世帯主変更届とは?親から子の変更方法・手続きの流れ・書き方を解説
世帯主が亡くなった場合、死亡日から14日以内に居住地の市区町村役場に「世帯主変更届」を提出し、新しい世帯主を届け出る必要があります。
ただし、世帯に残された人が1人だけといったように、新しい世帯主が明らかな場合は、届け出が不要なこともあります。
この記事では、世帯主変更届はどのような場合に提出するかを確認し、あわせて具体的な手続き方法や必要書類などを解説します。
世帯主変更届や委任状の書き方もサンプル付きでご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.世帯主変更届とは?
世帯主変更届(せたいぬしへんこうとどけ)とは、世帯主が死亡した際などに、新しい世帯主を届け出る書類のことです。
世帯主の死亡から14日以内に、亡くなった世帯主の居住地の市区町村役場に提出しますが、死亡届と同時に手続きするのが一般的です。
世帯主は死亡以外の理由、例えば高齢の親から子に変更したいといった理由でも変更できますが、このあとは、世帯主が死亡したケースについて解説します。
2.世帯主変更届の提出が不要なケースもある
世帯主が死亡しても、世帯主変更届の提出が不要なケースもあります。
この章では、世帯主変更届の提出が「必要な場合」と「不要な場合」について確認します。
2-1.世帯主変更届の提出が必要な場合
世帯主変更届を提出する必要があるのは、世帯に15歳以上の人が2人以上残されていて、新しい世帯主が明らかでない場合です。
この場合は、世帯に残された15歳以上の人の中から新しい世帯主を1人決めて、世帯主変更届によって届け出をしなければなりません。
2-1-1.世帯に配偶者と15歳以上の子が残された(配偶者へ変更・親から子へ変更)
世帯主である夫が亡くなり妻と15歳以上の子が残された場合は、「妻」と「子」のどちらかを新しい世帯主に定めて、世帯主変更届を提出する必要があります。
2-1-2.世帯に15歳以上の子が2人以上残された(親から子へ変更)
世帯主である親が亡くなり15歳以上の子が2人以上残された場合は、2人の「子」のどちらかを新しい世帯主に定めて、世帯主変更届を提出する必要があります。
2-2.世帯主変更届の提出が不要な場合
世帯主変更届の提出が不要なのは、世帯に誰も残されていない場合や、新しい世帯主になる人が明らかな場合です。
2-2-1.世帯に誰も残されていない
世帯主が死亡して世帯に誰も残されていない場合は、世帯主変更届の提出は不要です。
死亡した人がひとり暮らしをしていた場合は、他に世帯員がいないため、世帯主変更届の提出は不要です。
2-2-2.世帯に残された人が1人だけ
世帯主が死亡して世帯に残された人が1人だけの場合も、世帯主変更届の提出は不要です。
例えば、二人世帯で世帯主である夫が亡くなり、妻だけが残された場合は、妻が新しい世帯主になることが明らかなので、世帯主変更届の提出は不要です。
2-2-3.世帯に親と15歳未満の子が残された
世帯主が死亡して世帯に親と15歳未満の子が残された場合も、世帯主変更届の提出は不要です。
例えば、世帯主である夫が亡くなり、妻と15歳未満の子が残された場合は、妻が新しい世帯主になることが明らかなので、世帯主変更届の提出は不要です。
3.世帯主変更届の手続き方法
世帯主変更届の提出が必要な場合の、具体的な手続き方法をご紹介します。
3-1.届出人(申請人)
世帯主変更届の届出人は、「新しい世帯主本人」または「同一世帯の人」です。
同一世帯の人とは、住民票上の住所が同じで、なおかつ、生計を共にしている(生活費を共にしている)状態の人のことを指します。
委任状を提出すれば、代理人が世帯主変更届の届出人となることもできます。
親族であっても同一世帯でない場合は、代理人と同じ扱いとなり、委任状が必要となりますのでご注意ください。
3-2.提出先(届出先)
世帯主変更届の提出先は、居住地の市区町村役場です。
市区町村役場の支所や出張所、サービスコーナーなどでは取り扱っていない場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。
3-3.手数料
世帯主変更届の手続きに手数料はかかりません。
3-4.必要書類など
世帯主変更届を提出する際の必要書類などは、以下のとおりです。
世帯主変更届の用紙は、市区町村役場などで入手します。
なお、世帯主変更届の用紙は、世帯の分離・合併の届出用紙を兼ねた「世帯変更届」または、転入・転居の届出用紙も兼ねた「住民異動届」となっています。
