相続手続きを誰に頼むか迷ったら-状況別のチャートで依頼先を選ぶ
相続手続きの依頼先には弁護士や司法書士、税理士、行政書士などが考えられます。
業務や費用相場は依頼の相手方によって異なることへの認識が必要です。
相続手続きを自分だけで行おうとすると、必要書類の収集や相続税の算定に四苦八苦する可能性があります。各専門家に依頼できることや費用感を知って、誰を頼ればよいか判断できるようになりましょう。
この記事の目次 [表示]
1.相続手続きを誰に頼むかひと目でチェック-手続き一覧表
家族が亡くなってから行う相続手続きと、依頼できる専門家は以下のとおりです。
手続き時期の目安 (亡くなってからの日数) | 手続き内容 | 依頼できる専門家 |
---|---|---|
1週間以内 |
| − |
2週間以内 |
| − ※一部、一括で請け負う弁護士や司法書士事務所あり |
2ヶ月以内 |
| 故人の財産調査 →弁護士・司法書士・税理士・行政書士 遺産分割協議 |
3ヶ月以内 |
| 弁護士・司法書士・行政書士 |
4ヶ月以内 |
| 税理士 |
6ヶ月以内 |
| 遺産分割協議書の作成 →弁護士・司法書士・税理士・行政書士 不動産の名義変更登記 |
10ヶ月以内 |
| 税理士 |
1年以内 |
| 弁護士 |
5年以内 |
| 遺族年金の受給申請 →行政書士 相続税の税務調査 →税理士 |
※専門家の記載がない手続きについては、基本的に相続人が自ら行います。
▲期間別相続手続きの依頼先
上記の手続き期間はあくまで目安のため、いずれも早めに着手することをおすすめします。場合によっては、期間が前後するケースもあります。手続きの内容や期限についてより詳しく知りたい人は、下記の記事もご覧ください。
参考:死亡後の手続きチェックリストと内容解説。期限のあるものに要注意 | 税理士法人チェスター
2.相続手続き可能な専門家-状況別チャートで選ぶ
相続手続きの代理を依頼できる専門家は、主に以下の4種類です。
相続手続き可能な専門家
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
上記の専門家には、それぞれの得意分野があります。そのため、1人の専門家に代理人を依頼すればすべての手続きが済むとは限りません。弁護士と司法書士、弁護士と税理士、といったように複数の専門家の協力が必要な場合もあります。
あらかじめそれぞれが専門とする業務内容を知り、何を誰に頼むべきか把握しておくと相続手続きがよりスムーズになるはずです。誰に依頼すべきか簡単に把握したい人は、以下のフローチャートを参考にしてください。
▲相続手続きを誰に頼むべきかがわかるフローチャート
2-1.弁護士は相続に関する業務全般に対応
弁護士は先に紹介したなかでも、対応できる業務の幅が最も広い専門家です。弁護士に依頼できる業務は、具体的に以下のとおりです。
弁護士に依頼できる業務
- 相続財産調査
- 相続放棄
- 遺産分割協議の代理人
- 遺産分割調停の申立て
など
できるだけ相続手続きを一括で依頼したい場合には、弁護士に依頼するのも1つの手段でしょう。なお弁護士の仕事について、弁護士法では以下のように定められています。
(弁護士の職務)
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
つまり、法律に沿った手続きや判断を伴うことはすべて、代理人として手続きできます。司法書士や税理士といった他の専門家にできることは、基本的に弁護士にもできると考えて問題ありません。
ただし、上記はあくまで弁護士に与えられている職権の話です。弁護士が実際に司法書士や税理士のすべき仕事までこなすことは、レアケースといえます。弁護士は弁護士にしかできない、紛争の解決に重点を置くことが多数です。
登記は司法書士に、相続税の申告は税理士に依頼するケースがほとんどです。
2-1-1.遺産分割協議でトラブルが生じているなら弁護士に依頼
遺産分割の方法などで相続人間の争いが起きている場合は、弁護士に依頼しましょう。弁護士に依頼すると、依頼者の代理人として遺産分割協議を進めてくれます。
