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【知らなきゃ損!】相続した不動産を売却するときの特例や税金を解説

相続した不動産を売却するときに知らないと損するポイント

相続した不動産は相続人が利用するとは限らず、相続したのちに売却することもあります。

不動産を売却した場合は、売却益に税金がかかります。
一度得た利益から税金を払うため負担が大きく感じられますが、相続した不動産を売却するときには税制上の特例があって税金が軽減されます。また、自宅の売却に使える特例もあります。

この記事では、相続した不動産を売却するときに知らないと損をするポイントを、相続税専門の税理士がご紹介します。

1.相続した不動産を売却するのはこんなとき

相続した不動産を売却するのは、主に次のような場合です。

  • 相続したが利用しないので売却する
  • 相続税の納税のために売却する
  • 換価分割をするために売却する

相続した不動産を利用しない場合とは、たとえば親の自宅を相続した子供がすでにマイホームを所有していて、もう実家には戻らないといった場合などがあります。不動産を保有しているだけでも固定資産税は納めなければなりません。
遊休地や空き家として放っておくのであれば、売却して有効活用を図る方がよいでしょう。

相続税は原則として現金で納付することになっています。
相続した遺産が不動産ばかりだと納税のための資金が不足することもあり、その場合は不動産を売却しなければなりません。

相続財産を現物で分割できない場合は、財産を換金して相続人どうしで分け合う換価分割を行います。
換価分割をするときは、一度、相続登記をしたうえで売却の手続きをします。

2.不動産の売却益には税金がかかる

不動産を売却して利益が出た場合は、その利益に税金(所得税・住民税)がかかります。

この章では、不動産の売却益(譲渡所得)にかかる税金の計算方法を解説します。

2-1.不動産の売却益(譲渡所得)の計算方法

不動産の売却益(譲渡所得)は、以下のように計算します。実際の売却価格から不動産の取得・売却にかかった費用を差し引きます。

  • 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

特別控除額は、特例により一定の条件のもとで適用することができます。
詳しい内容はのちほどご紹介します。

2-1-1.売却価格

売却価格には物件価格のほか、買主から受け取った未経過の固定資産税に相当する金額の精算金額も含めます。

(参考)国税庁ホームページ 質疑応答事例 未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合

2-1-2.取得費

取得費には物件価格のほか、購入時の仲介手数料、測量費、造成費用、改良費を加えることができます。
なお、建物の取得費は、購入・建築代金の合計から保有期間に応じた減価償却費を差し引きます。

相続した不動産の取得費は、亡くなった被相続人が生前に購入したときの金額で計算します。
購入時期が古いなど取得費が不明の場合は、売却価格の5%とすることもできます。

取得費について詳しい内容は、国税庁ホームページを参照してください。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー
No.3252 取得費となるもの
No.3258 取得費が分からないとき
No.3261 建物の取得費の計算

2-1-3.譲渡費用

譲渡所得の計算では、譲渡にかかった費用を引くこともできます。
売却時の仲介手数料、印紙代、建物の取り壊し費用などがあてはまりますが、詳しい内容は国税庁ホームページを参照してください。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3255 譲渡費用となるもの

2-2.不動産の譲渡所得にかかる所得税・住民税の税率

不動産の譲渡所得は、譲渡した不動産の保有期間によって長期譲渡所得短期譲渡所得に分けられ、その他の所得とは合算せず分離課税として計算します。

  • 長期譲渡所得:譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える不動産を譲渡したときの所得
  • 短期譲渡所得:譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の不動産を譲渡したときの所得

相続した不動産については、亡くなった被相続人が生前に購入した日から保有期間を計算します。

不動産の譲渡所得にかかる所得税・住民税の税率は以下のとおりです。

不動産の譲渡所得にかかる所得税・住民税の税率

所得の区分所得税(※)住民税
長期譲渡所得15.315%5%
短期譲渡所得30.63%9%

(※)上記税率には復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含みます。

所得税の確定申告は必要ですが、所得税の申告をすれば住民税の申告は不要です。

3.相続した不動産を売却するときに知らないと損をする税制上の特例

相続した不動産を売却したときは、譲渡所得に係る税制上の特例があります。
この章では、相続した不動産を売却するときに知らないと損をする税制上の特例として、取得費加算の特例空き家特例をご紹介します。

これらの特例は、相続からおおむね3、4年で適用の期限を迎えます。
相続した不動産を売却する予定があれば、特例の適用期限までに売却できるよう準備をしましょう。

3-1.相続税を取得費に加える

相続した財産(不動産など)を売却したときは、相続のときに納めた相続税のうち、売却した財産に見合った金額を譲渡所得計算上の取得費に加えることができます。これを取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)といいます。

取得費加算の特例は、以下の要件に当てはまる場合に適用できます。

  • 財産を相続した人が売却したこと
  • 売却した財産を相続した人に相続税が課税されていること
  • 相続開始日(死亡日)から3年10か月以内に売却したこと

取得費に加算できる相続税の額は、以下の式で計算します。

取得費加算額 = 財産を売却した人が納めた相続税 × 売却した財産の相続税評価額 ÷ 財産を売却した人が取得した相続財産の総額(債務控除前の金額)

