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【土地の相続税はいくら?評価額の計算方法や控除を解説】
土地を相続すると、相続税がかかることがあります。相続税がかかる場合、相続の開始を知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、申告と納税をしなければなりません。
そのため、相続が発生したときは、土地の利用形態や所在するエリアなどに応じて、適切に相続税評価額を求めることが大切です。
この記事では、土地の相続税評価額の計算方法や具体的な相続税の計算方法、活用できる控除と特例について、相続税専門の税理士が解説します。
1. 土地の相続における相続税の基礎知識
相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を受け継いだ人(相続人)が納める税金のことです。
土地にも価値があるため、相続をした人には相続税が課せられる可能性があります。
相続税を計算する際は、土地を含む相続財産の価値を評価します。
基本的には、相続が発生したときの時価が相続税評価額となります。
しかし土地や建物などの不動産は、現金や預金とは異なり、実際に売却しない限り正確な金額を把握することが難しいものです。
そこで、土地の評価額は国税庁が定める「財産評価基本通達」にしたがい、基本的には路線価方式で求められます。
路線価とは、道路に面した標準的な土地の1㎡あたりの価額のことです。
相続税が課税されるのは、土地を含む遺産の総額から基礎控除額を差し引いた残りの部分です。
基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。
土地を相続したとしても、遺産総額が基礎控除額を下回っているのであれば、相続税は課税されず申告も不要です。
また、特例や税額控除を適用することで、税負担を軽減できることがあります。
土地を相続したときは、評価方法や税額の計算方法、適用できる特例・税額控除などをよく理解することが大切です。
2. 土地の相続税評価額の計算方法
土地の相続税評価額は、基本的に路線価方式で求めますが、土地があるエリアによっては「倍率方式」を用いることもあります。
また、同じ土地であっても、利用形態によって評価方法は異なります。
ここでは、土地の相続税評価額の計算方法を詳しくみていきましょう。
2-1. 基本的には路線価方式で求める
都市部や住宅地の多くでは、路線価方式を用いて土地の相続税評価額を計算します。
路線価方式を用いた評価額の計算方法は、以下のとおりです。
〇路線価方式の計算式
- 土地の相続税評価額:1㎡あたりの路線価 × 補正率 × 面積(㎡)
たとえば、1㎡あたりの路線価が20万円、土地の面積が100㎡であり、補正の必要がない場合、土地の相続税評価額は「20万円 × 100㎡=2,000万円」です。
路線価方式で評価額を算出する場合、土地の形状や奥行、間口の広さなどに応じた、補正が必要になることがあります。
たとえば、いびつな形をした土地や奥行が長すぎる土地などは、使いにくく価値が下がるため路線価が減額補正されます。
路線価は、国税庁が公開する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価の調べ方や相続税評価額の求め方は、下記記事で解説していますのであわせてご一読ください。
(参考)相続税路線価とは?調べ方や評価額の計算方法、固定資産税路線価との違いを解説
2-2. 路線価がない地域は「倍率方式」で評価額を求める
路線価が振られていない地域では「倍率方式」で評価額を算出します。
倍率方式では、自治体が算出する不動産価格である「固定資産税評価額」に、所定の倍率をかけて相続税評価額を算出します。
倍率方式の計算方法は、以下のとおりです。
〇倍率方式の計算式
- 固定資産税評価額 × 倍率
固定資産税評価額に乗じる倍率は、宅地や田、畑、山林といった7種類の地目ごとに定められており、路線価と同様に国税庁の 「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
倍率方式で相続税評価額を算出する場合、土地の形状や奥行などに応じた補正はされません。
形状や奥行などは、すでに固定資産税評価額に反映されているためです。
2-3. 貸宅地・貸家建付地の評価方法
ここまで解説してきたのは、所有者が自由に利用できる土地(自用地)の評価方法です。
同じ土地であっても、貸宅地や貸家建付地は、自用地とは評価方法が異なります。
貸宅地とは、所有者が人に貸している宅地のことです。
貸宅地の評価額は、以下の計算式を用いて算出します。
〇貸宅地の評価方法
- 貸宅地の評価方法:自用地の評価額×(1-借地権割合)
借地権とは、建物を建てるために地代を支払って第三者から土地を借りる権利のことです。
