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名寄帳とは固定資産課税台帳の所有者別まとめ一覧表-見本や取得方法も

名寄帳とは固定資産課税台帳の所有者別まとめ一覧表-見本や取得方法も

名寄帳とは、土地や家屋の固定資産課税台帳を所有者別にまとめた一覧表のことを指します。

誰でも取得できるわけではなく、請求できる人は固定資産の所有者や親族に限られます。課税明細書とは違い非課税資産も記載されており、相続財産を把握したいときに便利です。遺産相続が発生して故人の財産を調査したい人は、名寄帳の取得先や手数料、名寄帳の見方などを確認しスムーズに相続手続を進めましょう。

1.名寄帳とは固定資産(土地や家屋)を所有者別にまとめたもの

名寄帳(なよせちょう)とは、市区町村が固定資産税を課税するために固定資産課税台帳を所有者別にまとめて作成したものです。

名寄帳は、被相続人が所有していた不動産の情報が一覧表になっているため、相続財産の調査に活用できます。以下のようなケースに該当する場合は、名寄帳の取得がおすすめです。

名寄帳の取得がおすすめなケース

  • 被相続人の不動産の所有状況がわからない場合
  • 故人が不動産投資などで複数の宅地・家屋を所有していた(可能性がある)場合
  • 故人が農地・山林などを所有していた(可能性がある)場合
  • 故人が不動産を他の誰かと共有していた(可能性がある)場合

故人が所有していた不動産をすべて把握できている場合は、名寄帳を取得する必要はありません。固定資産税の課税明細書で、被相続人が所有していた不動産の評価額を確認できます。

1-1.固定資産課税台帳や土地家屋名寄帳との違いはない

名寄帳と固定資産課税台帳の記載内容に大きな違いはありません。自治体によっては、名寄帳が固定資産課税台帳を兼ねていることがあります。名寄帳は市区町村によって以下のような名前で表記される場合もあります。

名寄帳の名称代表例

  • 土地家屋課税台帳
  • 名寄帳兼課税台帳
  • 固定資産課税台帳
  • 土地・家屋名寄帳

呼び方が異なっていても基本的に記載内容は同じです。しかし、固定資産税が課税されない不動産は、名寄帳には記載されても固定資産課税台帳には記載されない場合があります。被相続人が所有するすべての不動産を把握するためには、名寄帳を取得しましょう。

1-2.1月1日時点の固定資産所有状況をもとに作成される

名寄帳は、毎年1月1日時点で不動産の登記事項証明書に記載されている所有者を基準に作成されます。そのため、被相続人が1月2日から相続開始日までに不動産の売却や購入していても、翌年の1月1日までは名寄帳に記載されません。取得の時期に注意して漏れがないか確認しましょう。

1-3.市町村ごとに作成される

名寄帳の発行は、不動産の所在地である市区町村単位です。しかし、東京23区の場合は都税事務所、一部の政令指定都市の場合は市税事務所で申請するケースもあります。

所在地が異なる市区町村に所有している不動産の情報は、名寄帳に記載されません。例えば、不動産が市や県の境目にある場合は、念のため不動産が所在している可能性のあるすべての市区町村に名寄帳を請求しましょう。

1-4.法人名義の固定資産は記載されない

名寄帳に記載される固定資産は個人名義のみで、法人名義の固定資産は記載されません。例えば、被相続人が会社を経営し会社名義で不動産を所有していた場合は、名寄帳に記載されないことになります。相続税の節税対策として不動産所有会社を設立するケースは、以下の記事で紹介しています。

参考:個人より法人名義で所有する方が得?不動産所有会社設立のメリットとは|税理士法人チェスター

1-5.記載事項は課税明細書と同じ‐違いは非課税不動産が含まれる点

名寄帳が課税明細書と異なる点は、記載事項に非課税不動産が含まれる点です。

課税明細書は、毎年4月から6月頃に不動産の所有者へ発送される、固定資産税納税通知書と納付書に同封されています。課税される不動産のみ記載されているため、非課税とされた不動産は記載されません。被相続人が非課税対象となる公共用道路や私道などを所有していた場合は、課税明細に記載されていない可能性があります。心配な場合は名寄帳を取得し、確認しましょう。

