住宅資金の贈与が最大1,000万円まで非課税に! 住宅取得等資金贈与の非課税特例のメリット、デメリット、注意点を解説
一定の条件のもとで、父母や祖父母から贈与された資金で住宅の購入や増改築をした場合に、最大1,000万円までの贈与金額が非課税となる贈与税の特例措置が、「住宅取得等資金贈与の非課税」です。
本制度は、たびたび延長され、非課税金額などの内容が変更されていますが、本記事は記事執筆時点の最新情報に基づいて作成しています。
この記事の目次 [表示]
1.住宅取得等資金贈与の非課税とは
結婚や、子の誕生などのライフイベントをきっかけに、父母や祖父母から一部の資金援助(贈与)を受けて、自宅を購入するということは、よく見られます。父母などからであっても、一定金額以上の贈与を受けた場合には、通常は贈与税の課税対象となります。
しかし、「住宅取得等資金贈与の非課税」特例が適用できれば、最大1,000万円(省エネ等住宅の場合)または500万円(一般の住宅)までの贈与金額について、贈与税が非課税とされます。ただし、本特例には「人」「対象となる住宅等」「時期」などについて、細かな適用要件が定められています。
まず、非課税特例の内容を確認し、次に適用要件を確認していきます。
1-1.住宅取得等資金贈与の非課税特例の非課税限度額
住宅取得等資金贈与の非課税特例の非課税限度額(贈与税が非課税になる金額)は、下表のようになっています。
▼住宅取得等資金贈与の非課税特例の非課税限度額(令和4年1月1日以後の贈与分)
省エネ等住宅 | 1,000万円 |
---|---|
一般の住宅(省エネ等住宅以外) | 500万円 |
「省エネ等住宅」とは、「耐震性能、省エネ性能、バリアフリー性能を有する住宅」のことです。「一般住宅」とは、それ以外の住宅のことを指します。
「省エネ等住宅」は、以下のいずれかに当てはまり、そのことが住宅性能証明書など一定の書類で証明されている住宅です。
新築住宅(令和6年1月1日以後に住宅取得等資金の贈与があった場合) |
|
---|---|
新築住宅(令和5年12月31日以前に住宅取得等資金の贈与があった場合)・中古住宅・増改築 |
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1-2.住宅取得等資金贈与の非課税特例は、贈与税の基礎控除と併用できる
住宅取得等資金贈与の非課税特例は、贈与税の暦年課税の基礎控除額110万円に加えて、併用することができます。
つまり、父母や祖父母から省エネ等住宅の取得のための資金の贈与を受け、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けた場合、贈与税の基礎控除110万円+特例の非課税枠1,000万円=最大1,110万円までの贈与を、非課税で受けることができるということです。
1-3.住宅取得等資金贈与の非課税の適用を受けた贈与は、生前贈与加算の対象外となる
暦年課税には、「生前贈与加算」の規定が設けられています。
生前贈与加算とは、贈与から3年以内(※)に贈与者が死亡した場合、その贈与財産は死亡した贈与者(=被相続人)の相続財産に含めて相続税の課税対象とするという規定です。
(※)令和5年度税制改正において、この生前贈与加算の対象期間が3年以内から7年以内へと延長されることとなりました(令和6年1月1日以降の贈与から適用)。この点について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
(参考)【令和5年度税制改正】暦年課税と相続時精算課税制度の見直し
しかし、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けた場合、その部分の贈与資金相当額を相続財産に持ち戻す必要がありません。結果として、贈与者である父母や祖父母の相続財産の圧縮につながります。この点は、住宅取得等資金贈与の非課税特例の隠れたメリットともいえるでしょう。
1-4.夫婦それぞれの父母などから贈与を受けて利用することもできる
夫婦で資金を出し合って住宅を購入し、夫婦の共有名義とすることがあります。このような場合に、夫婦のそれぞれが、それぞれの親から、住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用して贈与を受けることも可能です。
省エネ等住宅であれば、1,000万円ずつの非課税枠をそれぞれ利用できるので、最大で計2,000万円の贈与を非課税で受けられることになります。
注意すべきなのは、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けるには、贈与者は受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)でなければならないという点です。
例えば、夫の父親から、夫が1,000万円、妻が1,000万円、それぞれ贈与を受けても、本特例による非課税が適用できるのは夫だけだということです。
2.住宅取得等資金贈与の非課税の適用要件
住宅取得等資金贈与の非課税の適用を受けるには、「人(贈与者と受贈者)」「贈与内容」「住宅」などについて、詳細な要件が定められています。それぞれを順に確認していきます。
2-1.非課税の対象になる「人(贈与者と受贈者)」の要件
受贈者(贈与を受けた人)は、次の要件を「すべて」満たしていなければなりません。
- 贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上(注)であること。
