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遺言執行者とは?権限・資格の有無・報酬・選任後のやること手順を解説

遺言執行者は選任すべき?

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために、単独で遺産相続に係る手続きを行う強い権限を持つ人のことです

平成30年7月1日施行の民法改正によって、遺言執行者の権限の範囲が明白化されました。

この記事では、これから遺言書を作成する人のために、以下の内容をまとめました。

  • 遺言執行者になれる人と資格がない人
  • そもそも遺言執行者が必要か否か
  • 遺言執行者の報酬をいつ誰が払うのか

また、遺言執行者に指定された人のために、やること手順や遺言執行者にしかできないこと、代理人に職務を任せられる「復任権」についても解説します。

この記事の目次 [表示]

1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言者(亡くなった人)が書いた遺言書の内容を実行するために、単独で遺産相続に係る手続きなどを行う義務や権限を持つ人のことです

遺言執行者の一般的な読み方は「ゆいごんしっこうしゃ」、法的な読み方は「いごんしっこうしゃ」です。

遺言執行者の他にも「遺言執行人」と呼ばれることもありますが、両者に違いはなく、その義務や権限は全て同じとなります。

1-1.民法改正で遺言執行者の権限の範囲が明白化された

これまで遺言執行者は、「相続人の代理」とされてきました。

しかし遺言書に記載された内容が相続人の利益に反する場合などは、遺言執行者と相続人の間で紛争に発展するという問題もありました。

そこで平成30年7月1日施行の民法改正により、遺言執行者の権限が明白化され、遺言の内容を実現するための強い権限が認められました

▼遺言執行者の権利義務(民法第1012条1項)
遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する
▼遺言執行者の行為の効果(民法第1015条1項)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してしたときは、相続人に対して直接にその効力を生ずる
▼遺言の執行の妨害行為の禁止(民法第1013条1~3項)
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない

この他にも、相続人への通知義務など、遺言執行者に係る様々な民法が改正されています(この記事内で随時ご紹介します)。

1-2.遺言執行者には相続人への通知義務あり

民法改正により、遺言執行者に選任を承諾した場合は、相続人への通知義務があります

この相続人には、遺言書に記載されていない法定相続人や、包括受遺者も含まれますのでご注意ください。

  • 自らが遺言執行者に就任した旨(民法第1006条)
  • 遺言書の内容(民法第1007条)
  • 相続財産目録の作成・交付(民法1011条)

仮に通知義務違反によって相続人に損害が発生すると、損害賠償請求される可能性もありますので、失念しないようご注意ください。

2.遺言執行者を選任する意味と役割

遺言執行者を選任しておけば、遺言執行者が単独で遺産相続の手続きを進めることができるため、利害関係者同士の関係性によって手続きが難航することはありません

相続手続きは相続人の人数が多いほど収集する書類の数も増え、署名捺印を行う書類の数も多くなります。

仮に相続人同士が疎遠であったり、利害関係者のうちの誰か1人が協力的でなかったりすれば、書類を収集する作業も難航してしまいます。

他にも、遺言者に隠し子が含まれていた場合など、利害関係者の中で相続トラブルになる可能性も考えられます。

しかし遺言執行者には、遺言内容を実現させるための強い権限が定められています。

これにより、遺言執行者が単独で相続手続きを行うことが可能となり、相続手続きをスムーズに進めることができます。

2-1.遺言書が無効であれば遺言執行者の権限もなくなる

遺言書が法的に無効であった場合は、遺言執行者には何の義務も権限もありません

遺言書にはいくつか種類がありますが、一般的には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらかを選択されるかと思います。

しかし「自筆証書遺言」は法律で書き方が定められており、書き方を間違えていたり、日付や内容が曖昧であったりすれば、無効になってしまうリスクが高くなります。

「公正遺言証書」であれば法的に無効になるケースはほとんどありませんが、遺言者に判断能力がないと判断されてしまうと、無効になることもあります。

遺言執行者を選任して遺言書を作成しても、無効になってしまっては意味がありません。

遺言書が無効になる事例と無効にならないための対策」にて、遺言書作成時の注意ポイントをご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

3.遺言執行者の選任は絶対に必要か?

