預貯金相続の手続きや必要書類とは?覚えておきたい6つのポイント

銀行預金など預貯金はほとんどすべての人が持っているものであり、遺産の相続では、必ず預貯金の相続手続きをしなければなりません。
ここでは、預貯金相続の手続きや必要書類について解説します。
亡くなった人の預貯金口座は凍結されて使えなくなるため、速やかに手続きすることをおすすめします。
動画でも解説していますので、こちらもご覧ください。
この記事の目次
1.預貯金の相続とは

預貯金の相続とは、亡くなった被相続人の預貯金を相続人が引き継ぐための手続きのことです。
具体的には、口座の残高を払い戻して相続人が受け取るか、口座の名義を相続人に変更します。
預貯金の相続手続きは、預け入れをしている金融機関ごとに届け出ます。
複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれの金融機関に届け出をする必要があります。
1-1.名義人(被相続人)が死亡したら預貯金口座は凍結されてしまう
預貯金の名義人が死亡したときは、その口座は凍結され、入金・出金ができなくなります。
ただし、金融機関が名義人の死亡をすぐに知ることはできません。役所に死亡届を出しても、金融機関には連絡されません。
通常は、遺族が金融機関で残高証明書を請求するか、相続手続きを始めたタイミングで口座が凍結されます。まれに金融機関の職員が新聞や町内の掲示で訃報を知って、口座を凍結することもあるようです。
1-2.名義人(被相続人)が死亡した預貯金口座の注意点
亡くなった人の預貯金口座が凍結されると、預金の引き出しができなくなるほか、振込による入金や公共料金などの引き落としもできなくなります。
必要に応じて、入金や引き落としの口座変更手続きをしておくようにしましょう。
2.遺産分割協議がまとまらなければ「相続できない」理由とは
一度預貯金口座が凍結されると、相続人が正規の相続手続きをするまでは解除されません。
相続手続きをするためには、相続人どうしで遺産分割協議をして、その預金口座を誰が相続するか話がまとまっていなければなりません。
(遺言書がある場合は、遺産分割協議をする必要はありません。遺言書を提出すれば相続手続きができます。)
2-1.トラブルを回避するために口座が凍結される
遺産分割協議がまとまって相続手続きをするまで金融機関が口座を凍結することには、次のような理由があります。
- 死亡した時点の預貯金の額を確定させるため
- 誰かが勝手に預貯金を引き出すことを防ぐため
預貯金の相続では、相続人の一人が自分の持分だけを先に解約して引き出したいなどと金融機関に申し出る場合があります。
預貯金口座の凍結には、相続人どうしのトラブルを回避するほか、金融機関自身がトラブルに巻き込まれないようにする自衛手段という意味もあります。
2-2.凍結前の預貯金は家族であっても引き出さない
名義人が死亡すれば預貯金口座は凍結されますが、実際に口座が凍結されるまでには時間がかかります。口座が凍結される前であれば、ATMで預金を引き出すことが可能です。
しかし、遺産分割協議がまとまる前に故人の預金を引き出すことはおすすめできません。
勝手に遺産を横領したと疑われて、相続人どうしのトラブルに発展する恐れがあります。
医療費や葬儀費用の支払いのために引き出しが必要になることがあるかもしれませんが、その場合も、相続人全員に連絡して了承を得ておくようにしましょう。
なお、一度預金を引き出すと、遺産を相続する意思があるとみなされて、相続放棄ができなくなる場合があるため注意が必要です。
2-3.預貯金の払戻し制度で一部引き出し可能に
令和元年(2019年)7月1日から「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が始まり、遺産分割ができていなくても、預貯金の一部を引き出すことができるようになりました。
医療費や葬儀費用の支払いで引き出しが必要になるときのために、新しくできた制度です。
この制度では、金融機関の窓口に申し出て、一つの口座・明細ごとに次の金額まで預貯金を引き出すことができます。
- 相続開始時の預貯金残高(口座・明細ごと)×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
ただし、一つの金融機関からの引き出しは150万円が上限となります。
相続預金の払戻し制度について詳しいことは、下記の記事を参照してください。
(参考)相続法改正 ~預貯金の払戻し制度
3.預貯金相続(名義変更)の手続きの流れ
亡くなった被相続人の預貯金を相続する手続きは、おおむね次のような流れで進められます。
- 死亡の届け出
- 必要書類の準備
- 書類の提出
- 預貯金の払戻しなど
まずは、預貯金口座の名義人が亡くなったことを、銀行など金融機関に連絡します。
金融機関によっては、相続に関する窓口を本店などに一本化している場合があります。支店の窓口を訪ねる前に、電話やホームページなどで問い合わせ先を確認することをおすすめします。
届け出をすると、金融機関から必要書類について案内があります。
なお、この時点で預貯金口座は凍結されることになるので注意が必要です。
その後、金融機関からの案内にしたがって、必要書類を準備します。
(一般的な相続手続きの必要書類については、次の章でご紹介します。)
必要書類が準備できれば、金融機関に提出します。
提出後、金融機関で書類が確認できれば、預貯金の払戻しなどが行われます。
3-1.預貯金相続にかかる期間は?
預貯金の相続手続きにかかる期間は、1週間~数週間を見込んでおくとよいでしょう。
金融機関は、提出された書類をもとに被相続人と相続人の関係を確認するため、一定の時間が必要になります。
なお、提出した書類に不備があると、書類の差し戻しや再提出に時間がかかり、払い戻しまでの期間が長くなってしまいます。
4.預貯金相続(名義変更)手続きの必要書類
預貯金の相続手続きでは、通帳やキャッシュカードを返却するほか、戸籍謄本などの書類を提出する必要があります。
手続きに必要な書類は金融機関によって異なるほか、遺言書や遺産分割協議書の有無によっても違いがあります。
この章では、遺言書の有無などの状況ごとに、預貯金の相続手続きに必要な書類をご紹介します。
主な必要書類は下記のとおりです。