(注)令和4年3月31日以前に贈与を受けた場合は、20歳以上。 - 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。ただし、対象となる家屋の床面積が40平米以上50平米未満の場合は、同1,000万円以下であること。
- 令和3年以前の贈与税申告で、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けたことがないこと(例外あり)。
- 贈与を受けたときに日本国内に住所があること(例外あり)。
2-2.非課税の対象になる「贈与内容」の要件
次の要件の「すべて」を満たす贈与でなければなりません。
- 受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)から、住宅を取得、新築、増改築するための金銭を贈与されたこと。
- 住宅の取得、新築、増改築の契約の相手方が、自身の配偶者、親族など特別の関係がある人でないこと。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された金銭の全額を充てて住宅の取得、新築、増改築をすること。
- 取得、新築、増改築した家屋に、贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居すること。間に合わない場合は、遅滞なくその家屋に入居することが確実であると見込まれること(贈与の翌年12月31日までに居住していない場合は、適用を受けられない)。
2-3.非課税の対象になる「住宅」の要件
住宅取得等資金贈与の非課税特例の対象になる住宅については、住宅の「取得・新築」の場合と「増改築」の場合の別に、それぞれ要件が細かく定められています。
2-3-1.住宅の取得、新築の場合の要件
住宅を取得、新築する場合は、家屋が以下の要件を満たしていなければなりません。
- 日本国内にある住宅用の家屋であること。
- 登記簿上の床面積(マンションは専有面積)が40㎡以上240㎡以下であること。
- 床面積の半分以上を住居として使用すること。
2-3-2.中古住宅の場合の要件
中古住宅の場合は、上記の要件に加えて、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 昭和57年1月1日以後に建築されたもの。
- 地震に対する安全性を満たすことが「耐震基準適合証明書」等により証明されたもの。
- (耐震基準に適合しない住宅の場合)住宅の取得日までに耐震改修工事の申請等を行い、贈与の翌年3月15日までに耐震基準に適合すると証明されたもの。
2-3-3.増改築の場合の要件
住宅取得等資金贈与の非課税特例は、住宅の取得、新築だけでなく、既存住宅の増改築(リフォーム)のための資金贈与も適用対象とされています。増改築の場合は、以下の要件を満たしていなければなりません。
- 日本国内にある住宅用の家屋であること。
- 増改築後の登記簿上の床面積(マンションは専有面積)が40㎡以上240㎡以下であること。
- 床面積の半分以上を住居として使用すること。
- 増改築工事の費用が100万円以上であること。また、費用のうち半分以上が住居部分の工事に充てられていること。
- 増改築は自己が所有かつ居住している家屋について行われ、工事の内容について証明する書類があること。
2-4.本特例の適用を受けるためには、贈与税の申告が必須
住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けるためには、この特例を受けた結果として、贈与税が非課税となり、納税額が0円となる場合でも、贈与税の申告が必要です。その申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
申告をしない場合はもちろん、提出が1日でも遅れるとこの特例の適用は受けられなくなるので、十分注意してください。
3.令和4年度・6年度の住宅取得等資金贈与の非課税特例の改正内容
令和4年度の税制改正では、住宅取得等資金贈与の非課税特例について大きな改正が行われました。
また、令和6年度の税制改正でも、適用期間の延長や「省エネ等住宅」の要件の見直しが行われました。
ここでは、これらの改正内容の概要を説明します。
3-1.適用期間の延長
住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用期間は、令和4年度税制改正で2年間延長され、令和5年12月31日までとなりました。さらに、令和6年度税制改正では3年間延長され、令和8年12月31日までとなりました。
なお、本特例は数度にわたり延長が繰り返されています。令和8年12月31日以降について、このまま廃止となるのか、再度延長になるのか、記事執筆時点では未定です。
最新の情報は、国税庁Webサイトなどでご確認ください。
3-2.非課税限度額の縮小
近年、この特例は、延長のたびに非課税限度額が縮小されていましたが、令和4年度税制改正では、それ以前よりさらに非課税限度額が縮小され、最大1,000万円(省エネ等住宅の場合)または500万円(一般の住宅)までとなりました。
とはいえ、1,000万円でも、一般的な住宅ローンの頭金に充てるには十分な金額であり、非課税で贈与者の財産を移転して、将来の相続財産を減らす効果もあることに鑑みれば、引き続き利用価値が高い特例です。