2.請求できる人は固定資産税の納税義務者-本人や相続人以外は委任状が必要

名寄帳を請求できる人は、固定資産税の納税義務者である不動産の所有者本人に限られています。市区町村役場や都税事務所で、申請書と本人確認書類の提出で取得できます。

相続が発生し、所有者本人の相続人が請求する場合は、本人との関係性がわかる書類として、戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本または法定相続情報一覧図の提出が必要です。法定相続一覧図とは、被相続人の相続関係を1通の用紙に記載したものです。法務局で認証を受けると認証文を付した写しを交付してもらえるため、公的な証明として相続手続で使用可能です。

法定相続一覧図に関しては、以下の記事をご確認ください。

参考:『法定相続情報一覧図』で相続が簡単に!|税理士法人チェスター

所有者または所有者の相続人以外の第三者が代理人として請求する場合は、所有者または所有者の相続人から第三者へ、取得を委任したことのわかる委任状が必要です。委任状には以下の内容を記載し、委任者の印鑑を押印します。

委任状への記載内容の代表例

  • 代理人の住所、氏名
  • 委任事項(令和4年度分の名寄帳を1通取得するなど)
  • 物件の所在地
  • 委任者(所有者または所有者の相続人)の住所、氏名、電話番号

申請書や委任状の様式は、市区町村や都税事務所によって異なる場合があります。ホームページで確認し、申請書をダウンロードして使用すると安心です。

3.名寄帳の見本で見方をチェック

名寄帳の記載方法は市区町村によって異なりますが、以下のような形式で表示される場合があります。

名寄帳の見本で見方をチェック

▲名寄帳の記載例

名寄帳に記載される代表的な事項は以下のとおりです。

名寄帳に記載される代表的な事項

  1. 所有形態(単独または共有)と所在地
  2. 地積と床面積
  3. 固定資産税評価額
  4. 固定資産課税標準額

3-1.所有形態(単独または共有)と所在地

名寄帳には土地をどのような形態で所有しているかが記載されています。

例えば土地の場合、所有形態は以下のように記載されます。

記載所有の形態
単有1人で所有
共有複数人共同で所有
区分区分建物(マンションなど)敷地を所有

名寄帳には所有している土地がどこにあるのか、所在地が記載されます。

所在地は法務局の登記事項証明書や、市区町村が管理する固定資産課税台帳をもとに記載されます。記載される所在地は、一般に使用されている「住所(住居表示)」ではなく「地番」です。地番とは、土地の単位ごとに振られた登記のための番号で、位置を示す住所とは異なります。市区町村で住居表示が実施されている場合、住所と地番が異なる可能性があるため、地番がわからない場合は市区町村に確認しましょう。

住所から地番を調べる方法は、以下の記事で紹介しています。

参考:住所から地番を調べるために知っておきたい3つの方法|税理士法人チェスター

3-2.地積と床面積

名寄帳には地積と床面積が記載されます。

地積とは所有している土地の面積のことで、単位は㎡(平方メートル)です。法務局の登記事項証明書や、市区町村が管理する固定資産課税台帳をもとに地積が記載されます。相続する不動産が代々引き継がれてきたものの場合、正しい面積が記載されているかの確認をおすすめします。測量方法が現在と異なり、登記事項証明書上の地積と測量した地積が異なる可能性があるためです。

床面積とは所有している建物の面積のことです。建物が一戸建てかマンションかによって、以下のとおり計測方法が異なります。

建物面積計測方法
一戸建て壁芯面積壁の柱の厚みの中心線を想定し、建物の中心線を囲んだ面積
マンション内法(うちのり)面積建物の壁の内側部分を囲んだ面積

3-3.固定資産税評価額

名寄帳には固定資産税評価額が記載されています。固定資産税評価額は、固定資産税の基準となる評価額のことです。評価額の算出方法は各自治体によって異なりますが、国土交通省が発表する土地公示価格の70%程度が水準とされています。評価額は3年に1度見直されます。

