銀行口座が凍結される!?相続時に名義変更が必要な理由と方法
入出金や振込み、公共料金の引き落としなどで利用している銀行口座は、私たちの生活に欠かせません。しかし一定の事情が生じた場合には、銀行口座の名義変更の手続きを行わなければ口座が機能しなくなるなど、重大な支障をきたす可能性があります。今回は、銀行口座の名義変更が必要なケースとそろえるべき書類についてご説明します。
この記事の目次 [表示]
1.銀行口座の名義変更が必要となるのはどんなケース?
銀行口座の名義変更の手続きが必要なケースには、主に2つあります。
ケース1:口座名義人の氏名変更
まず1つ目は、結婚・離婚・養子縁組などの事情によって、口座名義人の氏名に変更が生じたケースです。たとえば、結婚して口座名義人の姓が変わったときなどが当てはまります。この場合、手続きをしていなければすぐに対象の口座が使えなくなる、というわけではありません。
しかし、旧姓名義のままになっている口座に結婚後の姓で誰かが振り込みをしようとしたら、入金エラーになってしまいます。なぜなら、口座名義人と異なる姓であるため、銀行側が同一人物かどうかを判断することができないからです。また、クレジットカードを作るときにも弊害が起きるおそれがあります。引き落としとして旧姓名義のままの銀行口座を指定すると、契約者と口座の名前が一致しません。そのことが原因となり、クレジットカードの審査に通らない可能性が出てきてしまうのです。こういったトラブルが起きないようにするためにも、氏名が変更したときにはできるだけ早めに名義変更の手続きを行いましょう。
ケース2:相続が発生した場合
銀行口座の名義変更手続きが必要なケースの2つ目は、口座名義人が亡くなり、相続が発生したケースです。この場合、入出金や口座引き落としなどのあらゆる取引が一切できなくなってしまいます。
口座名義人が亡くなって相続が開始されたと分かった時点で、銀行はその口座を凍結してしまうからです。
なぜ、凍結してしまうのでしょうか。それは、銀行が相続人同士のトラブルに巻き込まれるのを防ぐための自衛手段です。口座名義人が亡くなると、口座に貯めてあった預金は相続人に受け継がれます。しかし、貯金を受け継ぐのが誰かはっきりしないうちに取引を進めてしまうと、トラブルが起きたときに銀行の責任を問われるかもしれません。
最悪の場合、相続人から損害賠償の請求を受けてしまう可能性もあるでしょう。そういったことを防ぐために、被相続人の口座を凍結してしまうのです。相続人は、凍結された口座の貯金を使うことはできません。凍結を解除するためには、相続人として確定されたことを証明する書類などを銀行に提出して、手続きを行う必要があります。
2.口座名義人の氏名変更でそろえるべき書類と注意点
結婚などによって口座名義人の氏名に変更が生じた場合、どんな書類が必要となり、どのあたりに注意すべきでしょうか。
(1)必要書類
まず対象口座の通帳・証書、キャッシュカードが必要です。届出印は、旧姓のものと新しく使用する新姓のもの、両方を準備しましょう。
それから本人確認書類として、新しい氏名が記載された運転免許証、保険証、パスポートなどの身分証明書が必要となります。どの身分証明書が該当するかは、通帳を開設している銀行に直接ご確認ください。
本人確認書類は、基本的にコピーではなく原本を提示する必要があります。
印鑑証明書など有効期限がないものは、発行後3カ月あるいは6カ月以内のものを提出するよう求められることがほとんどです。有効期限があるものは、期限が過ぎたものは認められません。
なお、上記は一般的に必要となる書類です。銀行によっては、別途の書類が必要となる場合もあります。実際に手続きを行うことになったら、通帳を開設している銀行へご確認ください。
仕事などで都合がつかず、銀行の営業時間内に名義変更手続きへ行けない人もいるでしょう。
その場合、代理人として家族が窓口で手続きを行っても、受け付けてくれる銀行がほとんどです。その際には代理人自身の本人確認書類と、代理人宛ての委任状が必要となりますので忘れずに持参してください。
名義変更手続きを郵送で受け付けてくれる銀行もあれば、窓口でしか受け付けていない銀行もあります。前もって確認しておきましょう。名義変更するときに住所も一緒に変更するケースも多いですが、その際には住所変更の届出も銀行に提出しなければなりません。