借地権割合は、自用地評価額に占める借地権の評価額の割合であり、地域ごとに30〜90%の割合で設定されています。
借地権割合も、国税庁が公開する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認が可能です。
被相続人がマンションやアパートなどの貸家を建てていた土地は「貸家建付地」として評価額を求めます。
貸家建付地の相続税評価額の計算方法は、以下のとおりです。
〇貸家建付地の評価方法
- 自用地の評価額-(自用地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は、建物の価値のうち借家人(マンションやアパートなどを借りている人)が持つ割合です。
全国一律で、30%と定められています。
賃貸割合は、実際に貸し出されている専有部分の床面積が、建物の総床面積に占める割合を指します。
計算式は「課税時期に賃貸されている専有部分の床面積÷家屋の専有部分の床面積の合計」です。
3. 土地を相続したときの具体的な相続税の計算方法
土地を相続したときは、以下の手順で相続税を算出します。
- 遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を計算する
- 法定相続分から相続税総額を計算する
- 実際の取得割合に応じて各人の相続税額を計算する
計算手順を1つずつ確認していきましょう。
3-1. STEP1. 遺産総額(課税価格の合計額)を計算する
まずは、相続や遺贈(遺言によって遺産を贈ること)などで財産を取得した人ごとに、課税価格を計算します。
計算式は、以下のとおりです。
- 課税価格=遺産総額の価格-非課税財産-債務・葬式費用+死亡前3年以内(※)の贈与財産
※令和6年以降の1月1日に行われた贈与では、この期間が7年まで段階的に延長されます
土地や建物といった不動産に加え、現金や預貯金、株式などの財産は、相続税の課税対象です。
また、生命保険の死亡保険金や死亡退職金など、被相続人が亡くなったときに受け取れる財産は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
債務は、被相続人が残した借入金や未払金などです。
葬式費用は、相続人が負担した、通夜・告別式の費用や火葬料、埋葬料などです。
非課税財産は、相続税の課税対象にならない財産を指します。
代表的な非課税財産は、以下のとおりです。
〇非課税財産の例
- 墓所、仏壇、祭具など
- 死亡後に国などに寄付した財産
- 生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数」で求められる金額まで
- 死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」で求められる金額まで
各相続人の課税価格を算出したあとは、それらを合計して課税価格の合計額を求めます。
3-2. STEP2. 課税遺産総額を計算する
次に、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。
基礎控除額と課税遺産総額の計算式は、以下のとおりです。
- 基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
- 課税遺産総額:課税価格の合計-基礎控除
たとえば、配偶者と子供2人の合計3人が法定相続人であり、課税価格の合計が1億円であったとしましょう。
基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 3人)=4,800万円、課税遺産総額は「1億円−4,800万円=5,200万円」となります。
3-3. STEP3. 法定相続分から相続税総額を計算する
課税遺産総額を求めたあとは、各相続人の法定相続分に応じて按分し、それぞれの取得金額を計算します。
法定相続分は、遺産を相続人やその人数に応じて決まります。
相続人に配偶者が含まれるときの法定相続分は、以下のとおりです。
相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者+子供 | 配偶者:2分の1 子供:2分の1 |
配偶者+被相続人の直系尊属(父母・祖父母など) | 配偶者:3分の2 直系尊属:3分の1 |
配偶者+被相続人の兄弟姉妹 | 配偶者:4分の3 子供:4分の1 |
同じ順位に該当する人が複数人いる場合は、均等に分けるのが原則です。
たとえば、法定相続人が配偶者と子供2人の計3人である場合、法定相続分は配偶者が1/2、子供は1/4ずつとなります。
課税遺産総額が5,200万円である場合、法定相続分の割合に応じた取得金額は、次のとおりです。
- 配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
- 子供A:5,200万円×1/4=1,300万円
- 子供B:5,200万円×1/4=1,300万円
