教育資金の一括贈与を非課税にする方法。金融機関等で手続きが必須
教育資金の一括贈与は、特例により非課税です。この特例を活用し贈与税額を抑えるには、どのような手続きが必要なのでしょうか?暦年贈与や都度贈与との違いも合わせて紹介します。特例の注意点も押さえ、制度の恩恵を存分に生かしましょう。
この記事の目次 [表示]
1.教育資金の一括贈与の特例が3年延長
もともと教育資金の一括贈与の特例の期限は、2023年3月31日まででした。しかし3年延長となり、2026年3月31日まで利用できます。特例の基本的な内容や、他の贈与の仕方についてチェックしましょう。
1-1.教育資金の贈与は最大1,500万円が非課税
特例で非課税となる教育資金の贈与は『1,500万円』が上限です。学校に直接支払われる入学金・授業料・学用品の購入費用などのほか、習い事や塾の費用も含まれます。
ただし学校以外に使える資金の上限は500万円です。1,500万円を受け取ったとしても、全てを自由に使えるわけではない点に注意しましょう。
1-2.暦年贈与や都度贈与との違い
教育資金の一括贈与の特例と暦年贈与の違いは、非課税になる金額です。特例では1,500万円までなら、まとめて受け取っても贈与税はかかりません。
一方暦年贈与で税金がかからないのは、1年間に110万円までです。毎年110万円の贈与を繰り返し実施すれば、15年間で1,650万円を非課税で受け取れます。ただし贈与の仕方によっては定期贈与とみなされ、贈与の始まった年にさかのぼり課税される可能性がある点に注意しましょう。
また都度贈与は、生活に必要な資金や教育費をその都度受け取るなら、金額に関係なく非課税という点が特例と異なります。例えば、祖父母から子どもの私立大学医学部の入学料や学費を3,000万円受け取って、支払いに充てたような場合も都度贈与の対象です。
ただし、数年分の学費を受け取り、その年に使わない資金を貯金してしまうと、通常の贈与税の対象となってしまうのは要注意です。
2.教育資金を非課税で贈与する方法
特例を利用すると、まとまった金額の教育資金を非課税で受け取れると分かりました。ただしどのようなケースでも利用できるわけではありません。特例の利用にあたり満たすべき条件と、必要な手続きを紹介します。
2-1.家族関係、年齢などの条件を確認しよう
教育資金であれば、だれからの贈与でも対象となるわけではありません。特例の対象となる贈与は、父母・祖父母・曾祖父母など『直系尊属』からの贈与に限られます。
その他の親戚から資金を受け取っても、特例を使用できないため注意しましょう。加えて、受贈者の年齢も条件に含まれており『30歳未満』が対象です。
また受贈者の前年の所得が1,000万円を超えるケースは特例の対象外となります。
2-2.贈与にあたって所定の手続きが必要
加えて所定の手続きも必要です。まずは金融機関で『教育資金管理契約』を結びましょう。手続きには贈与者と受贈者がそろって出席します。受贈者が未成年ならば法定代理人の出席も必要です。契約時には下記のものを持参します。
- 贈与契約書の原本
- 戸籍謄本
- 印鑑
- 本人確認書類
- 新規申込手数料
- 新規申込手数料引落口座の通帳と印鑑
加えて税務署へも、贈与契約書・戸籍謄本・受贈者の前年分の所得が分かる書類の提出が必要です。ただし税務署へ出向く必要はなく、教育資金管理契約を結ぶ金融機関での受理により、税務署へ提出されたとみなされます。
2-3.教育資金支払いの証拠を提出する
贈与された資金を使う際には、教育資金として使ったことが分かる記録を提出しなければいけません。振り込んだ場合にはATMの『利用明細書』などが、引き落としなら『通帳のコピー』が必要です。
また自身の口座から出金し現金で支払った場合には『領収書』を発行してもらいましょう。これらの記録を金融機関の営業所へ、決められた日にちまでに提出するのがルールです。
提出期限は支払い方法により異なります。先に手持ち資金で払ってから同額を出金するなら、利用明細書や領収書に記載された日付から1年後が提出の期限です。
教育資金口座から直接支払う場合には、領収書などに記載された日付の翌年3月15日までに提出しましょう。
3.特例を活用するときの注意点
非課税で贈与を受けられる特例ですが、利用には注意が必要です。ケースによっては課税されることもあるため、あらかじめ制度のルールを知っておきましょう。
3-1.使い切れなかった分は贈与税の課税対象
受贈者が30歳になると、金融機関と結んだ教育資金管理契約は終了します。ただし、2019年7月1日以降は、学校等に在学している場合または教育訓練を受けている場合に、最長で40歳まで教育資金管理契約を延長することができます。
教育資金管理契約の終了時に贈与者・受贈者が共に存命なら、残っている資金に贈与税がかかります。基礎控除110万円より多いなら、贈与税の申告が必要です。
なお、2023年4月1日以降に贈与された資金に対応する贈与税は、成年者が直系尊属から受ける贈与に適用される特例税率より高い一般税率で課税されます。
3-2.贈与者が死亡した場合は相続税の課税対象
財産の贈与を受けたとしても、贈与者が死亡すると一定の残額が相続財産へ加算され、相続税の課税対象になります。ただし受贈者が下記の条件のいずれかに当てはまると、相続税がかかりません。
- 23歳未満
- 学校等に在学中
- 教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講中
なお、2019年3月31日以前に受け取った教育資金は、相続財産への加算対象外です。また、2019年4月1日~2021年3月31日に受け取った教育資金は、贈与者の死亡までの3年以内に受け取った分が相続財産へ加算されます。
4.孫へ教育資金を援助するならば計画的に
直系尊属から教育資金の支援を受けるなら『教育資金の一括贈与の特例』を利用するとよいでしょう。金融機関で所定の手続きを実施することで、1,500万円までの資金を非課税で受け取れます。
また受け取った資金で教育費を支払ったら、領収書や利用明細書を保管し金融機関へ提出しなければいけません。受贈者が30歳になると、原則として金融機関との教育資金管理契約が終了します。
このとき残高によっては、贈与税がかかる可能性があります。実際に税金の申告や納税が必要か判断が難しいと感じた場合には、『税理士法人チェスター』へご相談ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
相続対策は「今」できることから始められます
「相続税の納税額が大きくなりそう」・「将来相続することになる配偶者や子どもたちが困ることが出てきたらどうしよう」という不安な思いを抱えていませんか?
相続専門の税理士法人だからこそできる相続税の対策があります。
何から始めていいか分からない方もどうぞご安心ください。
様々な状況をご納得いく形で提案してきた相続のプロフェッショナル集団がお客様にとっての最善策をご提案致します。
まずはチェスターが提案する生前・相続対策プランをご覧ください。
今まで見たページ(最大5件)
関連性が高い記事
カテゴリから他の記事を探す
贈与税編