家賃収入に相続税はかかる?かかる税金と確定申告を徹底解説

亡くなった人が所有していた賃貸アパートや賃貸マンションなどを相続する場合、家賃収入が相続税と所得税のどちらの課税対象になるかを適切に判断することが大切です。
また、家賃収入を得た相続人は原則として確定申告をする必要があります。被相続人が亡くなった年の確定申告をしていなかった場合は、相続人全員が期限内に準確定申告をしなければなりません。
この記事では、相続した賃貸物件の家賃収入に課税される税金の種類や確定申告が必要となるケース、相続税を計算する際の賃貸物件の評価方法などについて相続税専門の税理士が解説します。
この記事の目次 [表示]
1.相続した不動産の家賃収入は誰のもの?遺産分割までの帰属先
亡くなった人が残した賃貸物件の家賃収入は、遺産分割協議が終わるまで原則として相続人全員が法定相続分にしたがって取得できます。
一方、協議が終了したあとの家賃収入については賃貸物件を相続する人のものとなります。
1-1.遺産分割協議が成立するまでは「相続人全員の共有財産」
相続が始まってから遺産分割協議が成立するまでの期間に発生した家賃収入は、遺産そのものとは別に扱われます。最高裁判所の判例によると、遺産分割協議が終わるまでの法定果実は、遺産分割の対象とはならないとされているためです。
物から生まれる経済的な利益のこと。不動産から得られる家賃収入や地代、預貯金や貸付金の利息、株式の配当金などが該当する。
遺産分割協議が成立するまでの間は、相続人全員で収益物件を共有し、それにより発生した法定果実も相続人の相続割合(法定相続分)に応じて共有する、というのが一般的な見解です。
協議の結果、特定の相続人が不動産を相続することになっても、協議終了までの家賃は各相続人が法律で定められた法定相続分に応じて受け取ることが可能です。
【例】法定相続人が配偶者、長男、長女、次女の計4人であり、相続開始後から遺産分割協議の終了までに生じた家賃収入が600万円であるとしましょう。
法定相続分は配偶者が1/2、長男、長女、次女はそれぞれ1/6ずつであるため、各相続人は以下の金額の家賃収入を取得できる権利があります。
- 配偶者:600万円×1/2=300万円
- 長男:600万円×1/6=100万円
- 長女:600万円×1/6=100万円
- 次女:600万円×1/6=100万円
1-2.遺産分割協議後は「不動産を取得した相続人」のものに
遺産分割協議が成立した日よりも後に発生する家賃収入は、すべて不動産を取得した相続人のものです。成立時点からの家賃収入は、相続財産ではなく不動産を相続した人の「不動産所得」として扱われるためです。
ただし、遺産分割協議により賃貸物件を相続することになった人が、相続の開始から協議が終了するまでに発生した家賃収入を取得できるわけではない点に注意が必要です。
通常、遺産分割は「死亡の時点にさかのぼって効力が生じる(遡及効)」とされているため、不動産を相続した人は、死亡時からの家賃もすべて受け取れると考えてしまうかもしれません。
しかし、先述のとおり遺産である不動産そのものと、相続が始まってから遺産分割が終わるまでの間に生じた家賃収入(収益)は、まったくの別物として扱われます。
そのため、遺産分割の遡及効は家賃収入には適用されず、不動産を相続したからといって、遺産分割が終わるまでの期間の家賃収入を、後からさかのぼって全額取得できるわけではありません。
また、協議終了までに各相続人が法定相続分に応じて受け取っていた家賃を後から返す必要もないとされています。
1-3.賃貸物件の相続人が相続開始後の家賃を受け取ることも可能
遺産分割協議が終わるまでの家賃収入は相続人全員で分けるのが原則ですが、相続人全員が合意すれば、不動産を相続する人が相続開始時点からの家賃をすべて受け取ることも可能です。
具体的には、遺産分割協議の際に「相続開始後に各遺産から生じた収益は、その遺産を取得した相続人が受け取る」という内容で全員が合意し、その旨を遺産分割協議書に記載すると、不動産の相続人が単独で家賃収入等を取得できるようになります。
ただし、これはあくまで相続人全員の合意がある場合の話です。合意がないにもかかわらず、特定の相続人が一方的に家賃収入を独占することは認められません。
もし、遺産分割協議が成立するまでの間の家賃収入を特定の相続人が独り占めした場合、他の相続人から「不当利得返還請求」や「損害賠償請求」を行使される可能性があります。
1-4.遺言書がある場合は原則としてすべて指定された人のものとなる
遺言書で不動産を相続する人が指定されている場合、亡くなった後に発生する家賃収入は、すべて新しい所有者(遺言で指定された相続人)のものとなります。
遺産相続では、遺産の所有者である亡くなった人の意思がもっとも優先されるため、遺言書がある場合、相続が発生した時点ですぐに不動産の新しい所有者が確定します。