(2)注意点
口座名義人の氏名変更の場合、取引金融機関で他の普通口座以外の取引が有る場合には、必要書類が増える可能性があります。特に投資信託等の取引がある場合、マイナンバーの確認が出来る書類と新しいお名前を証明できる本人確認証が必要となります。
3.相続時における銀行口座の名義変更でそろえるべき書類
では、口座名義人が亡くなって相続が開始した場合はどんな手続きをすればよいのでしょうか。
この場合は、単に名義を変更するのではありません。厳密に言うと、亡くなった被相続人の銀行口座をいったん解約し、そこにあった預金残高を相続人の口座へと移す手続きになります。
この手続きは、遺言書がある場合と遺言書がない場合の2つに分けられます。
(1)遺言書がある場合
遺言書がある場合には、遺言書とともにそれぞれの銀行が事前に用意している預金名義の書換依頼書が必要です。
ほかには、亡くなった口座名義人の預金通帳・証書、亡くなった口座名義人の戸籍謄本、遺言執行者と受遺者の印鑑証明書、遺言執行者と受遺者の実印、届出印も必要になります。
戸籍謄本については、亡くなった名義人の死亡日が記載してあれば基本的に大丈夫です。
印鑑証明については、たいてい発行後6カ月以内のものが有効とされています。受遺者以外の相続人についての戸籍謄本や印鑑証明書は、提出を求められないのが通常です。
ただし、遺言書で遺言執行者が選任されていない場合には、遺言執行者選任審判書が必要となります。
(2)遺言書がない場合
一方、遺言状がない場合には、亡くなった口座名義人の預金通帳と証書、亡くなった口座名義人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、預金の払い戻しを受ける相続人の実印と届出印を銀行に提出する必要があります。
遺産分割協議がなされた場合には、遺産分割協議書も合わせて提出してください。亡くなった口座名義人の戸籍謄本については、「出生(または満15歳程度の時期)から死亡時までの一連の戸籍、除籍、改製原戸籍」が必要です。
また、相続人全員分の証明書類が求められますので、遺言がある場合とない場合とでは、名義変更のためにそろえる種類の内容はかなり違ってきます。遺言がある場合より遺言がない場合の方が、そろえる書類の量もたくさん増えるのが一般的です。
自分自身の相続対策としては、残された家族の負担を少しでも減らすために、遺言書は事前にきちんと準備しておく方が良いでしょう。
(3)相続における名義変更の注意点
被相続人の取引があった銀行に対して、残高証明書の発行の申請を行います。
この際、発行に伴う手数料が発生します。また、ゆうちょ銀行の口座の場合には「相続確認表」を提出する必要があります。このように、金融機関によっては提出する書類等が異なる可能性があります。事前に取引金融機関に問い合わせておくようにしましょう。
4.法人の銀行口座の名義変更でそろえるべき書類
ここまでは、個人の結婚などで姓が変わったり、口座名義人が亡くなって相続が開始したりして、名義変更が必要となるケースについて解説しました。
ここからは、法人名義の銀行口座の名義変更について解説します。法人名義の口座でも、代表者や商号が変わると名義変更の手続きが必要となる場合もあります。
その場合に必要となるのは、まず対象口座の通帳・証書、キャッシュカードです。通帳の届出印は、旧商号のものと新しく使用する新商号のものが必要です。それから法人の実印、法人の印鑑証明書、 法人の登記簿謄本をそろえましょう。さらに、 銀行に行く人の本人確認書類も忘れずに持参してください。本人確認書類は、有効期限内の原本を提出するのが基本です。印鑑証明書及び登記簿謄本については、発行後3カ月または6カ月以内のものを提出するよう求められます。この点においては、個人の名義変更と変わりありません。
ただ、会社の代表者以外の人が銀行の窓口まで出向いて手続きを行う場合、注意が必要なことがあります。それは、法人に在籍していることを確認できる書類の提示を求められるケースがあるということです。手続きに行く際には、社員証や名刺を必ず携帯しておきましょう。
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