贈与税の時効はいつ?簡単に時効が成立しない理由やペナルティは?

「贈与税の時効は何年?いつからいつまで?」
「贈与税の時効が成立したらどうなるの?」
「贈与税の時効成立前に税務署にばれる?」
この記事をご覧のみなさんは、贈与税の時効についてこのようにお考えかと思います。
先に答えを言いますが、贈与税の時効は起算点(法定申告期限の翌日)から原則6年、悪意がある場合は7年に延長されますが、贈与税の時効は簡単には成立しません。
不動産を贈与しても、所有権移転登記(名義変更)をした時点で税務署にばれますし、タンス預金や現金は贈与をしたつもりでも相続税の課税対象になってしまいます。
この記事では、贈与税の時効の概要や時効成立が難しい理由、税務署にバレた時のペナルティ、贈与財産に相続税を課税されないための対策などをご紹介します。
1.贈与税の時効とは?
贈与税の時効とは、わかりやすく言うと「贈与税の納税義務が消滅する日」のことで、正確には「除斥期間(じょせききかん)」と呼びます。
贈与税の除斥期間が過ぎて時効が成立すると、国は贈与税を徴収する権利を失い、税務署は税務調査なども実施できなくなります。
除斥期間は贈与税だけではなく、相続税や所得税などの他の税目にも設けられており、多くの税目において「原則5年」と定められています。
しかし贈与税の除斥期間は、例外的に5年以上の除斥期間が設けられています。
1-1.贈与税の時効は原則6年!悪意がある場合は7年

贈与税の時効(除斥期間)は、起算点から原則6年と定められており、悪意がある場合は7年に延長されます。
この「悪意がある場合」とは、国税通則法第70条において「偽りその他不正の行為」と記載されていますが、これは贈与の事実を知っていながらあえて申告をしなかった場合だけではありません。
たとえ悪意がなかったとしても、以下のケースに当てはまる場合は、贈与税の時効が7年に延長されます。
- 意図的に申告をしなかった
- 意図的に金額を少なく申告した
- 贈与税の申告義務があるとは知らなかった
- 贈与税の申告期限を失念していた
- 納税資金がなく申告しなかった
つまり、贈与税の時効が6年となるのは、贈与があった事実を知らずに申告を失念していた場合のみです。
さらに「法律に書いてあることは知っているもの」という前提があるため、無知への救済措置はありません。
贈与があった事実を知っていて贈与税を支払っていない場合、贈与税の時効は7年になる、と考えておいた方が良いでしょう。
1-2.贈与税の時効の起算点(起算日)はいつから?
起算点(起算日)とは、贈与税の時効を数え始める日のことで、「贈与税の法定申告期限の翌日」と定められています。
贈与税の法定申告期限は「贈与年の翌年の2月1日から3月15日」ですので、贈与年の翌年の3月16日が、贈与税の時効の起算点となります。

1-3.贈与税の時効シミュレーション
少しイメージしづらいかと思うので、シミュレーション例を元に贈与税の時効を確認しておきましょう。
令和4年5月1日に、AさんがBさんに3,000万円贈与した場合、贈与税の基礎控除額110万円を除いた2,890万円が課税対象になります。

贈与税の申告期限は令和5年2月1日から3月15日まで、さらに「贈与があった」と認識をしているため贈与税の時効までは7年です。
贈与税の時効の起算点は令和5年3月16日ですので、令和12年3月16日まで税務署に知られることもなく7年が過ぎれば、Bさんは贈与税1,035万5,000円の納税義務も申告義務もなくなります(直系尊属から成人への贈与に対する税額)。