そのため、亡くなった月以降の家賃収入は、遺産分割協議で相続人全員の共有財産となるケースとは異なり、すべて遺言で指定された相続人1人の「不動産所得」として扱われます。
2.家賃収入と相続税の関係|直接課税されるもの・されないもの
相続税を適切に計算するためには、賃貸物件から得られる家賃や敷金などの取り扱いについて、以下の点に注意しましょう。
2-1.死亡日より前に発生した家賃は相続税の課税対象
被相続人が亡くなった日よりも前に発生した家賃収入は、その受け取り状況によって扱いは異なりますが、基本的には相続税の課税対象です。
まず、支払期日を迎えている入金済みの家賃は、亡くなった方の預貯金(現預金)の一部として相続税の課税対象となります。
支払期日が来ていたにもかかわらず、まだ入金されていない「未収家賃」については、亡くなった方が持つ「債権(お金を受け取る権利)」とみなされて相続財産になるとされています。
たとえば、翌月分の家賃を毎月25日に支払う「前家賃」の契約であり、被相続人の死亡日が9月15日だったとしましょう。
この場合、9月分の家賃の支払期日は8月25日です。この支払期日は、被相続人が亡くなった9月15日よりも前であるため、もし9月分の家賃が未払いであれば、その未収家賃は相続財産として相続税の課税対象となります。
一方で、10月分の家賃については、支払期日が9月25日であり、被相続人が亡くなった後となります。そのため、10月分の家賃が未収であっても、相続税の課税対象にはなりません。

未収家賃がある相続税の計算方法について詳しくは以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
(参考)未収家賃も相続税がかかる!税額の計算方法・かからないケースも解説
2-2.預かっている「敷金」の扱いは?
賃貸経営では、借主が貸主へ敷金や礼金などを支払うケースがあります。同じ契約時に支払われる金銭であっても、相続税を計算する際の取り扱いが異なる点には注意が必要です。
2-2-1.敷金は債務として相続財産から控除できる
敷金は、賃料の不払いや未払いなどに対する担保として入居者から支払われる金銭です。
あくまで「預り金」であり、将来返還すべきものであるため、相続税の計算上は故人の資産ではなく「債務(負債)」として扱われ、債務控除の対象となります。
相続税を計算するときは、預かっている敷金のうちの一定金額をほかの債務と同様に、預貯金や不動産といったプラスの財産の合計額から差し引くことができます。
2-2-2.返還不要の保証金や権利金は課税対象
敷金とは異なり、礼金や更新料、契約上返還する義務のない保証金などは、被相続人が確定的に受け取った収入です。これらは「預り金」ではなく、債務控除の対象にはなりません。
相続税の課税対象になるため、被相続人の現金や預貯金の一部として相続財産に計上する必要があります。
2-3.相続開始後に発生した家賃収入は「所得税」の対象
被相続人が亡くなった日の翌日以降に支払期日が到来する家賃収入は、被相続人が生前に築いた財産ではないため、相続税の課税対象になりません。
この家賃収入から必要経費を差し引いた金額は、新たに不動産を取得した相続人の「不動産所得」となり、相続人自身の所得税の課税対象となります。
3.【重要】相続で必要になる2種類の確定申告
賃貸物件を相続する際に必要となる確定申告には、2種類あります。1つは亡くなった方のための「準確定申告」、もう1つは相続人自身のための「確定申告」です。
それぞれに期限とルールがあるため、正確に理解しておきましょう。
3-1.亡くなった方の所得税申告「準確定申告」
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を計算し、相続人が代わって申告・納税する手続きのことです。
ここでは、準確定申告を申告する人や期限について解説します。
なお、準確定申告について詳しくは、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
(参考)【準確定申告とは】必要・不要の判断方法、記入例などを解説
3-1-1.申告が必要なケースと申告義務者
被相続人が賃貸アパートや賃貸マンションを所有し、家賃収入を得ていた場合、原則として準確定申告を行い、その年の1月1日〜死亡日までの不動産所得を計算して申告する必要があります。
不動産所得は、家賃収入をはじめとした総収入金額から、固定資産税や修繕費、管理費などの必要経費を差し引いた部分です。
被相続人が亡くなった時点で、前年の確定申告も終わっていない場合、相続人は亡くなられた年分と前年分の2年分の準確定申告が必要です。
被相続人が会社員や公務員などの給与所得者であった場合、不動産所得が合計で20万円を超えるときに準確定申告が必要となります。
準確定申告をする義務があるのは、相続人と包括受遺者(遺言で財産を受け取る人)です。
申告の際は、全員が連名で1通の準確定申告書を作成し、亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署へ提出します。