取得費加算額は、この特例を適用しない場合の譲渡益が限度となります。
また、相続したのちに売却した財産が複数ある場合は、売却した財産ごとに加算額を計算します。

相続税の取得費加算の特例については、国税庁ホームページを参照してください。

(参考)国税庁ホームページ No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

取得費加算の特例と次にご紹介する空き家特例は、どちらか一方を選択して適用します。

3-2.空き家特例(特別控除3,000万円)を利用する

居住していた人が死亡して空き家になった住宅を相続した場合は、売却時の譲渡所得に空き家特例を適用することができます。

空き家特例(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例)では、相続した空き家を売却したときの譲渡所得から、特別控除として最高3,000万円が控除できます。

(空き家を相続した相続人が3人以上で、令和6年1月1日以後に譲渡する場合は、各相続人の控除額は最大2,000万円となります。)

空き家特例は、以下の要件を満たす場合に適用できます。

  • 対象の空き家には相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたこと
    (売却が平成31年4月1日以後の場合は、被相続人が老人ホームに入居していた場合も適用可)
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続開始日(死亡日)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続時から売却時まで事業用・貸付用・居住用として利用していないこと
  • 家屋は耐震リフォーム等で一定の耐震基準に適合している、または家屋を取り壊して更地として売却すること
    (売却が令和6年1月1日以後の場合は、売却後翌年の2月15日までに耐震基準への適合または家屋の取り壊しをする場合も適用可)
  • 親子や夫婦など特別な関係がある人への売却ではないこと

制度の詳しい内容については、国税庁ホームページを参照してください。
この特例は令和9年12月31日までに空き家を売却した場合に適用できます。

(参考)国税庁ホームページ No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

空き家特例と前項でご紹介した取得費加算の特例は、どちらか一方のみ適用できます。

4.マイホームを売却したときの税制上の特例

相続した不動産を自宅として利用していた場合は、取得費加算の特例のほか、マイホームを売却したときの特例を適用できる場合があります。参考までにこれらの特例について簡単にご紹介します。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 特定居住用財産の買換え特例
  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

4-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例では、マイホーム(居住用財産)を売却したときの譲渡所得から、特別控除として最高3,000万円が控除できます。

相続人が被相続人と同居していた場合や、相続した不動産を自宅として利用していた場合などで適用することができます。

この特例は、次項の「10年超所有軽減税率の特例」と併用することができます。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例

4-2.10年超所有軽減税率の特例

所有期間が10年を超えるマイホームを売却したときは、譲渡所得に通常より低い税率が適用されます。

10年超所有軽減税率の特例による所得税・住民税の税率は以下のとおりで、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分が対象になります。

  • 所得税(復興特別所得税を含む):10.21%
  • 住民税:4%

この軽減税率の特例は、前項の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と併用することができます。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

4-3.特定居住用財産の買換え特例

特定居住用財産の買換え特例は、所有と居住の期間が10年を超えるマイホームを売却して、新たにマイホームを購入したときに適用することができます。

この特例は、譲渡益に対する課税を先延ばしするもので、譲渡益が非課税になるわけではありません。
将来買い替えたマイホームを売却したときに、先延ばしにした譲渡益もあわせて課税されることになります。

この特例を適用するには、令和5年12月31日までにマイホームを売却する必要があります。

なお、令和4年1月1日以後にマイホームを売却するときは、買換資産について省エネ基準を満たす必要があります。要件の詳細は下記のとおりです。

  • 令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く)または建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のものである場合は、その住宅が一定の省エネ基準を満たすものであること。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

4-4.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例では、マイホームの買い換えで譲渡損失が出た場合に、一定の要件のもとで他の所得と損益通算することができます。損益通算をしても引ききれなかった譲渡損失は、譲渡の翌年以後3年以内に繰り越して控除することができます。

この特例を適用するには、令和5年12月31日までにマイホームを売却する必要があります。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

4-5.特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例では、自宅の売却価格が住宅ローンの残高を下回って譲渡損失が出た場合に、一定の要件のもとで他の所得と損益通算することができます。損益通算をしても引ききれなかった譲渡損失は、譲渡の翌年以後3年以内に繰り越すこともできます。

この特例を適用するには、令和5年12月31日までにマイホームを売却する必要があります。

(参考)国税庁ホームページ タックスアンサー No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

5.取得費が不明の場合も売却価格の5%にしないで再検討を

最後に、相続した不動産の取得費がわからない場合の対処法をご紹介します。

相続した不動産の売却による譲渡所得の計算では、亡くなった被相続人が生前に購入したときの金額から取得費を計算します。
購入時期が古いなど取得費が不明の場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。

ただし、売却価格の5%を取得費とすると、売却価格の大部分が譲渡所得として課税の対象になってしまいます。
取得費が不明の場合は、ただちに売却価格の5%を取得費にするのではなく、取得費を調べ直すことをおすすめします。

たとえば、預金通帳の出金記録や分譲時のパンフレットなどを根拠に取得費を計上するといった方法があります。

6.相続した不動産の売却は相続の専門家におまかせ

相続した不動産の売却では、取得費加算の特例や、空き家特例など税制上の特例を活用して節税をすることができます。
また、取得費を調べ直して税金を少なくできる場合もあります。

相続した不動産の売却は、不動産のほか相続問題に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

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