届出人の本人確認書類は、運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・健康保険証などが該当します。
届出人の印鑑も必要ですが、届出人が自ら窓口で申請して届出書に署名している場合は不要になることもあります。
代理人が届け出るときは、上記の必要書類などに加えて委任状と代理人の本人確認書類も必要です。
亡くなった世帯主が国民健康保険に加入していた場合は、世帯全員分の保険証(国民健康保険被保険者証)も提出します。
3-5.提出期限
世帯主変更届の提出期限は、世帯主の死亡日(世帯主の変更事由が発生した日)から14日以内です。
14日目が市区町村役場の閉庁日(土日祝日)にあたる場合は、翌開庁日が提出期限となります。
なお、死亡日から14日を経過してからも、通常通りの手続きが可能です。
しかし、提出が遅れた理由によっては、5万円以下の過料が課せられることもありますので注意が必要です(詳細は後述します)。
4.必要書類の書き方
続いて、世帯主変更届の用紙と委任状の書き方を解説します。
4-1.世帯主変更届の書き方
世帯主変更届(世帯変更届・住民異動届)の用紙は、市区町村役場の窓口に備え付けられています。
様式は市区町村によって異なりますが、おおむね次のような事項を記入します。
【引用:東京都中央区ホームページより抜粋、チェスターが作成】
具体的な書き方としては、「新しい世帯主」の欄には新しい世帯主の住所・氏名を記入し、「今までの世帯主」の欄には死亡した世帯主の氏名を記入します。
「世帯員」の欄には、新しい世帯主を含めて、世帯を構成する人全員について必要事項を記入します。
4-2.委任状の書き方
代理人が世帯主変更届を提出する場合は、委任状も提出する必要があります。
委任状に決まった様式はありませんが、委任年月日・代理人(受任者)の情報・委任者の情報・委任事項を、委任者本人が記載する必要があります。
市区町村役場によっては、指定された様式の委任状を提出するよう案内されるケースもあります。
委任状の書き方に不安がある方は、市区町村のホームページから委任状の様式をダウンロードして利用してもよいでしょう。
5.世帯主変更届のメリット・デメリット
世帯主変更届の提出は、手続きが面倒ということがデメリットとして挙げられ、届け出をしてもすぐに何か得をするといったメリットはありません。
しかし、世帯主が死亡した場合の世帯主変更の届け出は、法律で定められた義務となっています(住民基本台帳法第25条)。
世帯主が死亡して世帯に15歳以上の人が2人以上いるときは、メリット・デメリットにかかわらず、期限までに世帯主変更届を提出しなければなりません。
6.世帯主変更届の3つの注意点
この章では、世帯主変更届を提出する際の注意点を3つご紹介します。
6-1.届出期限を過ぎた場合は過料が生じる可能性がある
世帯主変更届の提出期限を過ぎると、5万円以下の過料が生じる可能性があります。
住民基本台帳法では、正当な理由なく世帯主変更届の提出を怠った場合は過料を課すと定められています(住民基本台帳法第52条第2項)。
提出期限を過ぎてから世帯主変更届を提出する場合は、提出が遅れた理由を記載した「届出期間経過通知書」もあわせて提出しなければなりません。
記載された理由によっては過料が課せられ、簡易裁判所から通知されることとなります。
6-2.同じ住所の親族でも委任状が必要な場合がある
届出人が同じ住所に住んでいる親族であっても、家計を分けている場合は「別世帯(同住所別世帯)」に該当するため、委任状の提出が必要となります。
具体例を挙げると、二世帯住宅で同じ住所に住んでいるものの、生計を共にしていない場合などが該当します。
6-3.外国人世帯主に変更があった場合
外国人世帯主に変更があった場合は、住民異動届の様式が「外国人住民用」となり、届け出の際の必要書類に以下のものが加えられます。
- 世帯変更する人全員の在留カード(特別永住者証明書)
- 世帯主との続柄を証明できる書類
世帯主との続柄を証明できる書類とは、家族関係が分かる書類の原本のことで、結婚証明書や出生証明書などが該当します。
これらの証明書が日本語で記載されていない場合は、翻訳者を明らかにした日本語訳文の添付が必要となります。
なお、市区町村役場によって提出書類が変わる場合もありますので、必ず詳細を確認しましょう。
7.世帯主変更でよくある質問
世帯主が死亡したときの世帯主変更について、よくある質問と回答を2つご紹介します。
7-1.世帯のうち誰を世帯主にすればいいですか?