2.贈与税の時効は簡単には成立しない!?
贈与税の時効を迎えれば贈与税の納税義務はなくなりますが、贈与税の時効は簡単には成立しません。
その理由は、「贈与」と認められなければ、贈与税の時効は成立しないためです。
- 贈与そのものが成立していない
- 名義預金とみなされる
- 立替金や貸付とみなされる
たしかに、生活費として妻に毎月かなりの現金を渡しても、遠方に住む子供にまとまった仕送りをしても、税務署からは何も言われません。
税務署は「生活費や仕送り」なのか「贈与」なのか、調べようがないからです。
この名目を使えば、贈与税を納税しなくても済みそうですが、そうはいきません。税務署としても、見逃さない手があるのです。
では、どのようなタイミングで、税務署に贈与した事実がバレてしまうのでしょうか?
2-1.相続をしたときに、すべて判明してしまいます!
相続税の税務調査が入る確率は、おおよそ10人に1人の割合と言われています。
相続税の税務調査の多くが実地調査(自宅などで質問に答える形式)となり、この際に被相続人や財産を受け継いだ相続人の銀行の預金通帳を、税務署職員が過去数年に遡ってチェックすることがあります。

仮に配偶者が専業主婦やパート従業員であるにも関わらず、配偶者名義の預金口座に5,000万円もの貯金があれば、税務署職員も無視できません。
当然、配偶者である妻の収入源や、5,000万円の出所や原資は誰なのかを聞かれます。
ここで「夫から生活費として渡されたもの(へそくり)」と答えても、生活費にしては金額が大きすぎますし、余っている以上は「一定の財産」です。
配偶者である妻名義の預金口座にある5,000万円は、いっぺんに夫から渡されたものではないものの、夫が配偶者の預金口座を借りているだけの「名義預金」とみなされ、相続税が課税されます。

ここで「贈与であるとわかっていて贈与を受けたなら、時効は7年のはずだ」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、配偶者名義の口座にある5,000万円の大半は、7年以上も前に渡されていたお金であったとしても、贈与契約書が交わされていないため贈与は成立していません。
そのため、「立替金や貸付金である」とみなされてしまうのです。

あくまで5,000万円は夫のもので、配偶者の財産だとは認めてもらえないため、5,000万円は相続財産に含めて相続税が課税されます。
「へそくりに相続税がかかるって本当!?税務調査で名義預金とみなされた場合、相続税が発生?」でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
2-2.タンス預金が発覚するケース
相続税の税務調査で指摘されるのは、名義預金だけではありません。
「タンス預金なら税務署にバレない」と思い込む方が多いですが、税務調査の際にタンスや金庫などを確認されます(開示は任意です)。
税務調査では「机上調査」が行われ、税務署側は独自資料を元にある程度の予測を付けており、事実確認をするために実地調査を実施します。
調査対象者やその関係者の銀行口座に不自然な出金履歴があれば、タンス預金の存在を疑います。
そして「出金した現金は何に使ったのか」「残金は誰がどこで保管しているのか」を、実地調査において追求し、「存在を知らない」のか「あえて財産を隠しているのか」を判断し、ペナルティの内容を決定します。
タンス預金について、詳しくは「タンス預金は相続税対策に使えない?メリット・デメリット・税務署の財産把握方法を解説!」をご覧ください。
2-3.住宅などの不動産贈与も判明しやすい
住宅などの不動産(土地と建物)を贈与された場合、その不動産の所有権移転登記(名義変更)をする必要があります。
この際、登記簿には「贈与による登記」と記載され、その情報は税務署にも共有されます。
税務署としては、法務局から「贈与」を事由とした不動産の所有権移転登記の事実が報告されているのに、翌年の3月15日までに贈与税の申告が確認できなければ、贈与税の無申告を指摘します。
では、贈与された不動産の所有権移転登記をしなければ、どうなるのでしょうか?
贈与された不動産の所有権移転登記をしていないということは、その不動産の所有権は贈与者のままとなります。
つまり、不動産贈与が成立していないため、贈与税の時効は成立しません。
贈与者の相続が発生した際に、その不動産は「相続財産」として相続税が課税されることとなります。
2-4.その他にも判明するケースは多い
贈与の事実が判明するケースは、他にも沢山あります。
例えば…
- 生命保険金の支払いや解約返戻金に係る法定調書
- 200万円超の金地金の購入に係る法定調書
- 100万円超の国際的な送受金に係る国外送金等調書
- 国際的な口座間の証券移管に係る国外証券移管等調書
これらの調書は、金融機関や企業側が税務署に提出する義務があります。
そして提出された調書などは、全国の国税局と税務署を結ぶ「KSKシステム(国税総合管理システム)」によって管理・共有されています。
つまり、贈与の事実を隠そうと思っても、金融機関や企業が提出した調書によって、税務署側に贈与の事実がバレてしまうのです。
他にも、所得税や法人税の税務調査により、贈与の事実が判明したケースもあります。
詳しくはチェスターNEWS「所得税の税務調査で贈与税の無申告が発覚した3つの事例」や「【相続税の税務調査】故意の財産隠しで重加算税が課せられた4つの事例」でご紹介しているので、併せてご覧ください。
3.贈与税の無申告や申告漏れに対するペナルティ
贈与税の申告漏れや無申告を税務署に指摘された場合、「加算税」に加え、納税が遅れた期間分の「延滞税」がペナルティとして課税されます。
加算税は「無申告加算税」「過少申告加算税」「重加算税」の3種類があり、期限までに申告しなかった事由によって課せられる種類が変わります。
贈与税における加算税について、詳しくは「【事例で見る】贈与税を支払わなかった場合における加算税の全てを徹底解説!」でもご紹介しています。
3-1.無申告加算税
無申告加算税とは、申告自体をしなかった(忘れていた)場合に課せられるペナルティです。
国税庁「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」によると、贈与税の実地調査においては無申告事案が全体の83.1%を占めています。
無申告加算税は、どのタイミングで期限後申告をしたのかによって税率が変動します。

