未成年者に対する贈与契約書の作成方法。関係のある民法や注意点
贈与契約書を未成年と交わすときには、未成年者の財産を管理する法定代理人の署名捺印欄を設けましょう。正しい内容で作成した契約書があれば、税務調査が入ったとしても安心です。相続財産として扱われる名義預金にも注意しましょう。
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1.未成年者と贈与契約をする場合
未成年者との間に結んだものであったとしても贈与契約は有効です。ただし単に現金を振り込むだけでは不確かなため、必ず『贈与契約書』を作成しましょう。書面に残しておけば確かに贈与があったと証明できます。
1-1.未成年者への贈与契約も有効
2022年4月1日から成年年齢を『18歳』に引き下げる『民法の一部を改正する法律』が施行されます。それ以降は18歳未満が未成年者とされる決まりです。
未成年者は『制限行為能力者』とされ、法定代理人の許可なく結んだ契約であれば、法定代理人によって取り消せます。しかし未成年との贈与契約を結べないわけではありません。
贈与する側の「あげます」という意思表示に対し、受け取る側の未成年者が「受け取ります」と贈与を受け入れる意思を示していれば、契約は成立します。
1-2.贈与契約は書面に残すことが基本
贈与契約は口約束だけでも成立します。ただし契約書を作成していない契約では、当事者である贈与者・受贈者が契約を解除可能です。加えて第三者からは贈与契約の有無を判断できません。
そこで贈与をするときにはその都度贈与契約書を交わしましょう。契約書は2通作成し、贈与者と受贈者がそれぞれ保管します。形式や手書きかどうかは法的に決まっていません。
氏名の記載は手書きの署名の方が信頼度が高まるでしょう。受贈者である未成年者本人の署名に加え、受贈者の親権者の署名捺印も必要です。
1-2-1.税務調査の際に証明とすることができる
契約書を作成し保管しておけば、税務調査でも贈与の事実を客観的に示せます。贈与の都度契約書を交わしていると分かれば、あらかじめ贈与額やタイミングを決めて行う定期贈与ではないと分かるはずです。
また正しく贈与されていることが契約書によって証明できれば、非課税の範囲で行われた生前贈与だと証明できます。
2.未成年者との贈与契約書の作成方法
贈与契約書は自作もできます。ただし確かな内容での作成を重視するなら、専門家へ作成を依頼するのが良いでしょう。契約書へ盛り込むべき内容も確認しておくと安心です。
2-1.専門家へ作成を依頼すると安心
契約書の作成は自力でもできます。ただし内容の正確性を重視するなら、弁護士や司法書士など専門家へ依頼すると良いでしょう。費用はかかりますが、後々トラブルに発展する可能性を予防できます。
作成した契約書にはその日付に確かにあったことを証明するため、公証役場で『確定日付』を付与してもらうと安心です。自分でもできる手続きですが、専門家に依頼すれば作成から全て任せられます。
2-2.贈与契約書には贈与の内容を記載する
内容はどのような贈与契約か分かるように記載しましょう。項目や体裁は自由に作成可能ですが、一般的には下記の項目を記載します。
- 贈与の日付
- 贈与者と受贈者
- 贈与財産
- 贈与者と受贈者の住所・氏名
- 受贈者が未成年なら受贈者名と受贈者の親権者名
全ての項目を記載すれば、確かな内容の契約書の出来上がりです。この他に押印は実印を使用すると信頼感につながりやすいでしょう。
2-2-1.現金の贈与は振り込みで行う
作成した契約書へ住所・氏名を書き契約書を交わしたら、内容の通りに贈与を実施します。贈与する財産が現金なら『口座振込』で行うのが確実です。
契約書には『甲は現金○○万円を乙に贈与するものとし、乙はこれを承諾した』『甲は贈与した現金を○年○月○日までに、乙の指定する銀行預金口座へ振り込むものとする』という内容を盛り込みます。
口座振込ができず現金でやりとりをするときには、領収書を作成した上で受け取った資金を銀行預金口座へ入金し記録を残しましょう。
3.署名捺印はどのように行えば良いか