とくに下記のような場合では、弁護士を代理人にすることでスムーズに争いが解決するでしょう。
弁護士に依頼するのが望ましいケース
- 身内同士ではなかなか話がつかない場合
- 家族同士で争いたくない場合
弁護士には、裁判上だけでなく当事者同士の話し合い(調停)の代理人としても依頼できます。
なおこうした紛争解決のサポートができるのは、弁護士特有の職権です。司法書士も、受け取る遺産の額が少額であれば代理人にできる場合もありますが、対応できる条件が限定されます。
2-2.司法書士は登記の専門家
司法書士は不動産登記の専門家です。司法書士に依頼できる相続手続きは主に以下のとおりです。
司法書士に依頼できる手続き
- 相続登記
- 相続財産調査
- 相続放棄
- 遺産分割調停申立書の作成
など
なかでも司法書士が専門とするのは、相続登記です。
相続登記の手続きは、土地や建物を相続する場合に発生します。亡くなった人から、土地建物の所有権を相続人に名義変更する手続きのことです。
相続放棄手続きや、遺産分割協議書を作成できる点については、弁護士と変わりません。さらに相続する財産が140万円以下の場合は、司法書士も相続争いの代理人とすることが可能です。そのため、弁護士と同じように「相続手続き一括代行」といったサービスを提供している司法書士事務所も少なくありません。
2-2-1.不動産登記の負担を軽減したいなら司法書士に依頼
不動産登記の負担を軽減したいなら、司法書士に依頼しましょう。相続登記は自分でも行なえます。しかし手順が多く専門的な計算も必要です。
さらに相続登記は不動産を管轄する法務局で行う必要があります。家と不動産の場所が離れていると手続きに手間と時間がかかるでしょう。そのため、司法書士に依頼すると手間が省けて確実です。
ただし、土地や建物を相続しない人は不動産登記手続きが必要ないため、司法書士以外の選択肢も視野に入れられます。たとえば遺産分割協議書を作るだけの依頼内容なら、弁護士や税理士、行政書士でも問題ありません。口コミ評価や料金のリーズナブルさなどを考慮して、依頼先を決めましょう。
2-3.税理士は税金の専門家
税理士は相続税に関する手続きを専門としています。税理士に依頼できる相続手続きは主に以下のとおりです。
税理士に依頼できる手続き
- 相続財産調査
- 相続税の計算
- 相続税申告書作成
- 遺産分割協議書作成
など
そのため相続税が発生する可能性のある人は、税理士に依頼するとよいでしょう。相続税が発生するかどうかは、遺産の額や家族構成によって異なります。自分で判断することもできますが、遺産の総額を算出する必要があるため税理士に相談したほうが確実でしょう。
▲およその相続税額がわかる早見表
もし計算を誤り、申告すべき相続税を申告しなかった場合、故意ではなくても脱税という扱いになってしまいます。申告忘れの罰金は、本来払うべき税金の40%です。余計なお金を払わないためにも、専門家へ依頼することをおすすめします。
なお自分で相続税があるかないかを判断したい人は、以下の記事を参考にしてください。
参考:相続税の申告義務あり?なし?要否判定のポイントを解説 | 税理士法人チェスター
2-3-1.相続税申告書を確実に作成してもらいたいなら税理士に依頼
相続税が発生する場合「相続税申告書」を税務署に提出する必要があります。相続税申告書の提出期限は以下のとおりです。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
ほかの相続手続きもあるなかで、約10ヶ月以内に相続税を計算して申告する必要があるのです。申告が遅れると延滞税がかかるため、確実に作成して提出する必要があります。しかし第1表から第15表まである申告書を自分で作成することは、非常に手間のかかる作業です。計算ミスも発生しかねないため、税理士に依頼することをおすすめします。