法定相続分に応じた取得金額が求められたら、以下の速算表にしたがって各相続人の相続税額を計算し、それらを合計します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上記の速算表にしたがって税額を求めると、各相続人の仮の相続税と、それらの合計額は、以下のとおりとなります。
- 配偶者:2,600万円 × 20% − 130万円=390万円
- 子供A:1,300万円 × 15% − 30万円=165万円
- 子供B:1,300万円 × 15% − 30万円=165万円
- 相続税の総額:390万円 + 165万円 + 165万円=720万円
3-4. STEP4. 実際の取得割合に応じて各人の相続税額を計算する
最後に、相続税の総額を実際に取得した財産の割合で按分して、各相続人の納税額を計算します。
たとえば、配偶者が6,000万円、子供2人がそれぞれ2,000万円ずつの遺産を相続するとしましょう。
相続税総額720万円を実際の取得割合で按分すると、結果は次のとおりとなります。
- 配偶者:720万円 ×(6.000万円 /1億円) =432万円
- 子供A:720万円 × (2.000万円 /1億円)=144万円
- 子供B:720万円 × (2.000万円 /1億円)=144万円
ただし、被相続人の配偶者は「配偶者の税額軽減」を適用することで、納税額は0円となります。
また、子供についても、所定の要件を満たしていれば税額軽減を適用して、税負担を軽減できることがあります。
4. 土地の相続時に活用できる控除と特例
土地を相続した際には、さまざまな特例や税額軽減を活用することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、土地の相続に関連する主な特例や税額控除を説明します。
4-1. 小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業や居住のために使用していた土地を相続した場合、一定の要件を満たすと相続税評価額を最大で80%減額できる制度のことです。
評価額の減額割合や、減額が受けられる土地面積の上限(限度面積)は、以下のとおりです。
減額割合 | 限度面積 | |
---|---|---|
特定居住用宅地等(被相続人の自宅が建っている土地) | 80% | 330㎡ |
貸付事業用宅地等(被相続人が賃貸事業を営むために使っていた土地) | 50% | 200㎡ |
特定事業用宅地等(被相続人が飲食店などの事業で使っていた土地) | 80% | 400㎡ |
特定同族会社事業用宅地(同族会社が使っていた土地) | 80% | 400㎡ |
※参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
たとえば、被相続人が賃貸マンションを建て、住戸を第三者に貸し出して賃料収入を得ていたとしましょう。
その賃貸マンションが建っている土地は、所定の要件を満たすと貸付事業用宅地等として、土地面積200㎡までの評価額を50%減額できます。
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続した土地の用途や取得する人ごとに決められた要件を満たさなければなりません。
たとえば、被相続人の自宅が建っている土地を、被相続人が生前に同居していた親族が相続する場合、小規模宅地等の特例を適用するためには、以下の2つを満たす必要があります。
- 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住している
- その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している
小規模宅地等の特例について詳しくは、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
(参考)小規模宅地等の特例を完全解説!対象条件や手続きを知って相続税を節税しよう
4-2. 配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産を相続した場合に、一定の金額まで相続税が課税されない制度のことです。
この税額軽減を適用できると、以下のうちのいずれか大きい方の金額まで相続税がかからなくなります。
- 正味の遺産総額1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分
配偶者の税額軽減を適用できると、配偶者が取得した正味の遺産総額が1億6,000万円を下回っていれば、相続税はかかりません。
被相続人が残した財産は、配偶者が生活をしていくうえで基盤となるものです。
配偶者に多額の相続税が課せられてしまうと、生活資金が不足してしまうかもしれません。
また、納税資金を準備できず、自宅の売却を余儀なくされる可能性もあります。