(申告期限が令和6年以降の場合は、贈与税額のうち300万円を超える部分に対する無申告加算税の税率が引き上げられます。「税務調査の事前通知以後、税務調査前に申告」では25%、「税務調査後に申告」では30%となります。)
3-2.過少申告加算税
過少申告加算税とは、申告をしたものの、漏れていた贈与財産があった場合に課せられるペナルティです。
過少申告加算税についても、どのタイミングで修正申告をしたのかによって税率が変動します。

なお、税務調査の事前通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課税されませんので、申告漏れに気付いた時点で自主的に修正申告をすることが大切です。
3-3.重加算税
重加算税とは、意図的に申告をしなかった場合や、あえて少なく申告した場合に課せられる、最も重いペナルティです。
つまり、税務調査によって「あえて贈与を隠していた」と判断された場合、この重加算税が課税され、申告が遅れた事由によって税率が変動します。

3-4.延滞税
延滞税とは、贈与税の納付が遅れたことに対するペナルティです。
延滞税の税率は2段階に分けられており、贈与税の法定納期限(申告期限)の翌日から2ヶ月後までであれば原則年7.3%、2ヶ月経過以降であれば原則年14.6%となります。

しかし、低金利の影響によって市場の金利と大きくかけ離れているため、特例によって低い税率が適用されます。

延滞税の特例税率は毎年変動しますので、最新の延滞税については国税庁「延滞税について」をご覧ください。
延滞税の概要について、詳しくは「相続税の延滞税・加算税はどのようなときに何%の税率で課税されるか徹底解説」でも解説しております。
4.贈与財産に相続税が課税されるのを避ける方法
贈与税の時効が成立するのは難しく、相続が発生した際に税務調査が入ることで、贈与税の無申告が発覚するケースが多いです。
現金や預貯金は名義預金・立替金・貸付金とみなされるリスクがありますし、贈与不動産は名義変更をしない限りは贈与者の相続発生時に相続税が課税されます。
では、これらの贈与財産に相続税を課税されるのを避けるためには、一体どうすれば良いのでしょうか?
答えは、「贈与契約書を交わして贈与税を毎年申告すれば良い」です。

ちょっと面倒くさいかもしれませんが、将来的に相続税を払うことを考えると、手間をかける価値はあります。では、詳しく見ていきましょう。
4-1.年間110万円の基礎控除額超えで暦年贈与をする
贈与税が課税されるのは、年間に贈与された合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた金額です。
この制度を利用して、年間110万円以下を非課税で贈与をすることを「暦年贈与」と呼びます。

