売れない土地の相続で困ったときの対処法とは?
売りたくても売れない土地の相続はトラブルのもとになります。活用して収益が得られないにもかかわらず、管理の手間や固定資産税などの負担が生じるからです。
遺産を相続しない場合は相続を放棄することができますが、売れない土地だけ相続放棄して預貯金を相続することはできません。
この記事では、相続税申告を通じてさまざまな相続事例を見てきた税理士が、売れない土地の相続で困ったときの対処法をご紹介します。売れない土地を相続してお困りの方や、将来売れない土地を相続することになりそうな方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.売れない土地があると相続で困る
故人が持っていた不動産は、売却して相続人どうしで代金を分け合うか、そのまま誰かが相続します。しかし、売れない土地は売却して代金を分け合うことができず、相続したい人がいないと、相続人どうしで押しつけあいになることさえあります。
この章では、売れない土地があると相続時にどういったことで困るのかをご紹介します。
ところで、住む人がいなくなった実家や別荘地など、親が売れない土地を抱えることになったのにはどのような事情があったのでしょうか。考えられる事情としては、おおむね次のようなものがあります。
- バブル期に別荘地を買ったが値下がりしてしまった
- 過疎化で実家の土地の買い手がつかなくなってしまった
- 売れないのはわかっていたが親自身も仕方なく相続した
親も子供に迷惑をかけるつもりはなかったはずですが、時代とともに状況が変わって、売れない土地を抱えることになってしまったのでしょう。
1-1.売れない土地だけ相続放棄することはできない
相続人が遺産を相続しない場合は、家庭裁判所に申し出て相続を放棄することができます。しかし、遺産のうちある特定のものだけを相続放棄することはできません。
つまり、売れない土地を相続したくないからといって、その土地だけ相続放棄することはできません。預貯金など土地以外の財産を相続したいのであれば、相続人のうち誰かが売れない土地を相続しなければなりません。
1-2.相続登記をしないで済ませることもできない
売れない土地だけを相続放棄することができないのであれば、せめて相続登記をしないで済ませようと考える人もいるようですが、それもおすすめできません。
登記の有無にかかわらず、被相続人が死亡した時点で遺産は相続人全員の共有になります。相続登記をしなかったからといって、土地・建物の所有権や管理義務を放棄したことにはなりません。
また、2024年(令和6年)4月1日から、過去に相続したものも含めて相続登記が義務づけられることになりました。土地や建物を相続する場合は、たとえ利用価値が低いものであっても相続登記をしましょう。
1-3.全員が相続放棄しても土地の管理義務は残る
売れない土地以外にこれといった財産がないのであれば、相続人が全員で相続放棄することも一つの対処法となります。
しかし、相続人の全員が相続放棄しても、ただちに土地の管理義務がなくなるわけではありません。相続放棄で相続人がいなくなった場合は、相続財産清算人に引き渡すまでの間、財産を現に占有していた人が引き続き土地を管理しなければなりません。
相続財産清算人は家庭裁判所に申し立てて選任し、職務に対して報酬を支払う必要があります。土地の清算に時間がかかると相続財産清算人の報酬が高額になり、土地を相続して固定資産税を負担するよりも高くつくことがあります。
したがって、売れない土地を相続したくないからといって安易に相続放棄することはおすすめしません。
相続放棄をした後の財産の管理義務については、下記の記事で詳しく解説しています。
相続放棄しても空き家の管理義務は残る!空き家になった実家はどうすればいい?
1-4.売れない土地は寄付も難しい
売れない土地はそもそも需要がなく、寄付しようとしても応じてもらえないことが大半です。
しかし、限られたケースですが、防災、環境保護などの目的で自治体が寄付に応じる場合や、隣の土地の地主に引き取ってもらえる場合があります。土地がある自治体の担当窓口や、隣の土地の地主に話をしてみるとよいかもしれません。
なお、隣の地主など個人に無償で土地を譲渡すると、譲渡された人に贈与税が課税されるため注意が必要です。
2.売れない土地を相続した場合の適切な対処法
遺産に売れない土地があると、その土地とのかかわりを断つことは困難です。しかし、売れない土地を相続したまま放っておくと、子や孫の世代に問題を先送りすることになってしまいます。ご自身が何らかの方法で対処しておくことが大切です。
現実的な方法としては、誰かが一度土地を相続して管理を続けながら、時間をかけて売却や活用の機会を探るしかありません。なお、相続した土地を国に納める制度ができたので、利用を検討してもよいでしょう。
2-1.地道に売却・活用の機会を探る
今すぐに売れない土地であっても、時間をかければ売却や活用の機会が見つかるかもしれません。
テレワークなど新しい働き方の普及で、郊外の土地でも需要が生まれる可能性があります。農地から雑種地への変更や、自宅など価値がある不動産とセットで売り出すといった方法も考えられます。
2-2.相続土地国庫帰属制度の利用を検討する
売れない土地を抱えている場合の新たな対処法として、相続した土地を国に納めることができる「相続土地国庫帰属制度」ができました。2023年(令和5年)4月27日から施行されています。
土地を相続したにもかかわらず管理や登記を怠ると、次のような弊害があらわになります。
- 家屋の崩壊、草木の繁茂、動物の侵入などで環境が悪化する。
- 権利関係の調整に手間取って再開発や災害復興の妨げになる。
管理されていない土地から生じる弊害を少なくするため、相続した土地を一定の条件のもとで国の管理のもとに置くことになりました。
土地を国に納めるためには、土壌汚染や埋設物、建造物がなく、担保になっていないことなどが条件となります。また、土地一筆あたり14,000円の審査手数料がかかるほか、向こう10年間に必要とされる標準的な管理費用を負担金として納める必要があります。
負担金の具体的な金額は下記のとおりです。
- 宅地:面積にかかわらず20万円(一部の市街地では面積に応じて算定。(例)200㎡、約80万円)
- 田、畑:面積にかかわらず20万円(一部の市街地、農用地区域等では面積に応じて算定。(例)1,000㎡、約110万円)
- 森林:面積に応じて算定((例)3,000㎡、約30万円)
- その他(雑種地、原野等):面積にかかわらず20万円
詳しくは、法務省ウェブサイトをご覧ください。
相続土地国庫帰属制度について
3.売れない土地の相続でお困りの方は相続に詳しい不動産会社に相談を
売れない土地の相続でお困りの方は、不動産と相続問題に詳しい不動産会社にご相談ください。
株式会社チェスターは、相続税専門の税理士法人チェスターのグループ会社です。相続不動産を数多く取り扱ってきた実績をもとに、お客様一人ひとりの事例に合った対処法をご提案します。初回の面談は無料で承りますのでお気軽にお問い合わせください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
相続対策も相続税申告もチェスターにおまかせ。
「相続税の納税額が大きくなりそう」・「将来相続することになる配偶者や子どもたちが困ることが出てきたらどうしよう」という不安な思いを抱えていませんか?
相続専門の税理士法人だからこそできる相続税の対策があります。
そしてすでに相続が起きてしまい、何から始めていいか分からない方もどうぞご安心ください。
様々な状況をご納得いく形で提案してきた相続のプロフェッショナル集団がお客様にとっての最善策をご提案致します。
DVDとガイドブックの無料資料請求はこちらへ
各種サービスをチェック!
\ご相談をされたい方はこちら!/
今まで見たページ(最大5件)
関連性が高い記事
カテゴリから他の記事を探す
相続法務編