そこで、残された配偶者の生活に支障が生じないよう、配偶者の税額軽減により相続税負担が過度に重くならないように配慮されているのです。
配偶者の税額軽減について詳しくは下記の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
(参考)1.6億円が無税に!相続税の配偶者控除の条件・注意点・計算方法を解説
4-3. 未成年者控除(未成年者の税額控除)
未成年者控除は、相続人が18歳未満の未成年である場合に、適用できる制度です。
所定の要件を満たすと、未成年の相続人が18歳に達するまでの年数※に年につき10万円を相続税額から控除できます。
※1年未満の期間があるときは切り上げて1年とする
たとえば、相続人の年齢が15歳6か月である場合、18歳になるまでの期間は残り2年6か月です。
1年未満の期間は、切り上げて1年とするため、相続税額から「10万円 × 3年=30万円」を控除できます。
未成年である相続人の相続税額が、未成年者控除の控除額を下回っていた場合、余りについてはその相続人の扶養義務者※の相続税額から差し引くことができます。
※配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者
未成年者の税額控除を適用できる要件などの詳細については、下記記事もご覧ください。
(参考)相続人に未成年者がいる場合(未成年者の税額控除)
4-4. 障害者控除 (障害者の税額控除)
障害者控除は、相続人が満85歳未満の障害者である場合に適用できる制度です。
この税額控除を適用できると、85歳に達するまでの年数に応じた金額を相続税額から控除できます。
控除額は、以下のとおりです。
- 一般障害者:満85歳までになる年数×10万円
- 特別障害者:満85歳までになる年数×20万円
※年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算
特別障害者に該当するのは「身体障害者1・2級・精神障害者保健福祉手帳1級」「療育(愛護)手帳1~2度(A)」など、障害の程度が特に重度である人です。
控除額に余りが生じたときは、障害者である相続人の扶養義務者の相続税から控除できます。
※配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者
障害者控除を受けるための要件など詳しくは、下記の記事でご確認ください。
(参考)相続税の障害者控除とは?利用する要件や控除額計算方法をご紹介
4-5. 相次相続控除
相次相続控除(読み方:そうじそうぞくこうじょ)は、被相続人が相続開始前の10年以内に相続や遺贈によって財産を取得して相続税を納めている場合に適用できる控除です。
相次相続とは、一次相続(1番目の相続)の発生から10年以内に、二次相続(2番目の相続)が相次いで発生することをいいます。
相次相続が起こると、短い期間のあいだに同じ相続財産に相続税が2度課税されることになるため、税負担が重くなる可能性があります。
そこで、相次相続が発生したときは、所定の要件を満たすと相次相続控除により、税負担を軽減することが可能です。
相次相続控除を受けられると、前回の相続で納めた相続税額に、今回の相続までの経過期間1年につき10%減額された金額を、今回の相続税額から控除できます。
相次相続控除を受けるためには、被相続人が前回の相続で相続税を負担してしなければなりません。
他にもいくつかの要件が定められています。
相次相続控除についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
(参考)相続税の障害者控除とは?利用する要件や控除額計算方法をご紹介
4-6. 贈与税額控除
相続開始前の一定期間内に被相続人から受け取った財産は、相続税を計算する際に相続財産に加算(持ち戻し)されます。
これを「生前贈与加算」といいます。
贈与税額控除は、生前贈与加算の対象となる財産を贈与されたときに納めた贈与税額を、相続税から差し引ける制度です。
この制度は、贈与税と相続税の二重課税を防ぐために設けられました。
これまで生前贈与加算の対象となるのは、相続開始前の3年に以内に被相続人から贈与された財産でした。
しかし、令和6年(2024年)1月1日以降に行われる贈与からは、生前贈与加算の対象期間が相続開始前の7年以内に順次延長されます。
生前贈与加算について詳しくは、下記の記事で解説していますので、あわせてご一読ください。
(参考)生前贈与加算とは?対象者・相続税改正内容・生前贈与の注意点を解説
5.土地を相続したときの相続税額をシミュレーション
では、土地を相続するといくらの相続税がかかるのでしょうか。
モデルケースをもとに、シミュレーションで確認してみましょう。
【例】下記条件における相続税額を求めます。
- 相続人:配偶者(70歳)、長男(45歳)、長女(42歳)の3人
相続財産の相続税評価額