なお、令和4年度税制改正前は、住宅取得等についての「契約時期」でこの非課税限度額が判定されていましたが、改正後は契約時期にかかわらず「贈与の時期」で判定されることになりました。
令和6年度税制改正では、非課税限度額の縮小はなく維持されています。
3-3.中古住宅の築年数要件の廃止
令和4年度税制改正では、特例の適用対象となる中古住宅の要件についても改正がありました。
具体的には、改正前の築年数要件(築20年以内、耐火建築物は築25年以内)を廃止し、新耐震基準に適合している家屋であることが要件に加えられました。なお、昭和57年1月1日以後に建設された家屋については、新耐震基準に適合している家屋とみなされます。
3-4.受贈者の年齢引き下げ
民法の成人年齢引き下げに合わせて、本制度の受贈者の年齢要件も令和4年4月1日以後、20歳以上から18歳以上へと引き下げられました。なお、年齢は、贈与を受けた年の1月1日時点で判定されます。
3-5.省エネ等住宅の要件の見直し
令和6年度税制改正では、「省エネ等住宅」の要件が見直されました。
住宅用家屋の省エネ性能について、改正前は、新築、中古、増改築を問わず「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること」と定められていました。改正後は、新築の家屋は「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること」となりました。
ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けた家屋または令和6年6月30日までに建築された家屋については、従来と同様「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること」とされています。
4.住宅取得等資金贈与の非課税の注意点
住宅取得等資金贈与の非課税は、課税圧縮効果が大きな特例です。しかし、注意点もありますので、利用を検討する際には押さえておきましょう。
4-1.住宅ローン控除と併用すると、住宅ローン控除の適用額が減る恐れがある
住宅を取得する際、ほとんどの人は住宅ローンを利用するでしょう。その際には、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」と呼ばれる、所得税の減額措置を受けられることがあります。住宅ローン控除は、原則として年末のローン残高の0.7%~1%が所得税額から控除される制度です。
住宅ローン控除と住宅取得等資金贈与の非課税特例は、併用することが可能ですが、住宅取得等資金贈与の非課税特例の受贈者が住宅ローン控除の適用を受ける場合には、住宅ローン控除の適用可能額に、一定の制限が課される場合があります。
具体的には、次の①の金額と②の金額とを比べて、①の金額が②の金額より多い場合、その「超える部分」に相当する金額については、住宅ローン控除の適用を受けることができません。
②住宅取得等の対価の額-住宅取得等資金贈与の非課税特例による非課税贈与額
住宅取得等の対価の額とは、要するに住宅の購入額です。
具体例で見てみましょう。
- 住宅取得等の対価の額:3,000万円
- 住宅ローンの年末残高:2,500万円
- 住宅取得等資金贈与の非課税特例による非課税贈与額:1,000万円
【計算例】
- ①の金額:2,500万円
- ②の金額:3,000万円-1,000万円=2,000万円
→①と②を比較すると、①が500万円多い。
- 住宅ローン控除の適用ができない金額:①-②=500万円
住宅ローン残高2,500万円-住宅ローン控除の適用ができない金額500万円=2,000万円
住宅ローン控除を受けられる金額=2,000万円
住宅取得等資金贈与の非課税を利用して贈与された資金が多く、住宅ローン残高が少ない場合は、住宅ローン控除の恩恵がその分減ります。どの程度の影響があるのかは、税理士などに相談して、事前にシミュレーションしてもらうとよいでしょう。
4-2.子がマイホームを持つと、親の相続の際に「小規模宅地等の特例」が利用できなくなる
「小規模宅地等の特例」とは、相続税額の計算の際に、被相続人が生前に居住用などに使用していた宅地(自宅の土地など)の評価額を大幅に減額できる制度です。
例えば、親が亡くなった際に、親が住んでいた自宅を相続で取得する人が小規模宅地等の特例を適用できれば、適用できない場合と比べて、相続税額が大きく減額される可能性があります。
ところが、「自分の持ち家がある人」は、親の自宅を相続しても小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。
そのため、近い将来に親の自宅を相続する予定のある方などは、住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用してマイホームを取得するよりも、親の自宅を相続して小規模宅地等の特例の適用を受けたほうが、課税上は有利になる可能性もあります。
ただし、課税上の有利・不利を最優先にして、マイホームを持つか持たないかを決めることは本末転倒でしょう。自宅はあくまで、家族との生活の基盤となるものなので、ライフステージにおける必要性を優先して購入することがベストです。
なお、小規模宅地等の特例の制度内容、適用要件について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照ください。
(参考)土地を相続するとき、必ずチェックすべき小規模宅地等の特例とは?
