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【令和4年度税制改正大綱】住宅ローン控除、住宅取得等資金の非課税措置が延長

1.はじめに
令和3年12月10日に、自由民主党及び公明党から「令和4年度税制改正大綱」が公表されました。
個人所得課税では「住宅ローン控除」の4年延長に伴い、借入限度額・控除率・控除期間等が見直される見込みです。
資産課税では「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の2年延長に伴い、非課税限度額や受贈者の年齢要件が引き下げられる見込みです。
また、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、「相続時精算課税制度」や「暦年課税制度」について、本格的な見直しや検討を進めると言及されています。
本稿では「令和4年度税制改正大綱」の資料に基づき、税制改正が見込まれるポイントについてご紹介します。
2.住宅ローン控除(個人所得課税)
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの取得・新築・増改築(以下、取得等)をした場合、一定の要件を満たせば、所得税から一定の控除が受けられる制度のことです。
本制度は令和元年の消費税率10%の引き上げに伴い、税制上の支援措置として住宅ローン控除期間が13年に引き上げられていましたが、新型コロナウイルス感染症による経済状況を考慮し、控除期間は引き続き13年となる見込みです。
住宅ローン控除の概要については、国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」や、チェスターNEWS「令和元年度税制改正~消費税率10%時の「特別特定取得」に該当する場合の住宅ローン控除特例措置を創設」をご覧ください。
なお、「特例特別特例取得(床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の取得等)」についての詳細は割愛しています。
2-1.適用期限が4年延長(令和7年12月31日まで)
住宅ローン控除の適用期限は令和3年12月31日までとなっていましたが、令和7年12月31日まで4年延長される見込みです。
なお、改正後の住宅ローン控除が適用されるのは、令和4年から令和7年までに居住した場合となります。
2-2.借入限度額・控除期間・控除率・所得要件などが見直し
住宅ローン控除の4年延長に伴い、借入限度額(住宅借入金等の年末残高の限度額)・控除期間・控除率・所得要件などが見直される見込みです。
なお、「令和4年~令和5年に居住した場合」と「令和6年~令和7年に居住した場合」では、新築家屋に係る借入限度額や控除期間に違いがありますのでご注意ください。

2-3.所得税から控除しきれなかった場合の住民税の控除額
令和4年分以降の所得税において、所得税から控除しきれなかった控除額については、翌年度分の個人住民税から、控除限度額の範囲内(所得税の課税所得金額等の5%/最高9.75万円)で控除が可能です。
これまで控除限度額は引き上げや延長が繰り返されていましたが、住宅ローン控除の4年延長に伴い、控除限度額が縮小される見込みです。
なお、個人住民税から上記の控除額限度額を差し引くこととなるのは、令和4年~令和7年の間に居住の用に供した場合に限定されます。
2-4.手続きの簡素化も図られる
令和5年1月1日以降に、マイホームの取得等に係る住宅ローン控除を適用する場合、その年の確定申告時や翌年以降の年末調整時に、住宅取得資金に係る「住宅借入金等の年末残高証明書」の添付が不要となります。
これは居住年が令和5年以降となり、令和6年1月1日以降に行う確定申告や年末調整について適用される見込みです。
また、令和4年1月1日以降に入居する家屋が中古住宅である場合、これまで設けられていた「築年数要件」は「昭和57年以降に建築された住宅」に緩和される見込みです。
そして登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降であれば「新耐震基準」に適合しているとみなされ、耐震基準適合証明書の添付が不要となります。
3.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置(資産課税)
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは、直系尊属(父母や祖父母)から住宅取得資金の贈与を受けた際に、一定の要件を満たせば、非課税限度額までの金額については、贈与税が非課税となる特例のことです。
令和3年12月31日までの本特例の詳細を知りたい方は、チェスターNEWS「住宅資金贈与は最大3,000万円(※)が非課税に!贈与税の特例をわかりやすく解説」や「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置が拡充【令和3年度改正】」をご覧ください。
3-1.適用期限が2年延長(令和5年12月31日まで)
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は2年延長となり、適用期限が令和5年12月31日までとなる見込みです。
3-2.非課税限度額が見直し
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の2年延長に伴い、非課税限度額が見直される見込みです。
令和4年1月1日以降の贈与については、改正前に設けられていた「新築等に係る契約締結日」は廃止され、契約締結時期を考慮せずに非課税限度額が区分されます。

3-3.受贈者の年齢要件が引き下げ
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の2年延長に伴い、受贈者(子供・孫)の年齢要件が「20歳以上」から、「18歳以上」に引き下げられる見込みです。
よって、本特例の受贈者は「贈与を受けた年の1月1日において18歳以上」であることが要件となります。
なお、この年齢要件の引き下げが適用されるのは、令和4年4月1日以降に贈与によって取得する、住宅取得等資金に係る贈与税となります。
4.相続時精算課税制度や暦年課税の本格的な見直しを検討
経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直しの一環として、相続税・贈与時のあり方についても言及されています。
今後は相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、相続時精算課税制度や暦年課税について、本格的な見直しの検討が進められる見込みです。
このように言及されている背景として、以下のような現状が挙げられます。
・相続による資産の移転時期が高齢期にシフトしている
・若年世代への資産移転が進みにくい状況である
・資産をより早いタイミングで若年世代に移転することで経済の活性化が期待できる
また、贈与税の各種非課税措置についても、将来的に見直しが行われる可能性も言及されています。
相続税と贈与税の各種制度の見直しについては、令和5年以降の税制改正の内容が注目されます。
5.さいごに
今回発表された「令和4年税制改正大綱」では、住宅ローン控除や住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長に伴い、控除額や非課税上限額だけではなく、適用要件等も見直しが行われる見込みです。
税制改正大綱はあくまで税制改正の素案であり、確定事項ではありませんが、概ねこの内容で税制改正されると予測されます。
チェスターNEWSでは、引き続き税制改正の動向を注視していきたいと思います。
※本記事は記事投稿時点(2022年2月14日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
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