故人の固定資産税は誰が代わりに払う?支払名義変更や滞納した場合についても解説
不動産の所有者には固定資産税が課税されます。所有者が亡くなった場合は、誰かが代わりに払う必要があります。不動産価格が高いと固定資産税も高額になるので、誰が負担するかはっきりさせておくことが大切です。
この記事では、相続財産にかかる固定資産税、つまり故人が支払うべきであった固定資産税を、誰が代わりに払うかについて解説します。
また、固定資産税の支払名義を変更する方法や、滞納した場合のペナルティについてもご紹介します。
この記事の目次 [表示]
1.固定資産税の対象となる財産
固定資産税は、土地や家屋など固定資産に課税される地方税(市町村税)です。土地と家屋のほか、償却資産にも課税されます。
1-1.土地
固定資産税が課税される土地は、宅地のほか、田、畑、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野、雑種地などです。
1-2.家屋
固定資産税が課税される家屋は、住宅のほか、店舗、工場(発電所・変電所を含む)、倉庫などです。
1-3.償却資産
償却資産とは、土地、家屋以外で事業のために使用する資産のことです。具体的には、構築物(広告塔、フェンスなど)、機械・装置、工具・器具・備品(パソコンを含む)、航空機、船舶などです。
なお、自動車や軽自動車には自動車税や軽自動車税が課税されるため、固定資産税は課税されません。
2.固定資産税の計算方法とは
固定資産税は、市町村が税額を計算して納税者に通知する方式で課税されます。そのため、不動産や償却資産の所有者が自分で固定資産税を計算する必要はありません。
しかし、前もって固定資産税の金額を知りたい方や、計算の仕組みを知っておきたい方のために、固定資産税の計算方法をご紹介します。
(参考)固定資産税の評価ミス頻発!課税ミスを発見し、払い過ぎ防止を
2-1.固定資産の価額に税率をかける
固定資産税は、対象となる固定資産の価額に税率をかけて計算します。
固定資産税の税額=固定資産の課税標準額×税率1.4%
固定資産の課税標準額は、原則として固定資産税評価額を使用します。
固定資産税評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価・決定され、固定資産課税台帳に登録されます。
固定資産税の税率は多くの自治体で1.4%ですが、異なる税率を定める自治体もあります。
2-2.固定資産税の免税点
同じ人が同じ市区町村で所有する固定資産の課税標準額の合計が以下の金額に満たない場合は、固定資産税は課税されません。
- 土地:30万円
- 家屋:20万円
- 償却資産:150万円
2-3.住宅用の土地や家屋に対する特例措置
住宅用の土地や家屋については、固定資産税の負担を軽減する特例があります。
ここでは特例の概要をご紹介しますが、詳しい内容は固定資産がある場所の自治体にお問い合わせください。
2-3-1.住宅用地に対する課税標準額の特例措置
住宅用地については、課税標準額の特例措置があり、固定資産税の負担が軽減されています。
- 200㎡以下の部分:固定資産税評価額の1/6を課税標準額とする
- 200㎡を超える部分:固定資産税評価額の1/3を課税標準額とする
2-3-2.新築住宅に対する減額の特例
新築の住宅については、新たに課税されることになってから3年度分(3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)は、床面積120㎡までの部分に対する税額が2分の1減額されます。
なお、認定長期優良住宅の場合は、5年度分(3階建て以上の耐火・準耐火建築物は7年度分)の税額が減額されます。
これらの特例には、居住部分の床面積が全体の1/2以上で、床面積が50㎡以上(一戸建て以外の貸家は40㎡以上)280㎡以下などの要件があります。
2-4.固定資産税評価額は3年に一度評価替えがある
固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われます。直近では令和3年度に実施されました。
評価替えを行う年度(基準年度)以外の年度では、固定資産税評価額は据え置かれます。
ただし、土地の分筆、合筆や、家屋の新築、増改築が行われた場合は、新たに評価が行われ価格が決定されます。
なお、土地の評価替えにあたっては、税額の大きな変動を緩和するため負担調整措置が講じられます。
(参考)令和3年度は固定資産税評価額の評価替え!コロナ禍における負担調整措置
2-5.固定資産税はいつまでかかる?
固定資産税は、対象の資産を所有する間は毎年課税されます。
3.故人の固定資産税は誰が代わりに払う?
