厚生年金の受け取り前や受給中に死亡した場合。受け取れるものを解説
厚生年金の受給資格を持つ人が死亡すると、遺族はどのようなお金が受け取れるのでしょうか?必要な手続きや請求の期限もあわせてチェックしましょう。死亡後の手続きは厚生年金受給中と受給前で異なるため、それぞれに必要な書類も紹介します。
この記事の目次 [表示]
1.年金受給対象者が死亡した場合、どうする?
親や配偶者といった家族が死亡した場合、さまざまな手続きが必要です。中でも厚生年金受給対象者が死亡したときには、どうすればよいのでしょうか?
1-1.受給中に亡くなった場合
年金を受給中に亡くなった場合、まず行うのは『年金受給権者死亡届』の提出です。受給者が死亡すると、年金を受け取る権利が喪失します。厚生年金は10日以内の手続きが必要です。
年金証書・死亡診断書などと一緒に、年金事務所か年金相談センターへ提出します。ただし亡くなった人が生前に、日本年金機構へマイナンバーを届け出ている場合には、年金受給権者死亡届の提出を省略することが可能です。
1-2.受給前に亡くなった場合
受給前に加入者が死亡した場合、死亡届の提出を遺族が行う必要はありません。加入者が働いていた企業が年金事務所へ『健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届』を提出します。
ただし条件に当てはまると、遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金などを受け取れる可能性があるため、その手続きは別途必要です。
給付内容や請求先は、年金の加入状況や、加入者と遺族との関係により異なります。ケースによっては複雑なこともあるため、まずは管轄の年金事務所へ問い合わせましょう。
2.遺族が受け取れるお金は?
条件に当てはまっており、期限内に適切に手続きをすれば、遺族はさまざまな給付を受けられます。具体的な給付の種類を見ていきましょう。
2-1.受け取っていない年金「未支給年金」
加入者が生前に受け取れていない『未支給年金』がある場合、亡くなった月までの分を請求できます。請求できる遺族は、死亡した受給権者と同一生計の3親等内の親族です。
この条件に当てはまる人であれば、亡くなった加入者ではなく、自分の権利として請求できます。請求先は年金事務所や年金相談センターです。
『未支給年金請求書』に亡くなった受給権者の基礎年金番号・年金コード・生年月日・死亡年月日などを記載します。加えて続柄が分かる書類と、生計が同じであったことを証明できる書類を提出し請求しましょう。
2-2.独身、子どもの有無は不問「遺族厚生年金」
『遺族厚生年金』は独身でも子どもがいなくても、厚生年金の保険料を支払っていれば対象となります。受給できる対象者は以下のとおりです。
亡くなった者によって生計を維持されていた
- 配偶者
- 子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
基本的には上記の優先順位で遺族厚生年金が受給できますが、1.の配偶者については年齢や子どもの有無によって順位が変わることを覚えておきましょう。
亡くなった加入者が独身の場合、親が55歳以上であれば遺族厚生年金を受給できます。ただし実際に支給が始まるのは60歳を迎えてから、という点に注意しましょう。
2-3.企業型DCやiDeCoに加入していた場合
確定拠出年金である『企業型DC』や『iDeCo』へも加入していると、遺族は口座残高相当額を死亡一時金として受け取れます。請求できるのは、加入者が生前に家族や兄弟姉妹の中から指定した人です。
特に指定されていないときは、法令で定められているルールにのっとり受取人が決まります。ただし、民法の相続順位とは異なるため、注意が必要です。また、死亡一時金として口座残高相当額を受け取るには、加入者の死亡から5年以内に請求しなければいけません。
3.遺族厚生年金と併せて受け取れるお金
遺族が受け取れるのは遺族厚生年金だけではありません。条件に当てはまれば、ほかにも受け取れるお金があります。
3-1.子どもの養育中のみ「遺族基礎年金」
死亡した加入者によって生計が維持されていた場合、18歳までの子どもがいる配偶者と、18歳までの子どもには『遺族基礎年金』も支給されます。
遺族厚生年金と遺族基礎年金はどちらか一方を選ばなければいけないものではなく、条件さえ満たせばどちらも受け取れるものです。
年金手帳・戸籍謄本・亡くなった加入者の住民票除票など必要書類をそろえ、年金事務所か年金相談センターへ提出しましょう。
3-2.要件を満たした妻が対象「寡婦加算」
死亡した加入者の妻は、用件を満たせば『寡婦加算』を受け取れます。『中高齢の寡婦加算』は、妻の年齢が40歳から老齢基礎年金を受給できる年齢(65歳未満)まで受け取れるものです。
18歳までの子どもがおらず遺族基礎年金の対象外か、子どもが成長し18歳になった年の年度末を経過し遺族基礎年金の対象外となった場合に、受給できます。
また妻の老齢基礎年金の受給開始により、年金額が低下するのを避けるため『経過的寡婦加算』が支給されるケースもあります。対象は1956年4月1日以前に生まれた妻です。老齢基礎年金額と合算し、中高齢寡婦加算と同額になるよう設定されています。
4.第1号被保険者のみ対象で受け取れないお金
中には、自営業者や個人事業主などが対象の『第1号被保険者』の遺族のみが給付対象となるお金もあります。死亡した厚生年金受給権者の遺族が受け取れないお金についてもチェックしましょう。
4-1.寡婦年金、死亡一時金
第1号被保険者の遺族が受け取れるお金として代表的なのは『寡婦年金』です。免除期間も含め加入期間が10年以上ある夫が死亡したとき、継続して10年以上婚姻関係を結んでいる妻が受け取れます。
『死亡一時金』も第1号被保険者の遺族が対象です。国民年金保険料を一定期間納めていた加入者が、年金受給前に亡くなると遺族が請求できる給付金です。
受け取るには、亡くなった加入者が、第1号被保険者であること・納付期間が36月以上あること・国民年金の給付を受けていないこと、という三つの要件を満たしている必要があります。
どちらのお金も受け取るには請求が必要です。寡婦年金は加入者の死亡翌日から5年、死亡一時金は2年で期限を迎えます。
5.要件を確認して請求漏れがないように注意
厚生年金の加入者が死亡した場合、まずは年金事務所へ死亡届を提出しましょう。年金受給中であれば遺族が、企業で働いている場合には勤め先企業が行います。
その後、未支給年金の請求や遺族厚生年金の手続きを実施します。確定拠出年金を死亡一時金として受け取るための請求も必要です。
加えて、子どもを養育中の配偶者には遺族基礎年金が、条件を満たした妻には寡婦加算が支給されます。条件によって受け取れるお金が違うため、対象となるお金をチェックし、漏れなく請求しましょう。
請求漏れがないよう手続きをするのが難しそうと感じるときには、税理士法人チェスターなど税理士に相談するのもおすすめです。
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