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場で取得できます。
亡くなった被相続人と相続人の関係を確認するため、被相続人については出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要です。生前に本籍地の市区町村が変わっている場合は、過去の本籍地でも取得する必要があります。
印鑑証明書は、現住所の市区町村役場で取得します。印鑑登録ができていない場合は、先に印鑑登録をします。
戸籍謄本や印鑑証明書は、原本を提出する必要がありますが、多くの場合は、金融機関でコピーを取って原本を返してもらえます。他の金融機関で手続きをするために書類を返してほしい場合は、念のため書類を提出するときにその旨を伝えておくとよいでしょう。
預金名義変更依頼書は、金融機関の指定の用紙に必要事項を記入します。金融機関に死亡を届け出れば郵送してもらえるほか、オンラインで依頼書をダウンロードできる場合もあります。
4-1.遺言書がある場合
遺言書がある場合の必要書類は、以下のとおりです。
- 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
- 通帳・キャッシュカード
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書(検認が必要な遺言書の場合)
- 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
- 預金を相続する人(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の印鑑証明書
- 遺言執行者の選任審判書謄本(家庭裁判所で遺言執行者が選任された場合)
遺言書は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。(公正証書遺言と法務局で保管されていた自筆証書遺言は除きます。)
検認を受けていることを確認するため、検認調書または検認済証明書の提出が求められます。
遺言執行者がいる場合は、遺言執行者に関する書類も必要になります。
4-2.遺言書がない場合
遺言書がない場合の必要書類は、遺産分割協議書があるかどうかによって異なります。
遺言書がない場合は遺産分割協議を行い、その記録として遺産分割協議書を作成しますが、預貯金の相続手続きでは遺産分割協議書が必要でない場合もあります。
(参考)遺産分割協議書は必要?不要?必要な場合の作成手順も解説
4-2-1.遺産分割協議書がある場合
遺産分割協議書がある場合の必要書類は、以下のとおりです。
- 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
- 通帳・キャッシュカード
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印があるもの)
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)、除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
4-2-2.遺産分割協議書がない場合
遺言書・遺産分割協議書がない場合の必要書類は、以下のとおりです。
- 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
- 通帳・キャッシュカード
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)、除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
4-3.家庭裁判所の調停調書・審判書がある場合
相続人どうしで話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停・審判で遺産分割が決まった場合は、次の書類を提出します。
- 預金名義変更依頼書(金融機関指定の書類)
- 通帳・キャッシュカード
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(審判書に確定表示がない場合は審判確定証明書も必要)
- 預金を相続する人の印鑑証明書
5.預貯金相続(名義変更)の代行を依頼するには

預貯金の相続手続きは、知識や経験がない人にとっては面倒で煩わしいものです。
必要書類をそろえるだけでも一苦労で、何度も金融機関に出向いたり書類を郵送したりして、手間も時間もかかります。
自身で預貯金の相続手続きをすることが難しい場合は、専門家に代行してもらうことができます。
預貯金の相続手続きだけを依頼する場合は、弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。
また、相続税の申告で税理士に相談している場合は、提携している弁護士や司法書士に取り次いでもらうことができます。
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6.預貯金相続(名義変更)の期日とリスク
預貯金の相続手続きは、できるだけ早くすることをおすすめします。
しかし、預貯金以外の財産の相続手続きや相続税の申告を優先すると、預貯金の手続きがなかなかできないこともあるでしょう。
最後に、預貯金の相続手続きはいつまでにすればよいか、手続きをしなかった場合にどのようなリスクがあるかをご紹介します。
(参考)相続手続きの期限について|各期限を把握して遺産相続を円滑に
6-1.預貯金の相続手続きはいつまでに必要か
預貯金の相続手続きそのものには、特に期限はありません。
ただし、相続税の納税義務がある場合は、被相続人の死亡から10か月以内に申告・納付をしなければなりません。
相続税の納税のために資金が必要であれば、納付期限に間に合うように預貯金の相続手続きをする必要があります。
6-2.預貯金の相続手続きをしなかったらどうなるか
預貯金の相続手続きをしなくても、凍結される以外に不利益はありません。国や金融機関の資金として吸収されることもありません。
ただし、金融機関に連絡をしないで凍結を免れたとしても、10年間入出金がない口座は「休眠口座」になる可能性があります。
休眠口座になっても預金を引き出すことはできますが、窓口で手続きが必要になります。
そのほか、金融機関によっては10年より短い期間で取引停止になる場合や、口座管理手数料が生じるケースもあります。
亡くなった人の預貯金は、早めに相続の手続きをすることをおすすめします。
7.相続人の間できちんと話し合いの上、手続きを
預貯金の名義人が死亡した場合は、入出金が止められて口座が凍結されます。これは、預金が勝手に引き出されてトラブルになることを防ぐためのものです。
制度の改正で、遺産分割前でも預金を引き出すことができるようになりましたが、金額には上限があります。
預貯金の相続手続きは、相続人どうしで話し合ったうえで早めに済ませることをおすすめします。
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