- 自宅:8,000万円(土地5,000万円※・建物3,000万円)
※小規模宅地等の特例を適用する前の評価額 - 預貯金:3,000万円
- 自宅:8,000万円(土地5,000万円※・建物3,000万円)
- 債務:100万円
- 葬式費用:200万円
被相続人の自宅は土地の面積が150㎡であり、すべてが小規模宅地等の特例の対象であるとします。
特例を適用したあとの土地部分の相続税評価額は「5,000万円−(5,000万円 × 0.8)=1,000万円」となり、自宅の評価額は建物とあわせて4,000万円となります。
各相続人が取得する遺産は、以下のとおりです。
配偶者 |
|
---|---|
長男 |
|
長女 |
|
以上の条件で、相続税額をシミュレーションします。
STEP1.遺産総額を計算する
まずは、各相続人の取得金額を合計して遺産総額(課税価格の合計)を算出します。
各相続人が取得した遺産の課税価格と、それらの合計値を求めると、結果は次のとおりとなります。
- 配偶者:自宅4,000万円+預貯金1,500万円−債務控除100万円−葬式費用200万円=5,200万円
- 長男:預貯金750万円
- 長女:預貯金750万円
- 合計:5,200万円+750万円+750万円=6,700万円
よって遺産総額は、6,700万円です。
STEP2. 課税遺産総額を計算する
続いて、遺産総額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を算出します。
基礎控除額と課税遺産総額の算出結果は、以下のとおりです。
- 基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 3人= 4,800万円
- 課税遺産総額:遺産総額6,700万円−基礎控除額4,800万円=1,900万円
計算の結果、課税遺産総額は1,900万円となりました。
STEP3. 法定相続分から相続税総額を計算する
課税遺産総額1,900万円を法定相続分どおりに相続したと仮定して、相続税の総額を算出します。
法定相続人が配偶者、長男、長女の3人である場合、法定相続分は配偶者1/2、長男1/4、長女1/4です。各相続人の法定相続分に応じた取得金額は、以下のとおりです。
- 配偶者の取得金額:1,900万円 × 1/2=950万円
- 長男の取得金額:1,900万円 × 1/4=475万円
- 長女の取得金額:1,900万円 × 1/4=475万円
次に、仮の取得金額にもとづく相続税額を計算します。
法定相続分に応じた所得金額はどの相続人も1,000万円以下であるため、相続税の税率は10%、控除額は0円となります。計算結果は、以下のとおりです。
- 配偶者:950万円 × 10%=95万円
- 長男:475万円 × 10%=47.5万円
- 長女:475万円 × 10%=47.5万円
- 相続税の総額:95万円 + 47.5万円 + 47.5万円=190万円
計算の結果、相続税の総額は190万円と算出されました。
STEP4.実際の取得割合に応じて各人の相続税額を計算する
最後に、相続税の総額を実際の取得金額に応じて按分し、各相続人の納付税額を求めます。
各相続人が実際に取得する金額を振りかえると、配偶者5,200万円、長男750万円、長女750万円です。
それぞれの相続税額を計算すると、結果は次のとおりとなりました。
- 配偶者の相続税額:190万円 × (5,200万円 /6,700万円) =147.2万円
- 長男の相続税額:190万円 × (750万円 ÷ 6,700万円)=21.3万円
- 長女の相続税額:190万円 × (750万円 ÷ 6,700万円)=21.3万円
配偶者の相続税額は147.2万円、長男と長女の相続税額はそれぞれ21.3万円となります。
ただし配偶者については、配偶者の税額軽減が適用されることで、納税額は0円となります。
6. 土地を相続するときのポイントや注意点
土地を相続するときの主な注意点は、以下のとおりです。
- 相続登記をする際に登録免許税がかかる
- 境界確定測量が必要になることがある
- 二次相続を見据えて遺産分割をする
1つずつみていきましょう。
6-1. 相続登記をする際に登録免許税がかかる
土地を相続した人は、相続登記をして土地の名義を故人から相続人に変更しなければなりません。
相続登記をする際は「登録免許税」がかかります。登録免許税の税額は「固定資産税評価額×0.4%」です。
たとえば、固定資産税評価額3,000万円の土地を相続する場合、相続登記の際に「3,000万円 × 0.4%=12万円」の登録免許税を支払う必要があります。
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
相続や遺贈などで不動産を取得した相続人は、所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が必須となります。
