相続時精算課税制度と遺留分の関係
Q 相続時精算課税贈与の対象財産は遺留分侵害額請求の対象になる?
A 受贈者(相続人:子及び代襲相続人である孫ⓐ、相続人以外:ⓐ以外)及び贈与時期によって異なります。
民法改正の施行日である令和元年7月1日後に開始した相続については、遺留分を算定するための財産の計算上、相続人に対する贈与で、かつ、婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としてなされたものについては、原則として相続開始前の10年間に行ったものに限られることになりました。
1.民法(遺留分を算定するための財産の価額(そ及年))の規定
① 相続開始前の1年間に行った贈与(原則)
その価額を遺留分算定の基礎財産に算入します(民1044①前段)。
② 相続人に対する贈与(例外)
相続人に対して、相続開始前10年間に行った、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本としてなされた贈与が対象になります(民1044③)。
したがって、相続人に対する、婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としてなされた贈与は相続開始前10年間に行ったものが遺留分の算定対象となり、それ以外の贈与は相続人及び相続人以外に限らず相続開始前1年間に行ったものが遺留分の算定対象となります。
これを、計算式で表すと次のとおりとなります。
2.相続時精算課税制度の適用を受けた財産
相続時精算課税制度の適用を受けた財産については、特定贈与者の相続開始時に相続財産の価額に相続時精算課税適用財産の贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額)を加算して相続税額を計算します。
相続時精算課税制度適用財産についても、遺留分を算定するための財産を計算する場合、上記1の規定に従って計算します。
① 相続人(子や代襲相続人である孫など)に対する贈与
相続開始前10年間の生計の資本としてなされた贈与について、その価額を遺留分算定の基礎財産に算入します。相続時精算課税制度の基礎控除110万円以下の贈与についても、婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としてなされた贈与は、遺留分を算定するための財産に含めて計算します。
相続開始前10年間を超える贈与については、遺留分算定の基礎財産に算入されません。
② 相続人以外の者(代襲相続人ではない孫など)に対する精算課税贈与(上記①以外の贈与)
相続開始前の1年間にしたものに限って、その価額を遺留分算定の基礎財産に算入します。この場合、相続時精算課税制度の基礎控除110万円以下の贈与についても、遺留分を算定するための財産に含めて計算します。
③ 留意点
上記①及び②の計算は、相続時精算課税制度において、特定贈与者の相続開始時に相続財産の価額に加算する相続時精算課税適用財産の計算に影響を与えません。
また、暦年課税贈与に係る遺留分を算定するための財産の計算についても、上記①及び②と同様の考え方により、基礎控除110万円以下の贈与であっても、相続開始前の1年間に行ったものはすべて遺留分算定の基礎財産に算入、相続人に対する贈与は相続開始前10年間の婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としてなされた贈与について、その価額を遺留分算定の基礎財産に算入します。
○相続時精算課税贈与の課税関係と遺留分算定財産への算入
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