遺言書作成は誰に頼む?専門家別メリットと相続対策

「遺言書を作成したいけれど、誰に頼めばいいのか分からない」
このように悩む方は少なくありません。遺言書の作成には弁護士、司法書士、行政書士、税理士、信託銀行など、さまざまな専門家が対応していますが、得意とする分野や費用の相場は異なります。
そこで、それぞれの専門家に依頼すべきケースやメリット、費用の相場をわかりやすく解説します。近い将来、万が一に備えて自分の意思を残したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.遺言書作成は誰に頼む?依頼できる専門家と依頼すべきケース
遺言書作成を専門家に相談したいけれど、誰に頼んだらいいのかがわからないという声をよく聞きます。遺言書作成ができる専門家はさまざまですが、対応可能な分野や報酬金額は異なります。
遺言書作成ができる専門家は、以下のとおりです。
相続トラブル対策 | 相続税対策 | 遺言書作成に対する 報酬金額の相場 | |
---|---|---|---|
弁護士 | ◎ | ○ | 10~20万円 |
司法書士 | △ | ○ | 4~8万円 |
行政書士 | △ | △ | 数万円 |
税理士 | △ | ◎ | 10~50万円 |
信託銀行 | × | ○ | 30~100万円 |
それぞれの得意分野や依頼すべきケースを解説します。
1-1.弁護士に依頼するケース
弁護士は法的紛争を扱う専門家です。遺言書作成を弁護士に依頼するのが適しているケースは、以下のとおりです。
- 法的争いが予想される相続(一部相続人に偏った配分で財産を継承させたいなど)
- 複雑な権利関係の整理が必要な場合(元配偶者との間に子どもがいる、内縁関係の子どもを認知するなど)
- 遺留分に配慮が必要なケース
弁護士に相続トラブル防止や万が一の調整が必要になったときの対応まで依頼することができます。その代わり、一般的に報酬は他の専門家よりも高めに設定されていることがほとんどです。
報酬の相場は、目安として相談で1万円、遺言書作成は10~20万円、遺言執行は30万円からとなっています。依頼する場合はまずは相談をし、必要な内容を盛り込んだ遺言書を作成します。
弁護士といっても得意とする分野はさまざまなので、相続分野の実績が豊富な弁護士に依頼しましょう。
1-2.司法書士に依頼するケース
司法書士は、不動産登記や相続登記といった法務局での手続きを得意とする専門家です。司法書士に依頼するのが適しているケースは、以下のとおりです。
- 相続財産に不動産が含まれているとき
- 法務局での登記手続きをサポートしてほしいとき
- 自筆証書遺言の作成をサポートしてほしいとき
遺言書作成時に遺言執行人として指定すれば、相続発生時に登記手続きを一気通貫で依頼できます。ただし、司法書士は弁護士と異なり、紛争の解決はできません。このため、相続トラブルがないと想定される相続に向いています。
司法書士の報酬は一般的に、弁護士よりも安い傾向です。遺言書の作成については自筆証書遺言の作成サポートを依頼するのか、公正証書遺言作成にかかわる手続きをすべて任せるのかによって費用は変わりますが、報酬の相場としては4~8万円程度となっています。
司法書士に依頼する際、まずは遺言書の作成を得意とする司法書士事務所を探しましょう。その後、メールや電話で問い合わせをし、面談する日程を予約します。
1-3.行政書士に依頼するケース
行政書士は、許認可や書類作成の専門家です。遺言書の作成支援や、官公庁に提出する書類の作成・申請などを得意としています。行政書士に依頼するのが適しているケースは、以下のとおりです。
- コストを抑えつつ法的効力のある遺言書を作成したいとき
- 相続人の関係が明確で争いの可能性がないケースに遺言書の作成を検討しているとき
- 相続人の調査や戸籍の取得も依頼したいとき
- 遺言書の文案作成と公証人とのやり取りを代行してほしいとき
行政書士には遺言書の文案作成や必要書類の取得代行を依頼できますが、係争リスクのある相続には対応できません。
行政書士の報酬は比較的安価で、遺言書の起案や作成は平均5万円程度で依頼することが可能です。多くの市区町村役場で、派遣された行政書士が対応する無料相談会などが定期的におこなわれています。事前に申し込むと初回は無料で相談できるので、ぜひ利用してみると良いでしょう。
1-4.税理士に依頼するケース
税理士は、相続税・贈与税・所得税などの税務申告や節税対策などをおこなう専門家です。税理士に依頼するのが適しているケースは、以下のとおりです。
- 相続財産の評価額が高額で、相続税の発生が見込まれるとき
- 生前贈与や節税を踏まえて遺言内容を決めたいとき