3-1-2.申告期限は相続開始から4ヶ月以内
準確定申告の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から4ヶ月以内です。
たとえば、5月10日に被相続人が亡くなったことを知った場合、申告期限はその4ヶ月後の9月10日となります。

通常の確定申告は、所得が発生した年の翌年3月15日※が期限であり、準確定申告はそれよりも非常に短く設定されています。※土日祝日によって前後します。
準確定申告が必要であるにも関わらず、期限内に手続きを終えないと無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
被相続人が亡くなった後は、葬儀や法要の準備、関係者への連絡、役所への死亡届の提出などを行わなければなりません。また、法定相続人の確定や、預貯金や不動産といった相続財産の調査などさまざまな対応で慌ただしくなるため、準確定申告の手続きを失念しないよう注意が必要です。
3-2.相続人自身の所得税申告「確定申告」
不動産を相続した人が家賃収入を得た場合は、原則として確定申告をする必要があります。
ここでは、相続した年の申告方法と青色申告制度について解説します。
3-2-1.相続した年からの不動産所得の申告
遺産分割協議の終了後からその年の12月31日までに家賃収入を得た場合、相続人自身の不動産所得として確定申告が必要です。申告期間は、不動産所得が生じた翌年の2月16日から3月15日です。※土日祝日によって前後します。
確定申告をする際は、以下の計算式を用いて不動産所得を計算します。
総収入金額と必要経費に該当する項目は、以下のとおりです。
| 該当する項目 | |
|---|---|
| 総収入金額 |
|
| 必要経費 |
|
3-2-2.必要に応じて青色申告承認申請手続きも行う
青色申告とは、日々の取引を複式簿記にしたがって記帳し、その記載内容に基づいて所得金額や税額を計算し、確定申告をして納税する制度のことです。
青色申告には、以下のようなさまざまな節税メリットがあるため、賃貸アパートや賃貸マンションを所有する人の多くが利用しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 青色申告特別控除 | 一定の要件を満たすと所得金額から最大65万円を控除 |
| 赤字の繰越し(純損失の繰越控除) | 不動産経営が赤字の場合、その損失額を翌年以降3年間繰り越して相殺が可能 |
| 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与) | 一定条件のもと、生計を共にする配偶者や親族への給与を必要経費として計上可能 |
相続人が青色申告を利用するためには、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
引用:国税庁「所得税の青色申告承認申請書」
被相続人が白色申告者であり、その年の1月16日以降に相続人が業務を承継した場合、青色申告承認申請書の提出期限は承継日から2ヶ月以内です。
被相続人が青色申告者である場合の承認申請書の提出期限は、以下のとおりです。
| 被相続人の死亡日 | 提出期限 |
|---|---|
| 1月1日~8月31日まで | 死亡の日から4か月以内(準確定申告書の提出期限と同じ) |
| 9月1日~10月31日まで | その年の12月31日まで |
| 11月1日~12月31日まで | 翌年の2月15日まで |
※出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
被相続人が青色申告を利用していたとしても、不動産を相続した人にその資格が自動で引き継がれません。
申請書の提出を忘れると、青色申告特別控除をはじめとした節税メリットを受けられなくなります。賃貸物件を相続したときは、必要に応じて申請期限までに青色申告承認申請書を提出しましょう。
4.相続税評価額の計算方法|賃貸物件はなぜ節税になるといわれるのか
財産の一部で賃貸物件を取得して相続をすると、相続税の負担を軽減する効果が期待できるといわれています。賃貸物件は、相続税を計算する際の評価額が低く算定される仕組みがあるためです。
賃貸物件の評価額が下がる主な理由は以下のとおりです。
- 土地は「貸家建付地」として評価が減額される
- 建物は「貸家」として評価が減額される
- 「小規模宅地等の特例」でさらに評価額を圧縮できる可能性がある
4-1.土地の評価額:「貸家建付地」としての減額
他人に貸しているアパートやマンションなどが建っている土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」と呼ばれ、所有者自身が使う土地(自用地)よりも相続税評価額が低くなります。
