相続放棄とは?手続きの流れ・必要書類・期限・費用を徹底ガイド

「親の借金が発覚したけど相続放棄したほうが良い?」
「相続放棄の手続きは自分でできる?かかる費用は?」
この記事をご覧のみなさんは、このようにお悩みではないでしょうか。
相続放棄とは、被相続人の遺産を相続する権利を放棄する法的手続きのことで、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内」に、家庭裁判所に申述をしなくてはなりません。
相続放棄が受理されると、借金・未払金などのマイナスの財産はもちろん、土地・建物・預貯金などのプラスの財産も相続できなくなりますので、必要に応じて専門家に相談しながら相続財産の調査を行うことが重要です。
本記事では、相続放棄の手続きの流れ・申述期限・費用はもちろん、認められない事例や相続放棄後の影響まで、相続専門のチェスターがわかりやすく解説します。
<この記事のポイント>
- 相続放棄を選択すべきか否かを判断できる
- 相続放棄の手続きの流れ・期限・かかる費用がわかる
- 相続放棄しても受け取れる財産や認められない事例がわかる
この記事の目次 [表示]
- 1 1.相続放棄とは「財産」も「借金」も引き継がない相続方法のこと
- 2 2.相続放棄を選択する前に徹底的な相続財産の調査を
- 3 3.相続放棄の手続きの流れ!必要書類の準備から受理まで【自分でできる】
- 4 4.相続放棄の期限は「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内(熟慮期間)
- 5 5.相続放棄にかかる費用一覧|弁護士や司法書士の報酬相場も比較
- 6 6.相続放棄が認められない事例もある!却下を避けるポイント
- 7 7.相続放棄しても死亡保険金・死亡退職金・遺族年金は受け取れる
- 8 8.相続放棄した後の影響も知っておこう
- 9 9.相続放棄に関してよくある質問Q&A
- 10 10.相続放棄後の手続き・財産調査のご相談は専門家へ
1.相続放棄とは「財産」も「借金」も引き継がない相続方法のこと
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の遺産について、相続する権利を放棄する制度のことです。
家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されると、法的には「はじめから相続人でなかった」として扱われます(民法第939条)。

相続放棄を選択すると、借金(負債)などのマイナスの財産を引き継がなくてよくなるものの、預貯金・不動産(土地・家)などのプラスの財産もすべて相続できなくなります。
相続放棄のデメリットを理解したうえで、定められた期限までに慎重に検討することが重要です。
参考:相続放棄の4つのデメリット・5つの注意点を専門家が解説
1-1.相続放棄・限定承認・単純承認の違い
相続方法は単純承認・限定承認・相続放棄の3種類があり、それぞれの違いは以下の通りです。

相続放棄か限定承認を選択する場合は、「自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)」に家庭裁判所で申述手続きをする必要があります(民法第915条、938条)。
単純承認は特別な手続きが不要で、通常の相続手続きを行うだけで成立します(民法第921条)。
限定承認は、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を弁済する方法です。共同相続人がいる場合は全員で申述する必要があり、手続きも複雑なため、実務で選ばれることは多くありません。
財産と借金の状況によって、「相続放棄」か「単純承認」を選択するのが一般的です。
参考:相続の限定承認とは?メリット・デメリットや期限・手続きを解説
2.相続放棄を選択する前に徹底的な相続財産の調査を
相続放棄は受理されると、原則として撤回できないため、申述手続きをする前に、徹底的な相続財産の調査を行いましょう。
プラスの財産とマイナスの財産の全体像を把握しないと、相続放棄をすべきか否かも判断できません。