- 遺言書と合わせて財産整理・相続税の試算もしたいとき
税理士には税務に関するアドバイスから相続税の申告まで、ワンストップで依頼できます。ただし、相続トラブルが発生しそうなケースや相続登記が必要なケースなど、遺言内容によっては他の士業との連携が必要になることもあるでしょう。
報酬の相場は10~50万円程度となっており、相続の対象となる財産の金額によって変動することもあります。税理士の業務は多岐にわたるので、遺言書の作成を税理士に依頼する際は相続税を専門的に扱う事務所に依頼するのがおすすめです。
まずは相談し、信頼できると感じたら正式に契約をすると良いでしょう。
1-5.信託銀行に依頼するケース
信託銀行は、財産の管理から継承までを一気通貫で任せられる金融機関です。信託銀行に依頼するのが適しているケースは、以下のとおりです。
- 相続財産が多く複雑で、残された家族に資産をしっかり継承させたいとき
- 遺言信託で死後の執行まで依頼したいとき
- 生前のうちに家族に財産の内容を知らせたくないとき
信託銀行は、さまざまな手続きをワンストップでおこなってくれる専門機関です。遺言書に関しては、公正証書遺言の作成・保管・執行まで一気通貫で対応できます。
堅実な手続きが期待できるため、相続財産が多かったり複雑だったりする場合も安心して任せることができるでしょう。
その代わりに、サービス手数料は高額です。遺言書の作成に関しても相場は30~100万円程度と、士業に依頼するよりも高い傾向にあります。信託銀行に遺言書の作成を依頼する場合、まずは銀行に赴いて相談をしましょう。
Webサイトや電話で事前に来店予約をし、相談したい内容を伝えておくとスムーズです。
2.遺言書作成を専門家に依頼するメリット
遺言書には、公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3つの種類があります。
公正証書遺言は公証人や証人が必要ですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言ではひとりで遺言書を作成することが可能です。ひとりで作成すれば、公証役場への手数料や専門家への報酬などの費用はかかりません。
しかし、費用をかけても遺言書作成を専門家に依頼するメリットもあるのです。
2-1.自筆証書遺言よりも安心?専門家作成の遺言書のメリット
専門家に遺言書作成を依頼するメリットを解説する前に、自分で作成する遺言書の代表である自筆証書遺言のデメリットを説明します。
自筆証書遺言は遺言者がひとりで作成することができる反面、以下のような問題点があります。
- 定められた形式でなければ法的に認められない
- 紛失や改ざんの恐れがある
- 相続が発生し遺言書が見つかったときに検認が必要
自筆証書遺言で特に問題になるのは、要件が合わずに法的に認められないことと紛失の恐れがあることです。押印や日付が所定の場所にないと、遺言書は無効になります。また、せっかく作成した遺言書でも、亡くなったあとに誰かに見つけてもらわなければ実行されることはありません。
2020年から自筆証書遺言保管制度がスタートし、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらえるようになりました。これを利用すれば、紛失の心配はなくなるでしょう。
自筆証書遺言の概要や書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。専門家に相談する前に一度遺言書を自分で作成してみたいという方はぜひ参考にしてください。
参考:自筆証書遺言書の作成から使用に至るまで、知っておくべき4つのこと
上記のような自筆証書遺言のデメリットは、専門家に依頼すれば解決できるでしょう。
また、専門家に相談することで、自分では気付いていなかった相続の問題点を指摘してもらえる可能性もあります。法的に有効な遺言書を作成し、確実に思いを叶えることができるだけではなく、残された家族の相続トラブルを防ぐこともできるのです。
2-2.税理士に依頼するメリット
数ある士業の中から税理士に依頼するメリットは、相続税の節税まで含めて相談できることです。相続税額は一般的に、相続人の人数と相続財産の価額によって決まります。それだけではなく、相続税にはさまざまな特例があり、これを利用できれば大きな節税になります。しかし、それぞれの特例には要件があり、確実に利用するためには十分な知識が必要です。
税理士は豊富な経験と知識から、相談者の悩みに応じた節税のアドバイスができます。相続税の支払額が大きくなると見込まれる方ほど、報酬以上の節税メリットを得られるでしょう。
3.費用を抑えつつ専門家に遺言書作成を頼むなら?
