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相続税無申告による罰金と罰則とは?無申告が発覚する理由を解説

罰金を取られる可能性がある?相続税無申告の罰則と無申告が発覚する理由

遺産を相続した人は相続税を申告する必要があります。
本来申告が必要であるにもかかわらず申告しなかった場合は、罰金として追加の税金を課される場合があります。

「黙っていればわからないだろう」とか、「時効があるから大丈夫」と思うかもしれませんが、相続税の無申告は税務署の調査によって必ず発覚します。

ここでは、相続税が無申告だった場合に受ける罰則と、なぜ無申告が発覚するか、その理由をご紹介します。

この記事の目次 [表示]

1.相続税は必ず申告しなければならない

亡くなった人の遺産を相続した人には、相続税が課税されます。
遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合は、必ず相続税を申告しなければなりません
しかし、遺産の総額が基礎控除額以下であれば、申告の義務はありません。

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。相続開始を知った日とは、通常、故人が亡くなった日をさします。

2.無申告で納税しなかった場合は罰則が課されることがある

無申告で納税しなかった場合は罰則が課されることがある

相続税の申告期限である10ヶ月以内に申告・納付をしなかった場合は、罰則として以下の加算税・延滞税が課されます。

  • 無申告加算税
  • 延滞税
  • 重加算税

無申告加算税と延滞税、重加算税と延滞税は、同時に課されます。
このほか、申告・納付はしたものの税額が不足していた場合には、過少申告加算税が課されます。

相続税の申告や納付を怠ってこれらの罰則が課されると、本来納めるべき金額より多くの税金を支払わなければなりません。

3.無申告加算税とはどんな税金?

無申告加算税とは、本来の申告期限までに申告せず、期限後に申告した場合に課される加算税です。

3-1.無申告加算税の計算方法

相続税にかかる無申告加算税は、本来納めるべき相続税の額に一定の税率(5%~30%)をかけて計算します。

3-2.無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、期限後の申告が次のどの時期に行われたかに応じて変わります。

  • 10ヶ月の期限後に自主的に申告した場合
  • 10ヶ月の期限後に税務調査の事前通知を受けて申告した場合
  • 10ヶ月の期限後に税務調査で指摘されてから申告した場合

本来納めるべき相続税の額が50万円を超えると、その超える部分の税率は高くなります。

また、相続税の申告期限が令和6年1月1日以降の場合は、本来納めるべき税額が300万円を超えるときの、その超える部分の税率はさらに高くなります。

無申告加算税の税率(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)

相続税額のうち税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合(※1)税務調査を受けてから申告した場合(※1、※2)
50万円以下の部分5%10%15%
50万円を超える部分15%20%
【申告期限が令和6年1月1日以降の場合】
300万円を超える部分(※3)
25%30%

(※1)【申告期限が令和6年1月1日以降の場合】前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、さらに同じ税目で無申告があった場合は、当年度分の税率が10%加算されます。
(※2)過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、税率が10%加算されます。
(上記※1と※2はいずれかが適用されます。)
(※3)納付すべき税額が300万円を超えることに納税者の責めに帰すべき事由がない場合は、「50万円を超える部分」の税率が適用されます。

なお、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告を行い、かつ期限内に税額の全額を納めているなど申告期限までに申告する意思が認められた場合は、無申告加算税は課されません。

3-2-1.10ヶ月の期限後に自主的に申告した場合

10ヶ月の申告期限を過ぎてから、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合は、無申告加算税は一律5%の税率で課されます。

3-2-2.10ヶ月の期限後に税務調査の事前通知を受けて申告した場合

10ヶ月の申告期限を過ぎて税務調査の事前通知を受けてから、税務調査を受けるまでに申告した場合は、下記の税率で無申告加算税が課されます。

  • 本来の納税額のうち50万円以下の部分:10%
  • 本来の納税額のうち50万円を超える部分:15%
  • 【申告期限が令和6年1月1日以降の場合】本来の納税額のうち300万円を超える部分:25%