相続財産の調査に時間がかかり、熟慮期間の3ヶ月に間に合わない場合は、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てることができます(4章で解説します)。
なお、調査の過程で財産を処分したり使ったりすると、単純承認とみなされるおそれがあるため、注意しましょう(6章で解説します)。
参考:【相続財産調査とは】誰がするの?かかる費用や調査方法をプロが解説
2-1.相続放棄を検討すべきケース|債務超過の場合
相続放棄を検討すべき典型例は、債務超過(借金が財産を上回る状態)のときです。親の借金が財産より多い場合などが当てはまります。
例えば、被相続人が2,000万円の預金と1億円の借金を残して亡くなった場合は、債務超過の状態です。
単純承認すると、相続人は財産を上回る8,000万円の借金を負担することになりますが、相続放棄をすればこの債務を相続せずに済みます。

この他にも、被相続人が誰かの借金の保証人になっている場合や、訴訟を起こされている場合、相続トラブルに巻き込まれたくない場合も相続放棄が検討されます。
2-2.相続放棄しないほうがよいケース|資産超過の場合
相続放棄を避けた方がよい典型的なケースは、資産超過(プラスの財産が借金などのマイナスの財産を上回る状態)です(個別判断が必須です)。
例えば、被相続人が1億円の財産と2,000万円の借金を残して亡くなった場合は、資産超過の状態です。
単純承認を選べば、借金2,000万円を引き継ぐ代わりに、1億円の財産も相続でき、差し引き8,000万円のプラスになります。
ただし、資産超過であっても必ずしも単純承認が最善とは限りません。
以下のような事情がある場合は、プラスの財産が多くても相続放棄や限定承認が検討されることがあります。
- 処分が難しい不動産や管理負担が大きい財産がある(※)
- 他の相続人との間で激しいトラブルや紛争が生じている
- 被相続人に隠れた保証債務や未知の負債が潜んでいる懸念がある
※農地・山林・空き家・負動産など
「資産のほうが多そうだから」と安易に判断せず、財産の質やリスクも含めて総合的に判断することが重要です。
判断に迷う場合は、事前に弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
参考:単純承認とは?相続放棄・限定承認との違いをわかりやすく解説
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相続放棄するかどうかは、相続財産の全体像を正しく把握しないと判断できません。
判断ミスを防ぐためにも、弁護士や司法書士などの専門家に、相続財産の調査を依頼されることをおすすめします。
3.相続放棄の手続きの流れ!必要書類の準備から受理まで【自分でできる】
相続放棄の手続きは、以下の流れで進みます。
相続放棄の手続きの流れ
- ①相続放棄の必要書類を集める
- ②相続放棄申述書を作成する
- ③家庭裁判所に相続放棄の申述をする
- ④相続放棄照会書に回答する
- ⑤相続放棄申述受理通知書が届く
- ⑥相続放棄申述受理証明書を取得する(必要なケースのみ)
相続放棄の申述手続きは、必要書類を揃えて家庭裁判所に提出して書類をやり取りするだけですので、基本的にはご自分だけで進められます。
ただし、期限が迫っている場合や、財産調査が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家への依頼も検討しましょう。
参考:【相続放棄の手続き】費用・必要書類・自分でやる方法も解説
3-1.STEP①相続放棄の必要書類を集める
相続放棄の申述には、以下の書類を揃えて提出する必要があります。まずは全員共通の書類から準備しましょう。
全員共通の必要書類
- 相続放棄申述書(申述人1人につき1通)
- 被相続人の住民票除票(または戸籍附票)
- 相続放棄をする人の戸籍謄本
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(金額は家庭裁判所によって異なります)
これらの必要書類は比較的早く揃えられますが、続柄によって必要な戸籍の範囲が大きく変わる点に注意が必要です。
なお、申述先の家庭裁判所によって必要書類が異なることがありますので、事前に家庭裁判所の案内で確認しましょう。
3-1-1.兄弟姉妹は準備する戸籍の種類が増える
相続放棄の申述では、被相続人の戸籍謄本も提出しなくてはなりませんが、続柄に応じて提出すべき戸籍の範囲が異なります。
| 戸籍の範囲 | |
|---|---|
| 配偶者 |
|
| 子(第一順位) |
|
| 父母(第二順位) |
|
| 兄弟姉妹(第三順位) |
|
配偶者・子は比較的少ない書類で済みますが、父母・兄弟姉妹は戸籍の範囲が広く、収集に時間がかかります。
また、孫・甥姪が代襲するケースや、被相続人の直系尊属に死亡している人がいる場合は追加書類が必要になるため、提出先の家庭裁判所に問い合わせをしましょう。
参考:相続放棄は兄弟姉妹まとめてできる!手続き・費用・必要書類を解説
3-2.STEP②相続放棄申述書を作成する
次に、裁判所の様式に沿って相続放棄申述書を作成します。具体的な書き方は以下の通りですので、参考にしてください。
引用:裁判所「記入例1 申述人が成人の場合」(※筆者が枠を追加)
相続放棄申述書は、裁判所「相続の放棄の申述書(成人)」や「相続の放棄の申述書(未成年者)」からダウンロードできます。
具体的な書き方は以下ページで解説しているので参考にしてください。
参考:相続放棄申述書の書き方をわかりやすく解説【記入例付き】
3-3.STEP③家庭裁判所に相続放棄の申述をする
相続放棄の必要書類が揃い次第、家庭裁判所に相続放棄の申述をします。
具体的には、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(申述人の住所地ではない)に、STEP①②の必要書類を提出することとなります。
なお、提出方法は「裁判所へ持参」もしくは「追跡可能な郵送(レターパックなど)」のどちらでもかまいません。必要書類が揃っていれば、申述自体は1回の提出で完了します。
3-4.STEP④相続放棄照会書(回答書)に回答する
相続放棄の申述から1~2週間後を目安として、申述が本人の意思によるものか、どのような事情で放棄を選択したのかを確認するため、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が送付されることがあります。