正当な理由もなく期限内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料に科される可能性があるため、土地を相続したときは必ず相続登記をしましょう。
相続登記の際に提出する申請書の書き方や添付書類、提出方法などの詳細は、以下の記事でご確認ください。
(参考)相続登記申請書の書き方を見本付きで解説!綴じ方/必要書類/記載例も
6-2. 境界確定測量が必要になることがある
相続した土地を分割する場合、分筆登記が必要です。
分筆登記をするのであれば、土地の境界確定測量が必要となります。
相続の際に、土地を分割する代表的なケースは以下のとおりです。
- 土地を複数の相続人で分割する場合
- 相続税を納めるために土地の一部を売却・物納(土地の一部を納めること)をする場合
相続した土地のすべてを売却する場合、境界確定測量は必須ではありません。
しかし、土地の境界が確定されていないと、著しく売却しにくくなります。
土地の境界が不明確であれば、売却をする前に境界確定測量をすることをおすすめします。
また、土地のすべてを物納するのであれば、境界を確定させなければなりません。
土地の境界確定測量は、土地家屋調査士に依頼するのが一般的であり、費用もかかります。
費用の相場は、30万〜80万円ですが、隣接する土地の数、測量をする土地の広さ、役所の立ち会いの有無などで変わります。
また、境界を確定させる際には、隣接する土地の所有者や関係者の立ち会ってもらい、全員の確認と承諾が必要になるため、時間がかかることがあります。
6-3. 二次相続を見据えて遺産分割をする
一次相続で、被相続人の配偶者が遺産を相続する場合、配偶者の税額軽減を適用することで、正味の遺産額が最低でも1億6,000万円まで相続税が非課税となります。
一方、二次相続では相続人に配偶者が含まれないため、配偶者の税額軽減を適用できません。
また、相続人の数は、通常、一次相続のときによりも1人減るため、相続税の基礎控除額も少なくなります。
そのため、一次相続で遺産の多くを配偶者に相続してしまうと、二次相続で遺産を相続する子供に多額の相続税が課せられる恐れがあります。
一次相続で遺産の引き継ぎ方を決める際は、二次相続を見据えて慎重に検討することが大切です。
二次相続についての詳しい内容は、下記記事でご確認ください。
(参考)二次相続とは? 一次相続との違い・相続税対策のポイントを解説
7. 土地の相続でよくあるトラブル
土地を相続する際、相続人のあいだでしばしばトラブルが起こることがあります。
ここでは、土地の相続時における代表的なトラブルをご紹介します。
7-1. 遺産を平等に分割できない
土地をはじめとした不動産は、預貯金や有価証券などとは異なり、公平に分割することが難しい資産です。
相続財産のほとんどが土地であると、相続人間で平等な分割が難しくなる可能性があります。
たとえば、法定相続人が長男、長女、次男の3人であるとしましょう。法定相続分は、1人につき1/3です。
相続財産の評価額が計1億2,000万円である場合、法定相続分にしたがって分けると、長男、長女、次男の取得分はそれぞれ4,000万円となります。しかし、相続財産の内訳が、時価1億円の土地と預貯金2,000万円である場合、1人4,000万円ずつ分割するのが難しくなります。
土地を売却して現金化し、相続人同士で分割する換価分割をするのも1つの方法ですが、相続税の申告期限までに希望する価格で売れるとは限りません。
相続人の1人が土地を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」をするのも一案です。
しかし、土地を相続する人に代償金を払えるだけの資力が求められます。
土地が相続財産の大半を占めていると、公平な遺産分割が難しくなり、相続人のあいだで意見が衝突してトラブルに発展してしまうことがあります。
相続時のトラブルを防ぐためには、土地の所有者が生前に「遺言書を書く」「相続前に土地を換金しておく」などの方法で対処しておくのが望ましいでしょう。
7-2. 土地を共有名義にしたことで相続したことでトラブルに
土地を共有名義で相続すると、トラブルが発生しやすくなるという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
これは、共有名義の不動産は、売却や活用がしにくいためです。
共有名義の土地を売却するときは、共有名義人の全員が同意をしていなければなりません。
土地の上に賃貸不動産を建てて第三者に貸し出す場合、共有持分(共有者が持つ権利)の少なくとも過半数の同意が必要とされています。
このため、被相続人が残した土地を相続人が共有すると、共有者同士の意見がまとまらず、仲違いをしてしまうことがあります。
加えて、共有名義人が亡くなり、配偶者や子ども達がその地位を引き継ぐと、共有者の人数が増えて関係が複雑になりやすいです。
共有者の数が増えると、売却や活用などをしたいときに意見をまとめるのがさらに難しくなるでしょう。