1月1日~12月31日の間に贈与された合計額が、基礎控除である110万円を下回っている場合は、贈与税の納税義務も申告義務もありません。
しかし、相続開始前3年以内の暦年贈与財産は、相続財産とみなされて相続税が課税されます。この「3年以内」という期間は令和9年以降段階的に延長され、令和13年以降は「7年以内」となります。
さらに毎年同じ日に・同じ額を・同じ人に贈与していると、「定期贈与」として贈与税が課税されることもあります。

したがって、「贈与をした」という証拠を残すためにも、あえて年間110万円を超える金額を贈与し、贈与税申告をした方が良いのです。
例えば、115万円を贈与した場合、贈与税の基礎控除は110万円ですから、5万円に対して贈与税が課税されます。

200万円以下の税率は10%なので贈与税は5,000円、ここで申告書を作って贈与税を5,000円納付すれば、贈与があった証拠を残すことができます。
申告自体は毎年同じなので、申告書のコピーさえ取っておけば、翌年以降で申告するときに非常に便利です。
暦年贈与について、詳しくは「暦年贈与の注意点とは?贈与を無駄にしない5つの対策」をご覧ください。
4-2.非課税・控除の特例制度を活用する
贈与税には暦年贈与の他にも、様々な非課税・控除の特例制度があります。
- 相続時精算課税制度
- 贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)
- 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
- 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度
- 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度
これらの贈与税の非課税・控除の特例制度は、要件を満たした上で適用できれば、まとまった資産を税負担なく移転させることができます。
しかし、贈与者と受贈者の「属性」や「年齢」などの要件が設けられており、どの制度を活用すべきはご家庭によって異なります。
必ず相続税や贈与税に強い税理士に相談をした上で、徹底的にシミュレーションをして制度の選択をしましょう。
贈与税の非課税・控除制度について、詳しくは「相続税対策には生前贈与を活用しよう! 贈与税の6つの非課税枠って?」をご覧ください。
4-3.生命保険やジュニアNISAを活用する
被相続人の死亡によって支払われる生命保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税が課税されます。
しかし、死亡保険金には相続税の非課税枠として、「500万円×法定相続人の人数」が設けられています。
仮に法定相続人が3人であれば、死亡保険金1,500万円が非課税となります。
非課税枠の範囲内であれば相続税は課税されませんので、今すぐ贈与できない場合は死亡保険金を活用した相続税対策をしておくと良いでしょう。
また、未成年者に贈与をする場合は、ジュニアNISAを活用するという方法もあります。
ジュニアNISAは年間80万円までの投資が非課税(最長5年間)となる上に、譲渡益や分配金も非課税となります。
しかし、ジュニアNISAで投資可能となるのは令和5年末までとなり、運用管理者は両親か祖父母のみ、さらに払い出し制限があります。
また成年年齢の引き下げに伴い、ジュニアNISAを利用できる人の年齢が変更されているため、こちらも注意が必要となります。
5.まとめ
贈与税の時効は、起算点である贈与税の申告期限の翌日(贈与の翌年の3月16日)から原則6年、悪意がある場合は7年に延長されます。
しかし贈与税の時効は簡単には成立せず、名義預金やタンス預金は相続税の課税対象となってしまいますし、住宅などの不動産は名義変更をした時点で贈与した事実が税務署にばれることとなります。
仮に税務署から贈与税の無申告や申告漏れを指摘されると、ペナルティとして加算税と延滞税が課税されてしまいます。
このような事態にならないためには、贈与したという証拠を残すためにも、贈与税の申告を行う・非課税制度を活用するなどの対策が必要となります。
5-1.税理士法人チェスターにご相談を
贈与税対策や相続税対策については、税理士法人チェスターにご相談ください。
税理士法人チェスターは、年間2,200件超えの相続税申告実績を誇る、相続税と贈与税を専門とする税理士事務所です。
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贈与や相続税の生前対策について疑問がある方は、まずはお気軽にご相談ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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