付表を提出しない場合は氏名と住所には第一表同様に『相続人』『被相続人』の両方の情報を記載します。
ただし、記載する数字自体がやや異なります。通常の確定申告が1月1日から12月31日を対象にしているのに対し、準確定申告による所得控除等は1月1日から死亡日までです。
控除を受ける場合は、控除対象者の配偶者と扶養家族のマイナンバーの記載も必要になります。
3-3.付表に相続人の氏名や住所などを記入
付表は、相続人が2人以上いる場合に提出が必要です。相続人が1人であれば付表は必要ありません。
相続人全員の氏名と住所、マイナンバーを記載し、印鑑を押します。
付表も申告書とともに提出する場合は、第一表・第二表には被相続人について記載するだけで十分です。付表を提出する場合と提出しない場合で書き方が変わるので注意しましょう。
4.準確定申告書類の提出方法
申告書の記載方法を確認したら、次は提出方法について見ていきましょう。提出方法と必要書類について解説します。
4-1.税務署に持参や郵送、e-Taxでの提出も
紙面に記載した場合は、税務署に直接持参するか郵送することになります。郵送する場合は『信書』に該当するため、『郵便物』または『信書郵便』として送付しましょう。
この場合、通信日付印(消印が押された日)が提出日とみなされます。そのため、特にポストに投函する場合、遅い時間に出すと翌日の消印になってしまう可能性もあるので、期限に気をつけなければいけません。
e-Taxであればオンラインで提出ができます。ただし、ソフトのダウンロードが必要になり、操作に慣れていない場合は時間がかかる可能性も考えられるので、余裕を持って準備するようにしましょう。
4-2.必要書類
準確定申告における必要書類は以下の通りです。
- 委任状(還付金を相続人の代表者に一括受領させる場合)
- 確定申告書
- 確定申告書の付表
- 被相続人の年金・所得の源泉徴収票
- 相続人の生命保険・損害保険の控除証明書
- 医療費控除のための領収書
- 相続人のマイナンバー関係書類
5.準確定申告後の流れ
最後に準確定申告後の流れを見ていきましょう。支払った所得税に関する対応や還付金があった場合の処理について解説します。
5-1.支払った所得税は相続財産から差し引く
準確定申告によって支払った所得税については、相続財産から差し引きます。またこのとき、相続人が複数人いる場合は、相続する財産の割合に比例した差し引き額になることは覚えておきましょう。
また、被相続人が死亡した時点で、納付または徴収が確定していない税金についても、遺産総額から差し引くことができます。
ただし、準確定申告の遅れによって生じた延滞税や加算税については、相続財産から差し引くことはできません。
5-2.還付金がある場合は相続財産に含める
準確定申告を行うと還付金を受け取れる可能性があります。還付金は原則として、相続人の相続分に比例して分配されますが、相続人代表者が1人で受け取ることも可能です。
還付金は相続税の課税対象になるため、相続財産に含めます。ただし、還付加算金(還付金につく利息分)については、相続税の対象にはなりません。その代わりに、相続人のその年の雑所得として計算します。
6.期限を意識して準確定申告を行おう
確定申告を本来行うはずだった人が死亡してしまった場合、その遺産を引き継ぐ相続人が確定申告を代わりに行う必要があります。これを『準確定申告』といいます。
準確定申告の場合、確定申告とは違い、相続が発生してから4カ月以内に申告する義務があり、申告を忘れると追徴税などが加算されます。
そのため、準確定申告の準備は余裕を持って行わなければいけません。特に源泉徴収票や控除証明書などは発行に時間がかかる可能性が高く、優先的に着手することが重要です。
準確定申告を行って税金を払った場合、または還付金が出た場合は相続税にも影響があるため、計算が複雑になります。これらは通常の確定申告と比べて難易度が高いので、プロに相談することも考えましょう。
相続税の申告には『税理士法人チェスター』がおすすめです。準確定申告から相続税まで、一連の処理を任せることも検討してみましょう。
『準確定申告』については下記もご覧ください。
「準確定申告」とは。亡くなった人の所得を申告する方法を税理士が徹底解説|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
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