遺言書に記載する内容によって、遺言執行者の選任が「絶対に必要な場合」と「あってもなくても良い場合」があります。

実務的には、記載する内容や法律的な問題の有無に関わらず、遺言書で遺言執行者を指定するケースがほとんどですので覚えておきましょう。

3-1.遺言執行者の選任が絶対に必要な場合

遺言執行者の選任が絶対に必要となるのは、遺言書に「特定遺贈」「子の認知(遺言認知)」「相続廃除(遺言廃除)」についての記載をする場合です

これらの手続きは遺言執行者しかできないため、遺言書で遺言執行者を指定しなくてはなりません。

3-1-1.特定遺贈

特定遺贈とは、特定の財産を、法定相続人以外の人に取得させる(遺贈する)ことです

例えば、A不動産を法定相続人以外の人に取得させたい場合は、特定遺贈を選択することとなります。

民法改正により、特定遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされました(民法1012条2項)。

そのため、遺言書に特定遺贈について記載する場合は、遺言執行者の指定が必要となります。

特定遺贈について、詳しくは「包括遺贈と特定遺贈の違いとは?遺贈を放棄する方法・トラブル防止の注意点」をご覧ください。

3-1-2.子の認知(遺言認知)

子の認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)を、父親が「自分の子である」と認める行為のことです。

認知されると「父親の実子(嫡出子)」として認められるため、父親の相続人として遺産を受け取ることが可能になります。

遺言による認知の場合には、遺言執行者が認知届けなどの手続きを行う必要があるため、遺言執行者の指定が必要となります

遺言認知について、詳しくは「遺言で子供を認知することができる「遺言認知」とは?」をご覧ください。

3-1-3.相続廃除(遺言廃除)や取り消し

相続廃除とは、推定相続人(相続する権利を有する人)の中に、遺言者に対して虐待・侮辱・著しい非行などを行った人がいる場合に、遺言者の意思によって、該当する推定相続人に対して遺産を渡さない、つまり、相続人としての権利を奪うことを言います。

相続廃除で相続させたくない相続人の権利をはく奪できる?

遺言によって相続廃除を行う場合には、相続廃除の手続きを家庭裁判所で行う必要があるため、遺言執行者の選任が必要となります

また、生前に相続廃除をしたものの、その効果を取り消したい場合も、遺言執行者の選任が必要となります。

相続廃除や取り消しについて、詳しくは「相続廃除で相続させたくない相続人の権利をはく奪できる?」をご覧ください。

3-2.遺言執行者の選任があってもなくても良い場合

遺言執行者の選任があってもなくても良いのは、遺言書に「包括遺贈」「遺産分割方法の指定」「寄与分の指定」の記載をする場合です

なお、遺言執行者の選任をしない場合は、相続人等が遺言の内容を実行することとなります。

3-2-1.包括遺贈

包括遺贈とは、相続財産の全部または一定の割合を指定して、法定相続人以外の人に遺贈することです

例えば、遺産の半分を法定相続人以外の人に取得させたい場合は、包括遺贈を選択することとなります。

包括遺贈を受けた受遺者は、実質的に法定相続人と同じ権利義務を負うこととなります。

そのため、遺言執行者の指定があってもなくても、問題はありません。

包括遺贈について、詳しくは「包括受遺者とは」をご覧ください。

3-2-2.遺産分割方法の指定

遺産分割の指定とは、「誰」に「何」を「どれだけ相続(遺贈)させるのか」を指定することです

遺産分割を指定する相手は、法定相続人であれば「相続」となり、それ以外の人であれば「遺贈」となります。

ただし、遺留分を保有する相続人がいる場合、遺留分を侵害するような遺産分割を記載してしまうと、その部分に関しては無効となる可能性がありますので注意が必要です。

遺留分侵害額請求について、詳しくは「遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?計算方法・時効・手続きの流れ」をご覧ください。

3-2-3.寄与分の指定

被相続人に対して何かしらの形で奉仕していた相続人がいる場合、その相続人の法定相続分を増やして相続させることができます。

この増やした相続分を「寄与分」といい、この寄与分を受け取ることができる行為を寄与行為といいます。

寄与分と寄与行為~被相続人に特別な貢献をしていると相続分が増える?