なお税理士ではなく、税務署に相続税申告書の書き方を直接相談する手段もあります。しかし税務署は、節税対策や税金をより少なくするための方法については教えてくれません。つまり依頼費用を払って税理士に依頼した方が、結果的に節税できる可能性が高いといえます。
2-4.行政書士は官公署に提出する書類作成代行の専門家
行政書士は書類作成の代行に特化した専門家です。行政書士に依頼できる相続手続きは、主に以下のとおりです。
行政書士に依頼できる手続き
- 相続財産調査
- 遺産分割協議書作成
など
行政書士は「代書屋」と呼ばれることもあります。呼び名の通り、公的な書類の作成を代行するための職業です。そのため弁護士のような争いごとの代理人や、司法書士のように不動産登記をすることはありません。行政書士ができる仕事は、基本的に先に紹介した専門家(弁護士、司法書士、税理士)でも対応可能です。
ただし、行政書士は依頼費用を安く抑えられるメリットがあります。対応できる業務が限定的かつ事務的であるため、弁護士や司法書士などに比べて安く依頼できる事務所がほとんどです。そのため費用の安さを重視するなら、行政書士に依頼するのも1つの手段といえるでしょう。
2-4-1.遺産分割協議書の作成だけ頼みたいなら行政書士に依頼
とくに遺産分割協議書だけ作成してほしい場合は、行政書士に依頼するとよいでしょう。遺産分割協議書は、相続人の間で財産をどう分けるかを記した書類です。遺産分割協議書は相続人が自ら作成することもできます。しかし内容に不備や誤りがあると、遺産分割協議を一からやり直して協議書を作り直さなければならないケースもあります。
確実な遺産分割協議書を作成するためにも、専門家である行政書士へ依頼しましょう。
2-5.信託銀行は相続に関する金融商品を紹介
信託銀行も、相続に関する相談を受け付けている場合があります。ただし信託銀行が相続手続きを代行するわけではありません。提携している弁護士や税理士を紹介し、仲介する窓口として機能しています。
そのため自分で専門家を見つけられない場合は、信託銀行の紹介を受けるという手段もおすすめです。
2-5-1.相続財産を元手に資産運用をしたいなら信託銀行に依頼
信託銀行では、資産運用に関する数々の金融商品を展開しています。そのため、相続した財産を元手に資産運用したいと考えている人に適した相談窓口です。相続財産の金額や内訳によって、何をどのように運用すべきか提案してもらえます。
また信託銀行では投資に役立つセミナーや相談会が定期的に実施されています。資産運用が初めての人にも、知識を付けられる環境が整っているのです。
3.専門家別-相続手続き代行にかかる費用相場一覧表
専門家ごとの相続手続き代行にかかる費用相場は、以下のとおりです。
弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 | 信託銀行 | |
---|---|---|---|---|---|
相続財産調査 | 相続財産の約5%~ ※遺産分割協議書作成込み | 5万円~ | 相続財産の0.5~1% ※相続税申告・遺産分割協議書作成込み | − ※対応の可否・費用は事務所による | 100万円~ ※遺産分割協議書作成込み |
相続放棄 | 5万~10万円 | 3万~5万円 | − | − | − |
相続税申告 | − ※対応の可否・費用は事務所による | − | 相続財産の0.5~1% ※遺産分割協議書作成込み | − | − |
相続争いの代理交渉 | 調停の場合 着手金: 10万~30万円 成功報酬: 取得できた金額の6〜10% 裁判の場合 着手金: 20万~50万円 成功報酬: 取得できた金額の10〜16% | 5万〜20万円 (※裁判書類作成のみ) | − | − | − |
遺産分割協議書作成 | 相続財産の約5%~ ※財産調査込み | 5万~15万円 ※不動産登記も含めた料金 | 相続財産の0.5~1% ※財産調査や相続税申告込み | 3万〜4万円 | 100万円~ ※財産調査込み |
不動産登記 | − ※対応の可否・費用は事務所による | 5万~15万円 ※遺産分割協議書作成込み | − | − | − |