このように、土地の共有はさまざまトラブルの原因となりうるため、共有名義で相続するかどうかは、相続人同士でよく話し合って決めることが大切です。
7-3. 納税資金が不足して相続税が払えなくなることも
相続税は、現金で納めるのが原則です。
そのため、相続財産のほとんどが土地であり、現金や預貯金が十分にない場合、相続税の納税資金が不足するかもしれません。
たとえば、被相続人が母親、相続人が長男と長女の2人、相続財産が1億円の家と1,000万円の現金であるとしましょう。
母親は生前、長らく長女と同居していました。
そのため長女は、引き続きを生活するうえで必要な1億円の家を相続し、長男は現金1,000万円を相続しました。
この場合、相続した1億円の家に課せられる相続税は、基本的に長女の貯蓄から支払うことになります。
長女に十分な貯蓄がない場合は、結局は相続した家を売却せざるを得なくなるかもしれません。
相続税の納税が難しいときは、金融機関からの借り入れや、相続税を分割払いする「延納」などで対処できることもありますが、選択肢は限られます。
そのため、土地を相続した人に相続税がかかる可能性がある場合は、所有者が健在なうちに生前贈与をしたり生命保険に加入したりして、納税資金対策をしておくことが望ましいといえます。
7-4. 土地の評価方法で相続人が対立
被相続人が遺言書を残していなかった場合、相続人同士で遺産分割協議をして相続財産の引き継ぎ方を決めることになります。
遺産分割協議をする際は、土地を含む相続財産の評価額を求めなければなりません。
土地の評価方法は複数あります。相続税の計算時と同じく、路線価方式や倍率方式で評価するケースもあれば、不動産業者に査定をしてもらい時価で評価するケースもあります。
同じ土地でも評価方法によって算出結果は異なるため、相続人が複数いると自分自身にとってもっとも有利な方法で土地を評価しようと主張が対立し、争いに発展することがあります。
8. 土地の相続トラブルや相続税対策は専門家に相談する
土地の相続に関するトラブルは、所有者が生前に対策をしていれば、ある程度防ぐことは可能です。
しかし、充分な対策がなされないまま、相続が発生するケースも多々あります。
また、土地を相続した人は、相続税評価額を適切に計算し、必要に応じて相続税の申告と納税をしなければなりません。
そのため土地を相続する際は、必要に応じて弁護士や税理士に相談することをおすすめします。
8-1. 土地相続に関するトラブルは弁護士に相談する
相続税を計算する際は、土地の評価方法や適用できる特例などを、充分に理解していなければならいため、税の専門的な知識が必要とされます。
また、相続税の申告漏れや計算ミスが起こると、過少申告加算税といったペナルティのほかや延滞税が課せられてしまいかねません。
そこで、土地を相続したときは、相続税に精通した税理士に相談し、税額や土地の評価額を算出してもらうとよいでしょう。
相続税専門の税理士であれば、申告書の作成や申告手続きなどもサポート行ってくれるため、相続税の申告・納税の負担を大幅に軽減できます。
8-2. 相続税は相続税専門の税理士に相談する
相続税を計算する際は、土地の評価方法や適用できる特例などを、充分に理解していなければならいため、税の専門的な知識が必要とされます。
また、相続税の申告漏れや計算ミスが起こると、過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられてしまいかねません。
そこで、土地を相続したときは、相続税に精通した税理士に相談し、税額や土地の評価額を算出してもらうとよいでしょう。
相続税専門の税理士であれば、申告書の作成や申告手続きなどもサポート行ってくれるため、相続税の申告・納税の負担を大幅に軽減できます。
9. 土地の相続税は税理士法人チェスターまでご相談を
土地を相続したときは、路線価方式または倍率方式を用いて、相続税評価額を算出します。
また、自用地、貸宅地、貸家建付地といった土地の利用形態ごとに評価方法は異なります。
加えて、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、要件を満たしている特例や税額控除を適切に適用することも、土地の評価額や相続税を求める際の重要なポイントです。
このように、土地の評価や相続税の計算には、専門的な税の知識が要求されます。
そこで、土地を相続したときは、相続税専門の税理士法人であるチェスターにご相談ください。
税理士法人チェスターであれば、各相続財産の評価や相続税の計算、申告書の作成など、相続に関する幅広い手続きをご依頼いただけます。
難易度の高い土地の評価といった、一部の業務をご依頼いただくことも可能です。
土地の相続に関するお悩みがある方は、税理士法人チェスターまでお気軽にご連絡ください。
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