なお、申告期限が令和6年1月1日以降で、前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、さらに同じ税目で無申告があった場合は、当年度分の税率が10%加算されます。

3-2-3.10ヶ月の期限後に税務調査で指摘されてから申告した場合

10ヶ月の申告期限を過ぎて、税務調査で指摘されてから申告した場合は、下記の税率で無申告加算税が課されます。

  • 本来の納税額のうち50万円以下の部分:15%
  • 本来の納税額のうち50万円を超える部分:20%
  • 【申告期限が令和6年1月1日以降の場合】本来の納税額のうち300万円を超える部分:30%

なお、次のいずれかにあてはまる場合は、税率が10%加算されます。

  • 過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合
  • 申告期限が令和6年1月1日以降で、前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、さらに同じ税目で無申告があった場合

3-3.無申告加算税の計算例

ここで、500万円の相続税を納めるべき人が、期限までに申告・納税しなかったばかりに無申告加算税を課された例をご紹介します。

この人は、申告期限後に行われた税務調査によって、相続税が申告されていないことが判明しました。

相続税の申告期限は過ぎていますが、相続税は納めなければなりません。
本来の相続税500万円のほか、無申告加算税を追加で納めることになりました。

無申告加算税は下記のとおり計算します。

【申告期限が令和5年12月31日までの場合】

  • 本来の納税額のうち50万円以下の部分:50万円×15%=7.5万円
  • 本来の納税額のうち50万円を超える部分:(500万円-50万円)×20%=90万円
  • 無申告加算税:7.5万円+90万円=97.5万円

【申告期限が令和6年1月1日以降の場合】

  • 本来の納税額のうち50万円以下の部分:50万円×15%=7.5万円
  • 本来の納税額のうち50万円を超え300万円以下の部分:(300万円-50万円)×20%=50万円
  • 本来の納税額のうち300万円を超える部分:(500万円-300万円)×30%=60万円
  • 無申告加算税:7.5万円+50万円+60万円=117.5万円

申告期限までに相続税を申告・納税していれば無申告加算税を納めずに済みましたが、申告・納税を怠ったばかりに余計な出費をしたことになります。

4.延滞税とはどんな税金?

延滞税とは、本来の申告期限を過ぎてから税金を納付する場合に課される税金です。納税が遅れたことに対する利息のようなものです。

たとえば、次のようなときに延滞税が課されます。

  • 申告した税額を納付期限までに全額納めていないとき
  • 修正申告や期限後申告を行い、納付するべき税金が生じたとき
  • 税務署によって誤りがあることを指摘され、納付するべき税金が生じたとき

4-1.延滞税の額は法定納期限の翌日から納税までの日数で決まる

延滞税の額は法定納期限の翌日から納税までの日数で決まる

相続税にかかる延滞税の額は、本来の申告期限(法定納期限)の翌日から、相続税を納付した日までの日数で決まります。

なお、延滞税は本来納めるべき税金にのみ課され、無申告加算税、過少申告加算税、重加算税に延滞税はかかりません。

4-2.延滞税の税率

.延滞税の税率

延滞税の税率は、2段階に分けられています。
納期限の翌日から2ヶ月以内は原則年7.3%、2ヶ月を過ぎると原則年14.6%になります。

ただし、原則の税率は現在の金利の水準から大きくかけ離れているため、特例で低い税率が適用されています。
下記のとおり期間ごとに異なる税率が適用されます。

期間

納期限の翌日から2ヶ月後まで
(年率)
納期限の翌日から2ヶ月経過以降
(年率)
令和4年1月1日~令和6年12月31日2.4%8.7%
令和3年1月1日~12月31日2.5%8.8%

