死後離婚をするのは簡単?後悔しないために知っておきたい注意点

死後離婚の手続きは、届けを出すだけのため誰でも簡単にできます。相続や遺族年金の受け取りに影響しないのもポイントです。ただし注意点もあります。特に子どもがいる場合や、配偶者の戸籍から抜けたい場合の注意点などを中心に見ていきましょう。
この記事の目次
1.死後離婚とは

日本の法律では、配偶者の死後に離婚はできません。法律上は死後離婚の制度は存在せず、一般的に呼ばれているのは造語です。具体的には、配偶者の家族や親戚などとの姻族関係を終わらせることを指します。どのように行う手続きなのか解説します。
1-1.姻族関係終了届を提出すること
配偶者が亡くなった後、配偶者の血縁者と親戚でいたくないと考えている人もいるでしょう。そのような人に役立つのが『姻族関係終了届』です。
姻族関係を終わらせるのは、離婚か生存配偶者による終了の意思表示のみによると、民法で定められています。姻族関係終了の意思表示は、姻族関係終了届によって可能です。
ただし関係性が終了するのは配偶者の親族に限定されます。亡くなった配偶者との婚姻関係は、戸籍上に記載されたまま変わりません。
1-2.申請内容と提出方法
姻族関係終了届で申請する内容は下記の通りです。署名は配偶者の親族との姻族関係を終了させる本人が行いましょう。
- 姻族関係を終了する人の氏名・生年月日・住所・本籍
- 死亡した配偶者の氏名・本籍・筆頭者の氏名
- 届出人の署名押印
用紙に記載した上で、印鑑を持参し市区町村役場の窓口もしくは郵送で手続きします。本籍地への提出であれば、ほかに書類は不要ですが、本籍地以外の自治体であれば戸籍全部事項証明書も必要です。
届出書を提出するのは本人でなくても構いません。本人の意思を伝える使者でも提出できます。使者は代理人のように意思決定は行わないため、委任状は不要です。
2.死後離婚をする理由は?

手軽にできるとはいっても、何も問題がなければ、わざわざ親族関係を終わらせようとはしないでしょう。姻族関係終了届を提出するにはそれなりの理由があります。代表的な理由を見ていきましょう。
2-1.姻族の扶養義務を負いたくない
民法によると、姻族関係の相手に対し扶養義務は基本的にありません。扶養義務を第一に負うのは、直系血族である子どもや兄弟姉妹のためです。
ただし特別な事情があると認められれば、亡くなった配偶者の親族に対し、扶養義務を負う可能性はあります。この可能性をゼロにしたいと考えている場合には、死後離婚が有効です。
これまでも『生活費を入れてほしい』『年金だけでは足りないから援助してもらいたい』など、お金の無心をされたことがあるなら、あらかじめ関係を断つことで、今後予想される迷惑行為を避けやすくなります。
2-2.お墓の管理をしたくない
夫が先に亡くなった場合、お墓を引き継ぐのは一般的に妻です。配偶者やその親族のお墓を管理し、法要を開かなければいけません。地域や家柄によっては負担が大きなケースもあるでしょう。
特に配偶者や親族との関係があまり良好でない場合、『管理したくない』『同じお墓に入りたくない』と感じている人もいるはずです。そもそも知らない先祖だらけのお墓に思い入れがない人もいるでしょう。
死後離婚すればお墓を管理する必要はなくなります。もちろん同じお墓に入る必要もありません。全て配偶者の親族に任せられる方法です。
3.死後離婚の注意点