不動産の相続登記や相続税申告の算定に使用されるのは、固定資産税評価額です。下記の固定資産課税標準額と間違えないようにしましょう。

参考:固定資産税評価額と路線価の違いは?価格の決め方や確認方法を解説

3-4.固定資産課税標準額

名寄帳には固定資産課税標準額が記載されています。課税標準額は、固定資産税額を算出する際の基準となる金額のことです。

通常の場合、固定資産税「評価額」と固定資産税「課税標準額」は同一の金額となります。しかし、特例措置などによって税負担が調整されている場合は、課税標準額は評価額よりも低く記載されています。固定資産課税標準額は相続登記や相続税申告の算出には使用しないため、算出の際には固定資産税評価額を確認しましょう。

4.名寄帳を取得する方法

名寄帳は市区町村役場や都税事務所の窓口で、申請書と本人確認書類の提出で取得が可能です。郵送での取得も認められています。

相続が発生し所有者本人の相続人が請求する場合は、本人との関係性がわかる書類として、戸籍謄本(除籍・改製原戸籍謄本)や法定相続情報一覧図の提出が必要です。所有者または所有者の相続人以外の第三者が代理人として請求する場合は、所有者または所有者の相続人から第三者へ取得を委任したことのわかる委任状が必要になります。

4-1.必要書類を集める-申請用紙、申請者の戸籍謄本、故人の除籍謄本など

名寄帳の取得には、以下の書類が必要です。

必要書類説明
申請書市区町村役場指定の申請書
申請者の印鑑の押印が必要
本人確認書類マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど
法定相続情報一覧図法務局で認証を受けたもの
戸籍(改製原戸籍・除籍)謄本を提出する場合は提出不要
被相続人の死亡が確認できる戸籍(改製原戸籍・除籍)謄本被相続人の死亡日が記載されている戸籍(改製原戸籍・除籍)謄本
法定相続情報一覧図を提出する場合は提出不要
被相続人の出生から死亡までが確認できる戸籍(改製原戸籍・除籍)謄本一式法定相続情報一覧図を提出する場合は提出不要
相続人の現在の戸籍謄本法定相続情報一覧図を提出する場合は提出不要
遺言書 遺産分割協議書公正証書または裁判所で検認済みの遺言書または遺産分割協議書
法定相続人ではない受遺者が請求する場合に必要
委任状(所有者または所有者の相続人以外の人が請求する場合)所有者または所有者の相続人以外の人から委任を受けた内容を記載した書面

法定相続情報一覧図、被相続人との関係がわかる戸籍(改製原戸籍・除籍)謄本、裁判所で検認が必要な遺言書に関して、詳しくは以下の記事で紹介しています。

参考:『法定相続情報一覧図』で相続手続きが簡単に!|税理士法人チェスター

参考:戸籍謄本は郵送でも取り寄せられる!その具体的な方法を解説|税理士法人チェスター

参考:遺言書の検認とは?手続きの流れや必要書類・費用を解説|税理士法人チェスター

4-2.取得する場所をチェック-法務局ではなく市役所や町役場など

名寄帳の請求先は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場の資産税を管理している課宛になります。東京23区の場合は所在地の区の都税事務所で、一部の政令指定都市では市税事務所で申請する場合もあるため、請求先は事前にホームページで確認しましょう。

4-3.取得手数料を用意-無料もしくは150~300円程度

名寄帳の取得にかかる手数料は自治体によって異なります。無料の場合もありますが、ほとんどの場合でおおよそ150円~300円程度かかります。事前に市区町村のホームページなどで確認しましょう。郵送の場合は、郵便局で購入した無記名の定額小為替で手数料を支払います。手数料分の定額小為替の同封を忘れずに請求しましょう。