家庭裁判所から照会書が届いた場合は、同封されている回答書に事実を記載して返送します。
なお、回答期限が設けられていますので、照会書に記載された期限に従いましょう。
3-5.STEP⑤相続放棄申述受理通知書が届く
相続放棄の申述が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。

なお、相続放棄申述受理通知書は再発行されないため、紛失しないよう厳重に保管してください。
3-6.STEP⑥相続放棄申述受理証明書を取得する(必要なケースのみ)
相続放棄申述受理通知書は再発行されないため、債権者・金融機関・不動産会社などに相続放棄を証明する必要がある場合は、相続放棄申述受理証明書を取得しましょう。
ただし、すべてのケースにおいて相続放棄申述受理証明書を取得する必要はなく、債権者等から提出を求められた場合などに取得することとなります。

申請先は申述先の家庭裁判所で、手数料は1通150円です。
参考:相続放棄申述受理証明書とは│いつ必要?取得方法・通知書との違いも解説
4.相続放棄の期限は「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内(熟慮期間)
相続放棄の申述期限は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内」です。
この期間を「熟慮期間」と呼び、相続放棄をするかどうかを判断するための猶予期間として設けられています。

この「3ヶ月以内」というのは、家庭裁判所へ相続放棄を申述する(必要書類を提出する)までの期限です。
相続放棄申述受理通知書の受け取りまでを、3ヶ月以内に終える必要はありません。
参考:相続放棄の期間は【3ヶ月】いつから数える?期限後の対処法も解説
4-1.熟慮期間の伸長は期限内に申立てが必要
相続財産の調査が終わらないなど、3ヶ月以内に相続方法を選択できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」を行うことで、熟慮期間を延長できます。
ただし、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間内)に、伸長申立てを行う必要があります。
伸長申立ては、期限を過ぎてしまうと利用できないため、相続財産の調査が長引きそうな場合は早めに検討しましょう。
参考:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
4-2.相続放棄の期限を過ぎても「特段の事情」があれば認められる場合も
相続放棄の申述期限を過ぎた場合、原則として相続放棄は認められません。
ただし、相続財産が全く存在しないと信じ、そのように信じたことに相当な理由があるなど、特別な事情が認められる場合には、例外的に熟慮期間の起算点が後ろにずれることがあります。
単に借金を知らなかったというだけで、必ず期限後の相続放棄が認められるわけではありません。
特段の事情(例)
- 被相続人の借金の存在を本当に知らなかった
- 遺品整理で初めて多額の負債が判明した
- 相続人であることを後から知った(代襲相続など)
- 長期間連絡が途絶えていた親族の死亡を後から知った
相続放棄の期限を過ぎたことに特段の事情がある場合、相続放棄申述書のみならず、事情を説明する書面の提出を求められることがあります。
専門性が高く、記載内容の不備で却下される可能性もあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
5.相続放棄にかかる費用一覧|弁護士や司法書士の報酬相場も比較
相続放棄にかかる費用は、「実費」と「専門家の報酬」の2つに分かれます。
まずは、相続放棄の申述の際に必要となる、最低限の費用(実費)を確認しましょう。
| 費用(実費) | |
|---|---|
| 収入印紙 | 800円 |
| 予納郵便切手 | 裁判所によって金額が異なる |