多くの方が「せっかくなら法的効力を持つ遺言書を作成したい」と考えるはずです。しかし一方で、専門家に遺言書作成を依頼したいけれど、費用が高すぎるので気が進まないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、ここからは費用を抑えながら専門家に遺言書作成を依頼する方法を解説します。
3-1.公正証書遺言ではなく自筆証書遺言の原案について相談をする
専門家に遺言書作成を依頼する場合、公正証書遺言を作成するのが一般的です。公正証書遺言は公証人という専門家が作成し公証役場で保管されるため、最も確実な遺言書といえるからです。
しかし、公正証書遺言を作成する場合は、公証役場への手数料や証人2人などが必要です。証人を自分で見つけられず誰かに依頼する場合は、その方への報酬も必要になるでしょう。このように考えると、公正証書遺言よりも、自筆証書遺言を作成するほうが費用を軽減できます。
司法書士や行政書士のなかには、自筆証書遺言作成のサポートに対応している場合もあります。書くべき内容を相談したり形式を教えてもらったりできますが、最終的な遺言書の作成は自分でおこなうというものです。
自筆証書遺言作成のサポートは、公正証書遺言の作成を全面的に依頼するよりも1万円~数万円程度報酬金額が低く設定されていることがほとんどです。
3-1-1.公正証書遺言作成にかかる費用と効果
公正証書遺言は最も確実な遺言書ですが、作成するのに費用がかかります。主な費用となる公証人手数料は、相続財産の金額によって以下のように定められています。
相続財産の金額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超~200万円以下 | 7,000円 |
200万円超~500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円超~3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円超~1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円超~3億円以下 | 4万3,000円+超過額5,000万円ごとに1万3,000円プラスした金額 |
3億円超~10億円以下 | 9万5,000円+超過額5,000万円ごとに1万1,000円プラスした金額 |
10億円超~ | 24万9,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円プラスした金額 |
参考:日本公証人連合会「公証人手数料」
公証人手数料だけではなく、相続関係や相続財産を知るために以下のような書類も必要となります。
書類の種類 | 取得費用 |
---|---|
戸籍謄本(全部事項証明書) | 450円 |
住民票 | 200円~400円 |
印鑑登録証明書 | 200円~400円 |
不動産の登記事項証明書 | 600円 |
固定資産評価証明書 | 300円~400円 |
上記の書類は取得する市区町村や法務局によって手数料が異なりますが、ここでは一般的な金額をご紹介しました。
また、証人を自分で見つけられなかった場合には専門家に依頼する必要があります。証人への報酬は1人につき5,000円から1万円程度です。
公正証書遺言は相続財産に応じた費用がかかるほか、書類を集める手間や時間なども必要です。しかし、確実に遺言内容を実行してもらいたい方には大きなメリットがあります。遺言書の紛失や改ざんの心配がなく検認も不要なので、相続発生時はスムーズに手続きをおこなえるでしょう。
公正証書遺言の作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。作成の流れが気になる方は、ぜひこちらをお読みください。
参考:公正証書遺言とは?法的効力・作成方法・費用・必要書類を解説
3-1-2.自筆証書遺言作成にかかる費用と効果
自筆証書遺言作成には、ほとんど費用がかかりません。遺言書は自筆で書く必要があるため、紙やペン、印鑑、封筒などを準備すれば作成することが可能です。
紛失を避けるために自筆証書遺言保管制度を利用して法務局に遺言書を預ける場合は、1通につき3,900円の手数料がかかります。
このように、自筆証書遺言はほとんどお金をかけずに作成できる遺言書です。自筆で書くことができるならば、専門家からサポートのみを受けることで費用を抑えつつ、法的に有効な遺言書を作成できるでしょう。
参考:法務省「自筆証書遺言保管制度の手数料一覧」
3-2.オンライン遺言書作成サービスを利用する