5.名寄帳を取得して相続登記をおこなう場合の注意点

名寄帳の取得後、被相続人の所有していた不動産を相続し、相続登記や相続税申告することになる場合は以下の点に注意しましょう。

名寄帳を取得して相続登記をおこなう場合の注意点

  1. 市町村ごとに取得しなければならない
  2. 固定資産の評価額を証明するためには固定資産評価証明書が必要
  3. 相続税申告書の作成には専門知識が不可欠

5-1.市町村ごとに取得しなければならない

名寄帳には、所在地が異なる市区町村に所有している不動産の情報は記載されません。そのため、被相続人の所有不動産が不明な場合は、所有していた可能性のある所在地の市区町村すべての名寄帳を請求する必要があります。例えば、被相続人が不動産投資をしていた場合や、県の境目にある山林を所有していた場合は、念のため不動産が所在している可能性のあるすべての市区町村に名寄帳を請求しましょう。

5-2.固定資産の評価額を証明するには固定資産評価証明書が必要

不動産の評価額を証明したい場合には「固定資産税評価証明書」や「公課証明書」の取得が必要です。名寄帳は被相続人が所有していた不動産の情報を一覧にしたもので、固定資産税の評価額を証明しているものではありません。

相続登記の申請時は登録免許税の納付が必要なため、固定資産税評価証明書の添付が必要です。登録免許税の金額は、不動産の固定資産税評価額に1000分の4をかけた額です。計算の基準となるのは、「固定資産評価証明書」の「価格」または「評価額」の欄に記載されている金額です。金額が正しいか証明するために、固定資産税評価証明書の添付が必要となります。相続税登記の登録免許税や詳しい納付方法を以下の記事で紹介しています。

参考:相続登記に必要な登録免許税の計算方法・納付方法を解説|税理士法人チェスター
参考:No7191 登録免許税の税額表|国税庁

相続税申告で土地や建物の不動産を評価する場合に、固定資産税評価証明書の添付が必要です。被相続人が所有していた建物(家屋)の評価額は、固定資産評価額に1.0をかけて計算した金額です。つまり、家屋の評価額は固定資産評価額と同一になります。

土地の場合は、国税庁が年に一度定める路線価の指標を用いて、土地を相続税評価する「路線価方式」で評価をおこないます。しかし、路線価が設定されていない「倍率地域」の場合は、固定資産税評価証明書に記載されている固定資産評価額に、評価倍率表で定められた倍率をかけた金額が評価額になるため、固定資産税評価証明書が必要となります。相続税の土地の評価について、詳しくは以下の記事で紹介しています。

参考:相続税の土地評価の方法を、税理士が初心者にも分かりやすく教えます|税理士法人チェスター

5-3.相続税申告書の作成には専門知識が不可欠

名寄帳の取得は被相続人所有不動産の調査に適しています。しかし、被相続人が相続開始直前に購入や売却した場合は、一覧から漏れてしまう場合があります。名寄帳は毎年1月1日時点で不動産の登記事項証明書に記載されている所有者を基準に作成されるためです。

被相続人が所有していた財産があとから発覚した場合は、再度の遺産分割協議が必要となったり、相続税の修正申告が必要となる可能性があります。例えば相続人の間でトラブルが発生し、遺産分割協議がまとまるまでに1年間かかったとします。その後、被相続人に遺産分割協議書に記載のない不動産が発覚した場合、再度の遺産分割協議が必要となり相続手続が遅くなってしまう場合があります。

調査漏れを防ぐために、専門家への依頼を検討しましょう。専門家は、名寄帳以外にも権利証や公図、被相続人が遺した書類などを利用して調査をおこないます。また、争いに発展しそうな場合、弁護士に間に入ってもらうことで話し合いがスムーズに進む場合もあります。

参考:相続の専門家を選ぶときに知っておきたいこと

6.相続財産は固定資産だけではない-名寄帳の取得は弁護士に依頼しよう

名寄帳は、土地や家屋の固定資産課税台帳を所有者別にまとめた一覧表のことです。遺産相続が発生して故人の財産を調査したい場合には、名寄帳を活用してスムーズに相続手続を進めましょう。しかし、相続財産には現金や預貯金、株式などがあります。被相続人が複数の財産を所有していた場合は、詳しく調査することが大切です。

調査漏れを防ぐことによって、相続人の修正申告や相続手続が遅くなるのを防げます。調査が難しい場合や、相続トラブルに発展しそうな場合は、相続の専門家への相談をおすすめします。

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