相続した土地の所有権放棄とは?不要な不動産を所有するデメリット
管理しきれない不要な土地は相続放棄できるのでしょうか?不要な不動産を相続したときの対処法について見ていきましょう。活用しきれない不動産を所有し続けるデメリットや、国庫に帰属させる新たな制度についても解説します。
この記事の目次 [表示]
1.不要な不動産を相続した場合
相続で不要な不動産を手に入れた場合には、どのように処分すればよいのでしょうか?不動産を持ち続けるデメリットとともに確認しましょう。
1-1.使わない不動産を持ち続けるデメリット
財産として土地を相続したとしても、遠方にあるといった理由で活用できないケースもあります。不動産を持ち続けていることにデメリットはあるのでしょうか。
まず挙げられるのは『固定資産税』を払い続けなければいけない点です。土地の固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課されます。活用している・していないにかかわらず支払わなければいけません。
また活用していない土地であっても『管理責任』が存在します。保有している土地でトラブルが発生すると、その責任を問われるのです。場合によっては損害賠償を請求される恐れもあります。
1-2.売却を考える
相続しても土地を活用できていないなら『売却』を考えるとよいでしょう。売却方法は大きく2種類に分けられます。不動産会社へ仲介を依頼し個人へ売却する方法と、不動産会社へ売却する方法です。
仲介の方が高値が付きやすいですが、理想の売却先が見つかるまで時間がかかる可能性があります。できるだけ早いタイミングで売却したいなら、値段は低くなりがちですが不動産会社への売却が向いているでしょう。
買い手の需要はさまざまです。人里離れた場所の土地であっても、売り方次第で売却できる可能性があります。
1-3.売却できない不動産はどうする?
中には売却できない不動産もあるでしょう。そのようなときには『賃貸物件』として活用する方法もあります。例えば建物が建っているのなら、自治体が移住者へ空き家を紹介する『空き家バンク』へ登録するのも一例です。
また『寄付』する方法もあります。寄付先として代表的なのは隣地の所有者です。土地が接している相手であれば、土地を活用してもらえるかもしれません。
自治体で寄付を受け入れているケースもあります。条件や必要書類は自治体ごとに異なるため、まずは相談してみるとよいでしょう。
2.不動産の所有権放棄はできる?
土地を売却や寄付によって手放したいと考えていても、スムーズにいかない場合もあります。そのようなとき検討したいのが所有権放棄です。所有権放棄は可能なのでしょうか?新たに作られる制度についても確認します。
2-1.これまで所有権放棄は難しかった
民法により所有権放棄は認められていません。最高裁判所の判例にも所有権放棄を認めたものはなく、現時点では土地に関して入手はできても、それを手放す仕組みが整っていない状況です。
売却や寄付はできますが、それらができない不動産は、価値がないと分かっていながらも持ち続けるしかありません。仕組みが整っていないことにより不要な不動産が放置され、所有者不明になるケースが増えています。
2-2.条件付きで国庫に帰属できる新しい制度
増加する所有者不明の不動産に対処するため、不要な土地を国庫に帰属させる新しい制度作りが進められています。ただし全ての土地が対象となるわけではありません。下記に当てはまる土地は対象外です。
- 建物や管理・処分を阻害する工作物などがある
- 土壌汚染や埋設物がある
- 崖がある
- 権利関係で争っている
- 担保権などが設定されている
- 通路など他人によって使用されている
対象となる土地を国庫へ帰属させられるかは、申請をした後に行われる審査によって決まります。対象の土地であっても必ず引き取ってもらえるとは限らないようです。
2-2-1.負担金等の費用がかかる
加えて国に引き取ってもらうには『負担金』がかかります。負担金の具体的な金額や計算方法などは、今後政令により定められる予定です。
目安として、現時点では固定資産税のおよそ10年分といわれています。あらかじめ費用の準備もしておくとよいでしょう。
3.不要な不動産を相続したくない場合
親の財産に相続したくない不動産が含まれているなら、相続する時点で実施できる対処法を検討するのもよいでしょう。具体的にどのような方法があるのか解説します。
3-1.相続放棄ができる
土地を相続したくないときには『相続放棄』をするとよいでしょう。被相続人と相続人という関係そのものを、当初からなかったことにする手続きです。そのためほかの財産も全て相続できない点には注意しましょう。
ただし相続放棄したからといって、相続財産そのものがなくなるわけではありません。仮に子どもが親の遺産である土地を相続放棄した場合、遺産は次の相続順位にあたる祖父母が相続します。
祖父母がいなければ親のきょうだいが対象です。関係性によっては急に相続権が移り困惑されるケースもあるでしょう。手続きを進める前に相続放棄をすることについて相談しておくと、トラブル防止にもつながりスムーズです。
3-2.誰かしらによる管理は必要
相続放棄すると不要な土地を手放せます。ただしすぐに管理の必要がなくなるわけではありません。相続人が全て相続放棄すると、土地は家庭裁判所によって選出された相続財産管理人の管理下へ移ります。
ただし相続財産管理人がすぐに見つかるとは限りません。たとえ相続放棄後であったとしても、相続財産管理人選出までの期間は、所有する土地として管理する義務がある点に注意しましょう。
4.目的や状況に適した選択を
土地は保有しているだけで固定資産税が課税され、管理義務が発生します。加えて不要な土地の所有権放棄は現行の民法では認められていません。そこで売却や寄付・相続放棄といった方法で手放すのが主流です。
一方で、そうした土地を国庫へ入れる制度も整備が進められています。目的・状況に合わせて適した選択をするとよいでしょう。
相続する際に課税される相続税によっても、扱いが変わってくる可能性があります。豊富な実績のある『税理士法人チェスター』へ相談すると、自分の状況に合った方向性を検討しやすいでしょう。
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