| 戸籍謄本などの取得手数料 | 数千円 |
郵便切手の額や組合せは裁判所によって異なりますので、申述先の家庭裁判所に事前に確認することをおすすめします。
参考:相続放棄の相談先はどこ?弁護士・司法書士・無料相談窓口の違いを解説
5-1.司法書士に依頼した場合の費用相場(3~5万円)
相続放棄の手続きを司法書士に依頼すべきなのは、相続放棄申述書などの書類作成を確実に進めたい方です。
司法書士に依頼する場合は、申述書の作成手数料として3~5万円程度の報酬が発生します(難易度により変動)。
さらに、相続財産調査や戸籍収集代行なども依頼する場合は、別途、追加費用が発生するのが一般的です。
5-2.弁護士に依頼した場合の費用相場(10万円程度)
相続放棄の手続きを弁護士に依頼すべきなのは、債権者対応や複雑な事案の一括処理を依頼したい方です。
弁護士に依頼する場合は、弁護士費用として10万円程度の報酬が発生します(難易度により変動)。
さらに、相続財産調査や戸籍収集代行などを依頼する場合や、債権者との交渉も依頼する場合は事案に応じて追加費用が発生します。
参考:遺産相続・遺産分割の弁護士費用の相場を解説|誰が払う?安くできる?
6.相続放棄が認められない事例もある!却下を避けるポイント
裁判所「令和7年司法統計年報(3家事編)」によると、相続放棄の申述総数は新たに32万3,524件あり、既済32万1,435件のうち却下は379件(約0.12%)でした。
つまり、相続放棄が認められない事例は、ごく一部に限られるということです。
しかし、期限(3ヶ月)を過ぎた場合や書類の不備を放置した場合のほか、以下のような「単純承認(相続を承認した)」とみなされる行為をすると、相続放棄が受理されなくなるおそれがあります(民法第921条)。
単純承認とみなされる行為(例)
- 預貯金の引き出し・解約・消費
- 不動産や車の売却・名義変更
- 高額な形見分け
- 遺産からの債務の弁済
※処分・消費などの態様で判断されます
葬儀費用の支払いは、「社会通念上相当な範囲」であれば単純承認にあたらないとされていますが、判断が分かれる場合もあるため、不安なときは専門家に相談しましょう。
また、相続放棄が受理された後でも、遺産を隠したり私的に消費したりすると、単純承認とみなされるおそれがありますのでご注意ください。
参考:相続放棄が受理されないケース│単純承認とみなされるNG行為と対策
6-1.相続放棄の手続き中に携帯電話やアパートを解約しても大丈夫?
相続放棄の手続きや検討中に、被相続人が契約していた携帯電話やアパートの解約を迷う人は多くいます。
しかし、解約手続きを独断で進めることには、非常に大きなリスクが伴います。
契約の解除権限の有無・解約に伴う違約金や日割り家賃の精算方法、敷金の返戻、室内の残置物(動産)の処分などによって、法的な「遺産の処分(単純承認)」とみなされ、相続放棄が認められなくなるリスクがあるためです。
特に以下のような行為は、単純承認と判断されるリスクが高いため注意が必要です。
注意が必要なケース
- 賃貸の敷金や解約返戻金、過払い金を受け取る(遺産の領得・処分)
- 被相続人の預貯金(遺産)から未払い料金や解約違約金を支払う(債務の弁済)
- アパート内の家具や家電(残置物)を処分・売却する(遺産の処分)
「解約自体は単なる契約の終了だから問題ない」と自己判断して手続きを行ってしまうと、取り返しのつかない事態になりかねません。
解約通知を出す前に、必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談し、安全な手順を確認してから進めるようにしましょう。
7.相続放棄しても死亡保険金・死亡退職金・遺族年金は受け取れる
相続放棄をしても、原則として死亡保険金・死亡退職金・遺族年金は受け取ることができます。
この理由は、これらは被相続人の相続財産ではなく、法的には「受取人固有の財産」として扱われるためです。

