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在日韓国人・台湾人の相続で必要な身分関係書類とは?取得方法・注意点を解説

在日韓国人・台湾人の方が日本で亡くなった場合、日本の法律ではなく、本国の法律に従って遺産相続が行われるのが原則です。

しかし、日本国内に相続財産がある場合、当然ながら日本国内で相続手続き(相続登記や相続税申告など)をしなくてはなりません。

日本の相続手続きでは、被相続人と相続人の身分関係を証明するために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の提出を求められます。

しかし、被相続人が在日韓国人・台湾人であった場合は、日本の戸籍謄本を準備できません。

本国で代わりとなる身分関係証明書を準備し、さらに日本語に翻訳したり認証を受けたりしなくてはなりませんので注意が必要です。

1.在日韓国人・台湾人が係る相続の基本的な考え方

在日韓国人や在日台湾人の方が日本で亡くなった場合、原則として韓国や台湾の法律に基づいて遺産相続をします

この理由は、日本は「相続統一主義」を採用しており、法の適用に関する通則法第36条において「相続は、被相続人の本国法による」と定められているためです。

ただし、在日韓国人・台湾人の被相続人が、遺言書に「相続は日本法に従う」などと明記していた場合は、在日韓国人・台湾人であっても、日本の民法に基づいて相続を行うこととなります。

資産相続の法律の違い

被相続人が在日韓国人・台湾人である場合、日本国内に財産を有していることが多いです

つまり、遺産分割などは被相続人の本国である韓国や台湾の法律に従って行われるものの、日本国内の財産に係る相続手続きは、日本で行わなくてはなりません。

1-1.日本国内の相続手続きでは身分関係を証明する書類が必要

日本国内で相続手続きをする場合、被相続人と相続人の身分関係(相続関係)を証明する必要があります

例えば、被相続人が日本国籍であれば、「出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)」の提出が必須です。

出生から死亡までの連続した戸籍謄本

しかし、被相続人が在日韓国籍・台湾籍などの外国籍の場合、日本の戸籍謄本を準備できないため、代替となる「身分関係証明書」を準備しなくてはなりません(帰化していた場合も同様)。

国によって取得する書類の種類が異なりますし、「公証翻訳」や「在外公館の認証」が求められる場合もあるため注意が必要です。

相続人が外国籍である場合は、「外国籍の相続人がいる時の手続き・相続税・注意点について解説」もあわせてご覧ください。

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2.在日韓国人の相続手続きで必要な身分関係書類

在日韓国人が被相続人である場合、日本の相続手続きにおいて被相続人と相続人の身分関係を証明するためには、以下の書類を準備するのが一般的です。

在日韓国人の相続手続

上記の書類の取得先は、「韓国の本(本籍地)の役所」もしくは「駐日本国大韓民国大使館・領事館」です。

大使館・領事館での申請方法は、訪問申請・郵便申請・代理申請の3種類があり、それぞれ提出を求められる身分証明書などの種類が異なりますのでご注意ください。

なお、婚姻関係証明書・入養関係証明書・親養子入養関係証明書が必要になるケースもあります。

詳細は、駐日本国大韓民国大使館「家族関係など書類発給」をご覧ください。

2-1.家族関係証明書(가족관계증명서)

家族関係証明書(가족관계증명서)には、本人とその家族(父母・養父母・配偶者・子)の基本情報が記載されています。

基本情報とは、登録基準地・氏名・性別・本(本籍地)・出生年月日・住民登録番号のことです。

なお、兄弟姉妹の基本情報は記載されていませんので、関係性を証明するためには、父母の家族関係証明書を準備する必要があります。

2-2.基本証明書(기본증명서)

基本証明書(기본증명서)には、本人の基本情報のみならず、本人の出生・死亡・改名・国籍の喪失や取得などの人的事項などが記載されています。

2-3.除籍謄本(제적등본)