寄与分について、詳しくは「寄与分と寄与行為~被相続人に特別な貢献をしていると相続分が増える?」をご覧ください。

4.遺言執行者になれる人と資格がない人

遺言執行者は誰でもなれる訳ではなく、「遺言執行者になれる人」と「資格がない人」がいます。

4-1.遺言執行者になれる人

遺言執行者になれる人は、遺言執行者の資格がない人以外であれば、誰でも構いません

一般的には、相続人や親族の誰か(配偶者や子供など)か、遺言書の作成を依頼した専門家(弁護士や司法書士など)となります。

遺言執行者に就任することは相続人の利害には特に関係しないので、相続人と同一人物であっても法的に問題はありません。

なお、遺言執行者は1人でも良いですし、複数人を選任しても良いですが、遺言者が複数人記載されている場合は、相続人の過半数によって任務の執行を行うこととなります(民法第1006条、第1017条)。

4-2.遺言執行者になる資格がない人

遺言執行者になる資格がない人(なれない人)は、「未成年者」と「破産者」です(民法第1009条)。

未成年者や破産者に該当するかの判定を行うのは、遺言書の作成時ではなく、遺言者の死亡時点となります。

つまり、遺言書の作成時に未成年者であっても、遺言者の死亡時点で成人していれば遺言執行者になれます。

逆に、遺言書の作成時に債務がない人であっても、遺言者の死亡時点で破産者になっていれば、遺言執行者になる資格はありません。

5.遺言執行者を指定する2つの方法【書き方あり】

遺言執行者を指定する方法は、遺言書に遺言執行者に関する記載をしておくのが一般的です。

5-1.遺言書で遺言執行者を指定する方法

遺言書で遺言執行者を指定する場合、遺言書にその旨を記載する必要があります。

以下は、遺言執行者の指名に関する、一般的な遺言書の書き方ですので参考にしてください(必ず専門家に内容や書き方をご相談ください)。

遺言執行者の指定に関する内容は、遺産分割方法の指定などの後(遺言書の最後の条)に記載します。

なお、遺言執行者を複数名にする場合や、遺言執行者が死亡したことを想定して第二順位の遺言執行者を指定する場合や、遺言執行者に報酬を支払う場合(次章を参照)は、その旨についても記載が必要となります。

もちろん、遺言執行者に指定する人には事前に知らせておかないと、とんだサプライズになってしまいますので、予め遺言執行者となる人にお願いしておきましょう。

5-2.第三者によって遺言執行者を指定する方法

遺言書に遺言執行者そのものの指定はせずに、「遺言執行者を決めてもらう第三者」を指定する、ちょっと遠まわりな方法もあります。

なぜこのような遠まわりな方法をとるのか疑問に思われるかもしれませんが、これは「遺言者が遺言を作成している時」と「実際の相続開始時」で状況等が変わっている可能性があるためです(例:遺言執行者の死亡や破産など)。

そのため、遺言執行者を決めてもらう人だけを指定しておき、相続が発生したその時に一番ふさわしい人に、遺言執行者を指定してもらう方法と考えていただければと思います。

6.遺言執行者の報酬はいくら?いつ誰が払うのか

遺言執行者には、報酬が発生することもあります。

ただし誰が選任されるのか、遺産がいくらあるのかによって、遺言執行者の報酬相場は大きく異なります。

なお、遺言執行者への報酬は相続人全員で負担し、遺言執行者が全ての業務を完了した後に支払います。

6-1.遺言執行者に相続人や親族が選任された場合

遺言執行者に相続人や親族が選任された場合、その報酬は遺言書の定めによって決められます。

遺言執行者は大変な相続手続きを単独で行うことになるため、その「手間賃」と考えて頂けると良いでしょう。

一般的な報酬相場は、士業の最低報酬と同等である20~30万円です(0円でも問題ありません)。

遺言内で遺言執行者を指定するのであれば、事前にその旨を本人に伝えると共に、報酬についても予め話し合って併せて記載しておくとトラブルになりにくいでしょう。

6-2.遺言執行者に専門家が選任された場合

遺言執行者を第三者である専門家に依頼する場合は、報酬(手数料)が発生します。

6-2-1.遺言執行者になれる専門家

遺言執行者になれる専門家は、弁護士・司法書士・行政書士などの士業となります。

また、遺言者が生前に信託銀行で遺言信託プランなどを契約している場合は、信託銀行が提携している士業が遺言執行を行います。

6-2-2.遺言執行者を専門家に依頼したときの報酬相場

遺言執行者を専門家に依頼した時の報酬相場は、士業の種類やその事務所によって異なります。

現在は、相続財産の金額に対して報酬を設定している事務所が多いため、報酬相場は「遺産総額の1~3%」と考えて頂くと良いでしょう。

以下は「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」の遺言執行の基本報酬ですので、弁護士に依頼される方は参考にしてください(現在も以下を参考としている事務所が多いです)。