4-3.住宅取得の不動産取得税、登録免許税は、相続より高くなる
住宅を取得した場合、取得者には不動産取得税と登録免許税が課されます。このため、住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用を受けて住宅を取得する場合には、不動産取得税と登録免許税の負担も考慮しておく必要があります。
住宅取得にかかる不動産取得税と登録免許税の税額は、「固定資産税評価額」を基準にした課税標準額に以下の税率を乗じて計算します。
不動産取得税 | 登録免許税 | |
---|---|---|
土地 | 3%(注1) 課税標準額は「固定資産税評価額×1/2」(注1) | 1.5%(注2) |
建物 | 3%(注1) | 新築:0.15% 購入:0.3%(注1) |
(注1)令和9年3月31日までの軽減措置
(注2)令和8年3月31日までの軽減措置
相続で不動産を取得した場合には、土地・建物にかかる不動産取得税は非課税、登録免許税は土地、建物ともに0.4%となります。相続による取得のほうが、これらの税が低くなることにも一応留意しておきましょう。
(参考)相続による取得の場合
不動産取得税 | 登録免許税 | |
---|---|---|
土地 | なし | 0.4% |
建物 | 0.4% |
4-4.贈与が原因となり、遺産分割で揉める可能性も
子が複数いる家庭の場合、一部の子だけに贈与をすると、親が亡くなった後の遺産分割でトラブルの原因になる恐れがあることに、注意しておきましょう。
生前に一部の子だけが親から贈与を受けていた場合、他の兄弟姉妹が、不公平だと感じることもありますが、この点に配慮せずに、贈与を受けた子が遺産分割において平等の取り分を主張するなどすると、遺産分割で揉めてしまうのです。
また、資金贈与の時期や金額について、明確な記録が残っていない場合も注意が必要です。親が亡くなった後でこれらの記録が残っていないと、贈与の事実や金額について兄弟姉妹間で認識の齟齬が生じ、結果として遺産分割で対立してしまうことがあります。
遺産分割で揉めることを避けるためには、贈与をするときに、その内容を明確にした贈与契約書などの記録を残しておくことが大切です。ただし、兄弟姉妹間の関係性がもとより険悪である場合などは、受贈者以外に贈与の事実を一切知らせずにしておくほうがよいこともありえます。
5.住宅に関係する贈与が非課税になるその他の特例
住宅取得等資金贈与の非課税特例以外にも、住宅取得等に関係して、課税の軽減につながる制度があります。
ここでは、「贈与税の配偶者控除」と、「相続時精算課税」について紹介します。
5-1.配偶者への住宅取得等資金贈与が2,000万円まで非課税になる「贈与税の配偶者控除」(おしどり贈与特例)
住宅取得等資金贈与の非課税の特例は、直系尊属から子などへの贈与の際に利用できる制度ですが、夫婦間の贈与で利用できる制度が、「贈与税の配偶者控除」です。
贈与税の配偶者控除とは、結婚してから20年以上経過した夫婦間で、住宅または住宅取得のための資金を贈与する場合、最大2,000万円の贈与まで、贈与税を非課税とすることができる特例制度です。「おしどり贈与特例」と呼ばれることもあります。
本特例は、暦年課税の基礎控除(110万円)と併用でき、合計2,110万円まで非課税で贈与することが可能になります。
なお、贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与税がかからない範囲の贈与であっても、贈与税の申告が必要となります。詳しい制度内容は下記の記事を参照ください。
(参考)夫婦間でも贈与税は発生する?発生するケースや基礎控除、配偶者控除も解説
5-2.相続時精算課税制度
贈与税には、暦年課税、相続時精算課税の2種類の課税方式が用意されています。通常は暦年課税が適用されていますが、税務署に選択届を提出すれば、特定の贈与者ごとに、相続時精算課税の適用ができます。
なお、相続時精算課税の対象となるのは、60歳以上の直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与の場合です。
相続時精算課税では、適用する贈与者から受ける贈与について、最大2,500万円までが贈与税の計算から控除される「特別控除」枠が設けられます。特別控除枠を利用しておこなわれた贈与は、贈与時には非課税となりますが、その贈与者が亡くなった後で、その贈与者(被相続人)の相続財産に組み入れられて、相続税の課税対象となります。