除籍謄本(제적등본)には、2007年12月31日以前の身分事項が記載されています

韓国では民法改正によって戸籍制度が廃止され、2008年から新しい家族関係登録制度が始まりました。

新しい家族関係登録制度では、個人単位で家族関係登録簿が作成され、身分関係に係る事項が個別に記録されるようになっています。

そのため、2007年12月31日までの身分事項を証明するためには、除籍謄本を取得しなくてはなりません。

3.在日台湾人の相続手続きで必要な身分関係書類

在日台湾人が被相続人である場合、日本の相続手続きにおいて被相続人と相続人の身分関係を証明するためには、台湾戸籍謄本(臺灣戶籍謄本)を取得します

在日台湾人の相続手続き

台湾には日本と同じ戸籍制度がありますので、被相続人の出生から死亡までの記載がある台湾の戸籍を請求することとなります。

すべて中国語から日本語への翻訳と、翻訳者の署名(または公証)が必要となります。

3-1.台湾戸籍謄本の取得方法

台湾の戸籍除籍謄本(戸籍全部事項証明書)の取得先は、台湾の役所(戸政事務所)です。

日本にある台北駐日経済文化代表処では取得できませんので、以下のいずれかの方法で取得することとなります。

台湾戸籍謄本の取得方法
①自ら台湾に行って取得する
②台湾にいる親戚等に代理で取得してもらう
③専門家に依頼して取得してもらう

②の場合、日本の台北駐日経済文化代表処で戸籍請求の委任状を取得して、台湾にいる親戚に郵送をした上で、台湾戸籍謄本の取得を依頼しなくてはなりません。

台湾戸籍謄本の取得方法は非常に複雑ですので、③専門家への依頼がおすすめです。

3-2.台湾の戸籍謄本は三段階認証が必要

台湾の役所(戸政事務所)で発行された戸籍証明書は、原則として以下のような「三段階の認証」が必要となります。

三段階の認証とは
①台湾の公証人による認証
②台湾の外交部による認証
③日本の台北駐日経済文化代表処による認証

現在、相続登記の申請手続きにおいては、台湾の戸籍証明書に3段階の認証が不要とされるケースも多いようです。

しかし、3段階認証が求められる場合もありますので、必ず専門家に確認した上で書類の準備を行いましょう。

4.在日韓国人・台湾人の身分関係書類と翻訳・認証に関する注意点

在日韓国人や台湾人が被相続人である場合、実際に相続手続で提出するまでには、以下の流れを理解しなくてはなりません。

  1. 身分関係を証明する書類を取得
  2. 日本語への翻訳
  3. 公証翻訳や在外公館の認証(不要な場合もあります)
  4. 日本国内での相続手続で提出

外国語で作成された必要書類を、日本の金融機関や法務局に提出して相続手続をする際は、日本語の翻訳が必要です。

そして、翻訳文が正しいことを証明するために、公証翻訳や在外公館の認証を求められることもあります

期限が定められている相続手続きもあるため、なるべく早い段階で専門家に相談して、必要書類を収集することが重要です。

4-1.翻訳文には翻訳者の署名が必要

日本語への翻訳は特に資格は必要ありませんので、誰でも身分関係証明書を日本語に翻訳できます

ご自分で翻訳されても良いですし、相続人や親族に翻訳を頼んでも構いません。

ただし、翻訳文には、翻訳者の署名・押印が必要です。

4-2.「公証翻訳」や「在外公館の認証」を求められることも

日本の相続手続きで提出する、台湾や韓国の身分関係書類は、在外公館の認証が必要となることがあります

在外公館の認証とは、在外公館(日本にある大使館・領事館)に持参して、書類が本物であることを証明する手続きのことです。

なお、韓国はハーグ条約締結国ですので、領事認証を省略し、発行国である韓国でアポスティーユを付けることとなります。

また、相続手続きや書類の提出先によっては、公証翻訳を求められることもあります

公証翻訳とは、外国語を翻訳した文章について、公証役場で公証人の認証を受ける手続きのことです。

取扱いが非常に複雑となりますので、事前に書類の提出先に詳細を確認し、翻訳を依頼する会社や専門家に相談されることをおすすめします。

5.在日韓国人・台湾人が係る相続手続きでよくある質問(FAQ)

在日韓国人・台湾人が係る相続手続きにおいて、よくある質問をまとめたので参考にしてください。

5-1.必要書類は日本語訳だけでよい?翻訳証明書は必要?

