遺族年金や未支給の年金は相続放棄をしても受給できるのか?
亡くなった方の財産を一切継承しない「相続放棄」をした場合には、遺族年金や未支給年金を受給することが出来ないのでしょうか?
遺族年金や未支給年金について、相続放棄した場合の受給について詳しくご説明します。
1.遺族年金とは
一家を支えていた大黒柱の公的年金の被保険者が亡くなった時に、被保険者により生計が維持できていた遺族に対して支給されるものです。
遺族年金には2種類あり、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
遺族基礎年金とは
国民年金の被保険者など、一定の者が亡くなった時に支給されるものが遺族基礎年金になります。
条件としては、被保険者が一定の保険料納付要件を備えていることです。
そして、受給ができる権利があるのは亡くなった者によって生計が維持できていた、子供がいる配偶者、または子供です。
遺族基礎年金の他にも、国民年金の第一号被保険者として25年以上保険料を夫が納付していた場合で、夫が何も年金をもらわなかった時には、妻に寡婦年金が支給されます。
他にも、国民年金の第一号被保険者として、36ヶ月以上保険料を納付し、老齢基礎年金や障害基礎年金をもらわずに亡くなった場合には、死亡一時金を遺族が受け取ることが出来ます。
遺族厚生年金とは
厚生年金の被保険者など、一定の者が亡くなった時に支給されるものが遺族厚生年金になります。
条件としては、国民年金の遺族基礎年金と同じで、被保険者が一定の保険料納付要件を備えていることです。
こちらの年金の受給権利者は、遺族基礎年金よりも範囲が広く、亡くなった者により生計が維持できていた遺族の中で、以下のように高順位の者が受給できます。
遺族年金は受給権者の固有の権利として、受給するものです。そのため、相続によって受給するものではありません。
したがって、相続放棄の手続きをして、最初から相続人ではないとみなされた場合でも、遺族年金を受給することは可能です。
2.未支給年金とは
亡くなった年金支給者が、まだ受け取っていない年金のことをいいます。年金受給者が亡くなった場合は年金受給権がなくなります。
そのため、死亡届を提出して年金の支給を停止させます。この時に、未支給年金の請求手続きを伴うことがあります。
死亡届の提出についての詳細は、下記サイトでご確認をお願いします。 |
未支給年金が発生する理由としては、年金の支給は基本的に毎年偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)に前月と前々月分が支給されるためです。
例えば9月20日に亡くなった場合、8月に支給される6、7月分の年金は受給できます。しかし、8月分と亡くなった月の9月分は10月に支給されますが、亡くなっているため年金を本人が受け取ることはできません。こういった場合に未支給年金が発生するのです。
未支給年金を受給できる権利がある人は、亡くなった年金受給者とともに生計を立てていた人です。
こちらも、以下のように順位によって受給できる人が決まります。
未支給年金は、亡くなった年金受給者が有する権利を、代わりに行使して受給します。
したがって、相続財産にあたるのではないかと考えられるかもしれません。
しかし、こちらも相続財産には当てはまらないため、相続放棄をしても受給することは可能です。
年金法では相続とは関係なく、独自の立場で未支給年金の受給者権を定めているためです。
そして、最高裁の判例(最高裁の平成7年11月7日判決のもの)においても、未支給年金は相続財産ではないと見解がなされています。
3.相続放棄が年金受給に与える影響とは
相続放棄とは、被相続人の財産を一切受けないことをいいます。この手続きは家庭裁判所に申述することにより行う事が出来ます。
また、手続きをする期間は定められていて、原則、相続があったことを知った日から、3ヶ月以内に手続きをしないといけません。
相続放棄する手続きをしたことにより、初めから相続人ではなかったとみなされます。そのため、被相続人の財産を承継できなくなるという仕組みとなっています。
しかし、遺族年金や未支給年金は相続財産ではありません。
これは、それぞれ独自の権利の下に受給するものです。
そのため、相続放棄によって相続財産を承継できなくなったとしても、遺族年金や未支給年金は受給が可能になるのです。
しかし、この場合とは逆に、遺族年金や未支給年金を受給した後で相続放棄は出来るのか、という問題があります。
この問題というのは、民法921条1項では、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、相続を承認したとみなす」という規定があるため、遺族年金や未支給年金を相続放棄の手続き前に受給した場合、相続放棄ができなくなってしまうのでは?と質問されることが多いのですが、先ほどにも述べたように、遺族年金と未支給年金は相続財産にはあたりません。
したがって、遺族年金と未支給年金を受給していても、相続財産の全部または一部を処分したとはみなされないため、受給した後でも相続放棄が可能ということになります。
まとめ
今回の記事のポイントは、遺族年金や未支給年金は相続財産ではないため、相続放棄しても、受け取ることが可能という点です。
この考え方は、忘れないようにしましょう。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
相続対策も相続税申告もチェスターにおまかせ。
「相続税の納税額が大きくなりそう」・「将来相続することになる配偶者や子どもたちが困ることが出てきたらどうしよう」という不安な思いを抱えていませんか?
相続専門の税理士法人だからこそできる相続税の対策があります。
そしてすでに相続が起きてしまい、何から始めていいか分からない方もどうぞご安心ください。
様々な状況をご納得いく形で提案してきた相続のプロフェッショナル集団がお客様にとっての最善策をご提案致します。
DVDとガイドブックの無料資料請求はこちらへ
各種サービスをチェック!
\ご相談をされたい方はこちら!/
今まで見たページ(最大5件)
関連性が高い記事
カテゴリから他の記事を探す
相続法務編