元から配偶者の親族とあまり良い関係を築けていない場合、扶養義務を負いたくない、お墓を管理したくないという気持ちから、死後離婚を選ぶケースもあるでしょう。
姻族関係を終わらせれば、法的に責任を負う必要はありません。ただし注意点を押さえておかなければいけません。
3-1.伝えていなくてもいずれ気付かれる
姻族関係終了届に、配偶者の親族に記入してもらわなければいけない箇所はありません。そのため自分1人で用紙に記入し提出できます。また役所から手続きについて通知されるものでもありません。
しかし何かのタイミングで戸籍を確認されると、死後離婚の手続きをしたと露見する恐れがあるでしょう。戸籍に『姻族関係終了』と記載されるからです。
この記載が死後離婚を意味すると知っていれば、手続きしたと知られてしまいます。無断で関係を断たれたと知ったら、配偶者の親族としては面白くないはずです。何らかのトラブルに発展するかもしれません。
あらかじめ連絡を取り手続きについて知らせていれば、トラブルを避けられる可能性があります。
3-2.この先ずっと配偶者の親族には頼れなくなる
死後離婚をすると元の関係には戻れなくなってしまいます。扶養義務を負う可能性をゼロにできる代わりに、自分も頼れる相手を失うことだと理解した上で手続きしましょう。
例えば幼い子どもの面倒を見てもらったり、教育資金の援助を受けたりといったこともできません。子どもがいない人は、自分の両親が亡くなり兄弟姉妹がいないなら、天涯孤独になる可能性もあります。
いざというときにどうするかを手続きの前に考えておくと、頼れる人がいない状況に戸惑うことなく対処しやすいでしょう。
3-3.子どもと配偶者の親族の血族関係は続く
自分と配偶者の親族の姻族関係は、死後離婚で終わらせられます。しかし子どもと配偶者の親族の『血族関係』は、この先もずっと続きます。
例えば配偶者の親が亡くなると、あなたの子どもは法定相続人です。財産を受け取る権利が発生しますが、死後離婚の影響によりトラブルに発展するかもしれません。
また血族関係があることから、子どもが配偶者の親族の介護を任される可能性もあります。子どもに負担を掛けてしまうかもしれない点に要注意です。
子どもの人生にも影響を及ぼすため、事前に相談しておくとよいでしょう。
3-4.配偶者の戸籍から抜けるには手続きが必要
配偶者の親族との関係は、姻族関係終了届で終わりにできます。しかし戸籍自体は変わらないため、配偶者の戸籍に入っている状態です。
戸籍からも抜けたいなら、結婚前の戸籍に戻る『復氏届』か、新しい戸籍を作る『分籍届』をしましょう。両親が存命なら好きな方を選べますが、亡くなり除籍されているなら分籍をします。
復氏届や分籍届で戸籍から抜けられるのは自分のみです。未成年の子どもも、自分と同じ戸籍と氏にするには、家庭裁判所に『子の氏の変更許可申立書』を提出します。家庭裁判所の許可が出たら、役所で子どもを自分の戸籍へ入籍させれば完了です。
『復氏届』について詳細を知りたい場合には下記もご覧ください。
4.死後離婚で遺産相続や年金はどうなる?

死後離婚をするときに気になるのは、遺産相続や遺族年金など受け取れるお金ではないでしょうか?姻族関係の終了による影響として、どのようなものがあるのか確認しましょう。相続放棄との関係についても解説します。
4-1.遺産相続や遺族年金には影響がない
民法によると、配偶者が亡くなったときに婚姻関係があれば、法定相続人として扱われます。死後離婚後もそれは変わりません。そのため配偶者の遺産を変わらず相続可能です。
また遺族年金の受給資格を失う事由は下記の5種類のみで、死後離婚は含まれません。
- 死亡
- 再婚
- 直系血族や直系姻族以外の養子になったとき
- 養子縁組の解消で死亡した被保険者との親族関係が終了したとき
- 30歳未満で子どもがおらず遺族厚生年金のみを受給している妻が受給権発生から5年経過したとき
そのため姻族関係終了届を提出しても、これまで通り遺族年金を受け取れます。
4-2.死後離婚と相続放棄は別のもの
亡くなった配偶者に借金など負の財産があるときには、『相続放棄』をしたいと考えているかもしれません。注意しておきたいのは、相続放棄と死後離婚の手続きは別のものという点です。
死後離婚をしても法定相続人である点は変わりません。相続放棄を検討しているなら、相続開始から『3カ月』以内に家庭裁判所へ申述しなければいけない決まりです。期限を過ぎると、放棄したくてもできなくなってしまいます。
5.子どもがいる場合は特に慎重な判断を

死後離婚は一般的な呼び名で、正式には姻族関係終了届といいます。書類に必要事項を記入し役所へ提出すれば、死亡した配偶者の親族との姻族関係を終了できる手続きです。
簡単にできる手続きですが、今後のことを考えて慎重に決断しましょう。特に子どもがいると、自分が避けた負担を子どもが負う可能性もあります。
ただし遺産相続や遺族年金の受け取りには何ら影響がありません。死後離婚の法的効果について詳しく知りたいなら『CST法律事務所』に、相続により発生する相続税について詳しく知りたいなら『税理士法人チェスター』へ問い合わせましょう。
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