平成30年1月1日~令和2年12月31日

2.6%8.9%

平成29年1月1日~12月31日

2.7%9.0%
平成27年1月1日~平成28年12月31日2.8%9.1%

平成26年1月1日~12月31日

2.9%9.2%

(出典:国税庁ホームページ 延滞税の割合

納期限は、延滞税の税率の基準となる日であり、期限内に申告した場合は本来の申告期限(法定納期限)と同じ日です。
期限後申告・修正申告をした場合や、税務署によって更正・決定された場合は下記の日になります。

  • 期限後申告・修正申告をした場合:期限後申告書・修正申告書を提出した日
  • 税務署によって更正・決定された場合:更正通知書が発出された日から1ヶ月後の日

上記の納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後は、延滞税の税率が高くなります。

5.重加算税とはどんな税金?

重加算税の税率

重加算税とは、納税額を下げる目的で仮装・隠ぺいを行った場合に、無申告加算税や過少申告加算税に代えて課される加算税です。
相続税では、相続財産を隠していた場合に重加算税が課されます。

税額は、追加で納めるべき税金に下記の税率をかけて計算します。

  • 期限内に申告していた場合:35%
  • 無申告で期限後に申告した場合:40%

なお、次のいずれかにあてはまる場合は、税率が10%加算されます。

  • 過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合
  • 申告期限が令和6年1月1日以降で、前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、さらに同じ税目で無申告があった場合

6.過少申告加算税とはどんな税金?

過少申告加算税とはどんな税金?

過少申告加算税とは、不足していた税額に対して課される加算税です。

期限内に相続税を申告していたとしても、税額が不足していた場合は過少申告加算税が課されます。
たとえば、申告した後で新たに遺産が見つかり、相続税の修正申告をした場合などがあてはまります。

6-1.過少申告加算税の計算方法

相続税にかかる過少申告加算税は、不足していた税額に一定の税率(5%~15%)をかけて計算します。

過少申告加算税の計算方法

6-2.過少申告加算税の税率

過少申告加算税の税率は、修正申告がいつ行われたかに応じて変わります。

また、追加で納めるべき税額が「当初の納税額」と「50万円」のいずれか多い方を超えると、その超える部分の税率は高くなります。

過少申告加算税の税率(申告期限が平成29年1月1日以降の場合)

追加で納める税額のうち税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに修正申告した場合税務調査を受けてから修正申告した場合または更正を受けた場合
当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分なし5%10%
当初の納税額と50万円のいずれか多い方を超える部分10%15%

税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合は、過少申告加算税は課されません。

7.悪質な場合は刑事罰で懲役や罰金が科される!

無申告や脱税に対しては加算税や延滞税といった罰則が課されますが、さらに悪質な場合は、下記の刑事罰が科されることがあります。

  • 脱税:10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(併科の場合あり)
  • 故意の申告書不提出:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(併科の場合あり)
  • 過失による無申告:1年以下の懲役または50万円以下の罰金(情状により免除の場合あり)

8.無申告を放置したまま一定の期間が経過すると時効になる?

相続税には時効(除斥期間)があり、申告期限から一定期間のうちに税務署から通知がなければ、相続税を納めなくてもよくなります。

時効は原則として申告期限から5年ですが(善意の相続人の場合)、悪意があった場合は7年に延長されます。

時効は原則として申告期限から5年(善意の相続人の場合)、悪意があった場合は7年に延長

8-1.善意の相続人・悪意の相続人とはどういう人を指すか?

ここでいう善意の相続人とは、道徳的に良い人という意味ではなく、単に悪意がない人のことです。

善意の相続人・悪意の相続人は、たとえば次のような人があてはまります。

  • 善意の相続人として相続税の時効が「5年」になるケース
    • 被相続人の死亡を知らなかった人
    • 申告漏れしている財産の存在を知らなかった人 など
  • 悪意の相続人として相続税の時効が「7年」になるケース
    • 相続税の申告義務がある事実を知りながら申告しなかった人
    • 納税資金がなく相続税を申告しなかった人
    • 相続税を免れるためにあえて相続財産を少なく申告した人 など

8-2.時効で相続税の納税が免除されることはあるか?