これは、賃貸物件に入居している人の権利が法律によって保護されており、土地の所有者がその土地を自由に使ったり処分したりできないなどの制約があるためです。
たとえば、土地の所有者であっても「この土地を売りたいから」といった自身の都合で簡単に入居者を立ち退かせることはできません。
貸家建付地の評価額は、所有者の権利が制限されている分を割り引くため、自用地としての評価額を基準に以下の計算式で減額調整します。
自用地評価額は、所有者自身が自由に使える土地の評価額です。一定の評価方法により求められ、公示地価(国土交通省が算出する標準的な土地価格)よりも低くなるのが一般的です。
借地権割合は、土地の権利のうち借地権が占める割合を指します。30〜90%の範囲内で、10%刻みで定められており、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
借家権割合は、建物の権利のうち借家権が占める割合で、全国一律30%です。
賃貸割合は、賃貸アパートや賃貸マンションなどの総床面積のうち、相続開始時点で実際に賃貸されている部屋の床面積の割合です。
ここで、モデルケースをもとに貸家建付地の評価方法をシミュレーションで確認してみましょう。
【例】自用地評価額1億円、借地権割合60%、賃貸割合100%(満室)である場合の貸家建付地の評価額を計算します。
- 自用地評価額:1億円
- 借地権割合:60%
- 賃貸割合:100% (全室満室)
計算結果は、以下のとおりです。
- 貸家建付地の評価額:1億円 × (1 – 60% × 30% × 100%)
= 1億円 × (1 – 0.18)
= 8,200万円
更地と比べて相続税評価額は1,800万円低くなる結果となりました。
4-2.建物の評価額:「貸家」としての減額
土地と同様に、他人に貸している建物自体も「貸家(かしや)」として評価され、自分で使っている家屋よりも評価額が低くなります。
貸家の評価額は、以下の計算式で算出します。
固定資産税評価額は、固定資産税や不動産取得税などを計算する際の基準となる評価額です。各市町村(東京23区は都)が個別に決めており、「固定資産税納税通知書」や「固定資産評価証明書」で確認できます。
借家権割合と賃貸割合は、貸家建付地を計算するときと同様です。
ここでも、モデルケースを用いて貸家の評価額をシミュレーションしてみましょう。
【例】固定資産税評価額5,000万円、賃貸割合100%(満室)の条件で貸家の評価額を計算します。
計算結果は以下のとおりです。
- 貸家の評価額:5,000万円 × (1 – 30% × 100%)
= 5,000万円 × (1 – 0.3)
= 3,500万円
計算の結果、自身が使用している建物と比べて評価額は1,500万円の減額となりました。
4-3.小規模宅地等の特例の適用可否と要件
「小規模宅地等の特例」は、亡くなった方が住んでいた土地や事業をしていた土地などを相続する際に、土地の相続税評価額を減額できる制度です。
賃貸アパートや賃貸マンションの敷地は、一定の要件を満たせば「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例の対象となり、敷地面積200㎡までの評価額が50%減額されます。
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等を相続する際、貸付事業用宅地等としてこの特例を受けるためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業や駐車場業など)の敷地であったこと
- その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつその申告期限までその貸付事業を行っていること
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
- 相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地等でないこと(3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っていた場合は適用可)
小規模宅地等の特例を適用できると敷地部分の相続税評価額をいくら減額できるのか、シミュレーションで確認してみましょう。
【例】評価額8,200万円、面積250㎡の貸家建付地に小規模宅地等の特例を適用した場合の相続税評価額を算出します。
相続した賃貸アパートの敷地が「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例の対象となる場合、減額が適用される面積は250㎡のうち200㎡までです。そのため、特例による評価減は以下のとおりです。
- 特例による評価減:8,200万円×(200㎡/250㎡)×50% = 3,280万円