日本語への翻訳は誰が行っても良いため、翻訳証明書が絶対に必要ではありませんが、翻訳証明があった方がスムーズではあります

翻訳証明書とは、外国語で作成された書類の翻訳文が、正確であることを証明する書類のことです。

日本語への翻訳を翻訳会社に依頼すれば、翻訳証明書が発行されるケースがほとんどです。

5-2.旧韓国籍・台湾籍で日本に帰化した場合は?

旧韓国籍・台湾籍で日本に帰化された方が被相続人となる場合、一般的な日本の相続手続きが行われます。

ただし、本国と日本の両方の身分証明書類を収集する必要があります。

例えば、旧韓国籍で日本に帰化した人の場合、日本の戸籍謄本のみならず、帰化前の家族関係を確認するため、韓国時代の身分関係書類が必要となります。

5-3.遺産分割協議書も外国語で作る必要がある?

在日韓国人・台湾人の方が被相続人であり、自国と日本の両方に財産がある場合、遺産分割協議書は日本語と外国語の併記が望ましいです

韓国語や中国語のみで作成しても良いのですが、日本国内での相続手続きで提出する場合は、日本語への翻訳が必要となります。

逆に、遺産分割協議書を日本語だけで書いてしまうと、海外にある財産の手続をする際に、韓国語や中国語への翻訳が求められます。

外国語で作成するか日本語で作成するかは、被相続人の財産内容や相続人がどの言語を利用するのかなどで見極めるのも良いでしょう。

5-4.戸籍や本籍が失われている場合の対処法は?

在日韓国人・台湾人の場合、本国に婚姻や子の出生の届出をしていないなどの理由で、韓国や台湾の戸籍や本籍が失われていることがあります。

こうなってしまうと、相続手続きをするために書類の請求をしたくても、身分証明書類の取り寄せができなくなってしまいます。

このような場合の対処法として、宣誓供述書や、公文書と上申書などを用いることとなります

宣誓供述書とは、相続人に相違ないことを宣誓し、在日領事館や公証人の認証を得た書類のことです。

さらに、過去の家族関係や住所の情報の補足資料として、法務省出入国管理庁に「外国人登録原票に係る開示請求」を行い補足資料として使用する場合もあります。

「外国人登録原票」は、外国人登録に関する法改正があった平成24年7月9日以前に外国人が居住する市区町村で管理していた外国人の個人情報ですが、現在では外国人も日本人と同様に住民票を登録する制度になり、外国人登録原票はありません。

古い「外国人登録原票」は法務省出入国管理庁が保管しているため、平成24年以前の個人情報が必要な場合に請求します。

手続きが非常に複雑となりますので、国際相続に強い司法書士や弁護士に相談されることをおすすめします。

6.在日韓国人・台湾人の相続手続きをスムーズに進めるには

在日韓国人や台湾人の方の相続手続きの場合、本国の身分関係書類を取得した上で、日本語への翻訳や認証などが求められます

まずは日本で必要な相続手続きの期限を調べ、取り寄せるべき身分関係書類を確認しましょう。

そして、その書類を取り寄せる期間のみならず、日本語への翻訳や認証にかかる時間も考慮しなくてはなりません。

書類不備や翻訳ミスなどのトラブルが発生するリスクもありますので、国際相続に強い専門家に相談をするのが最適です。

6-1.国際相続に強い専門家に早めに相談を

在日韓国人や台湾人の相続手続きは、国際相続に強い専門家に相談をしましょう

国際相続に強い専門家であれば、必要な相続手続きの代行のみならず、身分証明書類の取得代行を依頼することもできます。

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7.まとめ

在日韓国人・台湾人の相続手続きでは、日本の戸籍謄本の代わりとなる、身分関係証明書を準備しなくてはなりません。

しかし、国によって準備する書類の種類や取得方法が異なりますし、翻訳ルールにも注意が必要です。

身分関係証明書は、日本の相続登記や相続税申告で必須となる書類です。

正確な書類を準備するためにも、国際相続に強い専門家に相談されることをおすすめします。

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