固定資産税は、土地、家屋、償却資産を所有している人に課税されますが、これらの固定資産の所有者が死亡したときは、誰かが代わりに払う必要があります。
ここでは、故人が支払うべきであった固定資産税を誰が代わりに払うかについて解説します。
(参考)
相続で固定資産税を払う人は誰?<図解付き>納税額の確認方法や負担軽減方法も
相続して売却した資産の固定資産税はどうなる?納税から精算の流れ
3-1.通常は1月1日時点の所有者が払う
固定資産税は通常、毎年1月1日時点で土地、家屋、償却資産を所有している人が、その固定資産がある場所の市町村(東京23区では東京都)に納めます。
自宅や別荘を所有している人のほか、農林業や不動産賃貸業、その他の事業を営んでいる人は、固定資産税を払う必要があります。
3-2.故人の固定資産税は相続人が代わりに払う
固定資産税を課税されている人が年の途中で死亡しても、固定資産税は免除されません。
故人が払うべきであった固定資産税は、相続人が代わりに払う必要があります。
相続人が2人以上いる場合は、原則として法定相続分に応じて負担します。
固定資産税を代わりに払う人を遺産分割協議で決めることもできますが、未払いの固定資産税は故人の債務であり、対外的には法定相続分に応じて引き継がれることになります。
固定資産税を払うべき人が払わなかった場合は、他の相続人に請求される恐れがあります。
3-3.翌年度以降は新しい所有者が払う
死亡の翌年度以降の固定資産税は、新しい所有者または相続人に対して課税されます。
課税対象の固定資産を相続する人が決まっていれば、新しい所有者が固定資産税を払います。
課税対象の固定資産を相続する人が決まらない間は、相続人が連帯して固定資産税を払います。
原則では法定相続分に応じて負担しますが、相続人どうしで話し合って負担する人を決めることもできます。
4.固定資産税の支払名義変更方法
固定資産税の対象となる財産の所有者が死亡した場合は、固定資産税の支払名義を変更しましょう。手続きをしなければ、翌年以降も故人宛てに納税通知書や納付書が送られます。
固定資産税の支払名義変更手続きは、土地・家屋と償却資産で異なります。
4-1.土地・家屋
土地・家屋については、法務局で不動産の相続登記を行います。
登記上の名義を変更すれば、翌年以降、新しい所有者に対して納税通知書・納付書が送られます。
なお、相続登記ができていない場合は、3か月以内に市町村(東京23区では都税事務所)に「現所有者申告書」を提出する必要があります。土地・家屋を共有する場合は、代表者を1名定めて連名で届け出ます。
4-2.償却資産
償却資産については毎年申告が必要であり、死亡の翌年以降は新しい所有者が市町村(東京23区では都税事務所)に申告します。
申告では、故人が申告していた取得年月、取得価額及び耐用年数を引き継ぎます。償却資産を共有する場合は、連名で申告します。
5.固定資産税の納期限
固定資産税の税額は市町村で計算され、毎年4月から6月にかけて税額が通知されます。
通常は1年分を4回に分けて納めますが、初回の納期限までに一括で納めることもできます。
納期限は、多くの市町村で毎年4月、7月、12月、翌年2月に定められています。ただし、東京23区は6月、9月、12月、翌年2月であるなど例外もあります。
納税通知書を見るか自治体の窓口で問い合わせるなどして確認してください。
6.固定資産税を滞納するとどうなる?
固定資産税を滞納した場合は延滞金がかかるほか、滞納を続けると財産を差し押さえられる場合もあります。
この章では、固定資産税を滞納した場合のペナルティについてご紹介します。
なお、下記の記事では、関連するケースとして相続税(国税)を滞納した場合のペナルティについて解説しています。
(参考)相続税の延滞税・加算税はどのようなときに何%の税率で課税されるか徹底解説
6-1.延滞金がかかる
納期限までに固定資産税を払わず滞納した場合は、翌日から延滞金がかかります。
延滞金は固定資産税を納付する日までの日数で日割り計算されます。
滞納税額に対する延滞金の割合は下記のとおりです。
【例】令和4年(1月1日~12月31日)の延滞金割合(東京都)
- 納期限の翌日から1か月以内:年2.4%
- 納期限の翌日から1か月以後:年8.7%
他の期間の延滞金割合や延滞金の詳しい計算方法は、自治体の窓口で確認してください。
6-2.財産を差し押さえられる可能性も
固定資産税の滞納を続けると、財産を差し押さえられる場合があります。
納付忘れの場合を考慮して、通常はすぐに差し押さえることはしません。督促や催告を経てそれでも納税しない場合は、課税対象の財産を差し押さえられることになります。
7.期限までの納付が難しい場合は?
不動産を相続しても、手持ちの現金が少なければ固定資産税を納められない場合があります。また、災害に遭ったなどの事情で納付できないことも考えられます。
固定資産税を期限までに納付することが難しい場合は、状況に応じて、徴収を猶予してもらうか税金を減免してもらうことができます。
納付できないからといって逃げたりごまかしたりせず、なるべく早く自治体に相談しましょう。
下記の記事では、参考として国税を納付できない場合の制度をご紹介しています。
(参考)延滞税の時効は迎えられない|税金を納めるのが困難な場合に利用できる制度
7-1.税金の徴収猶予・換価の猶予の申請
災害、病気、事業の休業などで税金を納付できない場合は、申請により徴収猶予を受けることができます。
また、税金を納付することで事業の継続または生活の維持が困難になる恐れがあり、かつ、納税の意思がある場合は、換価の猶予が認められる場合があります。
徴収猶予、換価の猶予が認められれば、税金を分割で納めることができるようになります。また、新たな差し押さえなども行われなくなります。
7-2.税金の減額・免除の申請
災害に遭った場合や、生活保護法による生活扶助を受けているなど一定の事情があるときは、固定資産税の減額・免除が受けられる場合があります。
このほか、課税対象の財産を相続税の物納に充てた場合にも、減額・免除が受けられる場合があります。
8.まとめ
不動産を相続して固定資産税が支払われていないか、納期限が来ていない分があれば、相続人が代わりに払う必要があります。
固定資産税を払えない事情がある場合でも、滞納は避けて速やかに市町村に相談することをおすすめします。
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