例えば、被相続人が5,000万円の借金を残して死亡したものの、死亡保険金2,000万円が支払われたとします。
相続放棄をすれば、借金を引き継ぐことはありませんが、2,000万円の死亡保険金を受け取ることは可能です。
参考:相続放棄しても生命保険(死亡保険金)は受け取れる!例外や注意点も解説
7-1.みなし相続財産として相続税の課税対象になる可能性あり
死亡保険金や死亡退職金などは被相続人の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡を事由に支払われる金銭ですので、相続税法では「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります(遺族年金は非課税)。
相続放棄をしても死亡保険金や死亡退職金を受け取れる場合がありますが、税金の取扱いには注意が必要です。
死亡保険金は、被相続人が実際に保険料を負担し、別の人が受け取る場合には、原則として相続税の課税対象になります。一方、保険料の実際の負担者と受取人などの関係によっては、所得税や贈与税の対象となる場合もあります。

なお、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を計算するときは、相続放棄した人も法定相続人の数に含めます。
ただし、相続放棄をした人は、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使うことはできません。
相続放棄は法務と税務で取扱いに違いがありますので、混同されないようご注意ください。
参考:相続放棄した場合の相続税の計算方法│基礎控除・生命保険の非課税枠も解説
8.相続放棄した後の影響も知っておこう
相続放棄が受理されても、すべての手続きや責任が終わるわけではありません。
相続放棄後に残る義務、次に相続する人への影響、相続人全員が放棄した場合の扱いを、あらかじめ知っておきましょう。
8-1.相続放棄しても現に占有している財産の管理義務は残る
相続放棄をしても、被相続人の財産を「現に占有している人」は、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでその財産を保存する義務が残ります(民法第940条)。
この「現に占有している」かどうかは、単に鍵を保管しているかといった形式的な理由だけではなく、その財産を事実上支配・管理していたかどうか(事実上の支配の有無)によって総合的に判断されます。
保存義務を負う可能性が高いケース(例)
- 被相続人と同居しておりそのまま居宅や遺品を管理・支配している場合
- 被相続人の所有物を自らの管理下・支配下に置いて扱っている場合
保存義務を負う人は、自分の財産と同じ程度の注意をもって(自己の財産におけるのと同一の注意をもって)、財産を保存しなければなりません。
一方で、遠方に住んでいるなど現に財産を占有していない人は、保存義務を負うことはありません。
8-2.相続放棄をすると代襲相続は発生しない
相続放棄をした人は「はじめから相続人でなかった」ものとして扱われるため、その人の子(孫)が代襲相続することはありません。
相続放棄をした人の相続権は同順位の相続人に移転し、同順位の相続人全員が相続放棄をした場合は、民法で定められた次順位の相続人へ移ります(配偶者に順位はありません)。