作成した契約書には署名捺印をする欄があります。未成年者の贈与契約の場合、署名捺印をするのは誰なのでしょうか?自分で署名捺印できない小さな子どもと契約書を結ぶときの方法も紹介します。
3-1.法定代理人は原則親権者となる
未成年者が受贈者となるときには法定代理人を定めます。法定代理人は親権者・未成年後見人・成年後見人の3種類です。贈与契約を結ぶときには原則として親権者が法定代理人になります。
民法において親権者は、子どもの財産管理や財産に関する法律行為を、子どもに代わって行うと規定されています。また親権者が管理していた財産は、子どもが成年に達したときに管理の計算をしなければいけません。
子どもの財産からは、養育や財産管理にかかった費用を差し引き相殺します。ただし贈与者が養育費の相殺に反対しているときには相殺できません。
3-2.未成年者と法定代理人が署名捺印
署名捺印は未成年者はもちろん法定代理人も行います。法的には親権者の署名捺印はなくても構いません。しかしトラブルを防止する意味で設けておくと安心です。
親権者の署名捺印は父母のどちらか一方でも構いませんが、両方に書いてもらえるように欄を設けておきましょう。親権者が押印する印鑑は、実印だと信頼につながりやすいはずです。
3-3.幼い子どもへの贈与の場合は代筆する
受贈者が幼い子どものときには、自分で署名捺印できないケースもあるでしょう。そのときには親権者が法定代理人として代わりに署名します。親権者が書いた名前の下に『親権者○○が代筆』と書き添えればOKです。
贈与者や法定代理人の署名捺印も行います。代筆について書き添える以外、契約書の内容自体は特に変わりません。
4.未成年の子への贈与では名義預金に注意
贈与したつもりでいても『名義預金』と判断されると贈与とは認められません。贈与者の死亡後に名義預金と判断され、相続税が発生するケースもあります。
名義預金と判断されないためには、未成年の子ども本人へ贈与についてきちんと話し、通帳やキャッシュカードの管理をさせることが大切です。
4-1.相続税の対象とされる
口座の名義が受贈者の未成年者になっているとしても、実際に管理しているのが祖父母の場合には名義預金とみなされてしまいます。名義預金と判断されると、口座内の預貯金は贈与財産ではなく相続財産です。
名義は孫であっても実質的には祖父の財産とされれば、祖父の死後には預貯金に相続税が課されます。名義預金は名義が違うため相続財産から漏れがちです。税務調査でチェックされやすい箇所でもあるため注意しましょう。
4-2.未成年の子に口座を管理させる
名義口座と判断されないためには、受贈者である未成年の子ども本人に口座を管理させることです。管理するということは、子ども本人が自由に引き出したり預け入れたりできる状態にすることです。
大切なのは子ども本人が、自分の口座でお金を管理している意識を持っていることです。例えばお年玉を一緒に入金する・何に使うか目的をはっきりさせて親権者と引き出す、というようにします。
5.親などの署名捺印と本人の口座管理が重要
贈与契約書は未成年者との間でも交わせます。祖父母から生後半年の孫へ贈与するといった契約も可能です。この場合受贈者である孫本人は署名捺印できないため、親権者が代わりに行います。
契約書は2通作成し、贈与者と受贈者で1通ずつ保管しましょう。公証役場で確定日付を付与してもらうと、さらに確実性が高まります。
加えて名義預金には要注意です。贈与のつもりで孫名義の口座へ振り込んでいても、祖父母が保管し管理していれば、名義口座として扱われてしまいます。相続税の対象となり課税される可能性もある事態です。
確実に贈与をするなら、専門家へ依頼すると安心して任せられます。贈与に関する税金については『税理士法人チェスター』へ相談しましょう。
『贈与契約書』についてより詳しく知るには下記もご覧ください。
贈与契約書の書き方【保存版】様式・注意点を記載例付きで解説|相続大辞典|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
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