▲相続手続きごとの専門家と費用相場
なかでも司法書士は対応できる業務の幅が広いうえに、弁護士よりも費用が安い傾向にあります。反対に、信託銀行は財産調査や遺産分割協議書の作成だけで100万円以上かかるケースが多いため、上記のなかでは割高です。
ただし費用相場はあくまで目安のため、実際に依頼先を検討する際は複数の事務所から見積もりをもらい、比較検討しましょう。料金にどこまでの業務を含むのかも事務所によって異なるため、業務内容と費用を照らし合わせることが重要です。
4.相続手続き代行の専門家を選ぶうえで意識すべきポイント
相続手続き代行の専門家を選ぶうえで意識すべきポイントは、以下のとおりです。
相続手続き代行を選ぶときのポイント
- 基本的には依頼したい業務を得意とする専門家を選ぶ
- 相続手続きに特化し実績豊富な専門家を選ぶ
- 料金体系を明記している専門家を選ぶ
- 下請け関係がない専門家を選ぶ
相続手続きは、基本的にやり直しできません。そのため、手続き代行を依頼する専門家選びは非常に重要です。適切な価格で確実に手続きを進めてくれる専門家を探しましょう。
4-1.基本的には依頼したい業務を得意とする専門家を選ぶ
基本的には、依頼したい業務を得意とする専門家に依頼しましょう。たとえばトラブルの解決なら弁護士、不動産登記手続きが必要な場合は司法書士に依頼します。そのなかで、自分に合った事務所を探していきましょう。
4-2.相続手続きに特化し実績豊富な専門家を選ぶ
事務所を選ぶ際は、相続手続きに特化しているかを確認しましょう。たとえば弁護士事務所のすべてが、相続手続きを得意としているわけではありません。なかには刑事事件や離婚調停などに特化した事務所もあります。こうした事務所に相続手続きを依頼すると、必要以上に手続きに時間がかかるケースもあります。
相続手続きに特化した事務所を選ぶには、以下のポイントをチェックしましょう。
相続に特化した事務所を選ぶときのポイント
- 公式ホームページに、相続手続きに対応している記載があるか
- 相続手続きの実績がどのくらいあるか
- 対応の質やスピード感、費用について悪い口コミはないか
- 実際に相談した際、手続きの流れや料金についてわかりやすく説明してくれるか
まずは公式ホームページや口コミサイトをチェックし、複数の事務所を候補に挙げましょう。そして実際に足を運び、相談した際の対応や見積もりなどで決定することをおすすめします。なお相談後に契約しなくても、問題にはなりません。
4-3.料金体系を明示している専門家を選ぶ
公式ホームページに料金体系を明示している事務所を選びましょう。また電話での問い合わせや相談時に、はっきりと見積もりを出してくれる事務所は信頼できるはずです。なかには料金体系が明確ではなく、依頼者の足元を見て見積もりを出す事務所もあります。
また、あらかじめ見積もりを出さない事務所に依頼すると、後から高額な追加費用を請求されることも起こり得ます。こうしたトラブルを防ぐためにも、料金体系が事前に確認できる事務所を選びましょう。
4-4.下請け関係がない専門家を選ぶ
専門家を選ぶ際は、下請け関係がないかを確認しましょう。たとえば不動産業者が紹介する専門家は避けましょう。なぜなら、下請けの専門家は相続人でなく元請業者にとって有利な働きをする傾向にあるからです。
反対に、下請け関係のない専門家に依頼すれば、相続人に寄り添った提案や手続きをしてくれます。
5.相続手続きは多岐に渡るため専門家に頼むことでスムーズに進めよう
相続手続きを誰に頼むかは、依頼したい手続きの種類や財産の種類などによって異なります。相続人同士でトラブルが起きている場合は、法律事務所へ。相続のプロが問題解決に向けて尽力いたします。
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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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