経済的な利益の額弁護士の基本報酬
300万円以下30万円
300万円超~3,000万円以下2%+24万円
3,000万円超~3億円以下1%+54万円
3億円超0.5%+204万円

※特に複雑なケースや特殊な事情がある場合は報酬相場が変動
※実費や裁判手続きに係る弁護士報酬は含まない

弁護士報酬について、詳しくは「遺言執行者を指定する場合」でご紹介しているので、ご参照ください。

7.遺言執行者に指定された人がやること【手順あり】

以下は、遺言執行者に指定された人がやるべき、職務の進め方の手順です。


この章では、遺言執行者に指定された人がやることを、手順に沿ってご紹介します。

遺言執行者になったら何をするの?遺言執行者の業務内容を説明します!」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。

7-1.相続人への通知

遺言執行者に指定された人は、その義務を承諾するか否かを決めます(拒否する方法は後述します)。

承諾する場合は、「自らが遺言執行者に就任した旨」と「遺言の内容」を、相続人へ通知する義務があります(民法第1006条)。

具体的には「就任通知書(就職通知書)」を作成し、「遺言書の写し」と共に相続人と包括受遺者全員に送付することとなります。

7-2.法定相続人を確定

次に、被相続人の戸籍調査を行い、法定相続人を確定させます

これは、遺言書に記載された法定相続人の範囲を把握し、漏れている法定相続人がいないかを確認するためです。

戸籍調査のやり方について、詳しくは「戸籍調査で相続人を確定させる方法・手順をご紹介!」や「相続手続きに必要な戸籍謄本の種類と取得方法を徹底解説!どのような時に必要で有効期限はある?」をご覧ください。

7-3.相続財産の調査

法定相続人の戸籍調査や各種手続きと並行して、被相続人の相続財産の調査を行います

これは遺言者に記載されている財産だけではなく、遺言書作成後に発生した財産を確定させるためです。

相続財産の調査では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、債務や未払い金などのマイナスの財産も調査しなくてはなりません。

相続財産は財産目録に記載する必要があるため、関連する必要書類も全て集めておきましょう。

相続財産の調査のやり方について、詳しくは「相続が発生したら遺産の調査をしましょう!!」をご覧ください。

7-4.相続財産目録を作成・交付

次に、相続財産目録を作成して、相続人や包括受遺者に交付(通知)します


なお、相続人から請求があった場合は、相続人や公証人の立ち合いの元で、相続財産目録を作成する必要があります。

これは民法1011条において義務化されておりますので、失念しないようご注意ください。

相続財産目録の作成方法について、詳しくは「相続財産目録の作成方法|はじめての人向け【Excel書式&記載例付】」をご覧ください。

7-5.遺言の内容を実行

次に、遺言書の内容に沿って、指定の財産を、指定された相続割合や分割方法などで分配します。

具体的な手続き内容は遺言の内容によって様々ですが、以下のような手続きを実行します。

例えば…

  • 預貯金の払戻しや解約
  • 不動産の相続登記
  • 金銭の支払い
  • 相続財産の売却

なお、民法改正により、平成30年7月1日以降に作成された特定財産継承遺言においては、遺言執行者が単独で相続登記を行うことが可能となりました(相続人が行うことも可能)。