世帯主とは、世帯を構成する人の中で主に生計を担う人であって、世帯の代表となる人のことをいいます。
世帯主が亡くなったときは、今後生計を担う人を新しい世帯主に定めて届け出ることになります。
ただし、15歳以上の人が1人だけの場合はその人が世帯主となり、届け出の必要はありません。
なお、世帯主は、戸籍の筆頭者である必要はありません。
7-2.世帯主を2人に変更できますか?
世帯主が亡くなって残された世帯員が2人以上いる場合は、世帯を分割して世帯主を2人とすることもできます。
同居していても構いませんが、それぞれの世帯で生計が別々になっている必要があります。
例えば、世帯主であった夫が死亡して妻と子が残された場合、子が就職していて生計が別々になっている場合は、世帯を分割して妻と子を世帯主にすることができます。
8.世帯主が死亡した場合は健康保険の手続きも必要
世帯主が死亡した場合は、世帯主変更届の提出だけではなく、健康保険の手続きも必要となります。
なお、世帯主が亡くなった場合、世帯主変更届の提出が不要であっても、健康保険の手続きは必要になりますので、失念しないようご注意ください。
8-1.国民健康保険に加入していた場合
死亡した世帯主が国民健康保険に加入していた場合は、死亡から14日以内に、市区町村役場に資格喪失届を提出して保険証を返却します。
手続きに必要なものは次のとおりです。
- 国民健康保険資格喪失届
- 家族全員分の国民健康保険の保険証
- 高齢受給者証、限度額適用認定証(あれば)
市区町村によっては、死亡届を提出するだけで健康保険の資格喪失手続きが行われる場合もありますが、保険証は返却しなければなりません。
死亡した世帯主の家族も国民健康保険に加入していた場合は、家族全員分の保険証も返却します。
家族の保険証は、世帯主と被保険者証番号の書き換えが行われます。
なお、死亡した世帯主が後期高齢者医療制度に加入していた場合も、同様の手続きが必要です。
詳しい内容は下記の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
8-2.健康保険(被用者保険)に加入していた場合
死亡した世帯主が会社員・公務員で健康保険(被用者保険)に加入していた場合は、扶養に入っていた家族の保険証も無効になります。
死亡した世帯主の健康保険の資格喪失手続きは勤務先で行いますが、家族全員の保険証を返却しなければなりません。
残された家族は、以下のどちらかの方法で健康保険に加入することになります。
- 国民健康保険に加入する
- 世帯に健康保険に加入している会社員・公務員がいればその人の扶養に入る
8-3.葬祭費や埋葬料の請求もお忘れなく
各種健康保険の資格喪失手続きの際に、葬祭費や埋葬料の請求もしておきましょう。
葬祭費とは国民健康保険の給付金で、埋葬料とは健康保険(被用者保険)の給付金です。
どちらも申請期限は2年ですが、なるべく早く請求しておきましょう。
葬祭費や埋葬料については下記の記事でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
9.世帯主変更届以外に行う必要のある相続手続き
世帯主変更届以外にも、世帯主が死亡した場合はさまざまな相続手続きが必要となります。
この章では、相続直後に必要となる代表的な手続きを簡単にご紹介します。
具体的な相続手続きについては、下記の記事もあわせてご覧ください。
【相続手続き】いつまでに手続きが必要?流れと期限をまとめて一挙解説 ━保存版━
9-1.死亡届の提出
世帯主が死亡したら、医師から死亡診断書(事故の場合は警察から死体検案書)を発行してもらいます。
この死亡診断書と死亡届が1枚の用紙になっており、遺族は死亡届(用紙の左側)に必要事項を記入して、死亡日から7日以内に市区町村役場に提出します。
死亡届の提出方法について、詳しい内容は下記の記事をご覧ください。
死亡届の提出期限はいつまで?提出しないとどうなる?提出先も解説
死亡届の手続きや提出後の流れを解説 – 税務署からの連絡にも要注意。
9-2.火葬許可証の受け取り
市区町村役場に死亡届を提出する際に、遺体を火葬するための火葬許可の申請を行います。
発行された火葬許可証を受け取り、火葬場(斎場)に提出して火葬を行います。