繰り上がった次順位の人の熟慮期間は、「自分が相続人になったと知った日」から数えます。
同順位の相続人全員が放棄すると、次順位の人が相続人となり、借金を引き継ぐ可能性があります。ただし、次順位の人も相続放棄を選択できます。
親族間のトラブルを避けるためにも、相続放棄したことをあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
参考:相続放棄すると代襲相続は起きない?3世代相続やケース別事例・注意点を解説
8-3.親族みんなが相続放棄をするとどうなるのか
法定相続人全員が相続放棄をした場合も、放棄した人に借金の返済義務はありません。
債権者などの申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人(旧:相続財産管理人)」を選任し、清算人のもとで相続財産が整理されます。

相続財産清算人の選任には予納金が必要で、遺産がほとんどない場合は、申立てが行われないことも多くあります。
参考:全員が相続放棄したらどうなる?借金や管理義務をわかりやすく解説
9.相続放棄に関してよくある質問Q&A
相続放棄をめぐっては、手続きにかかる期間や、遺産分割協議、生前の意思表示、遺留分放棄との違いなど、さまざまな疑問を持つ人が多くいます。
この章では、特によくある4つの疑問をQ&A形式でまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
9-1.Q1.相続放棄の手続きにかかる期間はどのくらい?
相続放棄の申述から受理までにかかる期間は約1ヶ月、書類の準備から数えると1~2ヶ月ほどみておくとよいでしょう(あくまで目安です)。
内訳の目安は、第1週が書類の準備、第2~3週が申述と照会書の回答、第4~5週が受理です。
戸籍の数が多い場合や照会書の返送が遅れた場合は、さらに日数がかかります。
9-2.Q2.遺産分割協議で「相続しない」と言えば相続放棄になる?
遺産分割協議書に「相続しない」という意思を示しても、家庭裁判所で相続放棄が受理されていないため、相続放棄は成立していません。
債権者にも通用せず、法定相続分に応じて借金の返済を求められるおそれがあります。
借金を引き継ぎたくない場合は、遺産分割協議に応じる前に、家庭裁判所での相続放棄を検討しましょう。
9-3.Q3.相続放棄は生前にできる?
相続放棄は相続開始後に家庭裁判所へ申述する手続きですので、生前に口頭や書面で約束しても法的な効力はありません。
相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)に、正式に相続放棄の申述手続きをする必要があります。
親の借金が心配な場合は、生前に借金も含めた財産目録を作成してもらい、状況を把握しておくと安心です。
参考:財産目録とは│無料テンプレート・記載例付きで書き方を解説!
9-4.Q4.遺留分を放棄すれば、相続放棄したことになる?
遺留分を放棄しても、相続放棄をしたことにはなりません。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分で、放棄できるのは、その取り分を請求する権利であるためです(民法第1042条)。
遺留分を放棄しても法定相続人のままなので、相続放棄をしなければ借金も引き継ぎます。
相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所での申述手続きが必要です。
参考:遺留分放棄とは?相続放棄との違いやメリット、手続きの流れを解説
10.相続放棄後の手続き・財産調査のご相談は専門家へ
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、受理されると原則として撤回できません。
後悔しないためには、相続放棄するかどうかを決める前に、相続財産の全体像を調べておくことが大切です。
相続放棄の期限が迫っているときは、まず手続き面を担う弁護士や司法書士に相談しましょう。
相続財産調査に時間がかかるほど、判断が遅れてしまうため、早めに専門家へ依頼することをおすすめします。
参考:相続の相談はどこにする?8つの無料相談窓口と専門家の選び方
10-1.チェスターグループにご相談を
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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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