特定財産継承遺言とは、「△△不動産は相続人××に相続させる」などと記載された遺言書のことです。

遺産相続の手続きについて、詳しくは「遺産相続(財産相続)の手続きの流れ、よくあるトラブルについて解説」をご覧ください。

7-6.遺言執行の完了報告

遺言に記載された遺言執行者の業務が全て完了したら、延滞なく、その経過と結果を、相続人や包括受遺者に報告しなくてはなりません(民法第1012条3項)。

具体的には、以下の内容を記載した「職務完了報告書」を作成して、送付することとなります。

  • 遺言執行者の職務が完了した旨
  • 遺言執行に係る職務内容
  • 遺言執行中の収支内訳

8.遺言執行者しかできない3つの業務

先述した遺言執行者のやること手順は、一般的な内容をご紹介しました。

しかし遺言書によっては、遺言執行者しかできない業務が記載されていることもあります。

この章では、遺言執行者にしかできないことの中でも、特に重要な3つの業務についてご紹介します。

8-1.特定遺贈の履行

先述した通り、特定遺贈とは遺言書によって「特定の財産」を「指定」して、受遺者(法定相続人以外の人)に遺贈することです。

例えば、遺言書に「不動産○○を受遺者△△に遺贈する」と記載されている場合は、特定遺贈に該当します。

特定遺贈された財産が不動産であれば、遺言執行者が法務局に申請をして相続登記をすることとなります

特定遺贈された財産が預貯金であれば、遺言執行者が払戻しをして特定受遺者に引き渡すか、預金名義を変更しなくてはなりません。

相続登記の申請方法について、詳しくは「相続登記の申請書作成を徹底解説!様式/書き方/綴じ方/作成時の必要書類」をご覧ください。

8-2.遺言認知の届出

遺言書に遺言認知(子供の認知)について記載されていた場合は、遺言執行者への就任から10日以内に、認知の届出をしなくてはなりません

届出先は、遺言者の本籍地・子供の本籍地・遺言執行者の住所地の、いずれかの市区町村役場となります。

遺言認知の手続きについて、詳しくは「遺言で子供を認知することができる「遺言認知」とは?」をご覧ください。

8-3.遺言廃除や相続廃除の取り消しの手続き

遺言書に遺言廃除や相続廃除の取り消しについて記載されていた場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺言執行者が請求をしなくてはなりません

ただし遺言廃除や相続廃除の取り消しが記載されている場合、専門家が遺言執行者に指定されていることがほとんどです。

遺言廃除や相続廃除の取り消しについて、詳しくは「相続廃除で相続させたくない相続人の権利をはく奪できる?」をご覧ください。

9.遺言執行者への就任を拒否する方法(承諾する前)

遺言執行者に指定されても、実際に業務を行うか否かは遺言執行者の自由ですので、遺言執行者への就任を拒否することもできます。

ただし、遺言執行者への就任を拒否する場合は、その旨を延滞なく、法定相続人に伝えなくてはなりません(民法第1006条)。

遺言執行者の指定を拒否する旨を法定相続人に伝える場合、どのような方法で伝えるべきとは定められてはいません。

口頭で伝えることも可能ではありますが、証拠が残るよう、なるべく書面で伝えるのが望ましいです。

9-1.遺言執行者の「復任権」で第三者へ委任も可能

相続人や親族が遺言執行者に指定された場合、「自分には無理だ」と就任の拒否を検討されることもあります。

しかし民法改正により、平成30年7月1日以降に作成された遺言書に記載された遺言執行者には、「復任権」が認められています

民法第1016条(遺言執行者の復任権)
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

つまり、「遺言執行者の任務を遂行するのは無理だ…」と思ったら、第三者(専門家など)を代理人として、その任務を任せることができるのです(遺言書で復任が禁止されていないことが前提)。

なお、平成30年6月31日までに作成された遺言書は、やむを得ない事情がない限りは、第三者に任務を行わせることはできませんのでご注意ください(一部の業務を代理人として依頼することは可能)。

10.遺言執行者を辞任・解任する方法(承諾した後)

遺言執行者への就任を承諾した後は、自由に辞任・解任はできませんので、家庭裁判所への許可を得る必要があります。

この章では、遺言執行者に就任した後で辞任・解任する方法についてご紹介します。

10-1.遺言執行者の意思で辞任する場合

遺言執行者への就任を承諾したものの、その後に辞任する場合には、以下のような「正当な理由」が必要となります。

遺言執行者の意思で辞任する場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所から、許可(遺言執行者辞任許可審判)を得なければなりません(民法第1019条2項)。

10-2.相続人など利害関係者からの申立てによって解任させる場合

遺言執行者としての義務を怠ったときなどの正当な事由があるときは、義務違反として、相続人などの利害関係の申立てによって、遺言執行者を解任させることができます(民法1019条)。