火葬が終われば、火葬場から火葬証明書(埋葬許可証)が発行されます。
火葬証明書は、遺骨をお墓や納骨堂に納めるときに提出します。
死亡届の提出や火葬許可の申請は、葬儀社が代行して行うことが一般的です。
詳しい内容は下記の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
死亡届に関する手続きは葬儀屋に任せられる?費用、注意点などを解説
9-3.年金受給停止の届け出
亡くなった世帯主が年金を受給していた場合は、年金受給停止の届け出を行います。
年金受給停止の届け出は、年金事務所や年金相談センターに「年金受給者死亡届(報告書)」を提出することとなります。
ただし、基礎年金番号とマイナンバーが紐づいている場合は届け出の必要はありません。
なお、手続きが遅れて死亡日の翌月分以降の年金を受給していた場合は、受給された年金を返さなければなりません。
必要に応じて、未支給年金や遺族年金などの請求も同時に行います。
年金に関する手続きについて詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
相続発生後の年金手続きのポイント!ご家族が亡くなった時は、年金手続きを忘れずに
死亡後の年金のほか遺族がもらえるお金と必要な手続き-司法書士が回答
9-4.公共料金などの名義変更や解約
世帯主が亡くなった場合は、以下の公共料金などの名義変更や解約手続きが必要となります。
ライフライン | 電気・ガス・水道・インターネット・固定電話・携帯電話・NHK |
---|---|
サービス | 新聞・衛星放送・ケーブルテレビ・プロバイダ契約・動画配信サービス・SNS |
金融 | クレジットカード |
その他 | 習い事・定期宅配サービスなど |
この他にも、固定資産税・住民税の請求先変更手続きや、運転免許証・パスポート・マイナンバーカードの返却などの手続きも必要となります。
詳しい内容は下記の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
9-5.遺産相続の手続きや名義変更
亡くなった世帯主が所有していた相続財産について、遺産相続の手続きや名義変更が必要となります。
まずは亡くなった世帯主が所有していた相続財産と法定相続人を確定し、相続人全員で遺産分割協議を行い「誰が・何を・どれだけ相続するのか」を決めます。
話し合いがまとまれば「遺産分割協議書」を作成し、必要書類を準備して、各種財産の名義変更手続きを行います。
なお、相続税が課税されるケースであれば、相続税申告も別途必要となります。
遺産相続手続きについて詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
遺産相続とは?分配割合・税金・手続きの流れや期限について解説
9-6.故人名義の不動産の相続登記
亡くなった世帯主が保有していた自宅などの不動産については、名義変更(所有権移転登記)が必要です。
名義人が亡くなったことによる不動産の名義変更は「相続登記」と呼ばれ、さまざまな書類や手続きが必要となります。
名義変更の期限は3年ですが、なるべく早く手続きをしておきましょう。
相続登記について詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
不動産の相続に必要な「相続登記」についての基本知識を徹底解説
相続登記申請書の書き方を見本付きで解説!綴じ方/必要書類/記載例も
10.まとめ
世帯主が亡くなった場合は、世帯主変更届以外にもさまざまな相続手続きが必要となります。
葬儀の手配はもちろん、健康保険や年金の手続き、ライフラインなどの名義変更、さらに遺産の分割や名義変更などの「遺産相続」に係る手続きも、各種期限までに済ませる必要があります。
これらの相続手続きは、みなさんが想像されているよりもはるかに大変です。
遺産相続に係る手続きは専門家に依頼できますので、相続のプロに依頼されてはいかがでしょうか。
10-1.司法書士法人チェスターにご相談を
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