よって特例を適用した後の敷地の相続税評価額は、以下のとおりです。
- 特例適用後の評価額:8,200万円 – 3,280万円 = 4,920万円
特例を適用した結果、賃貸アパートの敷地の評価額は4,920万円に圧縮できました。
特例を適用できるかどうかは専門的な判断が求められるため、賃貸アパートや賃貸マンションなどを相続したときは、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
賃貸アパートや賃貸マンションを相続するときの小規模宅地等の特例について詳しくは、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
(参考)貸付事業用宅地等とは?小規模宅地等の特例を適用するための生前対策・注意点
5.家賃収入がある不動産を相続する際の注意点
賃貸不動産を相続すると家賃収入を得られるようになるメリットがある一方、以下の点には注意が必要です。
5-1.修繕費や管理費といった維持コストを負担する必要がある
賃貸物件を相続してオーナーになると、建物を維持していくためのコストも基本的にはすべて負担しなければなりません。主なランニングコストは以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 税金 |
|
| 管理・ 運営費用 |
|
| 損害保険料 |
|
| その他 |
|
賃貸物件を相続したとしても、維持費が家賃収入を上回って赤字経営に陥ると、貴重な資産を食い潰してしまうかもしれません。
特に築年数が古い物件は修繕費が増える傾向があるため、賃貸物件を相続するか判断する際は、収支状況を詳細に確認することが大切です。
5-2.ローン残債(債務)を引き継ぐ場合がある
被相続人が賃貸物件のローンを完済せずに死亡した場合、その借入金は相続の対象となります。
亡くなった方が団体信用生命保険(以下、団信)に加入していれば、保険金でローンが完済されます。その場合、相続人は返済義務を負うことなく、借金のない状態で物件を相続することが可能です。
しかし、団信に未加入であったり、加入時に健康状態を事実と異なる申告(告知義務違反)をしていたりすると、被相続人が亡くなった際に保険金が支払われず、ローンの返済義務が残ることになります。
賃貸物件を相続すべきか判断するときは、被相続人が団信に加入しており保険金でローンが完済されるかよく確認することが大切です。
被相続人が団信に加入していない場合や、保障が受けられない場合は、ローンを返済できる見込みがあるかどうかを慎重に検討しましょう。
5-3.共有名義で不動産を相続することにはリスクがある
賃貸物件を法定相続人の共有名義で相続すると遺産を公平に分けやすくなるため、一見すると円満な解決策に見えるかもしれません。しかし、その一方で以下のようなトラブルが発生する可能性もあります。
- 共有者の中に一人でも反対する人がいると、物件の売却や大きなリフォームができなくなる
- 共有者が自身の持ち分を勝手に売却し、見ず知らずの第三者と共有状態になる
- 相続が起きるたびに共有者が増えていき、話し合いや意思決定が困難になる
共有名義の不動産は、売却や大規模な修繕など重要な意思決定を行うためには共有者全員の合意が必要です。1人でも反対すれば実行できないため、物件が「塩漬け」状態になる恐れがあります。
また、ある日突然、知らない第三者が共有者に加わり、他の共有者に持ち分の売却を迫るなどのトラブルに発展するケースも少なくありません。
共有名義の賃貸物件が複数回にわたり相続されると、誰が所有者なのか把握することも難しくなり、売却や管理などが事実上不可能になることもあります。
トラブルを避けるためにも、賃貸物件を安易に共有名義で相続することは避けたほうがよいでしょう。
特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払って精算する「代償分割」をするなど、共有ではない方法を検討することもおすすめします。
6.不動産相続の税金で困ったら専門家へ相談を
賃貸不動産を相続する場合、得られた家賃収入を適切に取り扱い、必要に応じて期限内に準確定申告を済ませましょう。また、貸家建付地の評価方法や小規模宅地等の特例の要件なども理解する必要があるため、賃貸物件を相続するときは相続税を専門とする税理士へ相談することをおすすめします。
チェスターは、相続税専門の税理士法人です。相続税の申告実績は年間3,000件以上と業界トップクラスであり、お客さまはもちろん、同業の税理士の先生からも高い評価を受けています。
相続した不動産の税金や家賃収入の扱いで少しでも不安な点がある場合は、ぜひ一度、税理士法人チェスターにお問い合わせください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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