例えば、遺言執行者が任務を行ってくれない場合や、遺言内容の一部しか実施してくれていない場合などが該当します。

本人以外からの申立てにより遺言執行者を解任させる場合にも、家庭裁判所で解任の手続きを行い、審理を受ける必要があります。

遺言執行者の解任手続きは、選任の手続きと同様に、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

11.新たに遺言執行者を選任する方法

以下のようなケースにおいては、遺言執行者がいないこととなります。

  • そもそも遺言執行者が指定されていない
  • 遺言執行者がすでに亡くなった
  • 遺言執行者が破産した
  • 遺言執行者が拒否・辞任した
  • 遺言執行者が解任された

遺言執行者が不要なケースであれば、相続人全員で遺言執行を行うことも可能です。

しかし、特定遺贈・遺言認知・相続廃除など、遺言執行者しかできないことが遺言書に記載されている場合、新たな遺言執行者の就任が必要不可欠です

この場合は、利害関係者(相続人・遺言者の債権者・特定受贈者)が、家庭裁判所に「遺言執行者の選任申立て」をすることにより、新たな遺言執行者を選任してもらうことができます(民法1010条)。

11-1.家庭裁判所へ遺言執行者の選任申立て

新たに遺言執行者を選任する場合は、相続人や遺言者の債権者など利害関係のあるものが、家庭裁判所に「遺言執行者の選任申立て」を請求する必要があります

具体的には、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の選任申立書と共に、次章でご紹介する必要書類を添付して提出することとなります。


【出典:裁判所「遺言執行者の選任の申立書」】

なお、家庭裁判所に申立てを行う際には、新たな遺言執行者の候補者を決めておく必要があります(未成年者や破産者は資格がありません)。

遺言執行者の選任申立てについて、詳しくは裁判所「遺言執行者の選任」をご参照ください。

11-2.選任申立ての必要書類

家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てを行う際、以下の必要書類の提出が求められます。

遺言執行者選任の申立書の様式については、裁判所のホームページからダウンロードできます。

ただし、家庭裁判所によって書式が変わる場合や、上記の他に申立人の身分証明書などの提出を求められる場合もありますので、申立てを行う家庭裁判所に事前に問い合わせを行いましょう。

11-3.選任申立てにかかる費用

家庭裁判所に遺言執行者の申立てを行う際の費用は、収入印紙(800円/遺言1通につき)と、連絡用の郵便切手です。

連絡用の郵便切手の金額については、申立てをする家庭裁判所へ確認をしてください。

11-4.新たな遺言執行者が選任された場合の報酬

家庭裁判所によって新たな遺言執行者が選任された場合には、相続財産などの状況やその他の事情によって報酬が決められます(民法第1018条)。

しかし遺言書に遺言執行者の報酬について記載していた場合は、こちらも判断材料となります。

報酬の基準は裁判所の判断となりますので、裁判所が決定した金額に対して不服申立てをすることはできません。

12.まとめ

遺言執行者は遺言の内容を実現するために、単独で相続手続きを行う義務や権利がある人のことです。

「遺言執行者って本当に必要なの?」と迷う方もいらっしゃいますが、実務的には遺言執行者を選任されることがほとんどですので覚えておきましょう。

遺言執行者を指定する際には、法的に有効な遺言書に、遺言執行者として指名する人の詳細・権利内容・報酬などを細かく記載しておく必要があります。

また、ご自身が遺言執行者に指定されていた場合、やることが沢山ある上に様々な義務が課せられるため、「自分には無理だ」と拒否を検討されることもあるかと思います。

現在は「復任権」が認められているため、該当されるケースであれば、専門家に遺言執行者の代理人をしてもらうことも検討しましょう。

遺言執行者に関して疑問点がある方は、相続業務に特化した専門家に相談されることをおすすめします。

12-1.司法書士法人チェスターへご相談を

司法書士法人チェスターは、相続手続き専門の司法書士事務所です

司法書士法人チェスターでは、公正証書遺言作成サポートはもちろん、遺言執行に指定していただくことも、代理人とさせていただくことも可能です。

また、司法書士法人チェスターは、相続業務に特化したチェスターグループと協力・連携関係にあります。

相続税申告と想定されるケースであれば、チェスターグループに所属する税理士法人チェスターが、相続税対策を見越した最適な遺産分割方法のアドバイスをさせていただくことも可能です(相続税の申告も承ります)。

遺言書の作成や遺言執行者についてご不明点がある方は、まずはお気軽にご相談ください。

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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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