つまり、課税計算をするタイミングが、贈与時点から、相続時点へと“先送り”にされるのが相続時精算課税であり、本質的な意味で「非課税」となるわけではありません。
とはいえ、「いますぐに、多額の資金を非課税で贈与したい」というニーズがあるご家庭であれば、使い勝手のいい制度です。
この相続時精算課税と住宅取得等資金贈与の非課税特例は組み合わせて使用することができます。この2つの制度の非課税枠を活用すれば、最大で3,500万円までの住宅取得のための資金を、贈与税非課税で贈与することができます。
また、住宅取得等資金の贈与のために相続時精算課税を選択する場合は、贈与者が60歳未満であっても適用できます(令和8年12月31日まで)。
相続時精算課税の詳しい制度内容については、下記の記事を参照ください。
(参考)相続時精算課税制度とは?活用するメリット・デメリットや注意点も解説!
5-2-1.相続時精算課税制度の改正について
令和5年度税制改正により、上記の2,500万円の特別控除とは別枠で、相続時精算課税にも暦年課税のような年間110万円までの「基礎控除」が設けられることになりました。この相続時精算課税における基礎控除は、令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。
6.その他、住宅資金の援助について知っておきたいこと
最後に、親などから住宅取得資金の援助を受ける場合に、上記以外に知っておきたい事項を2点ご紹介します。
6-1.贈与ではなく、借金で住宅資金の援助を受ける場合の注意点
父母や祖父母から住宅を取得するための資金の一部を援助してもらう場合、贈与ではなく、借金という形で受け取れば、贈与税はかかりません。ただし、注意点もあります。
いわゆる「あるとき払いの催促なし」という条件で借りたお金は、実質的には贈与であると税務署からみなされ、贈与税が課される可能性が大きいです。
また、返済期限が著しく長期であったり、利息の設定がなかったりすれば、やはり贈与とみなされてしまう恐れがあります。
そこで、親から住宅取得のための資金を借りる場合には、通常の金銭消費貸借契約と同様に、契約書を作成しておくことが重要です。契約書には、借入金額や金利、返済条件などを明記しておく必要があります。当然、契約書記載の通りに、実際に返済をおこなう必要があります。
そのような準備を整えておけば、贈与だと認定される可能性は減るでしょう。
6-2.贈与税の基礎控除110万円を利用して、親に住宅資金を負担してもらう
住宅ローンを組んで住宅を取得する場合、贈与税の暦年課税の基礎控除を活用することで、贈与税がかかることなく、親に住宅ローンの返済を負担してもらうことができます。
具体的には、毎年の返済額が110万円以内(毎月約9万円以内)となるような住宅ローンを組み、その返済額相当分について毎年親から贈与を受けるという方法です。
税負担なく贈与を受けながら、その贈与で住宅ローンが返済できます。
ただし、それが定期贈与であると税務署に判断されると、贈与の合計額が課税対象とされることになります。この点について、十分注意する必要があります。
(参考)知らないと思わぬ贈与税リスクがある連年贈与(定期贈与)を徹底解説
7.まとめ:住宅取得等資金贈与の非課税特例は、要件に該当するならぜひ利用したい
住宅購入資金は多額なものであり、その一部について親から援助を受けることは、よくおこなわれています。住宅取得等資金贈与の非課税は、最大1,000万円までの贈与が非課税という節税効果が大きい特例です。現時点で要件に該当している人は、積極的に利用を検討したほうがいいでしょう。
しかし、自分が要件に該当するか、あるいは、住宅ローン控除特例などの他制度との比較などで判断に迷うことがあるかもしれません。そんなときは、相続や贈与に詳しい税理士にぜひご相談ください。
相続税専門の税理士法人チェスターは、相続税申告件数が年間2,300件を超え、業界トップクラスの実績があります。住宅取得等資金贈与の特例についてもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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