オンライン遺言書作成サービスは、一般的な士業のサービスよりも安価です。24時間利用できるため、都合の良いときに自分の意思が反映した遺言書を作成できます。
オンライン遺言書作成サービスでは、スマートフォンやパソコンなどからテンプレートに沿って入力すれば遺言書の原案を作成できるようになっています。オプションで専門家に相談できるサービスが付いているものもあるので、相続に関して不安なことがある場合には利用するのも良いでしょう。
ただし、オンライン遺言書作成サービスは複雑な相続関係には向いていません。テンプレートでは対応しきれないことがあるからです。また、日本ではインターネット上の遺言書は法的に有効ではないため、入力しただけでは遺言書を作成したことにはなりません。
そのほか、サービスの提供元が信頼できるかどうかをしっかり確認することも大切です。
4.公正証書遺言作成に必須!遺言執行者や証人の存在
公正証書遺言を作成する際は、遺言執行者や証人が必須です。それぞれの役割や選び方を解説します。
4-1.遺言執行者の役割と選び方
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために実際の手続きをおこなう人です。原則的に誰でも遺言執行者になれますが、さまざまな手続きを一手におこなう労力の必要な役割なので、専門家に依頼することもあります。
遺言執行者については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる遺言執行者の報酬についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
4-2.証人選びで注意すべきポイント
証人とは、公正証書遺言を作成する際に遺言者の意思を確認するために立ち会う人のことです。証人が中立性を担保するために、以下のように証人になれない人が決められています。
- 未成年者(18歳未満の人)
- 推定相続人と受遺者(遺言で財産を受け取る予定の人)
- 推定相続人や受遺者の配偶者、直系血族(遺言者の子の配偶者、父母など)
- 公証人の配偶者・4親等内の親族など
証人は家族や親族以外から選ぶ必要がありますが、見つからない場合は有料ですが公証役場が紹介してくれる証人に依頼する手もあります。
証人について、選び方や費用など詳しくは以下の記事を参考にしてください。
4-3.専門家に依頼する際の遺言執行者・証人の設定
遺言執行者と証人は、司法書士や行政書士などの専門家に依頼すれば代行してくれます。専門家へ代行を依頼すると、遺言内容に盛り込む内容から原案作成まですべてお任せできるので安心です。
面倒な手続きをすべて任せ、相続の手続きをスムーズに進められるでしょう。また、専門家は中立な立場なので、相続人からも信頼されやすいのもメリットです。
5.遺言書の作成はチェスターにお任せください
遺言書は相続トラブルを防ぎ、残された家族に遺言者の思いを伝えるものです。しかし、遺言書を何度も作成した経験のある方はほとんどいません。遺言書の作成方法がよくわからず、不安や疑問を持つのは当然のことです。
不安な気持ちを持ったまま不確実な遺言書を作成するよりも、専門家に相談して法的効力のある遺言書を作成することをおすすめします。
ただし、専門家とひとくちにいっても、それぞれが対応できる分野は異なります。どの専門家に依頼すべきかを明確にするためには、自身の家族構成や相続財産の内容、そして相続にあたって重視したいポイントを整理することが大切です。
5-1.チェスター税理士法人の遺言書作成サービスの特徴
相続専門のチェスターグループは、税理士法人を中核とする相続手続きの専門家集団です。税理士だけではなく、行政書士、司法書士も在籍しているため、相続関係の手続きをワンストップでおこなうことができます。
行政書士法人チェスターでは公正証書遺言作成サポートも承っております。公正証書遺言の作成に必要な書類の取得や証人の手配もすべてお任せください。また、相続の手続きをスムーズにするための遺言執行者にも対応しております。
残された家族を相続トラブルから守りたい方は、ぜひチェスターグループに遺言作成をお任せください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
公正証書遺言の作成ならチェスターにお任せ下さい
「遺言があれば、相続発生後の多くの争いを防ぐことができます。
さらに、相続発生後の手続きもスムーズに進めることができ残された方の負担が大幅に軽減されます。
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