申告期限から一定期間のうちに税務署から通知がなければ、時効により「制度の上では」相続税を納めなくてもよくなります。

しかし、時効で相続税の納税が免除されることは、実際にはないといってよいでしょう。

次の章でもご紹介しますが、税務署は相続税の申告漏れや脱税がないか徹底して調べるため、時効を待つ間に必ず税務調査が行われます。
時効で相続税の納税が免除されることを当てにしないで、速やかに相続税を納めましょう。

9.相続税の無申告(未申告)や脱税は税務調査で発覚する

相続税を申告しなかった場合や虚偽の申告をした場合は、のちに税務調査で指摘されることになります。

この章では、税務調査で相続税の無申告や脱税が発覚する理由と、税務調査で指摘を受ける割合をご紹介します。

9-1.相続税の無申告(未申告)や脱税が発覚する理由

相続税の無申告や脱税は、時効を迎えるまでに必ず発覚します。
税務署には強力な調査権限と情報の蓄積があり、相続税の無申告や脱税を徹底して調べることができるからです。

役所に死亡届を提出すると、その内容は税務署に通知されます。つまり、税務署は故人が亡くなったことを把握できます。

通知を受けた税務署はその後、過去の確定申告の内容などから、故人にどれぐらい財産があって相続税がいくらになるかを推測します。
このとき、預金口座の入出金の流れや不動産の動きもチェックしますが、これらの情報は相続人の承諾なく集めることができます。

もし、相続税が未申告であったり納付された税額が少なかったりすると、税務調査を実施して、相続人に相続の内容を確認することになります。

税務調査が行われると、高い割合で申告漏れなどの誤りが見つかります。
したがって、相続税の申告をしないまま、あるいはごまかしたまま隠し通すことは困難といってよいでしょう。

9-2.税務調査で申告漏れを指摘される割合は80%超

税務調査が行われると、80%を超える割合で申告漏れなどが指摘されます。

国税庁が公表している税務調査の実施状況によると、令和4事務年度(令和4年7月~令和5年6月)には、8,196件の税務調査(実地調査)が実施されました。
その結果、申告漏れなど非違があった件数は7,036件で、その割合は85.8%に上りました。
(出典:国税庁ホームページ 令和4事務年度における相続税の調査等の状況

この割合は過去にさかのぼってもほぼ同じであり、毎年、税務調査で申告漏れなどの誤りが多く指摘されています。

9-3.相続税の無申告・申告漏れに気づいたら速やかに申告しましょう

相続税の申告漏れや誤りに気づいたときは、たとえ相続税の申告期限を過ぎていたとしても速やかに申告しましょう。時効になるまで逃げ切ることは事実上不可能です。

税務調査の事前通知までに申告すれば、無申告加算税は税率が低くなり、過少申告加算税は課されません。
事前通知で初めて申告義務があると知っても、税務調査で指摘される前であれば加算税の税率は緩和されます。

また、延滞税は納税までの日数に応じて課税されるため、申告と納税が早いほど税額は少なく済みます。

10.早めの相談・早めの相続税申告が大切

相続税の無申告や過少申告については、加算税や延滞税といった罰則が課されます。

相続税の課税には時効があり、時効までに税務署から連絡がなければ申告・納税の義務はなくなります。しかし、実際に時効まで逃げ切れることはないといってよいでしょう。
本来の申告期限を過ぎて申告漏れに気づいた場合は速やかに申告・納税しましょう。

相続税がかかるかどうかわからず心配されている方や、申告漏れがわかった方は早めに相続税に強い税理士に相談しましょう。

税理士法人チェスターは、相続税申告専門の税理士法人です。年間の相続税申告件数は2,300件を超え、業界トップクラスの実績があります。
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